2019年4月20日土曜日

【艦娘といっしょ!】第28話 加古といっしょ!【艦これ二次小説】

■あらすじ
ちょっと頭のおかしい提督と艦娘達の日常生活を切り抜いた短編集です。
※注意※2017/08/01に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【Pixiv】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
艦これ 艦隊これくしょん コメディ ギャグ 明石 金剛


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/68881/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/series.php?id=627932
■第28話

第28話 加古といっしょ!


「……加古! おい! しっかりしろ! 加古!!」

 ――遠くから波が揺れる音が聞こえる。波を掻き消す程の砲声と怒号、それと…………提督の、呼び声。
「……んえ?」
 焦点が合わなかった視界が、徐々に鮮明に世界を映し出す。
 波間に揺れている加古の眼前には、黒々としたアフロが目立つ、我が鎮守府の提督が佇んでいた。
「良かった、無事なようだな」そう言って提督は加古の肩を叩くと、改めて視界に映る地獄絵図に視線を向けた。「いいか、よく聞け加古。作戦は失敗だ。生存者は私とお前の二人だけ。どういう事か分かるな?」
 戦場の轟音がどこか遠い。加古は今自分がどういう状況に置かれているのかを徐々に理解し、そして理解できない部分を提督に提示する。
「作戦失敗って……生存者があたしと提督の二人だけって……あたしが意識失ってる間に、何が遭ったって言うんだよ……!?」
「敵戦力を見誤った私の責任だ」海の上に立ち、視線の先――深海棲艦が放つ爆撃機による絨毯爆撃を眺めながら、提督は呟く。「第六戦隊じゃ加古、お前が唯一の生存艦だ」
「う……嘘だろ……? 古鷹は……?  青葉と、それに衣笠も、……皆、沈んじまったのかい……?」
「……」提督は前を向いたまま、口を開こうとしなかったが、不意に加古を振り返ると、ポン、とその頭を撫でた。「お前だけでも無事で、良かった」
「良くねえよ……全ッ然良くねえよ!! どうして、こんな……ッ」
 涙が止まらなかった。皆でワイワイしていた頃が思い出せないくらいに、思考が真っ赤に染まっている。
 真っ赤。
 不意に、加古の視線が提督の背に向かう。
 真っ赤に染まった、背中に。
「……お、おい、提督……その傷……」恐る恐ると言った態で指差す加古。
「あぁ、問題無いさ」背を隠すように加古を正面に捉える提督。「それより加古、お前動けるか?」
「……あたしゃね! やる時ゃやるんだよ! だから……ッ」ギュッと提督を抱き締める加古。「帰ったら……ッ」
「おうよ、一杯寝かせてやるから、もう一踏ん張り、出来るな?」ポン、と背中を叩く提督。
 体を離し、提督を正面から見据える加古。未だかつてこんなに提督を頼もしく思えた事は無かったし、こんなにカッコいい提督は初めてだった。
「……提督、一つワガママ、いいかい?」
「何だ?」
 提督の襟首を掴みあげると、そのまま唇を重ねる加古。
 そっと口付けした後、加古は照れた笑顔を浮かべて、親指を立てた。
「目が冴えてきた! 力がみなぎってきたよ!」
「お前なぁ……」苦笑を浮かべるも、満更でもない様子の提督。「じゃあ加古スペシャルに期待しつつ、――始めるぞ」
 二人の前に立ち開かるは、連合艦隊も斯くやと言う数の深海棲艦の群れ。
 生きて帰れる保証など無い。それでも加古はこの提督とならきっと――そう信じて、口唇に笑みを刻む。
「いっくぞぉぉぉぉっっ!!」
「どこに行くんだどこに」
 意気揚々と敵艦隊に突撃しようとした加古を見るのは、呆れ果てた表情の提督だった。
「え? は? 提督、あんた……ちょっと、ふざけてんの? この大事な時に何冷静になってんだよ!」
「いや冷静も何も、終わったぞ、映画」
「はぁ!? あたしは現実の話を――」

◇◆◇◆◇

「してんだよ!!」
 殴りかかった拳が提督の顎にクリーンヒットし、提督が「いっづァッ!」と倒れ込んだ。
 グーパンを宙に向けて放った加古は、「あれ?」と周りを見回し、ここが海の上でも、深海棲艦の群れの只中でもない、映画館の中である事に気づく。
 隣で顎を押さえて「うおぉ……まじで顎殴られると立てないんだな……」と座席に座り込んだまま悶絶している提督。
「あれ? もしかしてあたし、寝てた?」
 映画のスクリーンには何も映っておらず、館内の照明も煌々と光を下ろしている。残っている客は提督と加古の二人だけだった。
「いつから寝てたか知らんが、終わっても全然動かないから起こしたんだよ……おーいてて……」何とか頭のふらつきが戻ったのか、提督が私服姿でポップコーンとジュースカップのゴミを持って立ち上がる。「ほら、起きたなら帰るぞ」
「お、おぉ……」提督の顔をマトモに見れない加古。
「どうした? 映画もう一回見たいか?」不思議そうに加古を見やる提督。「めっちゃ面白かったからなー、アレはちゃんと見るべきだと思うぞ私は」
「いやー……映画より良いもん見ちゃったから、別にいいかなー……あはは……」赤面して提督から視線を逸らす加古。
「まじかよー、どんな夢だったの? 教えて教えて!」
「教えられる訳ねーだろ! てか今はそれより古鷹の顔見たくて仕方ないから帰ろうぜ! んで一杯寝かせてくれよ~!」
「お前自由過ぎるだろ……てかまだ寝るのかよ!? お前さっきまで寝てただろ!?」
 提督のツッコミを聞き流しながら、加古はどこ吹く風で提督の前を歩いて行く。
 あの夢の続きを、また見られたらいいな、と思いながら。

【後書】
 こういうね~シリアスチックな夢落ち系の話もね、大好きなんですね…(突然の告白)
 と言う訳で加古ちゃんでした(^ω^) 加古ちゃんは改二のエッチカッコよさは堪りませんよね…好きです…
 てかすぐ居眠りするのほんと可愛過ぎませんか?? どんだけ提督を信頼してるんだ感がね、もうね…好きです(二回目)。

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