2018年7月7日土曜日

【ベルの狩猟日記】045.オルトレイ【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G

■第45話
【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/

045.オルトレイ


 エリア2――雪山の麓に位置する狩場にいたブランゴを粗方狩り終え、後は鍾乳洞と雪原地帯を残す所となり、三人の猟人は鍾乳洞の入口で地図を広げて座り込んでいた。
「思ったんだけどさ、フォアン」
 ベルが地図から顔を持ち上げて視線を向けると、フォアンは「どうした?」と飲んでいた元気ドリンコから口を離す。
「あんたの〈千里眼〉で、大型モンスターがどこにいるか分かるんじゃないの?」
「ああ、分かるぞ」
 間。
「……まぁ、あたしも今まで気づかなかったから文句は言いたくないけど……何で気づいていながら何も言わないかなあんたは!? それが有れば、どんな大型モンスターがいるか、どこにいるか、すぐに分かるじゃない!!」
「どんな大型モンスターがいるか、って言うのは、あくまで鳥竜種か、牙獣種か、甲殻種か、飛竜種かって言う感じの、種類くらいしか分からないんだぜ。それにティアリィさんも言ってたじゃないか。飛竜がいるかも知れないって」
「……え、じゃあやっぱり……飛竜がいるの?」
「ああ、それも二頭だ」
 ベルが思わず四つん這いになって項垂れる。
「……ねぇ、何かあたし達って、つくづく二頭に縁が無いかしら……?」
「爆ぜ応えが有るにゃね!!」握り拳を作って嬉しげにザレア。
「初めて聞く単語なんだけど!? 何、爆ぜ応えって!? どんな時に使うのよ!?」
「爆破のし甲斐が有る時に使うのにゃ! 爆弾をたっぷり持って来といて良かったのにゃ♪」
「……飛竜はあくまで爆破の対象でしかないのね……」遠い目になってしまうベル。
「一頭はエリア3――この先にいるみたいだし、もう一頭はエリア8――雪原地帯の、それも頂上付近にいるのは分かってるんだが……どうする? 確認してみるか?」
 どこか自信無さ気に尋ねてくるフォアンに、ベルは「あったり前じゃない!」と意識を現実に戻して、何を当然の事を、と言わんばかりに応じる。
「それとも何? どんな飛竜がいるか分かってるの、あんた? ……まさか、フルフル二頭とかじゃないわよね?」
 流石にそれは無いわよね、と言いたげに苦笑するベルの表情が凍りついたのは、次の瞬間だった。
「恐らく――ティガレックス二頭だ」

◇◆◇◆◇

 エリア3の鍾乳洞は、エリア2の草地から入ると、鍾乳洞の上部に出られる。上部は細い道が奥の鍾乳洞へと繋がっており、その小道は半円を描くように、鍾乳洞の上部を回っている。中心は大型モンスターが眠る場所として使うのに充分な広さが設けられている。中心から上部の通路へ戻るには、過去に猟人が造った石の突起を使うしかない。中心と上部の通路までの高さは十メートルと言った所だろうか。高所恐怖症の者にとっては目が眩むような高さが有る。
 鍾乳洞の中央に、褐色の鱗と甲殻を纏う、巨大な塊が蹲っていた。大きな体は猟人の五倍以上は有ろうか。鋭い爪を有する前肢――飛竜種では当然有している翼は、走るための筋肉が異常に発達して、まるで筋肉の塊とでも言うべき形をしている。全身を斑に覆っている青い筋は恐らく血管だろう事が分かる。
 ――ティガレックスは見下ろしている猟人に気づく事無く、彼にとっては狭い鍾乳洞内を優雅に闊歩していた。
「…………あれが、もう一頭いるの……?」
 三人の猟人は鍾乳洞上部に走る細い通路の上に寝そべり、物音を立てないようにしてティガレックスの様子を観察していた。
 ベルの隣に寝そべるフォアンが小さく首肯したのが分かり、ベルは小さく嘆息する。
「あんなの、あたし達の手に負えるの……? 流石に無理じゃない……?」
「それはやってみるまで分からないさ」フォアンが不敵に微笑を浮かべて応じる。
「大丈夫にゃ! オイラが確実に爆破して仕留めてみせるにゃ! 爆弾使いの名に懸けて!!」息巻いて喚き散らすザレア。
「しーっ! ザレア、しーっ! 分かったから静かにね静かに!」
「にゃにゃっ」
 声を出来る限り小さくしたベルの必死の呼びかけに、ザレアは思い出したように〈アイルーフェイク〉の頭を押さえ、小さく縮こまる。
 再びティガレックスへ視線を向けるが、こちらに気づいた様子は無い。ホッと胸を撫で下ろすベル。
「……一度、村に戻りましょう? まずは準備を確り整えてから。良いわね?」
「了解です、隊長」「分かったのにゃ!」二人とも小さな声で応じる。
 二人の様子を確認してからベルも頷き、三人はその場を後にした。

