2018年6月29日金曜日

【神否荘の困った悪党たち】第33話 あれ、ゴブリンなんですか?【オリジナル小説】

■タイトル
神否荘の困った悪党たち

■あらすじ
非現実系ほのぼのニートフルコメディ物語。宇宙人、悪魔、殺し屋、マッドサイエンティスト、異能力者、式神、オートマタと暮らす、ニートの日常。
※注意※2017/09/18に掲載された文章の再掲です。本文と後書が当時そのままになっております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公

■第33話

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
Fantia【日逆孝介の創作空間】https://fantia.jp/posts/19199

第33話 あれ、ゴブリンなんですか?


「街の外広過ぎませんか?」

 街の正門から出て、すぐに感想を述べたんだけど、見渡す限りの平原で、背後の街を囲う外壁以外、どこを見ても地平線が見える。山すら無い。延々と平原。
「まーMMORPGってそんなもんでしょ」シンさんがまた適当な事言ってる。「ほら、あそこでゴブリンがリポップしたよぉ」
 シンさんが指差す方向に視線を向けると、確かにそれらしい影が見えた。
 頭に角の生えた、身長170cmくらいありそうな鬼。鬼って言うか、角の生えた人間にしか見えない。
「あれ、ゴブリンなんですか?」人じゃなくて?
「あれはゴブリンだよ、角生えてるもん」シンさんが適当過ぎる。
「ニャフフ、ここで我輩の力を見せつけて師匠の度肝を抜いてやるニャ!」ペペーンッ、と杖を掲げて叫ぶニャッツさん。「我輩の地上最強の魔法をお見舞いするニャ!」
「あー、ちょっと待ってニャッツさん、あれを攻撃するのはだいぶ勇気が――」「サンダー!」
 ニャッツさんの咆哮が上がった直後、俺の体が何故か吹き飛んでいた。
「ぐふぅ」ゴロゴロと平原を後転しまくって止まった頃には首と頭と背中がドチャクソ痛くなってた。「い、いてぇ……」感想がガチだった。
 耳がキーン、って音だけしか聞き取れなくて、他の音が何も無い。目もやられちゃったのか、チカチカして何も見えなかった。全身が吹き飛ばされた影響で痛む事しか分からない。
 控えめに言ってヤバかった。
「――――」
 遠くで何か言ってるような気がするけど、何も聞こえない。
(あっ、師匠! 師匠鼓膜やられちゃったみたいだから、テレパスしてみたけど、良かったニャ?)
 えっ、ニャッツさんの声が頭に直接聞こえる。
(テレパスだから脳に直接声を届けてるニャ! ごめんニャー、サンダーが殺し屋に直撃して、衝撃で師匠吹っ飛んじゃったニャ)
 頭に直接ニャッツさんの声が聞こえるだけでも混乱必至なのに、ニャッツさんが何を言っているのかまるで分からない。
(我輩の魔法、サンダーは、敵味方問わず命中率10%ニャんだ)
 少しずつ視界が回復してきた。雷が落ちた後なんだろう、平原の一部が黒ずんで、ちょこっと火の手が上がってる。
「ニャ、ニャッツさん、その魔法、ヤバくないですか?」少しずつ自分の声も聞こえるようになってきた。
「ニャ? でもこれを使えば、殆ど雑魚モンスターは即死するニャ!」駆け寄ってきたニャッツさんが笑ってる。可愛い。
「シンさんも即死したのでは……」ガタガタ怯えながら周囲に視線を飛ばしてみると、シンさんの姿が確認できた。「だ、大丈夫ですかー?」
 ジャージがズタボロに破けて、何だかとても、あうあうな感じになってるシンさんが、「けほっ」と黒煙を吐き出した。
「ニャーさん、やってくれるじゃないか……え? おい……」あああ何か見えてはいけないものが見えてる気があー。
「殺し屋、この魔法は命中率10%ニャ! 仕方ニャい犠牲だったニャ」腕を組んでうんうん頷き始めるニャッツさん。
「私じゃなかったらこれ死んでるよ? にー君が死んだら替えが利かないんだよ? 分かってる?」いつになく怒ってるシンさん。「私の大切な玩具を壊したらどうなるか分かってんの? ニャーさんと言えど、やっちゃうよ?」聞き捨てならない台詞が混ざってますね?
「師匠が死んだら困るニャ! サンダーは封じるニャ!」コクコク頷くニャッツさんが可愛くて仕方ない。
「てか今の衝撃でゴブリンどうなったんですか?」きょろきょろと辺りを見回す。「あっ、あんなところに」見つけてしまった。
 ゴブリンが三頭、体を支え合って佇んでいる。
「し、しっかりしろ田中ぁ! お前はこんな所で死んじゃいけねえんだよ!! 故郷で、彼女が待ってんだろ田中ぁ!!」
「帰ったら結婚するって、言ってたじゃねえか田中ぁ! くそっ、どうしてこんなタイミングで……あの人間野郎ッ、絶対に許さねえ……!」
「ガハッ! ……あ、ありがとな、後藤、吉田……でも、俺もう、ダメみてえだ……ははっ、川の向こうに、死んだ祖母ちゃんが見えるぜ……手ぇ、振ってやがる……」
「田中ぁ! 戻ってこいよ田中ぁ! ああああっ!」
「後藤っ、よせっ! 田中はもう……っ!」
 ゴブリンが一頭死んだらしい。
「ちょっとあの、ゴブリンの名前がその、しゅごい日本人感有り過ぎて、罪悪感がひゃんぱないんですけお……」胸が痛い。
「そう? 最高にそそらない?」シンさんに聞いた俺がバカでしたね。
「チクショウ人間野郎……! 許さねえ……! 殺してやる……! 一匹残らず、駆逐してやる……ッ!」後藤ってゴブリンが俺を睨みつけてくる。怖い。
「何か俺達巨人か何かと勘違いされるほど憎悪を向けられてるんですけお」流石にチビりそうです。
「まぁまぁ、ここはあたしに任せときな。ああいう手合いには慣れてるから」シンさんのニッコリ笑顔が一番怖いですね?
 シンさんがひょこひょことスキップを踏むようにゴブリンに近づいて行った。
「メスの人間野郎でも容赦しねえ……ぶち殺してやるぞ手前!!」
「あぁ……田中の仇、討たせて貰うからなぁ!!」
 ゴブリン二頭が剣を構えてシンさんに襲い掛かる。
 ちょっと言語化したくない悍ましい光景が展開された!
 三分くらい掛けてみっちり地獄を作り出したシンさんは、全身真っ赤に染め上げて、愉しそうに帰ってきた。
「こんな感じでレベリングがんばろー♪」ウキウキのシンさん。
「あの済みません」すっと、華麗に手を挙げるよ。「吐いていいですか?」
 応答待てずに、ケロケロと平原を汚していくよ!
 もうこのゲーム辞めたい。

【後書】
 いよいよGameの根幹とも言えるバトルシーンです!
「こんな惨たらしい戦闘、俺初めてだよ」※亞贄君談
 と言う訳で次回、34話「えっ、えぐい」……引き続き惨たらしい戦闘が続きます。まだまだ惨劇は始まったばかりです!w 次回もお楽しみに!ww

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