2018年5月4日金曜日

【滅びの王】4頁■神門練磨の書1『恐怖の大王』【オリジナル小説】

■タイトル
滅びの王

■あらすじ
一九九九年夏。或る予言者が告げた世界の滅亡は訪れなかった。併しその予言は外れてはいなかった。この世ではない、夢の中に存在する異世界で確かに生まれていた! 恐怖の大王――《滅びの王》神門練磨の不思議な旅が今、始まる!
※注意※2007/05/17に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

■第4話

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/

4頁■神門練磨の書1『恐怖の大王』


図書館に行くのはこれが初めてな訳が無い。
宿題……特に一人でどうしても解けないような問題が出された時とか、全員で課題を仕上げるようなものが出された時とかによく利用していたのだ。館内は夏だと冷房が利いていて涼しいし、冬は冬で暖房が利いて暖かい。いつ行っても快適な温度で、尚且つ静かに勉強が出来るから、色んな人が利用している。その中の一人と言う訳だ。
その道中、崇華と歩いていて、不意に夢の話題を振った。
「そう言えば崇華。お前、昨日はどんな夢見たんだ?」
「え?」
ノストラさんが出てくる夢を見るのは別に珍しい事じゃないと思うが、妙にタイミングが良かった気がしないでもない。七月が終わる昨日から、今日と言う八月に亘って見た夢が『七月に恐怖の大王が現れ、世界が滅びる』だと、逆に何か天啓とでも言えるような、そんな存在を垣間見たような……錯覚だろうが、感じてしまうのだ。
それに、その夢に関してはオレも個人的に疑問に思う事が有る。
「えとえと……大した事は無いんだけどねっ。……夢の中の人が、言ってたの。今日、世界を滅ぼす何かが、現れるって」
「何かっつってもな……でも、タイミングが良過ぎるとは思わねえか?」
オレが疑念を出すと、崇華は顎に手を当てて考え込むように唸った。
「でもでも、わたしの夢はちょっと違うから……」
「ちょっと違う……?」
「あ、何でもないよ、何でも! そうだね、タイミングは凄く良いよねぇ」
妙な引っ掛かりを覚えたけど、まあそこはオレの疑念を払拭するべく、流す事にする。
「だろ? ノストラさんの話じゃ、本当なら昨日、この世界は滅んでいたんだろ? でも、今日は至って平和で、オレも崇華も、こうして何事も無く生きてる」
「うんうん」
「でも、お前は夢で見たんだろ? 『今日、世界は滅びる』って」
「うん、うん」
「仮にお前の夢……ノストラさんが正しいとして、世界が滅びていないって事は、結局、恐怖の大王はどうなったんだ?」
自分で言うのも何だが、アホな会話だと思う。
そもそも仮定が既に間違っているのだ。あのペテン師は始めから予言なんてしていない。有りもしない嘘を言っただけで、それを信じるという時点でそれは馬鹿過ぎる。『恐怖の大王』って何だよ。何がどう大王なのか分からないし、そいつは一体どうやって世界を滅ぼすって言うんだ? オレにはサッパリ分からない。
オレが妙に投げ遣りに尋ねると、崇華は何故か笑い掛けてきた。
「きっと、大王さんは寝坊でもしちゃったんじゃないかなぁ?」
「……寝坊、ねぇ」
ハン、と鼻であしらってやったが、仮にそうだとしたら、まだ世界は滅亡の危機に有る訳だ。だけど、そんな与太話を鵜呑みにする程、年齢を詐称するつもりは無い。大人とまではいかなくても、そんな話を信じられる程、もう子供じゃないとオレは言いたい。
……でも、偶然が重なった時、そこには何らかの意図が働いているような気がしてならないのだ。
二つが重なると言う偶然。一つが、七月の終わりに見た、ノストラさんの予言の事が出てきた崇華の夢。そしてもう一つが…… 
「……実はな、崇華。オレも、夢を見たんだよ」
「えぇ? 正夢だったの?」
「いやいや、何も言ってねえのに正夢も逆夢もねえだろ。……予言の夢だよ」
予言。大きな教会のような場所にいた少女。託宣がどうとか、予言がどうとか言っていた、あの夢だ。あれにも、あの夢にも『恐怖の大王』と訳されてもおかしくない単語が出ていた。

