2018年7月17日火曜日

【ベルの狩猟日記】048.誤解と和解【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G

■第48話
【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/

048.誤解と和解


 ティガレックスを相手に立ち回るのは困難を極める。それは彼が他の飛竜よりも何倍も動きが機敏で、隙を見出す事が難しいためだ。そのため腕の立つ猟人ですら手を焼く、出来る事なら戦わずに済ませたい飛竜でも有る。
 その突進を食い止めていたゲルトスは、ベルの約束の言葉を聞いて、ヘルムの奥の口唇を満足気に歪める。
「その契り、嘘偽りではあるまいな!? その場凌ぎの嘘ならただでは済まさぬぞ!!」
「ルカ姫を帰国させりゃいいんでしょ!? 約束するって言ったじゃない! だから早くそいつをどうにかしなさいッ!」
「ふんっ、心得た!」
 ゲルトスは力を緩め、ティガレックスの突進に体を委ねる。ティガレックスは突如として動き出した事を、ゲルトスの力が限界に達したためだと誤認し、今が好機と噛みついてくるが、ゲルトスはその動きを完全に予測――大きく開いた口の内側へ向けてグラビモスのランス――重槍グラビモスを突き出す。一刹那に繰り出された攻撃に、ティガレックスは驚くと同時に怯み、思わず踏鞴を踏んで悲鳴を奏でる。
「その契り、確と承った! 為れば、全力を以て此奴を屠らせて貰おう!」
 意気揚々と告げるゲルトスに、調子の良い奴、とベルは苦笑を滲ませて口の中で呟く。
 ハートショットボウに強撃ビンを装填し、矢を番えつつティガレックスの横合いへと向けて駆けて行くベル。正面に立つのは危険だと先刻知らされたばかりだ、出来る限り奴の脇から攻撃を仕掛けねば。
 フォアンはベルと真逆――ベルがティガレックスに対して左側へ向けて走ったのに対し、右側へ向けて駆け抜けて行く。彼も、ティガレックスに真っ向から攻撃を仕掛けるつもりは無いらしい。
 ティガレックスは初撃をかましてきたゲルトスに狙いを澄まし、再び突進を行う。単調な動きではあるが、速さに加えて膂力も他の飛竜を圧倒するものだ。ゲルトスでなければ即死していても何ら不思議ではない。
 ゲルトスは再び盾を構える――訳ではなく、ティガレックスを見つめ、その頭頂目掛けて鋭い突きを放つ。放たれた突撃はティガレックスの額を貫き――火属性が付加されていた槍の効果により、貫かれた傷口から炎が噴き出る。まさかのカウンター攻撃にティガレックスは再び悲鳴を上げ、踏鞴を踏む。無論、ゲルトスは無傷のままだ。
 ベルは弦を引き絞りながら思った。――実力が違い過ぎる……ッ! と。
 思いつつ、矢を放つ。――放たれた矢はティガレックスの胴を貫く貫通矢だ。更に強撃ビンの効果で威力が増し、ティガレックスの体に小さいながらも風穴を穿つ。
 ゲルトスの一撃で怯んだティガレックスの背後へと回り込んでいたフォアンは抜き放ち様に斬りかかるが、――敢え無く硬質な鱗に刃が弾かれてしまう。だが、切断こそ出来なくとも、フルミナントブレイドには雷の属性付加が有る。刃が叩きつけられた瞬間、電流がティガレックスの総身に流れる。
 突然湧いたゲルトス以外の者共の攻撃に怒りを露にするティガレックス。前肢を力強く雪原に踏み下ろし、力を内側に溜め込むように体を丸め込む。
「回転攻撃が来るぞ!」
 ゲルトスの怒号が走った瞬間、フォアンはフルミナントブレイドを盾代わりに構え――ティガレックスがその場でぐるりと自転する攻撃をマトモに受け、弾き飛ばされる。踵を雪原に擦らせながら後退したフォアンは、辛うじて踏み止まって無事を示す。
 ティガレックスはゲルトスよりもフォアンの方が与し易いと認識したのか、正面にフォアンが来るように足踏みし、――刹那に突進を始める。
「く――ッ」
 ティガレックスの猛進を、大剣の盾では防ぎきれないと即座に判断し、大剣を一度背中に戻して、――全力疾走を始める。ティガレックスの横合いを抜けるように全力で駆け抜けるが、衝突は免れない――その瞬間、フォアンは前方に飛び込むようにして体を投げ出し、雪原を転がった。ティガレックスの牙はその足許を掠め、何も無い中空を噛み屠る。
 間一髪避けたフォアンを見て安堵の吐息を漏らすベル。一歩間違えば即死に至るであろう一撃一撃に、気が気で無いのである。
 ベルは再び矢を番えてティガレックスに照準を合わせようとして、
「――うにゃああああぁぁぁぁんッッ!!」
 ――アイルーの悲鳴のような声が雪原に木霊した。
 何事かと振り返ると、ザレアが〈アイルーフェイク〉の目許に腕を当てながら全力疾走で鍾乳洞へと逃げ帰って行く様が見て取れた。突然の出来事に何が起こったのか理解が遅れるが、やっとの事で分かったのは――ザレアが敵前逃亡を図った? と言う事実。
「ちょッ!? どうしたのよザレア!?」
 驚きながらもベルは自分の足がザレアを追って走り出すのを感じていた。彼女を一人にしておいてはいけない――それが本能で分かったのだ。
 フォアンも大剣を背負ったまま、鍾乳洞の入口へと向かって駆け出す。仲間の異常事態に、刹那に体が反応するのは彼らしいと思うベル。
「ぬぅ!? どこへ行かれるのですか!? 姫様!!」
 同じく、突然の出来事に驚愕の色を隠せないゲルトス。――だが、眼前に再びティガレックスが牙を剥き出して突っ込んで来る。即座に三人を追えず、「ええいッ、竜風情が邪魔をするなァ!!」と怒号を張り上げながら、その頭へ向けて突撃を放つ。
