2018年6月4日月曜日

【神否荘の困った悪党たち】24話 ニャッツと映画。【オリジナル小説】

■タイトル
神否荘の困った悪党たち

■あらすじ
非現実系ほのぼのニートフルコメディ物語。宇宙人、悪魔、殺し屋、マッドサイエンティスト、異能力者、式神、オートマタと暮らす、ニートの日常。
※注意※2017/06/05に掲載された文章の再掲です。本文と後書が当時そのままになっております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公

■第24話

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
Fantia【日逆孝介の創作空間】https://fantia.jp/posts/9392

第24話 ニャッツと映画。


「師匠~! 我輩と映画を見ニャいか?」

 眠っていると頬をぷにぷにと肉球で叩かれて目が覚めた。
 目の前にニャッツさんの顔が有って、大変和やかな目覚めだ。
「師匠~!」タシタシと俺の顔を肉球で叩くニャッツさん。
「おはようございます、ニャッツさん」起き上がって、ニャッツさんの頭を撫でようとしたらやっぱり弾かれた。「いてっ」
「師匠! 我輩の話を聞いてるニャ!?」グリグリと俺のお腹に頭を押し付けてくるニャッツさん。
「映画ってアレですか、もしかしなくても“キミの名は。”ですか?」ふわわ、と欠伸をしながら応じる。
「ニャんと!? 師匠、どうしてその事を……!?」両目を見開いてあんぐりと口を開けるニャッツさん。「まさか師匠、読心術を会得したのニャ!?」
「実は、今その映画が大ヒット上映中なんですよ」ニャッツさんの前脚を掴む。ぷにぷにと触り心地が大変に宜しかった。
「らしいニャ! だから我輩も見てみたいのニャ!」前脚を触られても特に不満そうじゃないニャッツさん。
「そう、だからニャッツさんも見たいんじゃないかなって、そんな気がしたんです」ニャッツさんの前脚をフリフリと揺らして遊びながら呟く。
「流石師匠ニャ! これもゲーマーが為せる予知能力……!」パシィンッ、と前脚を震わせて俺の手から離れるニャッツさん。「では早速映画館にゴーニャ!」トコトコ歩いて扉の前に立つニャッツさん。「ニャーッ!」と鳴き声を上げて尻尾を立たせると、扉がカチャリと開いた。
「でもニャッツさん。映画館に猫って入れるんですかね」あの映画館なら何でもありそうではあるけど。
「ニャフフ、そう言うと思って既に対策済みニャ! 科学者から、擬人化できる薬、“モドキビトバケール”を貰ってるからニャ!」と言ってニャッツさんが自分の黒い毛並みをぺろぺろ舐めると、ポロリと小さな錠剤が落ちてきた。
「モドキビトバケール」しゅごいネーミングセンスだ、と思いながら見つめる。「それを飲むと人間になるんですか?」
「そうニャ! まぁ見てるがいいニャ!」にゃむにゃむ、と錠剤を口に含むニャッツさん。「変身ニャ!」と言うとニャッツさんの体が黄金に輝き始めた。
「まっ、眩しい!」でも見てしまう!
 幾重もの輝く布がニャッツさんを包み込み、次の瞬間には猫型だった布の塊が人型の布の塊になり、布がふわりと消え去ると、そこには黒髪黒瞳の、身長九十センチほどの小柄な男の子が佇んでいた。
 服装はその小さな体躯には似合わない、しかし採寸はぴったりの学ラン。
「どうニャ! 我輩の擬人化フォームは!」ニャフフ、と楽しげにその場でクルクル回る擬人化したニャッツさん。
「ニャッツさんって男の子だったんですね」今更だけど、大事な事なので確認してみる。
「そうニャ? 我輩、人間で言えば、四歳くらいのオスニャ!」腰に手を当てて胸を張るニャッツさん。「カッコいいニャろう? ニャフフ!」
「可愛過ぎて鼻血が出そうですね」こんな萌えの塊みたいなショタっ子は初めてで、新しい扉を開きそうだった。「じゃあ行きますか」
 手を伸ばすと、ニャッツさんは嬉しげに手を繋いで「ゴーニャ!」と玄関に向かって行くのだった。