『滅びの王』

女の子は、確かにそう言った。あれも、考えてみると『恐怖の大王』を指す言葉なんじゃないかと、崇華の話を聞いていて気づいたのだ。
「じゃあ、練磨も恐怖の大王が来るって、そんな夢を見たの?」
「ああ。まあ、違うかも知れねえけどな」
確証が無いとは言え、二人が似たような夢を、それも同日に見ていたとするならば、そこには何らかの運命が働いているように感じるのだ。……単純にゲームのやり過ぎなんだろうけど、そんな風に考えたって良いじゃないか。楽しい事も無い学校生活から解き放たれた中学最後の夏休みなんだ、偶にはそういう事を考えて少し非現実の世界に身を置きたくなる時だって有る。
……それって逃避って言うのか? い、いや、きっと違う。そんな簡単な理屈で捨て置かれたくない。
「不思議だなぁ……わたしの夢と被るなんて、有り得ないのにぃ……」
そんなオレの苦悩も知らずに、妙に納得していないような顔で崇華が呟きを漏らした。
オレはよく聞いていなかったから何と言ったか分からなかったが、崇華を見てオレの発言に納得していない事だけは察した。
「ンだよ、オレが嘘を吐いてるとでも言いてぇのか?」
「ちっ、違うよぅ。ただ、不思議だなぁ、って……」
「……ま、不思議っちゃ不思議なんだけどな」
ちょっと冷めた、突き放すような視線を向けてから、オレもその点に関して頷く。
それに時期が時期だ。ノストラさんの予言当日にそんな夢を見るもんだから、こうして不思議だなぁと思ってしまう。これが別に普通の日だったなら、「オレ達、夢の中で繋がってたんじゃねえか?」とか、そんな風に盛り上がれるだろうけど、今日はまた別だ。それに、崇華と同じ夢ってのも、何か引っ掛かる。どうせなら、もっと可愛い奴と…… 
「……練磨ぁ? 何か今、わたしを侮辱しなかったぁ~?」
「しっ、してねえよ!」
お前は人の心が読めるのかッ? と、何故か動揺してしまうオレを、崇華は、「ふ~ん」とジト目で見やり、それから素知らぬ顔に戻った。……ううむ、間儀崇華。侮り難し。
「でもでも、わたしと一緒の夢を見るなんて……きっとこれって運命だよねっ?」
急に明るくなって目を輝かせ始める崇華。……まあ、そうだな。相手が崇華だったってだけで、これは不思議体験に違いない。
「でもよぉ、よくよく考えてみるとさ、別にそこまで不思議って訳じゃなくね? 同じ夢見るなんて、考えてみればすげー確率は低いかもだけど、有り得ない訳じゃねえだろ? それに、崇華はよく夢見たらオレに報告するじゃん。てか、毎日だけどな」
確か、昨日の夢の報告は「大変だよ! 台風六三二号が直撃して、農作物が大被害だよ!」とか言ってたな。ニュースには台風の「た」の字も無いってのに。昨日も平和な一日だった筈だ。一日中崇華の暇潰しに付き合ってた位だからな。
「だから、偶には重なる事くらい、実は有るんじゃね?」
「えぇ~? そんな事無いよぅ。きっと、わたしと練磨は、夢の中で繋がってるんだよぅ!」
……乙女チックな結論有り難う。別に嬉しくも悲しくも無いけどな。
まあ百歩譲って繋がっていたとして、それでどうだと言うのだろう? 夢の中で繋がっていたら、夢の中で崇華と出逢えるとか、そういう事が出来るようになるのだろうか? ……有り得ない。夢の中じゃ思うように動けないし、何より自分の思い通りに場面を動かす事すら難しいと言うのに、「崇華と逢う」なんて高度な真似は、きっとオレには出来ない。
そう考えると、夢の中で繋がっていたとしても、結局意味は無いんじゃないかとオレは思った。
「崇華と繋がってもなぁ……」
「何よぅ? わたしじゃダメなの、練磨ぁ~?」
プリプリ怒り出す崇華。とっても不満そうだ。何が不満なのかオレには分からないけれど。
「じゃあ崇華は何か有るのか? オレと夢の中で繋がってて、何が出来るってんだよ?」
「えぇ? えとえと……ほらっ、お話し出来るよ、お話し!」
「……今ここで嫌と言う程してるじゃんかよ。夢の中でまで喋り続ける程、話題多く持ってねえぞ、オレ……」
夏休みに入ってからも、ほぼ毎日崇華と逢ってる訳だから、この調子でいけば一日中、それも夢の中でまで喋り続ける事になる。いい加減喉が嗄れるぞオレ……大体、何をそんなに話す事が有る? 疲れるだけじゃないか?
そう思っているのはどうやらオレだけのようで、崇華は首をフルフルと仔犬のように振った。
「話題とか、そんなのはいいの! ただ、お喋りするだけで楽しいよぅ♪」
「そぉかぁ?」
そういうモンだろうか? きっと、夢も後半になったら、どーでもいい話になって、いつの間にか朝、って感じで、何だか妙に疲れそうなシーンを連想したが……崇華の頭の中では違うらしい。……もしかして、オレの考え方がおかしいんだろうか?
う~ん、とちょっと自分の考えがおかしいかどうか考えながら空を見上げると、天気予報通り雲一つ無い蒼穹が広がっていた。ふと、自分の考えてる事を妙にアホらしく感じて、視線を地上に戻そうとして、――――
「あ。練磨、危な――」
ゴッ、と頭に衝撃が走って、視界に蒼天が戻ってきて――そのまま暗転した。

