2018年4月24日火曜日

【ベルの狩猟日記】033.目指したもの【モンハン二次小説】

■タイトル
ベルの狩猟日記

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G

【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/



ベルがランポスと前哨戦を繰り広げていた頃。
密林地帯へと足を踏み入れた二人の猟人の許にも、ランポスの姿が見受けられた。
密林地帯は木が生い茂り、視界は良好とは言えない。足許は草叢で覆われ、猟人でなければ躓く事は必至だろう。太陽の光が遮られる程に樹木が枝葉を伸ばしている訳ではないが、立ち回りに気を遣う場所だった。
「そう言えば、エルはベルの妹なんだよな」
ランポスの様子を窺いながら、フォアンがふと、関係無い事を口に出す。
エルはきょとん、とした様子でレックスシリーズを身に纏った少年へ視線を投げる。
「ええ、そうですけれど……何か?」
「いや、前にベルから、住んでた村の唯一の生存者って話を聞いたからさ。唯二だったんだな、って思ってさ」
あまり触れてはいけない部分、と言う面を気にせず尋ねる辺り、フォアンは空気を読めない人物なのだろうか。エルは眉根を下げて、悄然とした表情を移ろわせたが、すぐに曖昧な苦笑を滲ませた。
「……お姉様が、そんな話をされたのですか……」
「もしかして、ベルの話は何か間違ってるのか?」
「――いいえ、合っていますわ。……わたくしはその時、村にいなかったんですの。当時からわたくしは猟人になりたいと思っていて、もうその時には村を出て、街で猟人として生活していましたわ。……お姉様はその頃のわたくしを見て、猟人になりたいって言い出したんだと思いますわ……」
幼い頃に故郷の村を滅ぼしたモンスターを、ベルは憎んでいない。村が助けを乞ったのに、報酬が足りないからと言って断った猟人ですら、憎悪の対象ではない。彼女は、お金が足りなかったために村を救えなかったと思い込んだ。故に、お金さえあれば猟人を雇える――村を救う事が出来ると信じ、手っ取り早くお金を稼ぐために猟人になった。そういう経歴を、彼女は過去にフォアンとザレアの前で話していた。
唯一の家族であるエルを頼る事も無く、ただ自身の力で危機にある村を救うために、猟人として狩猟を続け、金を稼ぎ続ける……その生き方を否定する事など、誰が出来るだろう。フォアンには出来なかった。
「それから、お姉様とは偶にしか逢えなくなりましたわ。猟人として一人前になるために、ガムシャラに狩猟を行っていたように思いますの。……でも、今のお姉様を見ていると、少し変わったように思いますわ」
ただ報酬を求めるような狩猟ではなく、仲間を意識した狩猟――それを彼女は、誰に言われるでも無く実践しているように、エルには映っていた。
フォアンは草叢から這い出て、エルに微笑を投げかける。不意の微笑に、エルは心臓が高鳴るのを感じた。
「ベルの事、よく見てるんだな」
「あっ、う、いえそのっ、そんな気がしただけですわっ」
――不覚ですわ! フォアン様が、格好良く見えるなんて……フォアン様は、お姉様の……かも知れませんのに!
勝手に妄想を膨らませるエル。フォアンはそんな想いを露知らず、防具で音を立てながらランポスへと走って行く。
「念のため、狩っておいて損は無いだろう。――エル、ささっと片づけよう」
「あ、はいっ。――って、わたくしがリーダーですのにぃっ!」
疾風の如く密林を駆け抜けて行くフォアン。ランポスがその姿に気づいた時には距離が殆ど殺されていた。
背中に吊っていた斧剣を引き抜く――と同時に白刃を叩き下ろし、ランポスの体を刹那に両断する。――抜刀斬りで即死したランポスの屍骸が、鮮血を撒き散らして無惨に転がる。
――速い、とエルは素直に感じた。大剣使いは得物の自重のせいで動きが鈍く、攻撃モーション一つ取っても、機敏性の高い鳥竜種には当たらない事が多い。そのため、抜刀――抜き様に振り下ろす速度が速くなければ相手に翻弄される事が有る。それを理解した上でフォアンは大剣を使っているのだろう。素早い抜刀、そして攻撃が当たった事を確認すると即座に武器を背中に戻す。抜刀したまま動こうとしても普通に歩くよりも動きが鈍くなってしまうのを防ぐために、大剣使いはちょくちょく武器を仕舞い直す。無理に抜刀したまま移動しようとしても、動きが鈍いあまり、相手の動きに追従できないからだ。
とは言え、大剣使いならそんな事は朝飯前に出来なければ、峻厳な猟人の世界を生き抜く事は出来まい。取り敢えず基礎に関してのみ言えば、フォアンは及第点だった。
ランポスは残り二頭――エルも負けじと走り込み、一頭目掛けて片手剣――毒の細剣を抜き放つ。腰に据えた細剣を抜き様に跳び上がり、抜いた慣性を使って斬りかかる。
「てぇやっ!」と言う勇ましいと言うよりは寧ろ可愛い気勢を上げ、ランポスの首から胴に掛けて裂傷を走らせる。
「ギュァッ!」と呻き声を発し、ランポスは鱗を幾つか剥がされながら踏鞴を踏む。併し片手剣と大剣では攻撃力に差が有り過ぎるため、大剣のように一撃でモンスターを屠る事は叶わない。故に――片手剣は手数が必要なのだ。
ランポスが踏鞴を踏んだのを見計らい、「せぇいっ!」と更に振り下ろした細剣を横に走らせ、ランポスの首に真一文字の裂傷を叩き込む。
鮮血が舞うが、それを躱すようにエルはその場で更に踏み込み、踏み込んだ右足を軸に自転――体を回転させて、その反動を利用してランポスの頭を斬りかかる。――回転斬りと呼ばれる技に繋いだエルの攻撃は見事にヒットし、ランポスは「グェエッ」と断末魔を上げながら仰け反るようにして倒れ込む。
鮮やかな動きに、フォアンは思わず拍手を送りたくなったが、残りの一匹を片づける事を優先した。瞬く間に仲間が殺され、躊躇を覚えていたランポスは二人の猟人を交互に見やってから、その場で足踏みを始める。――逃げる気か。そう気づいたフォアンが、素早い動きでランポスの許へ駆け込み、――抜刀斬りを叩き込む。
刹那に両断されたランポスは、最早動く事など有り得なかった。何とかエリア1のランポスは狩り終えたようだ。
「流石ですわ、フォアン様。大剣使いに恥じぬ猟人とお見受け致しますわ」
細剣を腰に仕舞い直して、朗らかな笑みで駆け寄って来るエル。フォアンも斧剣を背中に仕舞うと、応じるように微笑を浮かべ返した。
「エルも凄かったよ。俺から見ても滑らかな動きだった。流石に小さい頃から猟人やってる奴は、何か違うよ」
「そ、そうですか? ……えへへ」
若干頬を赤らめて俯くエル。それに気づいていない様子で辺りを見回すフォアン。
「ランポスの数が少ないように感じるな。たった三頭しか狩っていないのに増える様子は無い。……狩るべきじゃなかったかな?」
難しい顔で顎に指を添えて考え込むフォアン。エルはふるふるっと首を振って、それを否定した。
「このエリアも、リオレイアが来る可能性が有りますから、念には念を入れておくべきですわ。減り過ぎるのは確かに自然には良くない事ですけれど、何れまた増えますわよ。ランポスのような鳥竜種は、繁殖力が強いですから」
「そっか。――よし、もう少し探査を続けようか、エル」
「はいですわ! ……って、だからわたくしがリーダーなのですわぁぁぁぁ!」
密林にエルの叫び声が木霊する。