◇◆◇◆◇

 三人は雪山を後にし、ラウト村ではなくカラスタ村へと向かった。
 片道で二日半掛かる道程を、アプトノスに無理を言わせて一日半で辿り着き、事の次第をカラスタ村の村長に説明した。
「なるほど……カラスタ村は現在、ティガレックスの脅威に晒されてる訳じゃな!?」
 村長の老爺――オルトレイは皺だらけの顔を緊張感に引き攣らせながら「かぁッ」と入歯を吹き飛ばした。
「村長、入歯が……」
「ふがーっ!」驚いたような声を張り上げ、飛んで行った入歯を口に嵌め直すと、「もごもご……こいつは失敬。くぅ……ワシがもう少し若ければ、ティガレックスなど片手で捻り潰してやるのじゃが……歳には勝てんの~」
 ふぁっふぁっふぁ、と快活に笑う老爺。緊張感が欠落しているようだが、彼はこれでも何十年もカラスタ村の村長を務めている。この程度の危機では最早動じる事さえ無いのだろう。
 オルトレイは完全に曲がった腰を、杖を突いて姿勢を整えている。頭髪は最早一本も無く、磨かれた灰水晶のように光り輝いている。そのあまりの眩しさにベルは目を細めてしまう。
「村長って昔、猟人だったの?」
 気さくに話しかけるベルだが、初めからこうだった訳ではない。以前、カラスタ村とラウト村を訪れる行商人が雪山に行ったまま消息を絶った際、ベル達が捜索して見つけ、更に雪山に棲みついた飛竜フルフルと大猪ドスファンゴを狩猟した後、村長と話す機会が有ったのだが、それ以来、村長は自分に対して礼儀は要らないと名言しているのだ。ベル自身、相手に敬意を払う事が苦手だったためすぐに受け入れたが、流石にカラスタ村の村民の殆どが村長の事を「ハゲ村長」と呼んでいた事には驚いた。
 オルトレイは「うむ」と震える動きで頷き、再び入歯を落とした。
「ふはしはひょりゃーもう、すひょいひゃんひゃーひゃっひゃふぉい!」
「村長、入歯が外れてます」
「おっと、もごもご……。……で、何の話じゃったかいのう?」
「ティガレックス! ティガレックスが雪山に現れたんですよーっ!」
「おお、そうだったそうだった! いかんなぁ、すっかり耄碌してしまったわい……。で、何の話じゃったかいのう?」
「村長、ワザとですか? ワザとならいい加減キレますよ? 村長の頭であろうが引っ叩きますよ?」
 今にも殴りかからんとするベルを羽交い絞めにするフォアン。「落ち着けってベル。相手は村長だぞ。年長者だぞ。一応依頼主だぞ」
「そうじゃそうじゃ! 年寄りを労わらん若者は許さんぞ! このオルトレイ、耄碌しても力だけは猟人に負けんのじゃ! やーいやーいっ、あほーあほーっ」自分の尻を叩きながら「あっかんべー」をしてくるオルトレイ。
「離してフォアンッ! あの腐れジジイだけはあたしの手で葬り去らなきゃいけないのよッ!! 奴だけは確実に仕留めなければァァァァ―――――ッッ!!」
「にゃー、皆さん楽しそうだにゃ~。オイラも混ぜて欲しいのにゃーっ!」
 テンヤワンヤだった。