◇◆◇◆◇

「お兄さん……今日で三日連続だけど、飽きないの?」
 映画館に辿り着くと、初散さんが不思議そうな表情で俺を見上げてくれた。
「それに、今日は……えぇと、お子さんと一緒なんだね」
「あの、」この子、俺の子じゃないですよ、と言いたかったのに、初散さんは先に「あっ、深入りはしません! 僕、秘密は厳守しますから! 正妻の子でも、愛人の子でも、僕、言いませんから!」とブンブン手を振り回されてしまった。
「ニャッツさん、何か俺しゅごい誤解されてしまったんで、何とか言ってくれませんか」屈み込んでニャッツさんにお願いしてみる。
「ニャ? 師匠が困ってるニャら我輩もやぶさかではニャいニャ! 任せるニャ!」ポン、と胸を叩くニャッツさん。「おい契約者! お父さんを困らせるニャ!」
「ごっ、ごめんね? 僕、困らせるつもりは無かったの! えーと、じゃあ今日は無料で上映してあげるから! それで許してくれないかなぁ?」へこへこと頭を下げる初散さん。
「師匠、これで良かったニャ?」ニャフン、と誇らしげに胸を張るニャッツさん。
「はい、ニャッツさんのお陰で誤解が最高に深まりましたね」もうどうにでもなれって感じだった。
 映画館に入ると、ニャッツさんは前の列の真ん中に腰掛けた。俺もその隣に腰掛ける。
「楽しみだニャー、我輩、映画館ってあんまり来ニャいから、ワクテカするニャ!」キラキラした眼差しを画面に向けるニャッツさん。
「しゅごい面白い映画ですから、期待していいですよ」
 上映が始まり、あっと言う間に時間が過ぎ去って行った。
 映画の途中から嗚咽が聞こえ始め、エンドロールが終わる頃には嗚咽がピークに達していた。
「ニャッツさん、大丈夫ですか?」見ると、鼻の頭を真っ赤にして泣いているニャッツさんがいた。
「フニュゥ……ズビッ、良かったニャァ……良かったニャァ……ズビビッ」鼻を啜りながらグシグシと目元を拭うニャッツさん。「最高の映画だったニャ……我輩、感動で目から汗が止まらニャいニャ……フニュゥ……」
「ここまで感動されたら、製作者も嬉しいでしょうね」頭を撫でようとしたらパシィンッ、と払われた。「いてっ」
「師匠は泣いてニャいニャ。感動しニャかったのニャ?」
 席を立ち、映画館を後にするニャッツを追って外に出る。
「感動しましたよ。何度見てもいい映画だって再確認できましたし」でも三回は流石に見過ぎかなって思えるけど。
「師匠は大人ニャ……我輩も見習わニャいとニャ!」
「ばいばーい!」階段を上がる時に初散さんが手を振ってくれた。
「ばいばい」もう三度目になるけど、俺もいつも通り手を振り返す。
「ばいばいニャ!」ニャッツさんも一緒に手を振り返す。
 階段を上がり終えると、ニャッツさんは「ニャウーン!」と背伸びをして、俺に振り返った。
「師匠! 今日はありがとニャ! また一緒に映画見たいニャ! いいニャ?」ことりと小首を傾げるニャッツさん。
「勿論! ニャッツさんのお願いですから、断る訳にはいきませんね」コクコク頷き返す。
「ヤッタニャー! じゃあ早く帰ってゲームしようニャ! 我輩、今擬人化フォルムだから、きっといつも以上に強いニャ!」トテトテと走り出すニャッツさん。
「それは期待できそうですね」のんびり歩いてもすぐにニャッツさんに追いつけた。
 その後、擬人化したニャッツさんと一緒にゲームをしたけど、擬人化したニャッツさんのゲームの腕前はやっぱりと言うか、うん、まぁ、アレだった。

【後書】
 ニャッツさんはにゃんこの姿でも人の姿でも可愛い(定期)。
 と言う訳で、ニャッツさんにお父さんと言われたいだけの人生でした。
 三日連続で同じ映画を観ると言う経験が無いので分からないのですが、中には何度も足繁く映画館に通う方もいらっしゃると聞いたので、もしかしたら三日連続なんて序の口なのでは? と思い始めております(笑顔)。
 そんな映画編、まだまだ続きます! 次回、「メイと映画。」……亞贄君の映画日和は終わらない! お楽しみに!

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