【後書】
「夢の中で繋がっている」ってくだり、わたくしとってもロマンチックだと思うんだけどなぁ練磨くん??
ただ練磨くんの言う通り、ドチャクソ疲れそうな気もします(笑)。
当時は何気無く綴っていたこのくだりですけれど、わたくしなりにこの「夢の中」って、現代で言う所の「ネトゲ」や「インターネット」に分類されるのではないかなーって。そう考えると、疲れるうんたんって感想は適確ではないのですけどね。
そんなこったで突然暗転してしまった練磨くんですが、次回からいよいよファンタジー要素が現出します。お楽しみに!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    「夢の中で繋がっている」なんてほんと素敵じゃないですかーv
    ちょっと素敵な言い合いからの暗転、気になりますぞぉ~

    繋がる手段がいっぱい増えてる現代ですが、
    以前に比べるとちょっと希薄になった感じがしますね。
    そんな中、先生には毎度大変お世話になっております。
    これかもよろしくお願いいたしますm(_ _)m

    いよいよファンタジー!

    今回も楽しませて頂きました!
    次回も楽しみにしてますよーvv


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    1. 感想有り難う御座います~!

      「夢の中で繋がっている」って素敵ですよね!w 憧れるシチュエーションなんですが、練磨くん…裏山!w
      素敵な言い合いからの暗転…ぜひぜひ次回を楽しみにお待ち頂けたら…!

      確かに繋がる手段が増えた事によって対照的に関係が希薄になっていってると言うのは、何と無く分かる気がします。
      無理にその繋がるコンテンツに拘泥しなくても、他のコンテンツで繋がればいいか~みたいな、或る種のおざなりな感覚でも芽生えているのかも知れませぬな~(´ω`)
      わたくしも! わたくしもとみちゃんにはドチャクソお世話になっておりますので!! ぜひ今後とも宜しくお願い致します!!(*- -)(*_ _)ペコリ

      遂に始まるファンタジー! わたくしの神髄を見よーっ♪

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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