■あらすじ
オールフィクション且つブラックジョークの飛行機に乗ろうって物語です。
作者は飛行機未体験なのででっち上げも甚だしいとんでも内容です。
▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。
■キーワード
日常 コメディ ギャグ ライトノベル 現代 男主人公
カクヨム■https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054892860665
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n1899bc/
■オール有料の飛行機
オール有料の飛行機
「格安の運賃で飛行機に乗れるんだってさ! 但しここぞとばかりに有料のサーヴィスを押し付けてくるんだってさ! ちょっと行ってみようぜ!」
と、悪友にそそのかされて空港にやってきた俺は、悪友と一緒に空港の中をさ迷っていた。
「で、どこにあるんだ? その格安の運賃のティケット売り場は」欠伸混じりに悪友の背に尋ねる。
「あ、あれじゃねえか!?」
悪友がみなぎってきたと言わんばかりの大声を張り上げて指差した先に在るのは、病院とか役所とかで見かける胸くらいの高さまである端末だった。全面紫色で、側面には“SKY DIE”と会社のロゴが印刷されていた。
「聞いた事無い会社だな」と疑問に思いながら端末に近寄ると、乗務員と思しき女性が良い笑顔で「ティケットのご購入ですか?」と聞いてきた。
「あぁ、そうそう。格安って聞いたんでどんなものかなーと」
会釈しつつ応じると、乗務員のお姉さんは晴れやかな笑顔のまま「はい、当社は徹底して運行コストや人件費を削減し、機内サーヴィスの簡略化と航空券販売コストの低減を行った結果、最低限の料金で快適な空の旅を提供させて頂いております」と滑らかな語調で説明してくれた。
「へぇー。まぁ何でもいいけど、この機械操作すればティケット買えるの?」端末を指差して尋ねる。
「はい。こちらの端末を操作する事によってティケットを購入する事が出来ます」ニッコリと応じるお姉さん。
「なるほどね」と端末を弄ろうとしたらワシッとお姉さんに腕を掴まれた。「――なんッ?」
「お客様。ただいまご質問にお答えしましたので料金が発生致しました」ニッコリと良い笑顔のままお姉さんがにじり寄ってきた。
「はぁい!?」当然頓狂な声を発したのは俺だった。「え、質問しただけで金取られんの!? 嘘だろ!?」
「馬鹿だなー、お前。話聞いてなかったのかよ?」悪友がやれやれと肩を竦める。「あらゆるコストを削減した代わりに、あらゆるサーヴィスを有料化したんだって。質問なんかしたら金取られるに決まってんじゃん」
「マジかよ!?」眼球が吹っ飛びそうなくらい驚いた。「ま、まぁそういう事なら仕方ないか……。えっと、幾らになるんだ?」
「五千円になります」ニッコリ笑顔のお姉さん。
「たっかッ!! 高過ぎだろ!! ボッタクリ過ぎだろヲイ!! 何で質問しただけで五千円もふんだくられてんの!? とんでもねえ商売してるなオタク!!」
併し払わない訳にはいかないのでおサイフから樋口さんを取り出して渡した。
「毎度、有り難う御座います♪」すんごい良い笑顔のお姉さん。
「ふざけんじゃねえよって言いたいところだけどまぁいいや、えぇーっと白亜紀からジュラ紀まではーっと……ぉお、マジか。この距離を百円で飛べるのか。すんげぇー安いなー」感嘆しながらティケットを購入するを選択して、硬貨を一枚入れるとバリバリ音を立てながらティケットが出てきたので、それを手にする――直前に再びお姉さんの力強い指が俺の腕に噛み付いた。「ぃいったいッ!!」
