2018年2月27日火曜日

【ベルの狩猟日記】025.再出発【モンハン二次小説】

■タイトル
ベルの狩猟日記

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【鎖錠の楼閣】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G




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ハーメルン版■https://syosetu.org/novel/135726/



「――ドスファンゴとフルフル、二頭同時に相手にするのは、ハッキリ言って無理。だから、まずはどちらか一頭を仕留めて、それからもう一頭に取りかかるべきだわ」
 雪山の頂上付近に穿たれた横穴の奥。そこは吹雪もあまり入り込まない、比較的平穏さを感じさせる地帯だった。大型モンスターのみならず小型モンスターも入り込まないために、ハンターでなくても安全が確保できる場所である。
 そこに現在、三人のハンターと一人の行商人が座り込んでいる。辺りは夜闇に包まれ視界が悪い状態だったが、動くのに支障が出る程ではなかった。まるで闇が質量を持っているかのように、重圧を感じる静寂が一帯に敷かれている。
 四人の前には灯りの代わりに、光蟲と呼ばれる、自ら光を放つ虫の入った篭が置かれていた。その僅かな光源を頼りに、雪の積もった地面に敷いた雪山の縮図である地図を見つめている。
「二頭が雪山にやって来てから何日か経ったからこそ言えるんだけど、フルフルはこの頂上の狩場には近づいて来ないみたいだよ。ドスファンゴは、雪原地帯を徘徊するようにグルグル回っているみたいだから、この近くまでやって来る事が有る」
 赤い種をすり潰して液状にした物で、地図の中に線を加えていくウェズ。見ると、フルフルとドスファンゴの活動地域が記されていた。
「尤も、確実とは言えないと思う。僕も、流石に疲れたら眠るし、あまり体力を消費しないように生き繋いでたから……」
 ウェズのような行商人は、大きな風呂敷を使って大量の道具を持ち込む。持ち込める道具類の規制が緩いために、すぐに道具が尽きる事は無いだろう。併しすぐではないだけで、何れは底を尽く。そのため、ホットドリンクや携帯食料などの、体力やスタミナに関係する道具を出来る限り節約せねば、狩場で生活する事など不可能に等しい。
 携帯食料の味気の無い干し肉のような物を口に挟みながら、ベルは地図の一番上――雪山の頂上付近を指差しながら、口を開く。
「フルフルが絶対に来ない、とは言い切れないけれど、来る可能性が低くて、且つドスファンゴが確実に立ち寄るのなら、ここで網を張るのは堅実だと思うわ」
「まずはドスファンゴを狩るって事にゃね?」
 ザレアが地図から顔を上げ、ベルの顔に視線を向けると、彼女は顎を引いた。
「あんな馬鹿でかいドスファンゴは初めて見るけど、基本は同じ筈。けむり玉と、シビレ罠、あとザレアの力さえあれば、何とかなる筈だわ」
「それが……大変にゃ事に気づいたのにゃ、ベルさん」
「え? 何かおかしいトコでも有った?」
 ベルが思わず、今の作戦に変な部分が有ったか思い出そうとすると、ザレアが涙声で口を挟んだ。
「ば、爆弾がもう無いのにゃ……」
「…………………………あぁー。いや、ザレア。あんた、爆弾が無くても充分に強いから。気にしなくていいわ」
「で、でも! 爆弾が無いと、オイラ、力が百億分の一も出にゃいのにゃ……」
「衝撃の発言!? ちょっ、それどういう事!? さっき、爆弾が無いのに、ドスファンゴをぶっ飛ばす程の力を出してたじゃない!」
「あれは……ちょっとした弾みだったのにゃ……」
「弾みであのパワー!? あんたの本気が、本気で怖くなってきたわ……」
「ザレアが力を出せなくても、代わりに俺がいつもの二倍働けば、大丈夫だろ?」
 ザレアの発言に思わず体を震わせたベルだったが、続くフォアンの発言に別の驚きを表す。
「あんた、その体でやるつもりなの!? 今だけは安静にしてなさいよ!」
「それは出来ない相談だぜ、ベル。俺は、何が何でも二頭を討伐してみせる。……大丈夫、俺は死なないんだ」
「何を根拠にそんな大言吐けるのか知らないけれど……何を言っても聞かないとは言え、今回だけは止めときなさいよ、フォアン。そんな満身創痍で、どうやって二頭も相手に……」
 するのよ、と続けようとしたベルの前で、フォアンはポーチから、電撃を喰らっても無事だった瓶を取り出す。
 一見して飲みたくなくなるような、深い紅色を湛えた、どろりとした液体が納まった瓶を見て、ベルは小首を傾げる。
「それ、何? ホットドリンクじゃないみたいだけど……」
 ベルは初めて見るようだったが、二人ほど驚愕の声を走らせる者がいた。
「ま、まさかそれは……!」「――いにしえの秘薬かにゃ!?」
「へ?」とウェズとザレアを振り返るベル。「――って、何?」
「おまっ、知らないのか!? いにしえの秘薬っつーと、市場に出回る事なんて滅多に、つか出回らないんだ。製造法を知ってる者自体が希少な、レア過ぎる代物なんだぞ!?」
「オイラが聞いた話じゃ、いにしえの秘薬は飲むだけで、肉体もスタミニャも全快ににゃるとか。全快ににゃるだけじゃにゃく、本来持っていた体力を更に底上げする程の効能が宿っているとも聞いている、凄い代物にゃ!」
 二人の力説に若干怯みながら引いていると、フォアンはそれを何の躊躇いも無く喉に流し込んだ。
「「あーっ!」」と二人の絶叫が雪山に木霊する。
 フォアンはそんな二人に構う事無く飲み干すと、「ふぅ」と息を吐いてベルに視線を向ける。
「これで、体もスタミナも万全だ。――ここで途中退場なんて、認めないぞ? ベル」
「……あんたって奴は……」
 出来の悪い生徒を見る教師のような眼差しで、ベルは頭を抱えて嘆息を吐き散らしたが、すぐに不敵な笑みを顔に刷いた。そうこなくっちゃ。それがベルの本心だった。
「狩場に来て、もう随分と時間が経過してるわ。ウェズの食料も、あたし達が来たせいでもう残り僅かになったし」
「……それはお前ががっつくからだろ」ツッコミを忘れないウェズ。
「――ともかく、残された時間は少ないわ。迅速に狩猟を終わらせましょう。……ここで尻尾を巻いて逃げる訳には行かないわ。ハンターとして、じゃないわ。あたしの意志が、それ以外の道は無いと言ってるの。……それでも、付いて来る者は?」
 ベルが、質疑の形を取った確認を二人のハンターに差し向けた。
 フォアンは澄んだ微笑を浮かべ、ザレアは拳を固めて胸の前で構える。
 やる気は充分。体力も取り戻した。意志も固まり、残りは――表明の確認のみ。
 ベルは不敵に笑み、立ち上がった。
「狩猟を始めましょう」

【後書】
 やっといつもの雰囲気が戻ってきてε-(´∀`*)ホッとしている作者日逆さんです(ご挨拶)。
 ザレアの天然なボケが入ると途端に場が和むと言いますか、いつものベルの狩猟日記に戻ってきたな~感を感じられるんですよね…w
 と言う訳で次回からいよいよ第2章もクライマックスな狩猟編です! フォアン君をズタズタにした報いを受けるがいい!! 次回、第2章第13話にして第26話「連続狩猟」…狩猟がこんなおざなり(狩猟シーンが少な過ぎる)なモンハン小説も、今じゃもう珍しくないって本当ですか!?w そんなこったでお楽しみに!w

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