◇◆◇◆◇

 騒ぎが落ち着いた後、村長の頭に大量に手の痕が付いていたが、誰もツッコまなかった。
「ではまた、依頼を頼んでも良いじゃろうか……。報酬は……」
 もごもごと、入歯の調子が悪そうに口ごもる村長――オルトレイ。それを見ると、ベルは苦笑を浮かべて先に言葉を発する。
「それじゃ、依頼の受注金が十zで、報酬は百z――で、どう?」
「ふぉあーっ!?」思わぬ低額に、オルトレイの口から入歯が吹き飛ぶ。慌てて入歯を詰め込むが、その顔からは驚きが消えていなかった。「そ、そんな端た金では回復薬を一個買うだけで消えてしまうぞ……!?」
「まあね。……でも、それで村が一つ救えるなら、あたしはたとえ一zでもやるわ」
 ニッコリ微笑むベル。だが、フォアンもザレアも、彼女が無理している事に気づいていた。本当はもっとお金が欲しいと思っているのは言うまでも無い。けれど、お金を出せない程に村は財政難に見舞われていて、更にそんな村を巨大なモンスターが襲うかも知れないという条件が重なれば――ベルは過去の惨劇を思い出さずにいられないのだろう。
 無理をしているのが見え見えなベルの肩に、ぽん、と手を置くと、フォアンは彼女が振り向くのを待って、微笑んだ。ベルはその微笑の意味を何と無く理解して、苦笑を返す。
「おお……流石は我らが救世主様じゃ……! ワシが村民全員を代表してお頼み申す、どうかっ、どうか村を、モンスターの手から守ってくれ……!」
 その場に跪いて頭を垂れる村長に、ベルは確りと頷いてみせた。
「任せといて、村長。――必ずや依頼を完遂するわ」

「……のう、ベルや?」
「ん? どうしたの村長?」
「どうせなら一zで受けてくれぬかの?」
「嫌です」
「ひょ!? さ、さっき一zでも受けてくれるって……」
「嫌です」
「う、嘘吐きじゃ! ベルは――」
「嫌です」
 報酬の値下げ交渉は断固として認めないベルなのだった。

【後書】
 隣村の村長初登場ですが、確かこの人の出番、シリーズ通してここだけだった気がします…(笑)。
 綴っていてめちゃんこ愉しいキャラクターだった記憶が有りますw てか読み返しててニヤニヤが止まりませんでしたww 何て言うかアレですね、こういうお茶目なお爺ちゃんってわたくし好きなんですね!w
 さてさて次回、第4章第6話にして第46話!「ゲルトス」…今章最後の新キャラです! わたくしなりに気張って綴ったキャラクターですので、どうかお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    村長!!先生こういうキャラ大好きですよねw
    によによしながら綴られているのが手に取るようにわかりますw
    もっていかれないで済みましたw

    次回も新キャラ登場なのですか!しかも気合入ってるって…
    やばそうだぞぅw早寝早起きだっっっvv

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

    返信削除
    返信
    1. 感想有り難う御座います~!

      分かっちゃいましたか!w わたくしこういうキャラが好きで好きで、ついつい登場させちゃうんですよね!(笑)
      綴ってる最中もによによしてますし、綴り終えて読み返してもまたによによしますし、更に今読み返してまたによによしてますからね!ww
      もっていかれないでヨカターw 併しまだ安心できない…!(;゚д゚)ゴクリ…

      次回のキャラは割かしシリアスチックなキャラクターなのでやばいかもですね!w
      早寝早起きを入念に頼むっっ!

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

      削除

好意的なコメント以外は返信しない事が有ります、悪しからずご了承くださいませ~!