「お客様。ただいまティケットをご購入されましたので料金が発生致しました」ニッコリ通り越して不気味な笑顔のお姉さんが眼前にいるッ。
「ティケット買うアクションに何で更に金が掛かるんだよ!? ムチャクチャだろ!!」空港中に俺の絶叫が轟いているみたいだ。
「おいおい常識だろ?」悪友が隣で同じティケットを買った後、紙幣を支払っている。「金も払わずにティケット買うなんてお前、子供じゃねえんだから」
「いや金払ったよ!? ティケット代俺きっかり払ったよ!? 何で更に要求されんのか理解に苦しんでるんだけど!?」
「仕方ねえだろ決まりなんだから」やれやれと肩を竦める悪友。「早く払って飛行機に乗ろうぜ? 俺飛行機初めてだからさっさと行きたいんだけど」
「あぁもう判ったよ! で、幾ら払えばいいんだ!?」イライラとおサイフを再び取り出す。
「五千円になります」もうこの笑顔が信じられない。
「おかしいだろ!? ティケット一枚百円だよ!? 何で五十倍の料金要求されんの!? ティケット買うまでに一万円も支払う事になるの!? ティケット代だけがアホみたいに安くてあと全部法外じゃないこれ!?」
「五千円になります」
そして樋口さんが再びボッシュートされた。
「くそッ、絶対にボッタクリだろこれ……いやもう新手の詐欺と言っても過言じゃないな」
ブツブツと悪態を吐きながら空港をさ迷っていると、【SKY DIE搭乗口】と記された札が見えた。その先に一台のバスが止まっているのが見える。
「あのバスに乗って飛行機の元まで行くらしいぜ!」ウキウキしながら悪友が告げた。
「……へぇ」もう嫌な予感ビンビンでバスに近づく。
あのお姉さんがいた。
「ようこそ! 次は白亜紀発ジュラ紀行きが離陸致しますので、搭乗されるお客様はどうぞこちらへ!」キビキビとした声でお客さんを案内している姿は、悪魔のようにお金を搾り取る姿と同一視する事は難しかった。
やがてバスの傍に辿り着いたのだが、――ボロい。ボロいなんてレヴェルじゃない。屋根が無ければ椅子も無い。吊り革すらないガランとした訳の判らない作りになっているバスだった。乗り込むとあちこちで体育座りをしている客の姿が見受けられた。まじか。
やがて運転席に座っているゴツいおっさんが「じゃあ行くぞゴルァ!」と野太い声を張り上げ、バスは急発進した。
ギャギャギャッッと凄まじい空転する音を奏でたタイヤから白煙が上がり、物凄い勢いとベクトルで客が物の見事に後方に吹き飛ばされた。
「ほぎゃーっ!!」堪らず絶叫を張り上げたのは俺だった。「おい、マジかよ!! なにこれ無茶仕様過ぎるだろ!! 殺す気か!!」
「まぁ落ち着けって」後部の硝子に全身を叩きつけられた状態で悪友が肩を竦めた。「あらゆるコストを削減してるんだから、このくらい当然だろ? 寧ろ歩きじゃなかっただけマシだと思えよ?」
「寧ろ歩きの方がマシじゃないのか……」白目を剥きそうになった。
「ほっほっほ、お若いの。飛行機に乗るのは初めてかね?」白髪のお爺さんが声を掛けてきた。
「え、はぁ、まぁそうっすけど」頭を掻きながら応じる。
「ほっほっほ、そりゃ驚くのも無理は無い」そう言って柔らかい微笑を浮かべるお爺さん。「今時の飛行機はみんなこんなもんじゃよ」
「そ、そうなんすか……」俄かには信じ難いのだが。
その時バスが急ハンドルを切ったので、凄まじいGが車内を襲い、客全員が右側へと薙ぎ倒されていった。
がしゃーんっ、と窓ガラスを突き破って今話していたお爺さんが車外へ吹き飛んでいった。
