2018年7月10日火曜日

【ベルの狩猟日記】046.ゲルトス【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G

■第46話
【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/

046.ゲルトス


 一度ラウト村に戻って準備を整えようと思っていた時、都合良く行商人が通りかかった。
「あれ? ベルじゃん。オマケにフォアンとザレアもいるし。どうしたんだ、皆揃って? ――まさか、ラウト村からカラスタ村に鞍替えしたのか?」
 相も変わらぬ鳥の巣ヘアーの行商人――ウェズは巨大な風呂敷を背負って村の入口から声を掛けてきた。こいつはしめた、とベルが舌なめずりをする。
「ウェズ。この先の雪山にティガレックスが出没したのよ。併も二頭!」
「二頭も!? そりゃーすげえな。これじゃ暫くはカラスタ村に駐留しないといけないなー」やれやれと肩を竦めるウェズ。
「あたし達が狩猟してくるから安心してよ、ウェズ」握り拳に親指を立てるベル。
「え、マジで!? うぉー、そりゃ助かるぜ。頼むな!」同じ手の形にして笑むウェズ。
「てな訳でウェズ。道具をタダで譲ってよ」ニッコリと手を差し出してくるベル。
「ああ、任せとけ!」どんっ、と胸を張ってから数瞬の間を置いて、「……って、何ィィィィ―――――ッッ!? おまっ、巫山戯んな! 何ドサクサに紛れてとんでもねー事口走ってんだ!?」やっと言葉の意味を理解して絶叫するウェズ。
「あら、嫌なの?」不思議そうな眼差しでウェズを見やるベル。
「当たり前だろ!! こっちはこれで生計立ててんだ、常識で考えろ!」
「ふぅん……嫌なんだ? あたしの言う事が聞けないんだ?」ねっとりと粘りつくような視線でウェズに絡むベル。
「なっ、何だそのネンチャク草のような絡み方はっ。ぼ、僕だってこればっかりは譲れないぞ! 道具はちゃんと金を払って受け取って然るべきだ!」怯えながらもここは譲らないウェズ。
「ねぇウェズ。耳、貸しなさいよ」ちょいちょいと、手招きするベル。
「ん? 何だよ、どうでもいい話なら聞かないぞ……」警戒しながらも耳を近づけるウェズ。
 村長と二人の猟人が見守る中、ベルがウェズに何事か耳打ちする。するとウェズの表情が驚きに変わり、泣きそうになり、やがて悄然と肩を落として諦念を感じさせる表情で「分かったよ……好きにしてくれよ……」と半ベソを掻いて風呂敷を下ろし始めた。
 突然の変わりように皆が驚いていると、ベルは「にししし」と悪事を働いた後の小悪党のような笑みを浮かべ、風呂敷の中を漁りだす。
「どんな脅迫をしたんだ?」
 風呂敷を漁っているベルに背後から声を掛けるフォアン。ザレアも興味が有るのか、身振りで「わくわくっ」としている。ベルはむぅ、と笑みを消して不機嫌そうに表情を移ろわせる。
「脅迫だなんて失礼ね。あたしはただ、ウェズのこれまでした事を村長に話すわよ、って言っただけよ」
「それを脅迫と言わず何と言うんだ?」苦笑を滲ませるフォアン。
「ベルさんは実は悪党の中の悪党……大悪党にゃ!?」驚く仕草をするザレア。
「違うわよッ!! ほら、ごちゃごちゃ言ってないで今の内に道具を掻っ払うわよ。今ならどれでもタダなんだから……ぐひひ、良い道具の入手方法を見つけちゃったわね……」
「ザレア、ベルはもう悪党の域を超えてる……これは――悪魔だ!」
「何と言う事にゃ! ベルさんは既に悪魔……モンスターの中でも最強のモンスターににゃってしまわれたのにゃ!?」
「ちょっと!? 人を勝手にモンスターにしないでくれる!?」
「うぅ、コニカさん……僕は負けません、あなたと結ばれるまでは……ッ」
 ウェズが一人悲しげに四つん這いになっていると、そこに誰かの影が近づいて来て、肩に手を置いた。ウェズが見上げると、村長――オルトレイの姿が有った。
「ワ、ワシで良ければ、結ばれてやっても……良いぞ?」
「ふぁい!? ちち、違いますよ!? 村長は村長でも、ラウト村の村長、コニカさんですからね!? ちょッ、そんなウルウルした瞳で僕を見ないでェェェェ―――――ッッ!!」
 やっぱりテンヤワンヤなのだった。

