2018年7月16日月曜日

【神否荘の困った悪党たち】第40話 やっべ、流石に不味いかな【オリジナル小説】

■あらすじ
非現実系ほのぼのニートフルコメディ物語。宇宙人、悪魔、殺し屋、マッドサイエンティスト、異能力者、式神、オートマタと暮らす、ニートの日常。
※注意※2017/12/25に掲載された文章の再掲です。本文と後書が当時そのままになっております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公

■第40話

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
Fantia【日逆孝介の創作空間】https://fantia.jp/posts/30587

第40話 やっべ、流石に不味いかな


「うーん、見張りが進行方向にいるなぁ……」

 ニャッツさんと散々戯れた後、俺はトコトコ歩いてコンテナの周りを散策すると、昇降機を見つけたのはいいけど、その前に二人の敵兵の姿が見えた。
 遠目で判り難いけど、何か見覚えの有る人のような気がする。
 ニャッツさんが隣で毛繕いしてるのを見て一頻り和むと、砂月ちゃんに助けを乞うてみようと思い、ニャッツさんの肉球をぷにぷにした。
 ホログラムに砂月ちゃんが映し出された。
「あっ、先輩ちょっと待ってください! 今ぬこぬこ動画見てる所なんで!」今なんて?
 三十秒くらい砂月ちゃんの「あぁ~……癒されるぅ……」と言う台詞が続いた。
「あぁ……癒された……はい、それで何でしたっけ?」砂月ちゃんが帰ってきた。「何か用ですか?」
「いやあの、進行方向に見張りがいるから、どうしようかなって相談しようかと……」まさかぬこぬこ動画見てるとは思わなかったよ。
「えー、どうしようって、自分に聞かれても困りますよう。先輩が何とかしてくださいよう」こんなやる気の無い軍人俺初めてだよ。
「分かったお、何とかしてみるお」
 ニャッツさんの肉球から手を離し、考えてみる。
 砂月ちゃんはヒントをくれる訳じゃないのかなぁ。いや待てよ? もうヒントを貰ってるから、これ以上ヒントは無いよって言いたかったのかも知れない。
 つまり、もう既に俺はあの見張りをどうにかする術を教えられている……?
 パッと思いついたのは、そう言えば砂月ちゃん、敵兵は音に敏感って言ってた気がするな。
 あれだ、音を立てておびき寄せて、その間に昇降機に飛び込めばいいんだな?
 そうと決まれば早速……トコトコ歩いて、敵兵の近くまで歩み寄ると、コンテナの影で、コンコン、とコンテナをノックしてみた。
「聞いたか後藤? 田中の奴、今回の仕事が終わったら遂に結婚だとよ」
「まじかよ吉田。田中の奴、ゴブリンの仕事しくじっちまって、クビになっちまったもんな……やっとあいつ、幸せになれるんだな……」
「あぁ、俺達も早いとこ、いい人見つけねえとな」
「全くだ」
 敵兵、全く気付かない事にも驚きだけど、この人達アレだ、見覚えが有ると思ったら、フドハクコにいたゴブリンさんだ。
 二人で笑い合ってるのを見て、転職したのかーって思ったのと同時に、もう既にあの二人が惨たらしい目に遭うイメージしか湧かなかった。
「うーん、気づいてくれないな」コンコン、コンコン、と精一杯アピールしてるけれど、まるで気づいて貰えない。「もっと大きな音を立てないといけないのかな?」
 ガンガンとコンテナを蹴ってみると、やっと後藤さんと吉田さんに反応が有った。
「い、今の音、何だ? コンテナ蹴るような音だったぞ……」うん、そうだよぉ。「ゆ、幽霊かな……?」幽霊コンテナ蹴るの??
「ご、後藤、お前見てこいよ。俺ここで待ってるから」兵士とは思えない発言がモリモリ出てくるぞ??
「えー、やだよぉ、お前が見てこいよぉ、俺が待ってるからさぁ」
「何だよぉ、お前怖がってんじゃねえよぉ、早く行けよぉ」
 後藤さんと吉田さんがいちゃつき始めた。
 俺は一体何のゲームをしているんだ??
「あっ、くしゃみが出そうだ、へっ、へっ、へっくしゃ!」盛大にくしゃみしてしまった。「やっべ、流石に不味いかな」チラッと二人の様子を見てみる。
「い、今くしゃみみたいな音が聞こえなかったか……?」流石に不審がられてる。「ゆ、幽霊かな……?」幽霊ってくしゃみするの??
「ご、後藤、お前見てこいよ。俺ここで待ってるから」兵士さん仕事して!!
「これもう埒が明かないな」俺は音でおびき寄せる作戦を諦めた。「筋肉ムキムキのボディみたいだし、白兵戦で突破してみよう」
 ちょろっと身を乗り出して二人の前に姿を見せてみる。
「むむっ!? 怪しい奴!! 誰だお前は!!」後藤さんがライフル銃を構えた!
「うわぁ、回避できるかなこれ」流石に撃たれたらヤバイ痛みを感じそうだ。
 と思ってダッシュしようと足を踏み込んだら、アスファルトと思しき地面がぐしゃりと凹んだ。
 次の瞬間には俺の体は兵士の眼前に有って、その次の瞬間には俺の突撃に撥ねられた後藤さんが錐揉みしながら搬入ドッグの天井に頭から突き刺さった。
 俺は言葉を失っていた。
「ごごご、後藤ォォォォ―――――ッッ!?」吉田さんの悲鳴が上がった。「ててて手前ェェェェ―――――ッッ!!」ライフル銃を構えた!
「ちょちょちょっと待ってこの肉体の扱いにまだ――」慣れてないの、って言いたかったけれど、その前に吉田さん発砲してた。
 ガガガガッ、って銃撃音と一緒にカカカカンッ、って鋼を弾く音が鳴り響いて、俺の体にぶつかった弾丸が火花を散らして拉げていく。
「はわわ、はわわわ」吉田さんが失禁し始めた。
 俺はもう申し訳無さで一杯だったけれど、吉田さんに近づき、「ご、ごめんね?」と首の後ろをトンッ、って手刀で叩いて気絶させ――ようとしたけど、威力がおかしくて、吉田さん、ずむぅ、と言う凄まじい音を立てて腰までアスファルトに埋まっちゃった。
 白目を剥いて泡を噴く吉田さんと、天井に頭を突き刺してぶら下がってる後藤さんを見て、俺は仏の顔になっていった。
 簡単に言えば、やばみだ。

【後書】
 と言う訳で吉田さん&後藤さんでした。もうこの人達を登場させたくてさせたくて(笑)。
 伝説の兵士アニーエが最強過ぎるなんちゃってスニーキングミッション、来年もぜひ楽しみにお待ち頂けたらと思います!
 と言うのも、この物語が今年最後の創作物配信になります。毎週の有料配信もこれで半年くらい続いてるのかな? プラスで無料配信の創作物も配信してますから、去年に引き続きモリモリ配信できたと思います…!
 今年は本当に、本当に、とみちゃんのお世話になりました! 来年もぜひご贔屓にして頂けたらと思います! 最高に素敵な感想を毎回送って頂いて、わたくしは作者冥利通り越して、生きてて良かった感まで味わえております…! 本当に有り難う御座いました! そして来年も宜しくお願い致します!
 と言う訳で次回、第41話「こんな時はアレだ」……やっぱり潜入と言ったらあのアイテムでしょ! ってお話です。お楽しみに!

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