2018年4月29日日曜日

【神否荘の困った悪党たち】第11話 完全にバレてるのにサプライズになるかなぁ【オリジナル小説】※再掲

■タイトル
神否荘の困った悪党たち

■あらすじ
非現実系ほのぼのニートフルコメディ物語。宇宙人、悪魔、殺し屋、マッドサイエンティスト、異能力者、式神、オートマタと暮らす、ニートの日常。
※注意※2016/12/18に掲載された文章の再掲です。本文と後書が当時そのままになっております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公

■第11話

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
Fantia【日逆孝介の創作空間】https://fantia.jp/posts/9106

第11話 完全にバレてるのにサプライズになるかなぁ


「ヒトマルマルマル。亞贄様、おはようございます」

メイちゃんの穏やかな声が頭上から降り注ぐ。
もそもそと起き上がり、開け放たれたカーテンから見える陽光を見てから、改めてメイちゃんに視線を向ける。
「……おはよう」
「おはようございます。本日の朝餉は何に為さいますか?」
「えー……と。コーヒーとレモンジュース、それと、かりんとう以外って何が用意できそう?」
「何でもご用意できますが」
「何でもかぁ……」そう言われたら逆に悩んでしまうなぁ。「じゃあハムエッグとかって大丈夫?」
「可能です」
「じゃあハムエッグをお願いしようかな」
「承りました」ぺこりと優雅にお辞儀をすると、部屋を出て行くメイちゃん。
ぼんやりとそのまま欠伸をしたり伸びをしたりしてたけど、部屋の隅に置かれていた人生ゲームを見て思い出す。そうだった、今日は皆とこれで遊んでみようと思ってたんだった。
もそもそとベッドを出て、寝巻から普段着のシャツとジーパンに着替える。その時に置時計の時計を見ると、十時七分とかだった。
昨日はメチャクチャ早い時間に起こされたから二度寝したけど、今日はガッツリ眠れたみたいだ。
着替えをメイちゃんに渡すために纏めていると、コンコンと部屋をノックされた。
「はーい」と言って扉を開けると、廊下にはラヴファイヤー君が立ってた。ピンクのスーツ姿だ。「あれ? ラヴファイヤー君、今日仕事は?」
「おはようっす!」ビシッと敬礼するラヴファイヤー君。
「おはよう」応じるように敬礼する。
「今日はお仕事休んだんす!」
「体調でも悪いの?」
「体調は悪くないっす!」
「用事でもあるとか」
「孫君と遊ぶ用事が有るっす!」
「俺と?」
そんな約束したかな、と思いながら頭をポリポリ掻いていると、ラヴファイヤー君が悲しそうな表情になった。
「ま、まさか僕だけ除け者にするつもりだったっすか!? 僕悲しいっす! 胸シュンっす!」
「何の事かよく分からないけど、何かごめん」ポリポリと頬を掻き掻き。「あっ、もしかして人生ゲームの事?」
「そうっす! 孫君が僕達のために人生ゲームを買ってきたって聞いてたんす! サプライズで遊んでくれるって聞いてたんす!」
「完全にバレてるのにサプライズになるかなぁ」
「あっ、僕、人生ゲームなんて知らなかったっす! 何か孫君が遊んでくれそうな気がしたんす! 僕も一緒に遊べる気がしたんす!」必死に弁明するラヴファイヤー君が健気過ぎてヤヴァい。
「何かメチャクチャ気を遣われてるけど気にしなくていいよ」ポンポンとラヴファイヤー君の肩を叩く。「でもお仕事休んで良かったの? ラヴファイヤー君とも遊びたいけど、別にお仕事終わってからでも良かったんだよ?」
「だって! 僕! 孫君と! 早く! 遊びたかったんす!」瞳を潤ませつつ両手を掴まれて言われると破壊力あり過ぎだなぁ。
「そこまで言われるとは思ってなかったよ。じゃあ一緒に遊ぼうか」と言って部屋に戻って人生ゲームを取り部屋を出る。「皆とやりたいから、中庭の方がいいよね?」
「そうっすね! じゃあ僕、皆を呼んでくるっす!」と言ってパタパタ駆け出して行った。
中庭に向かって足を投げ出して廊下に座り込んでいると、メイちゃんが静々と音も立てずにキッチンから出てきた。
「亞贄様、朝餉の準備が出来ました」と言って、お盆の上にあるハムエッグを見せるメイちゃん。
「わぁ、有り難う」お盆の上の皿を取り、手掴みでハムエッグを齧る。「美味しい」