 その間にザレアは鍾乳洞の入口に辿り着くと、どこから取り出したのか、打ち上げタル爆弾Gを取り出し、有ろう事か入口に設置し始める。
「ちょっと!? あの子ったら何してんのよッ!?」
 ベルが突っ込みつつも入口の前に辿り着くと、――打ち上げタル爆弾Gが鍾乳洞の入口天井へと飛んでいき、――爆発。鍾乳洞の脆い部分の岩盤が崩落を始める。
 ベルとフォアンは崩落の始まった入口を駆け抜けて行く。頭から大量の氷結晶やら石ころやらが落下――頭や肩にがっつんがっつん落ちてきて、「いたたたっ!」と喚きながら鍾乳洞の中へと入り込む。
 ――刹那、ががんっ、と大きな崩落音が鳴り響いたかと思うと、――鍾乳洞と雪原を繋ぐ出入口が大きな岩盤に塞がれ、道が閉ざされた。
 ザレアはそれを確認する事も無く、更に泣きながら走って行くが、フォアンが腕を掴んで食い止める。
「どうしたんだ? ザレア。まずは落ち着いて、これでも飲め」
 そう言って、泣きじゃくるザレアの手に元気ドリンコと、加えてストローを差し出すフォアン。ザレアは〈アイルーフェイク〉を片時も外さないので、元気ドリンコを飲む際はストローを使うのだ。
「うにゃあああんっ、うっ、ひぐっ、にゃあ……にゃあぁ……」
 嗚咽を漏らしながらその場に座り込み、意味も無く〈アイルーフェイク〉の目許を擦り続けるザレア。
 泣きじゃくり続ける少女を見て、二人の猟人は顔を見合わせて肩を竦める。
 ザレアの正面に座り込み、抱き締めるようにして背中を撫で始めるベル。
「もう、あんたって子は毎回毎回滅茶苦茶して……今度はどうしたの?」
 優しく声を掛けてくるベルに、ザレアは〈アイルーフェイク〉を横に振りながら、嗚咽混じりに声を発する。
「にゃぐっ、にゃひっ……ベルしゃんがっ、オイラに国に帰れってっ」
「はぁ? あたしがいつそんな事言ったのよ?」
 ザレアが一人、鼻をグズグズ啜る音だけが、鍾乳洞に響いている。
「ずずっ、……あにゃ? べ、ベルしゃんは嘘を吐いてるにゃっ! さっき、オイラは確かに聞いたのにゃ! ベルしゃんが、オイラを国に帰す約束をするのをっ!」
「……とか言ってるけど、フォアン、あたしそんな事、言った?」
 含み笑いを込めてフォアンに振り返るベル。フォアンはそんなベルにちょっぴり意地の悪い微笑を浮かべて、簡潔に返す。
「いや、一言も言ってないな」
「うっ、嘘にゃ! 二人揃って、オイラを騙そうと――」
「嘘は吐いてないし、あんたを騙そうともしてないわよ?」
 意地の悪い笑みを浮かべているベルに、ザレアは困惑しきった顔で「にゃ? にゃにゃっ?」と何を言っているのか分かっていない風に、ベルとフォアンの間を何度も視線が行き来する。
 そんなザレアの様子を見つめながら、〈アイルーフェイク〉を撫で、ベルは柔らかく微笑んだ。
「あたしが約束したのは――パルトー王国のルカ姫を国に帰す事でしょ? 何でラウト村のザレアが帰らなきゃならないのよ?」
「にゃ……?」ぽかん、と言葉を失うザレア。
「ザレアはルカ姫じゃないんだろ? 何でザレアがそんなに取り乱すのか、俺には分かんないな。ザレアは――ラウト村の猟人なんだろ?」
 したり顔で告げるフォアン。その時、やっとザレアは彼らが何を言わんとしているのか理解できた。
 意味も無く〈アイルーフェイク〉の目許をぐしぐし拭うと、ザレアはちょっと俯きつつ、小さな言葉を漏らした。
「……ベルさんも、フォアン君も、意地悪にゃ! オイラっ、オイラ……っ!」
 ポカポカとベルの胸を叩き始めるザレアに、ベルは苦笑を浮かべつつ、〈アイルーフェイク〉の頭頂を撫でてやる。
「ごめんごめん、あたしも悪かったわよ。……でも、ああでも言わなきゃゲルトスの奴、絶対に真面目に狩猟しなかったでしょ? だから……」
「ま、ベルの言い方にも問題が有ったけど、それはもう良いじゃないか。蟠りも解けた事だし、――これからどうする?」
 二人の少女の肩に手を置きながら片膝を突くフォアン。ザレアをあやしながら、ベルはフォアンに視線を向ける。
「そりゃ、ティガレックスを狩らなきゃ。――てか今、ゲルトスが一人でティガレックスを相手にしてるんじゃ……?」
 ハッとして青褪めるベル。ゲルトスが凄腕の猟人だと言う事は先刻の動きで分かっていたが、それでも一人でティガレックスを相手になど出来る訳が無い。このままでは死者が出てしまうのでは――? とベルは本気で危惧したが、ザレアは泣き止むとその考えを否定した。
「ゲルトスはパルトー王国一の腕を持つ猟人だにゃ。――だった気がするにゃ! きっとそうにゃ! 多分、ティガレックスにゃんて一人で狩猟できると思うにゃ!」
「……それ、嘘じゃないわよね? ゲルトスをこの場で亡き者にしたいがための……」
「う、嘘じゃにゃいにゃ! 本当にゃ! ゲルトスは凄い猟人にゃ! オイラ、嘘は吐かにゃいにゃ!」
 必死になって自分の発言を真実だと主張するザレアには、いつも通り、虚偽や誇張の響きは感じられなかった。それに、彼女がそういう事を口にする娘でない事は、ベルが一番よく知っている。
「――なら、問題無いわね。あたし達はもう一頭のティガレックスを相手にしましょう。どうせ、洞窟は塞がれてしまってるしね」
「にゃにゃっ、それが良いにゃ!」
「了解したぜ。――もう一頭は今、エリア1――麓の方にいるみたいだな。急げば、相手が移動する前に辿り着けるかもだ。走ろう」
「おっけ!」「にゃーっ!」
 三人の猟人は互いに笑みを交わし合い、走り出す。
 ザレアの表情は〈アイルーフェイク〉のせいで見えなかったが、不思議とそのアイルーが笑みを浮かべているように映ったのは錯覚か、それとも――

