2018年5月26日土曜日

【教えて!狩人先輩!】第18話 ただいま! ベースキャンプ!【モンハン二次小説】

■タイトル
教えて!狩人先輩!

■あらすじ
新米なのに先輩ハンターにされた少女のドタバタコメディ奮闘記。
※注意※2016/05/24に掲載された文章の再掲です。本文と後書が当時そのままになっております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【pixiv】、Fantia【日逆孝介の創作空間】、【ハーメルン】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
R15 残酷な描写 モンスターハンターダブルクロス MHXX ライトノベル コメディ

■第18話

Fantia【日逆孝介の創作空間】https://fantia.jp/posts/9192
Pixiv■http://www.pixiv.net/series.php?id=635565
ハーメルン■https://syosetu.org/novel/69877/

第18話 ただいま! ベースキャンプ!


「先輩! どうしたんだいベースキャンプに運ばれてくるなんて!」

 ベースキャンプに戻ってきたアウグが見たのは、ヒツと二人でお茶をしているフェヴラの姿だった。
「いやいやお前こそ何してるのかな!? 今狩猟中だったよね!? あとなんでヒツがここにいるの!? ここ狩場だったよね!?」ベースキャンプに到着早々ツッコミで喉が嗄れそうになっているアウグ。
「何って、お茶をしてるのさ! 先輩もどうだい?」と言ってカップを掲げるフェヴラ。
「どうだい? じゃねえよ!! 今狩猟中!! 今二人戦ってる最中! ハントナウ! ハントナウ!!」雪山の頂上を指差して吼え立てるアウグ。
「お嬢様のお茶の誘いを無碍に断るとは……貴女様には人間としての誇りは無いのですか?」軽蔑した眼差しでアウグを捉えるヒツ。
「おかしいよね!? 俺正しい事しか言ってないよね!? 何で人権を侵害されるレヴェルで罵倒されなくちゃいけないの!? つーか何でハンターじゃないお前がここにいるんだジジイィィィィッッ!!」飛び回し蹴りをヒツの首筋にクリティカルヒットさせるアウグ。
「わたくしは初めからおりましたぞ?」首が変な方向に曲がったまま応じるヒツ。「毛も生えてないような新米……おほん、まだ初心者であるお嬢様を野蛮な下等生物……おほん、まだ知り合って間もないハンターに預けておけないくらいには、わたくしは心配性なのです」
「お前咳払いしたら何言っても許されると思ってないか? 本音全部ダダ漏れな事本当に気づいてないのか? あと首ごめんな? 見た感じすげー怖いからそれ治してから喋ろうな?」そっとヒツの首を治しながら心配そうに話しかけるアウグ。
「狩場まで付いてきた一般人にすら温情を掛けるなんて……! 先輩はハンターの鑑を通り越して、全人類の頂点に座すレヴェルのお人好しだね!」キラキラした瞳でアウグを捉えるフェヴラ。
「お、おう、何でそこで敢えてお人好しって単語使った? 褒められてる感じがしねーんだけど」複雑な表情のアウグ。「ってそんな事はどうでもいいんだよ! 早く狩猟に戻るぞ! 二人が危険に晒されてるんだから!」
「お嬢様をもう一度危険な目に遭わせるなど言語道断です! お嬢様は今から狩猟完遂までベースキャンプでお茶をしておりますので、どうかアウグ様お一人でお戻りください」スッとフェヴラの前に立ち塞がるヒツ。
「あん? 何言ってんだジジイてめえ」ヒツの胸倉を掴みあげるアウグ。「確かに狩場は危険だし、狩猟は死と紙一重だ。だがな、それを承知で対処するのがハンターだろうが! それとな、お前の意見なんざ聞いてねえ、俺はお嬢と話しをしてんだ!!」
「アウグ様、わたくしの話を憶えておりますか」胸倉を掴まれたまま、睨み返すヒツ。「お嬢様にはハンターを諦めて頂きたいのです。それは何も、怪我をして物理的に諦めて頂く訳ではありません。今、お嬢様は一度死の恐怖を体験しました。ならばもう、これ以上の経験は不要です。このままリタイアさせて頂きますので、これ以上は結構です。分かりますか? これ以上はお節介だと申し上げているのです」
「やっと本性が出たなクソ執事……!」ギリギリと歯を食い縛ってヒツを睨みあげるアウグ。「だがな、俺ももう一度だけ言うぞ? 俺はてめえに訊いてるんじゃねえ、お嬢と話してんだ! てめえは黙ってろ!」ヒツを突き放し、お茶をしているフェヴラの前に立つアウグ。「お嬢、お前はこれでいいと思ってるのか? お前の意見を聞かせろ。お前がもう狩猟は嫌だって言うのなら、俺は止めやしねえよ。俺はお前の意見を尊重するぜ」
「……」フェヴラはカップを即席のテーブルに戻し、神妙な面持ちで視線を下向かせる。「……僕は、……僕じゃ、きっと皆の役には立てないよ」ぽつりと漏れた独白は、哀愁に包まれていた。「皆の足を引っ張るだけなら、ハンターなんて辞めた方が……」
