2018年6月12日火曜日

【教えて!狩人先輩!】第28話 戻って! 先輩の正気!【モンハン二次小説】

■タイトル
教えて!狩人先輩!

■あらすじ
新米なのに先輩ハンターにされた少女のドタバタコメディ奮闘記。
※注意※2017/07/09に掲載された文章の再掲です。本文と後書が当時そのままになっております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【pixiv】、Fantia【日逆孝介の創作空間】、【ハーメルン】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
R15 残酷な描写 モンスターハンターダブルクロス MHXX ライトノベル コメディ

■第28話

Fantia【日逆孝介の創作空間】https://fantia.jp/posts/12083
Pixiv■http://www.pixiv.net/series.php?id=635565
ハーメルン■https://syosetu.org/novel/69877/

第28話 戻って! 先輩の正気!


「俺はな、装備を揃えるとしたら絶対ナルガ装備って決めてたんだ!」

 鼻息荒く語るアウグに、三人は顔を見合わせ「先輩キャラ変わったっすね」「熱いパトスを感じるわね……」「壊れちゃったのかと思ったよ」とひそひそ話し始める。
「あの装備を一式揃えたらどんなスキルが付くか、お前ら知ってるか!?」そんな三人を指差して囂々と吼えるアウグ。「回避性能、回避距離UPだ! つまりどういう事かと言うとな……」
 ブツブツと演説を始めたアウグを無視して、三人は改めてルイルに向き直った。
「ごめんっすルイル、先輩が使い物にならなくなっちゃったから、この依頼は受けられないっす!」オクトーが依頼書を突き返す。
「そうなの、先輩のアレはもう使い物にならないの……EDって奴なの……」ハンカチで目元を押さえてさめざめと泣き始めるエネロ。
「きっと君にはもっと良いハンターが見つかるから、諦めずに探してみてね! 先輩はもうダメだけど、この街にはたくさんハンターがいるから!」グッとサムズアップするフェヴラ。
「そう、分かった」依頼書を受け取って立ち去ろうとするルイル。
「人が一所懸命回避に就いて説明してる間に何してんの!?」そこに凄まじい速さの蟹走りでルイルの前に立ち塞がるアウグ。「俺は受けるぜその依頼! ナルガクルガを討伐して、俺はナルガ装備を手に入れる! ウィンウィンって奴だな!」
「――先輩」スッとエネロがルイルの前に立ちはだかった。「そんな邪な想いで狩猟を行うなんて、ハンター失格だと思いますわ」
「お前がそれ言っちゃうの!? お前にだけは言われたくないんだけど!?」カンカンのアウグ。「邪の塊のお前にだけは!!」
「そうっすよ、先輩」スッとエネロの前に立ちはだかるオクトー。「そんなふわふわしたアレじゃ何かアレっすよ」
「お前の警告の方がふわふわ通り越して何にも伝わらねえんだよ!! なに!? お前は今俺に何を伝えたかったの!? ふわふわしたアレって何!?」目がグルグルし始めるアウグ。「てか狭いんだよ!! 間に入ってくるんじゃねえ!!」
「いいかい先輩」オクトーとアウグの間に挟まるフェヴラ。「僕達は先輩に突然キャラを変えられると困るんだ。分かるかな? 先輩が壊れちゃったら、もうこのパーティにはツッコミをする者が誰もいなくなるんだよ?」
「だから何でこのクソ狭い空間に入ってこようとしてるのお前らは!?」フェヴラに押し出されてよろけるアウグ。「……まぁ、その、何だ。確かにちょっと取り乱したかも知れねえ」
「ちょっとっすか?」「ちょっとかしら?」「ちょっとだったかい?」三人が同時に小首を傾げる。
「……取り乱してたよ!! そうだよ!! くそ取り乱してたよ悪かったよ!!」真っ赤にした顔を覆って背を向けるアウグ。「だって!! こんな早くに俺が追い求めていたナルガクルガを狩猟するチャンスが来るとは思ってなかったんだ!! 良いだろ!? 夢ぐらい見たって良いだろ!?」
「先輩……」ポン、とオクトーがアウグの肩を叩いた。
「……何だよ」恥ずかしそうに顔を向けるアウグ。
「自分、知ってるっす。先輩が、この中で一番頑張ってる、超やべぇハンターだって」真剣な表情のオクトー。「でも、ツッコミを投げ出して熱くなるのはダメっす。先輩には、先輩の役割が有るんすから!」
「……お、おう……ん?」納得しそうになるも、すぐに違和感に気づくアウグ。「いやお前、ツッコミと今の話は関係無いんじゃ――」