「お爺さァァァァんッッ!?」眼球吹き飛ぶクラスの驚きだった。「ちょッ、お爺さん吹っ飛んでったぞ!! 早く止めろよ!! 救急車!! 救急車を呼んであげて!!」
「救急車ですか?」あのお姉さんが荒れ狂う車内にも拘らず毅然と立って応じた。「五万円になります」
「救急車呼ぶのにも料金発生すんの!?」遂に眼球がどっか行った。「ンな事言ってる場合かよ!! 死人が出るぞ死人が!!」
「当社では“SKY DIE保険”に加入されていない方の事故、事件に就いては一切関知しないスタンスですので、どうぞお気になさらず♪」もうこれは悪魔の笑顔だ間違い無い。
「とんでもねえトコに来ちまったよ!! おい、帰ろうぜ!? こんなトコにいたら命が幾つ有っても足りねえよ!!」わーわー喚きながら逆さまになってる悪友の腰を揺らし始める。
「バカ野郎!! 飛行機に乗るためにゃあ必要な犠牲もあんだろ!! 弁えろ!!」逆さまになったまま鋭い視線を投げてくる悪友に殺意を覚えた。
仕方ないので暴走バスに乗り続けた俺はやっと飛行機が見えてきた辺りで何度目になるか判らない絶望を覚えた。
なにこれボロい。飛行機なのにあちこち穴が空いてる。外から中が見えてんのに飛んでいいのかヲイ?
「お待たせしました、どうぞご搭乗なさってください」ニッコリと悪魔が告げた。「その前にバスの登下車代をお支払いください」もう何でもいいので樋口さんを渡して飛行機に乗り込んだ。
とにかくボロかった。穴だらけのシートにヒドい臭気が漂ってる。まぁもうここまで来ると予想の範囲内だ。どうでも良くなってくる位に、とんでもない値段請求を浴び過ぎてしまったようだ。
「おい! 俺達窓際の席だぜ! やったな!」悪友が未だに喜んでいるのが理解できなかった。
「あぁそうだな。俺はもう帰りたくて仕方ないけどな」やれやれと席に着こうとして案の定腕にみっちりとお姉さんの手が喰い込んだ。「着席でも金取られんのかよ!?」そして樋口さんがお亡くなりになった。
ボロカスの席に座り込んで深いため息を吐き散らした。訴える。絶対に訴える。そう意識を頑なに硬化しながら離陸を待っていると、アナウンスで「間も無く離陸します。安全ベルトは一万円からの販売ですので、是非皆様ご購入ください」と遂に樋口さんを超えて諭吉を差し出さねば安全を買えないとか吐かし始めた。
仕方なく諭吉さんが犠牲になって、飛行機は離陸した。
「快適な空の旅をご堪能ください♪」ジャリジャリ砂嵐気味のアナウンスが途切れ、やっと機内は轟々と吹き荒れる業風だけの静かなんてとても言えない空間になった。マトモに息が出来ない。苦しい。とても苦しい。
「かッ、はッ、何が快適な空の旅だッ、かッ、ふざけんなよおいッ、はッ、」マトモに喋る事すら困難だった。
「おいおい、お前これ買ってねえの?」隣の悪友を見るとマスクを付けてた。酸素ボンベも背負ってる。
「……かッ、……はッ、……いくらッ、それッ?」青褪めながら辛うじて尋ねた。
諭吉っつぁんが五人くらい消えて俺は晴れて快適とは程遠いなりにも空の旅に落ち着く事が出来た。
「水欲しいな……」しゅこー、しゅこー、と定期的に供給される酸素に和みつつも喉が渇いてきた。「機内サーヴィスあるんだろ? 当然有料だろうけど」
「おう、あるだろそりゃ」隣で業風荒れ狂う最中にも拘らず週刊少年誌を読んでいる悪友。ページが踊ってるぞヲイ。「俺も水飲みてえな」
その時だった。隣に気配を感じて視線を向けるとあの忌々しい悪魔が立っていた。「機内サーヴィスいかがですか?」
「丁度良かった、水くれ水」ゼィゼィと酸素を吸引しながら尋ねる。「いくらだ?」
「二百四十万円です」訳の判らない言葉を聞いた。
「…………なんて?」取り敢えず聞き直した。