「それがお前の意志か? お前は、俺達の足を引っ張るのが嫌だから、ハンターを辞めたいのか?」真剣な表情でフェヴラを見据えるアウグ。「もしそれが本当なら、そうだな、お前はハンターなんて辞めちまった方がいいな」
「アウグ様、口が過ぎますぞ」剣呑な表情で割って入ろうとするヒツ。「お嬢様は今、傷心の身。言葉を選んで頂きたい」
「俺は止めないって言っただろ。お嬢がハンターを辞めたいって言うなら、そうか辞めちまえって言う。お嬢が俺達の足を引っ張ってでもハンターを続けたいって言うなら、全力でサポートする。それだけの話だ」フェヴラを見据えたまま、硬い表情を崩さないアウグ。「本当にお前は、ハンターを辞めたいんだな?」
「……っ」唇を噛み、アウグを見上げるフェヴラ。「だって、僕がいても……っ、皆の足を引っ張る事しか……っ」
「皆の足を引っ張る? 上等だ、だったら俺達がお嬢を引き摺りあげてやるだけだ」ニッと笑いかけるアウグ。「新米のくせに、そんな小せえ事、気にしてんじゃねえよ。先輩ってのはな、新米のドジをフォローするためにいるもんだ。……それで? お前の意志はどうなんだ? ハンターを辞めたいのか、続けたいのか」
 アウグは、問いかけ続ける。フェヴラ自身が導き出す答を待つ。それが別れだとしても構いはしないのだろう。己の意志でハンターになりたいと願ったのなら、続けるのも辞めるのも、彼女の意志で選ばせる。
 一人のハンターとして認めているからこそ、本人の意志を何より優先し、尊重する。アウグの挑戦的な笑顔から、その意志を汲み取るフェヴラ。
「……僕は、」グッと腹に力を込め、フェヴラは顔を上げた。「――僕は、ハンターを続けたい。狩猟を続行したい! だから先輩、僕に力を貸しておくれよ!」
「お嬢様!?」驚愕に顔を歪めるヒツ。「アウグ様、話が違いますぞ! これでは――」
「よく言ったお嬢、それでこそ一端のハンターってもんだ!」ポン、とフェヴラの頭を叩くアウグ。その視線がヒツに向く。「話が違うだぁ? 俺は“ハンターとして活動する事の難しさを学ばせて”、“ハンターとして狩場を体験させて”、“ハンターとして実績を積ませた”だけだぜ?」意地悪な笑みを覗かせる。
「なん……ッ!」ヒツの表情が不快に歪む。「……契約不履行と見做し、貴女様にはマルヴェシア家より厳正なる処罰を与えますぞ、宜しいのですな……ッ?」
「好きにしろよ。俺は一人のハンターとして、お嬢に大切な事を教えたまでだ。さ、行こうぜお嬢! 二人が待ってる!」ポン、とフェヴラの肩を叩いてベースキャンプを後にしようと駆け出すアウグ。
「分かったよ! って、あれ? 先輩、何か来たよ!」
 フェヴラの指差す先には、ガラガラと担架を担いでやってくる四匹のアイルーの姿。
 そして担架の上には、オクトーとエネロの姿が有った。
「先輩! 自分、無事に下山に成功したっす!」担架から吹き飛ばされて転がされた瞬間立ち上がってアウグの前で挙手するオクトー。
「モドリ玉を使わずにベースキャンプに戻れるなんて、便利なネコ達ですね……私が眠っている間にあんな事やこんな事をされてると考えると、あぁんっ、私、燃えてきちゃう……っ!」担架から降ろされた後、地べたでもんどりうっているエネロ。
「……んん?」仏のような顔のアウグ。「お前ら、もしかして……?」
「先輩とお嬢がいなくなって寂しかったから、この笛を吹いたんす!」と言ってオクトーが取り出したのはアイルーの形を模した笛。「そしたらアイルーが現れて、『緊急搬送するハンターがいないニャ!』って言ったから、『暇なら自分達をベースキャンプに連れてって欲しいっす!』って言ったんす!」
「そしたら『分かったニャ! 代金は二人分で狩猟報酬全額プラス一回分頂くニャ!』とよく分からない事を言って、ここまで運んでくれたんです……賢いアイルー達でしたよ、ウフフ」意味深な笑顔を覗かせるエネロ。
「……」昇天しそうな顔になっているアウグ。
「どうしたんだい先輩? さぁ狩猟に戻ろうよ!」そう言ってアウグの手を引っ張って山頂を目指そうとするフェヴラ。
「いや、戻る必要は無い……」ガクリ、とひざまずくアウグ。「クエスト……失敗だ……」
 るー、と涙を流すアウグを見て、ヒツが「よっしゃー! ザマァザマァ!」とガッツポーズをしたのだが、その後アウグにボコボコに殴られたのは、また別の話。

【後書】
 クエスト……失敗だ……(白目
 と言う訳でモンハン二次小説を綴るに当たって描写したかったシーンをまた一つ消化した次第。どんな熟達のハンターさんでも一度は確実に経験した事が有るであろうクエスト失敗! 更に協力プレイの時に稀に起こる4死を綴れて満足であります!
 いつの間にか第2シーズンも折り返し! 次回もお楽しみにーっ!

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