2018年6月9日土曜日

【神否荘の困った悪党たち】第26話 愛火と映画。【オリジナル小説】

■タイトル
神否荘の困った悪党たち

■あらすじ
非現実系ほのぼのニートフルコメディ物語。宇宙人、悪魔、殺し屋、マッドサイエンティスト、異能力者、式神、オートマタと暮らす、ニートの日常。
※注意※2017/06/26に掲載された文章の再掲です。本文と後書が当時そのままになっております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公

■第26話

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
Fantia【日逆孝介の創作空間】https://fantia.jp/posts/11091

第26話 愛火と映画。


「孫くーん! 僕と映画見に行かないっすか!?」

「正直に話そう。俺の頭の中は“キミの名は。”で一杯です」
 寝ても覚めても“キミの名は。”で、休まる所を知らない。
 ラヴファイヤー君は部屋の中で「えっ!? 孫君、そんなに“キミの名は。”見たいんすか!? 良かったっすー! 僕も職場でこれが流行ってて、ちょっと見てみたいと思ってたんすよー!」と楽しげに腕を振り回し始めた。
「職場の人って、悪魔なの?」
「基本魔族っすよ! 中には人間もいるっすけど!」ふんすふんすと鼻息荒いラヴファイヤー君。「魔族の間では今“キミの名は。”が話題沸騰中なんすよー!」
「魔族も感動系に弱いのかな?」ふわわ、と欠伸を浮かべちゃう。
「出てくる人間が美味しそうで堪らないって!」なんてやばみを感じる感想なんだろう。
「えーと、じゃあもしかして魔族って、人間の出てくる映画って、食欲増進のために見る感じなの?」恐ろしい事を訊いてみる。
「んー、どう例えたらいいっすかねー」難しそうに腕を組むラヴファイヤー君。「人間って、牛肉とか豚肉とか食べるじゃないっすかー?」
「食べるね」うんうんと頷く。
「あれって、ただ豚肉がポンって置かれてても、“美味しそう!”って思わないじゃないっすかー?」
「うーん、まぁ、そうかな」ちょっとよく分からずに小首を傾げちゃう。
「でも、豚肉が鉄板でじゅうじゅう音を立てて焼かれてるのを見ると、“美味しそう!”って思わないっすか?」
「そうだねー、美味しそうって思うかも」涎が出てきそうだ。
「その、豚肉がじゅうじゅう焼けてるシーンを見るのが、僕ら魔族にとっての、人間が登場する映画なんすよ!」ビシッと俺を指差すラヴファイヤー君。
「つまりやっぱり食欲増進のために見るんだね」彼には映画を見せちゃいけない気がしてきた。「でもアニメでもそんな風に感じちゃうの?」
「人間もアニメのキャラクターに愛を感じたりカッコいいって感じないっすか?」不思議そうに小首を傾げるラヴファイヤー君。
「あー、何と無く分かったかも」コックリ頷く。「確かに、アニメに出てくる料理とかでも、美味しそうな絵柄で描かれると、涎出てきちゃうもんね」
「うんうん、そういう事っす! じゃあ早速出発っす!」と言って手を引っ張って部屋から出て行くラヴファイヤー君。
「あー、これあれだよね、真雲商店街に行くんだよね?」よたよたとラヴファイヤー君を追いながら玄関を出る。「そうだ、ラヴファイヤー君なら知ってるのかな? 初散さんって魔法少女のお爺さん」
「知ってるっすよ! 僕の同僚が契約した人間っす!」ニコッと華やぐラヴファイヤー君。「悪魔の契約と引き換えに、魔法少女になったんす!」
「因みにどういう契約で魔法少女になったの?」そこが気になってた。
「確か毎月二千円の課金だった筈っす!」ヴイサインを見せるラヴファイヤー君。
「月々二千円で魔法少女になれるんだ」俗世に毒され過ぎてる感しゅごい。
「孫君も魔法少女になりたかったら、僕と契約するっすか?」ラヴファイヤー君の瞳がキラキラしてる。
「うーん、考えとくよ」
 とか言ってる間に映画館に辿り着いた。
 階段を下りていくと、初散さんが「魔王様ッ!?」と椅子を蹴倒して跳び上がった。
「こんちはっす!」ビシッと敬礼するラヴファイヤー君。
「ななな何でこんな所に魔王様が!? それに“キミの名は。”大好きお兄さんも!?」あぁ……そんな名前が定着しつつあるのか……
「今日は孫君と一緒に“キミの名は。”を観に来たっすよ!」ニッコリ笑顔のラヴファイヤー君。
「お、お兄さん、魔王様の孫だったんですか……!?」驚きに目を剥いてる初散さん。「ぼ、僕、失礼な事言ってませんでしたか……!?」青褪め始めた。
「ラヴファイヤー君、最近誤解がしゅごいんだ、せめて呼び方を変えない?」ひそひそとラヴファイヤー君に声を掛ける。
「孫君って呼び方ダメっすか。うーん、じゃあ……“亞贄”君っすから、“デミサクリファイス”君ってどうっすか!」人差し指を立ててご機嫌なラヴファイヤー君。
「お兄さん、やっぱり魔族だったんですね!」はわはわし始める初散さん。「どうぞ! 今日もタダで構いませんよ! 魔王様からお金を頂いたとあっちゃ、契約先のお姉さんに何言われるか分かりませんし!」わたわたと重厚な扉を開けて入るように促し始めた。
「何か悪いっすね! じゃあ行こうっすデミサクリファイス君!」
「そうだね、俺の誤解も限界突破してるし、映画を見て早く帰ろうか」もう俺は考えるのを諦めたぜ。