「お水一杯二百四十万円になります」訳の判らない事を言っている。
「局地的なインフレか!? どこの水だよそれ!? どんな名水でもその値段は有り得ないだろ!? 併も一杯だと!? ふざけんな!! この飛行機一杯の水でもンな値段しねえよ!!」
と言う訳で残念ながら水の供給は諦めた。何か色んな病気を併発している気がする身体状況を加味しても、二百四十万は有り得なかった。
「……ひゅー、……ひゅー、」いかん、もう虫の息も甚だしい。誰か助けて。もう降りたい帰りたい。
そんな時だった。突然アナウンスが流れ始めた。
「当機は間も無く墜落します。お客様は落ち着いてパラシュートの準備をしてください」
「はぁーい!?」朦朧としていた意識が一気に覚醒した。「墜落!? 着陸じゃなくて!?」まぁ当然だなとも思ったが。
慌ててパラシュートを探すも見つからない。隣の悪友は未だに週刊少年誌を読みながらゲラゲラ笑い転げている。憎らしい事この上ない。
「おい、早くパラシュート探せよ!!」怒鳴り散らす俺。「このままだと死ぬぞ!!」
「はぁ? パラシュートなら付けてるよ」と言って背中を見せるとなるほど何か「二十万円分のパラシュートです」とロゴが入った箱っぽい何かを背負ってやがる。
「……それ、どこにあったの?」目を白黒させながら尋ねる。
「さっきの乗務員さんに売って貰ったに決まってんじゃん」バカかと蔑まれた。
「お客様、パラシュートのご購入は済まされましたか?」悪魔が声を掛けてきた。
「済まされてねえよ!! おまッ、パラシュートぐらい無料で提供しろよ!? 人命!! 人命第一!!」グイッと乗務員の胸倉を掴み上げる。
「あッ、……お客様、お触りは別料金になります」頬を赤らめて目を逸らす悪魔。
「ンな事言ってる場合じゃないだろ!? おいッ、クソッ!! もういい加減にしろクソッタレがァァァァッッ!!」
――そして、俺は五十人くらいの諭吉を殺して、無事墜落した。
海上に浮かんでいるのは藻屑のような飛行機と数十人のお客さんもとい遭難者。
「どうしてこうなった……」ちゃぷちゃぷと五人の諭吉を支払って買った浮き輪の上で白目を剥いていた。
「あ、救難信号は二十万――」「もういいよ!!」
【完】
【後書】
ほんのりリメイクした、すんごい昔のオリジナル短編です。今思うとこれ、昨今のソシャゲを色濃く反映してるな…と思って、久方振りに読んだらニヤニヤが止まらなくなったので再掲と言う形に!(笑)
昔の短編を纏めてちょこちょこ再掲していこうかなーとか考えておりまする。昔は昔で、わたくしぶっ飛んだ作品綴ってたなーと懐かしみながら…ww
更新お疲れさまですvv
返信削除すっごく面白かったです。
ありえなくはなさそうですが、実際あったら困るですw
なんとなーく懐かしい感じがするのはどうしてだろう?w
ちょこちょこ再掲ぜひぜひお願いしたいです。
今回も楽しませて頂きましたー
次回も楽しみにしてますよーvv
感想有り難う御座います~!
削除ヤッター!┗(^ω^)┛ それこそが待ち望んだ最大級の誉め言葉!!!
そうなんですよねww実際有ったら困るのですけれど、何だか今の時代、段々とこういう流れになってる感が否めなく…ww
めちゃんこ懐かしいでしょこれ!w たぶんとみちゃんとコミュニケーションし始めてから後に綴った奴なので、憶えてるか否か怪しいラインの作品なのですこれ!w
わーい!(≧◇≦) 今後もちょこちょこ再掲して参りたいと思いまする!!
今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
次回もぜひぜひお楽しみに~♪