2018年5月2日水曜日

【滅びの王】3頁■神門練磨の書1『恐怖の大王』【オリジナル小説】

■タイトル
滅びの王

■あらすじ
一九九九年夏。或る予言者が告げた世界の滅亡は訪れなかった。併しその予言は外れてはいなかった。この世ではない、夢の中に存在する異世界で確かに生まれていた! 恐怖の大王――《滅びの王》神門練磨の不思議な旅が今、始まる!
※注意※2007/05/17に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

■第4話

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/

3頁■神門練磨の書1『恐怖の大王』


「おかしいなぁ~。不思議だなぁ~」
 朝飯を食べていないそうなので、仕方なく戸棚から食パンを二枚ほど取り出すと、調理せずに皿の上に載せてもてなしてやった。生の食パンを崇華は文句も言わずに、そして何も塗らずに口に運んでいた。その速度は限りなく遅い。はむはむと本当に咀嚼しているのか怪しいが、それでも唾液で融けていくだろうから、食べている事には違いないんだけど…… 
「不思議なのはお前の頭だ、崇華。今時そんなモン信じてる奴なんて、お前みたいなモンだけだぞ?」
 ノストラさんの予言は、今年の七月に恐怖の大王が降臨して世界が滅びると言うものだったが、実際に考えてみて、そんな事有り得る筈が無いのだ。そんな非現実、誰が信じるだろう。……まあ、目の前にそれを信じて、更に馬鹿な事を言ってる奴はいるんだけど…… 
 間儀(まぎ)崇華。オレと同じ学校、同じクラス、そして小さい頃からの幼馴染である。今も昔も、ちょっと頭が足りない感じは同じで、成長したのは体だけ……と言っても女性的な成長はしてなくて、単に身長が少し伸びた位で、それでもオレよりも小柄なんだけど、昔よりは成長したんじゃないかと思う。
 そして奇異なのは頭だけでなく趣向もで、何故か食パン愛好家。食パンさえあれば世界が滅んでも生きていけると豪語しているその姿は、寧ろ怖いものを感じさせる。因みに食パンが土台であれば何でもいいらしく、ジャムでもバターでも、カレーでもシチューでも、何でも美味しく食べてしまう。でも、やっぱり食パンそのものが好きなので、何も塗らず、調理もされていない、切っただけの食パンをよく食している。……オレから見てっつーか、きっと周りから見てもちょっと変わり者の少女である。
「でもでもっ、ノストラさんはいつも予言を当てていたんだよぅ……?」
「あれもきっと何かペテンでもやってんだって。あいつはただの嘘吐きなんだよ」
「そぉかなぁ~……」
 どこか納得いかない顔で、食パンをはみはみ食べ続ける崇華。
 ……見ていて、何故か草食動物を連想してしまうのは、オレだけだろうか。
 崇華の性格が温厚なせいもあるが、いつも日向ぼっこをして夢見心地で生活しているような印象を受ける。そんな温厚な性格にも拘らず、驚く時は本当に錯乱するほど慌てる。子供らしいと言えばそうだし、何故か見ていてからかいたくなる奴だと、オレは思っている。
 それはいいとして。
 何故に七月が過ぎてからそんな話を持ってくるのかと、オレはそっちの方が不思議なんだが…… 
「うん、それがね、夢で見たの。七月に恐怖の大王が現れて、世界が滅んじゃうぞ~、って」
「……夢か。夢なのか。夢であんなに慌てたのか?」
「う、うん……だって、前に聞いた事有ったんだもん。ノストラさんが予言してたって、話……」
「…………」
 きっと、いや絶対、こいつは詐欺に引っ掛かる。悪い人にカモられるに違いない。将来、そういう人達に逢わないように祈っておこう…… 
「ごちそうさまぁ~でしたぁ~」
 ようやく食パン二枚を飲み込み、崇華が母さんに向かってお辞儀をする。礼儀正しいという点では、とても良い娘だと思うんだが…… 
 崇華が台所まで皿を持っていくと、母さんがニコニコと振り返って、
「ありがとう、崇華ちゃん。……あら、最近見ないと思ったら、こぉんなに大きくなってたのねぇ」
「えへへ♪ 変動期なんですぅ♪」
「それを言うなら成長期だろ……」
 人間が変動してどうするよ、とツッコミを入れて、二人が笑い合う。
「練磨~。今日はどこに出掛けるのっ?」
 ぴょこんっ、とオレに振り返って、そう尋ねる女の子。……そろそろ歳を考えた方がいいんじゃないかとも思うけど、まあ気分が悪い訳じゃないから、敢えてそこは注意しない。
「そうだな……てか崇華」
「うん? なになに?」
「お前、宿題やったか?」
 崇華の動きが凍りつく。台所の流水の音だけが耳朶を打つ。
 何の反応も返ってこない事から、オレにも察しが付いた。溜め息を零してやる。
「え、えへへ♪」
「えへへ♪ じゃねえよ、ったく……その調子じゃ、一つもやってねえんだろ?」
「わあ、練磨凄い。わたし何も言ってないのに当てちゃった。予言できるの?」
「予言って……」
 でもまあ、悪い気はしないから、敢えて突っ込まずに、
「まあ、な。それくらいはオレでも出来るぜっ」
「ふあ……練磨すごーい。じゃあじゃあ、今日の天気を予言してみて! してみてしてみて!」
 今日の天気だぁ~? なんつー控えめな予言だ、おい。……そりゃまあ、本当に予言できる訳じゃねえから、そんな大それたものは予言できねえけど……今日の天気くらいなら、まあ…… 
 ……もしかして、崇華の奴、既に見破っている?
 オレは考え込むような素振りを見せて、チラッと居間に有るテレヴィを覗き見る。タイミングが良くて、丁度今日の天気予報をしていた。今日のこの辺は……快晴! 今日も昨日に引き続き、雲ひとつ無い一日となるでしょう……。ふ……、楽勝だぜ!
「晴れっぽいな」
「テレヴィでやってるもんね~」
 ズバァッ、とオレの心を切断された気がした。
 崇華の視線も、オレがさっき辿った所と同じ所に向けられている。テレヴィのお姉さんが、ではまた明日、お逢いしましょう、とか何とか言って、コマーシャルに変わってしまった。
 じゃー、という水切り音以外何も聞こえない時間が過ぎた。
「……じゃあ今日は図書館だな」
「うんっ♪」

【後書】
 中学生とは思えないふわふわ会話ですが、中学生の時分を思い出すに、こんなもんだったような気もします(ふわふわ~)。
 何と言いますか、めっちゃほのぼのする! 練磨君の物言いがおませさんと言いますか、背伸びしてる感がありありと表現されてて、昔のわっち、やるな!w って思わずにいられませんでしたw
 って自分の作品に自分で感想綴ってるみたいになってきた!(笑)
 そんなこったで次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    ほのぼの~w
    二人のやりとり読んでるとふわふわいい気分w
    ここからどう世界を滅ぼすのか全く想像つかないっすv
    あわよくばこのままふわふわ…(ってオイw
    昔の日逆先生やるな!w

    今回も楽しませて頂きました!
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      ほのぼの~!w
      このふわふわ感が良いのです…!(^ω^)
      確かに世界が滅ぶ展開が、この時点では全く想像できないですなww
      このふわふわした空気が今後どうなるのか、ぜひ楽しみにお待ち頂けたらと思います…!
      昔のわっちをもっと褒めて褒めて~!(´▽`*)

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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