◇◆◇◆◇

「――御三方はウェズ殿の知り合いであるのか?」
 ウェズの風呂敷を漁り終え、雪山へ向けて再びアプトノスの馬車に乗って出発しようかと言う時、不意にベル達に声が掛けられた。
 振り返ると、村の入口に男が立っていた。その防具一式を見て、刹那に彼が上級猟人だと気づく。
 身に纏っている防具は、グラビモスと呼ばれる、巨大な岩石の塊のような飛竜の素材で造られたグラビドシリーズ。あしらわれている甲殻は恐らく上質の更に上――重厚な甲殻のようだ。更にその中には“天殻”と呼ばれる、珍しいを超えて猟人でも数百人に一人しか見つける事が出来ない素材も使われている。更に武器もグラビモスの素材で造られたランスを背負っている。そのランスにしても、ベル達は名前すら知らない武器で、ただただ目を奪われるばかりだった。
「え、っと……うん、そうだけど……あんたは?」
「吾輩はゲルトスと申す。故有って各地を巡っておる、流れの猟人である。此度はウェズ殿の護衛を買って出て、カラスタ村まで参った次第である」
「あぁ、ゲルトスさんは人探しの旅をしてるんだってさ。それでその序でって事で、一緒に各地を回ってたんだ」
 ウェズがオルトレイから逃れようと後退りながら説明を加える。
「――時に、貴殿らの狩猟に同行しても宜しいだろうか?」
 ゲルトスと名乗った男の顔はザレア同様、窺い知る事は出来ない。グラビモスの重厚な素材が使われたヘルムが完全に頭部を隠してしまっているためだ。声からして三十代ほどだと思えるが、後は何も分からない。
 身分に就いては分からないが、猟人としての実力で言えば、上の上……恐らくザレアをも凌ぐ腕前だと言う事は、身に纏う装備品からして言わずもがなだ。
 そんな猟人が手を貸してくれるなんて願ったり叶ったりだ。ベルは微笑を浮かべて、ゲルトスの許へと歩み寄り、手を差し出す。
「あたしはベルフィーユ。長いからベルって呼んで。えっと……ゲルトスさん」
「ゲルトスと呼び捨ててくれて構わぬ。――宜しくお頼み申す、ベル殿」
 握手を交わすと、脇からフォアンがやって来て同じように手を差し出す。
「俺はフォアン。宜しくな、ゲルトス」
「こちらこそ、宜しくお頼み申す、フォアン殿。……そちらのお嬢さんも、宜しくお頼み申す」
 ゲルトスがザレアに視線を向けると、彼女は何故か怯んだように縮こまり、「にゃにゃっ」とベルの後ろへ隠れてしまう。
「ザレア? どうしたのよ? 隠れてないで挨拶しなさいよっ」
「にゃ~……」警戒した様子でベルの後ろから出てこようとしないザレア。
「はっはっは、どうやら警戒されてしまわれたようですな。……ザレア殿と申されるのか。確と覚えておこう」
 ゲルトスが一つ頷いて馬車に乗り込むのを見て、ベルは不思議そうにザレアに向き直る。
「どうしたのよ? ザレア。もしかして彼と知り合いなの?」
「にゃにゃ……」悄然と肩を落としてそれ以上は何も言わないザレア。
 ベルが更に言い募ろうとして、フォアンに肩を叩かれる。振り返ると、真面目な顔をしたフォアンが頭を横に振っていた。
「言いたくないのなら、言わない方がいいさ。無理に聞いたって良い事なんか何も無い、――だろ?」
「……そうね。ごめんね、ザレア。言えるようになったら、聞かせてね?」
「にゃにゃ……ごめんにゃ、ベルさん、フォアン君……」
 瞳を潤ませていそうな様子で見上げるザレアに、二人の猟人は柔らかく微笑を返した。

【後書】
 今回のお話と言いますか、この章はザレアちゃんの物語、と言う旨の後書をいつぞや綴りましたが、その辺の意味が今回からチラチラ窺い知れるような感じです。
 ゲルトスさんの存在こそがまさに鍵と言う訳ですね! そしてこの物語と言いますか、「ベルの狩猟日記」はMHP2Gを元にした物語でして、いよいよG級ハンターが出てきた! って展開でも有ります。この世界のG級ハンターは色んな意味で常軌を逸した人しか出てこないので、その辺も楽しみに読み進めて頂けたらと思います(笑)。
 さてさて次回、第4章第7話にして、第47話!「ザレアの正体」…突然明かされる彼女の正体とは!? お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    新キャラすごそうで…(;゚д゚)ゴクリ…
    ただ幸いだったのは登場シーンのみですんだことか…
    G級ハンター…色々とヤバそう…

    ゲルトスさんがどんな風にザレアちゃんに絡むのか
    あっ、正体に関わってくるのか…
    って、前に読んでるはずだけど、すっかり忘れてて楽しめてるわーw
    いい加減なものだねw

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

    追伸
    ウェズ君強く生きて!

    返信削除
    返信
    1. 感想有り難う御座います~!

      新キャラのゲルトスさん、後々ヤバいシーンがモリモリ出てきますが、ヤバいですw(語彙力)
      この世界のG級ハンターは何かしらおかしいみたいです!w

      わたくしもね~、原作者の癖して読み返しながら「えっ、そんな展開やったんや!」って自分でも愉しめるくらいですからね!w とみちゃんの気持ちはよく分かるんですなぁ!ww
      いい加減なものだねぇww

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

      ウェズ君がんばれ超がんばれ!ww

      削除

好意的なコメント以外は返信しない事が有ります、悪しからずご了承くださいませ~!