「――先輩」ポン、とエネロがアウグの肩を叩いた。
「ちょっ、ちょっと待って、まだオクトーとの話が終わってな――」「先輩はいつだって私達後輩のために何だってしてくれる、素敵な人です。けれど、私達を放置してアレを熱く滾らせるのは、私……その、我慢できないんです……」「話を遮った上に意味深な発言してもじもじ始めないでくれる!?」
「先輩」ポン、とアウグの頭を叩くフェヴラ。「お座り」
「ぶっ飛ばされたいのかなあ!?」と言いながらフェヴラの顎にボゴォッ、とアッパーカットを叩き込むアウグ。
「やったっす! いつもの先輩が戻ってきたっす!」「やったわね! 先輩が正気に戻れば私達の物よ!」「やったぁ! 先輩はやっぱりこうじゃなくっちゃ!」
 イエーイ! とハイタッチを交わし合う三人を見つめて、仏のような顔をしているアウグ。
「いや……ちょっとは悪かったと思ったけどよ、俺別にお前らのためのツッコミ装置じゃないんだが……」
「先輩、人聞きが悪いよ!」ぷくぅ、と頬を膨らませるフェヴラ。「先輩はツッコミ装置なんかじゃない!」
「えっ、じゃ、じゃあ……?」恐る恐る尋ねるアウグ。
「ツッコミが出来る生命体さ!」「人間ですらねえのかよ!!」スパァンッ、とフェヴラの頭を叩くアウグ。
「違うっすよお嬢!」ピッと人差し指を立てるオクトー。「先輩は、ツッコミが出来る存在っすよ!」「生命体か否かすらあやふやなのかよ!!」スパァンッ、とオクトーの頭を叩くアウグ。
「二人とも、そんな言い方したら先輩が怒るのは当然よ」やれやれと肩を竦めるエネロ。「先輩は、私の奴隷よ♪」「お前が一番酷いんだけど!?」グーでエネロの顔面をぶっ飛ばすアウグ。
「分かったよ!! 俺が熱くなったのは謝る!! だから話を進めさせて!? 俺、依頼受けたい!! お前ら、受けないなら帰ってくれる!?」頭から蒸気が噴き出し始めるアウグ。
「受けないとは言ってないっすよ!」グッと親指を立てるオクトー。「自分はいつだって先輩と一緒っす! たとえ檻の中牢の中って奴っすよ!」
「何で俺捕まってる前提なの!? 何したの!? 絶対お前、俺に何か大変な冤罪を被せたよね!?」オクトーの肩をガックガック揺さ振るアウグ。
「そうですわ、誰も受けないなんて言っていませんよ、先輩?」人差し指を唇に引っかけて甘い顔をするエネロ。「私はいつだって先輩と一緒……たとえトイレの中風呂の中って奴ですわ……ウフフ……」
「お前が同性である事を差し引いても恐怖を禁じ得ないんだが」ぶるぶると震えながらエネロから距離を取るアウグ。
「そうだよ先輩! 先輩が受けるなら、僕達だって受けるに決まってるさ!」手を叩いて微笑むフェヴラ。「僕達はいつだって一心同体! だからこの書類にサインして貰っていいかな?」
「何で自然な流れで連帯保証人の書類にサインさせようとしてるの!? 怖いんだけど!? お前も大概怖いんだけど!?」ゾワァっと鳥肌を立たせながら書類を破り捨てるアウグ。
「では、」ルイルがアウグの右手を掴み、親指にペタペタと朱肉を塗りつけ、書類に押し付けさせた。「受諾したと言う事で」
「えっ、ちょっ、何勝手にしてんの!?」思わずルイルから距離を取るアウグ。
「受けないのですか?」不思議そうに小首を傾げるルイル。
「い、いや、受けるけどよ……お前も大概恐ろしいな……」青褪めた表情でルイルを見つめるアウグ。
「受けないのでしたら、違約金二十万z支払ってください」
「は?」
 ルイルが差し出してきた書類を改めて確認すると、確かに“この依頼を受諾した後に破棄した場合、違約金二十万zの支払いを命ず”と記されていた。
「……えっ、あの、一つ聞いていいか……?」カタカタ震えながらルイルを正視するアウグ。「そ、そんなヤヴァい依頼なのこれ……?」
「大丈夫です、面倒臭い依頼専門のハンターである先輩なら、大丈夫です」コックリ頷くルイル。「大丈夫です」
「不安の煽り方が尋常じゃないんだが」仏の顔になっているアウグ。「まぁ、仕方ねえな。俺には、頭はおかしいが実力は確かな仲間が三人いるから、確かに問題ねえぜ! なっ、お前ら!?」
 アウグが振り返った先には、誰もいなかった。
 深、と静まり返った空気が流れた後、アウグは爽やかな笑顔を浮かべた。
「……逃がさんぞ?」
 その後、テンプスの街を夜叉の顔をした女が駆け回る姿が随所で目撃されたのだが、それはまた別の話……

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