◇◆◇◆◇

 上映が終わり、「うーん、何度見ても面白いけど、五日連続は流石に辛いかな」と背伸びしてからラヴファイヤー君の様子を確認する。「どうだったラヴファイヤー君?」
「いやぁ……」垂れていた涎を拭うラヴファイヤー君。「メチャクチャ美味しそうだったっす……流石の僕も、お腹の虫が鳴らないか心配だったっすよ!」とんでもねー心配してたみたいだ。
「じゃあ帰ろうか」立ち上がり、出口に向かいながら呟く。「折角だから帰りにケーキ屋さんでも寄って行く?」
「いいんすか!? やったぁ! ロロもきっと喜ぶっすよ!」
 二人で重厚な扉を開けると、初散さんが「ご来店、有り難う御座いました!」と何かしゅごい勢いでペコペコ頭下げてたけど、俺はいつも通り「ばいばい」と小さく手を振るに留めた。
「ラヴファイヤー君って、やっぱりしゅごいんだね」影響力的な意味で。
「そうっすか? デミサクリファイス君の方が凄いっすよ! 何せ曲者揃いの神否荘の管理人っすからね! 普通の人間には務まらないっすよ!」うんうん頷くラヴファイヤー君。
「曲者って認識は有ったんだね」苦笑を浮かべちゃう。「でもさ、神否荘の人達って、曲者かも知れないけど、一緒にいると、とても楽しいよね。勿論、ラヴファイヤー君を含めてね」
 流石に一週間で五回も同じ映画を見る事になるとは思わなかったけど、それでも色んな話が聞けて楽しかった事には変わりない。
「僕もデミサクリファイス君と映画見れて楽しかったっすよ!」嬉しそうに肩を叩くラヴファイヤー君。「さっ、ケーキ買って帰ろうっす! 皆の分を買って行って、おやつにするっすよ!」
「そうだね、またケーキでおやつパーティしよう」
 二人で並んでケーキ屋さんに歩いて行く。
 その後、神否荘で二度目のケーキパーティが開かれる事になるのだけど、これもまぁ、また別の話って事で。

【後書】
“キミの名は。”大好きお兄さんから、無事に“魔王様の孫”にランクアップした亞贄君なのでした(笑顔)。
 月々二千円で魔法少女になれるって話をどうしても綴りたくてこんな形になりましたよね!w 悪魔が現代に毒され過ぎてるお話が好きで好きで……今後も現代に毒され過ぎてる悪魔の話を綴って参りたいです!w
 次回でにゃんと映画編六日目に突入します! 次回「華斬と映画。」……華斬って誰だ? と言う方は、9話辺りを読み返してみましょう! 誤解が最高潮に深まったなら、後は広がるだけ! どうか次回もお楽しみに!w

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