【後書】
 まぁ、その、つまりそう言う訳です!w
 ザレアちゃん=ルカ姫と言う構図は、あくまでゲルトスさんの視点と、それを俯瞰して眺めている読者の「先入観」でしかない訳で、実際は違うかも知れない…と言う無茶苦茶苦しい言い分を書き記しておきます(笑)。
 流石に状況証拠が多過ぎて推定通り越してルカ姫だろあんた…って感じかも知れませんが、まだ! まだ確定しておりませんからね!w(まだ言うw)
 さてさて次回、第4章第9話にして第49話!「轟然たる飛竜」…いよいよティガレックス戦です! お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    そうそうこれこれw
    「誤解と和解」
    天井を壊すシーンをよく覚えていて、
    その後の3人の会話で涙出た(会話はよく覚えていなかったw
    素晴らしいタイトルとともに今回会話まで再現されたわけで、
    改めて泣かせていただきましたw

    いいよねラウト村ハンターズv

    そしてゲルトスさんの運命はっ!?

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      記憶通りの「誤解と和解」で良かったですぞ~!w┗(^ω^)┛
      天井を壊すシーンはアレです、Gameの方でもクエストによっては洞窟が大岩で塞がれているシーンが有ったのを意識して、人工的にそれをやってみよう! と思い立って入れたシーンだったりしますw
      とみちゃんの尊いお涙を頂戴致しました!w(*´σー`)エヘヘ このシーンが綴りたかったのも有ったので、そう言って頂けるとめちゃんこ嬉しいですぞ~!w

      大好きですラウト村ハンターズ!v

      ゲルトスさん大丈夫かなぁ…w

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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