「有り難う御座います。亞贄様のお口に合って嬉しいです」声も表情も淡々としたまま変わらないけど、どことなく嬉しそうなメイちゃん。
「よー、人生ゲームやるって?」
ハムエッグを貪り食べていると、シンさんがいつものジャージ姿で現れた。口に煙草を引っかけて、俺の隣に腰掛ける。
「この分だともう住人全員把握してるって感じですかね?」ハムエッグを平らげると、メイちゃんが皿を引き取って片づけに行ってくれた。「あっ、メイちゃん有り難うね、ご馳走様ー」
「ん? 何の事か分からないなぁ。あたしは愛火君に呼ばれてきただけだからなぁ」ニヤニヤと笑ってるシンさんが小憎らしい。
「別にいいんですけどね」肩を落としながら中庭に視線を転ずる。「今日も暑くなりそうですね」
「別に良くは無いだろ」シンさんに肩を押される。「お前のサプライズを台無しにするあたしの作戦が台無しになるだろ?」
「この人ヤヴァいよ怖いよ」すすすと距離を取るよ。「てかやっぱり知ってたんじゃないですか」
「そりゃ知ってるだろ。にー君のサプライズを台無しにするためならあたしは何でもするぞ。当たり前だろ」
「うえぇ……この人の隣にいるだけで正気度削られそう」正直言うと泣きそう。
「せんぱーい!」ドタドタと廊下を駆けてくる砂月ちゃん。今日は半そでの黄色いパーカーに短いジーンズ姿だ。「おはようございまーす!」
「おはよう」軽く手を挙げる。「朝から元気だね」
「当然じゃないですか! 先輩と一緒にあんな事やこんな事して楽しむんですよね今日は!?」ふんふんと鼻息荒い砂月ちゃん。
「仄かないかがわしさを感じるんだけど」
「えっ、先輩、愛火さんといかがわしい事を!?」目がキラキラしてる砂月ちゃん。
「しないし、してないし、する予定も無いからね?」
「つーか今のは愛火君とじゃなくて砂月ちゃんといかがわしい事する流れじゃなかったの?」横から槍を突き込んでくるシンさん。
「え? 自分とですか?」きょとんとシンさんを見やる砂月ちゃん。「そんな……先輩、自分とイチャイチャしたいんですか……?」砂月ちゃんの瞳がどこか蠱惑的だ。
「愛火君とイチャイチャするぐらいなら砂月ちゃんとイチャイチャした方がよっぽど健全だと思うけど」コックリ頷く。
「にー君、君、本音をザクザク言うね」驚きに目を瞠ってるシンさん。「あたしゃ感心したよ」
「先輩! 自分、恥ずかしいです!」砂月ちゃんが赤面した。「自分とイチャイチャしたいって言う人、先輩が初めてです! 顔から火が出そうです!」砂月ちゃんの顔から轟々と火炎放射器のように火が噴き出た。
「火、出てるよ。リアルに」熱くて敵わない。「熱い、しゅごい熱い」
「砂月ちゃん熱いからその顔の火、引っ込めて! 神否荘がまた火事になる!」シンさんが面倒臭そうに砂月ちゃんから距離を取る。「愛火くーん! この火どうにかしてー!」
「何すか何すか?」ドタドタと廊下を走ってきたラヴファイヤー君。「うわぁ! 砂月ちゃんが燃えてる! どうしたんすかこれ!? 人体発火って奴っすか!?」
「恥ずかしくて燃えてる」熱風が来るので顔を覆いながら応じる。「ラヴファイヤー君、アレどうにか出来るの?」
「やってみるっす! 僕の魔力を使ってぇ……ぬぬぬ!」
突然砂月ちゃんの頭の上に穴が空いて、バシャァッ、と大量の水が降り注ぎ、鎮火した。
砂月ちゃんはびしょ濡れになり、廊下は水浸しになった。
何て言うか、とても申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

【後書】
ぬぬぬ!(挨拶)
と言う訳で新しい朝が来ました。ハムエッグって地域によって全然別物らしいですが、この世界線では焼いたハムの上に目玉焼きが載ってる感じのハムエッグです。
のんびり更新すると言いながら十日以内に更新できた私を褒めて! さぁ! どんどん褒めると良いよ! でもやっぱりのんびり更新です。この物語は遊びたいものを好きな時に遊んでいる様子を眺めて楽しむ作品なので、私が「あっ、楽しみたい!」と思った時に更新される素敵仕様なのです。
と言う訳で次回も「あっ、楽しみたい!」と思う頃に更新しますので、どうか気長にお待ち頂けたらと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿

好意的なコメント以外は返信しない事が有ります、悪しからずご了承くださいませ~!