【後書】
フォアン君がリーダーシップ出し過ぎてエルちゃんがたじたじな奴です(笑)。
ところでベルの過去に繋がるエルちゃんの設定ですが、初めからこの設定だった訳ではなく、後付けと言えば後付けなのですが、ベルの過去をより正確にするために用意した設定でも有ります。
2章を綴り終えた辺りから、3章を綴るに当たってベルの過去をどう掘り下げようか、と考えた一つの答えがこれです。あと確かこの時点で最終章の構想をぼんやり練っていた気がします。こんな展開でこの物語を締め括らせようか~と言った感じのふわふわネタですがw
実際綴っていく過程でそういうふわふわネタは姿形を変えて「お、お前誰や!?」って形状となって物語に浮かび上がるんですけどね!w
さてさて次回、第3章第7話にして第34話!「リオレイア?」…ん? と言うタイトルですが果たして! 次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    フォアンくんが回を追うごとにかっこよくなってるような気がするなぁw
    これじゃエルちゃんでなくてもドキドキするぜv

    そして後書!
    なるほどねぇーこんな感じで創作されていくんだねー
    感心しきりでございます。

    今回も楽しませて頂きました!
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      フォアン君カッコよくなってってますか!w イケメン度が隠し切れないんですかね…! これが主人公補正って奴ですか…!(ん?
      ドキドキして頂けたのなら本望ですぞう! カッコいいと言われるだけでも作者がドキドキするのに、そんな事言われたらモダモダしちゃいますよう!w

      で、後書!
      ですです! わたくしはこんな風に創作しているんですの! 他の創作者は存じ上げませんし、たぶんわたくしのスタイルって万人向けじゃないと思うんです!(突然の中二病)
      感心しきりだなんて…! 有り難う御座います…! こういう話もついついしてしまいたくなっちゃうんですよ! 特にとみちゃんがこういう反応を返してくれると話したくて仕方なくなっちゃうんですよね!(笑)

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もお楽しみに~♪

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