2018年5月9日水曜日

【滅びの王】5頁■神門練磨の書1『恐怖の大王』【オリジナル小説】

■タイトル
滅びの王

■あらすじ
一九九九年夏。或る予言者が告げた世界の滅亡は訪れなかった。併しその予言は外れてはいなかった。この世ではない、夢の中に存在する異世界で確かに生まれていた! 恐怖の大王――《滅びの王》神門練磨の不思議な旅が今、始まる!
※注意※2007/05/17に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

■第5話

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/

5頁■神門練磨の書1『恐怖の大王』


 暗闇。
 何も見えない。頭が痛い……ような気がする。立っているような、寝ているような、よく分からない感覚で、ただ頭がボーっとする。何故こんな状態になっているのか思い出せなくて、思い出すのも億劫で、ただぼんやりとしていた。
 ――眼を開けよう、と言う感覚が戻ってきて、少しずつ瞼を上げていく。光源となるモノが近くに無いからか、辺りはやけに薄暗く感じられた。
 ……って、あれ? オレさっき崇華と歩いてたんじゃ……それも、朝だったよな……?
 思いつつ、少しぼんやりする感覚と戦いながら、瞼を全開にしてみる。
 そこには見た事の無い光景が広がっていた。
「…………………………どこだ、ここ……」
 さぁ――と一陣の風が吹き、短いオレの髪を浚っていく。
 オレが見る限り、そこはオレが住んでいる山倉(やまくら)町に在る場所とは思えなかった。と言うか、こんな場所が日本に在るとは思えなかった。
 草原。果てし無く続いているようにも見えるが、きっと辺りを包む闇のせいで見通しが利かないから、そんな風に感じてしまうのかも知れない。ただ、完全な闇に包まれている訳じゃなくて、空には大きなお月様やお星様が顔を出しているお陰で、さっきと矛盾しているような事を言うが、遠くまで見通せる。遠くと言っても、距離で言えば数十メートル先までだ。それ以上は夜の帳が降りていてハッキリとは確認できない。草原と言っても草の高さは膝下程度で、座っているオレに潰されている奴以外を見ても、伸び放題という訳じゃなかった。誰かが手入れをしているという風にも見えなかったし、きっと自然ではこの位しか伸びないのだろうと勝手に推測。地面には起伏が在るらしく、高い所と低い所が幾つか在る。もしかしたらこういう場所は『草原』ではなく『丘』と呼ぶべきかも知れない。
 立ち上がって辺りに視線を送ると、どこにも街と思しき姿は見当たらない。と言うか、人っ子一人見当たらない。どこか郊外だとは思うのだが……オレは夜になるまでこんな所で寝ていたのか? 崇華はどうしたんだ? 誰がここまで運んだんだ? などと、色んな疑問点が浮かび上がってくるんだけど、それに応えてくれるような人は誰もいなくて……妙に心細い。
「――っ」
 近くで野鳥らしき鳴き声が聞こえて、思わず身を竦ませる。うわ、かっこわりぃ……自分の声が恥ずかしく思えて、でも見ている奴が誰もいない事を思い出して、更に溜め息を吐いて自己嫌悪。何やってんだオレ……
「てか……ここはどこなんだ、ホント……」
 取り敢えず、落ち着こう。記憶を辿れば、こうなるまでの経緯を思い出せる筈だ。そうだろ、神門(ごうど)練磨!
 思って、辺りに視線を配りながら、オレは移動を始める。草原と言っても背の低い草ばかりだったから移動には困らなかった。草を掻き分けて進むようなジャングルじゃなくて良かった……などと、よく分からない喜びを噛み締めつつ、一応丘のように少し高い所を目指して歩いてみる。その時、気づく。自分の身形。
 暗くて色はハッキリしないが、恐らく茶色いジャケットを羽織っている。その下にシャツ。ズボンはジーパンのようなもので、妙に足にしっくりくる。靴もいつも使っているスニーカーのようだ。さっきまでの自分の格好と微妙に食い違う部分が有るが、ジャケットを弄くりながら歩いていて、更に気づいた。
「これ……オレのお気にじゃん」
 遠出用……まあ何か大事な用の時とか、そういう時に着るために洋服タンスに寝かせていた奴だ! 何で、今着てんだ……? サッパリ分からない。
 ズボンは、まあ気を失う前に着ていた物と同じだから、少し安心した。気を失っている間に誰かに着替えさせられたのではと不安になったのだ。靴も同じだから、きっとこのジャケットはシャツ一枚じゃ冷えるからと、誰かが着せてくれたのだろう。……誰が?
「てか、着せるだけで、こんな所に放置って……そりゃ無いだろ」
 ……悲しきかな、一人ツッコミ。
 それに、冷えるって言っても八月の頭だぞ? そんなに寒くない。寧ろ熱帯夜が続いているんだ、これは嫌がらせか何かか?
 オレは誰か分からない第三者に殺意を覚えながらも、それが結局今の時点ではどうしようもない事が分かっていたから、渋々丘の上まで歩を進めた。
「…………うぉー……」
 妙に涼やかな風を受けながら丘の頂上まで上り詰めると、ちょっと壮観だった。
 空に太陽が無いから方角がどうなっているのかよく分からないけれど、そこから見える景色は森か、遠くまで続く平野か、そのどちらかだった。森は鬱蒼としているようで、とても入る気にはならない。入って戻って来れなくなったらメチャクチャ困る。ここで救助が来るのを待つべきだろうか? ……てか、こんな所まで救助は来るんだろうか? 
 森の反対側。その方角に視線を転じると、遠くまで草原が続いていて、やけに見通しが良い気がする。闇に眼が慣れてきたからだろうか、さっきまでの闇もあまり感じなくなって遠くまで視界が利く。だからと言って町や人の姿が見える訳でもなく、どうしようもなく途方に暮れて、思わず沈吟してしまう。
「おいおい、どうすんだよこれ……」
 どうしよう……時刻的にもう絶対に夜だ……こんなに遅く帰ったら、きっと母さんにも父さんにもキツーい説教されるんだろうな……もしかして警察に捜索願とか出されてるかも知れない……いや、もしそうなら警察はここまで助けに来てくれるんだろうか……? でも、どう考えてもここ、日本じゃないよな? 海外まで警察って追って来れるのか……? オレ、売られちゃったのか? 男なのに? 子供だから……奴隷?
「あー! 何なんだよ一体! 何が何故にいつどうしてこうなっちまったんだァァァァ!」
 絶叫すると、辺りの空気が揺れたような錯覚を感じた。
 ざわ……と森の木々が呼応したような感じがして、不気味な気持ちを懐き、思わず叫んだ事を悔やみそうになった。
「……どうすりゃいいんだ、一体……」
 どうしようもなく途方に暮れた感が、胸の中で渦巻いた。

【後書】
 突然始まるファンタジー!
 と言う訳で訳も判らず大草原に投げ出された練磨くんの明日はどっちだ!?
 いよいよ始まるファンタジーな物語、ぜひぜひ次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    始まりましたファンタジーv
    でも…あれ…いいとこで…わりと生殺しっぽくないです?w

    これあれだ、よくTV局がやる「続きはCMのあとで!」
    みたいなやつだw
    気になって眠れないぞ!明日はどっちだ!!

    今回も楽しませて頂きました!
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      遂に始まりましたよ~!
      言われてみれば確かに生殺し感、有る…!(笑)

      TV曲がやる一番もどかしい奴やらかしてしまいましたね!!w
      明日! 明日には続きが更新されますのでお待ちくだされ~!!

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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