2018年8月8日水曜日

【滅びの王】42頁■神門練磨の書12『生きたい』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2007/12/27に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

■第43話

断さん作
カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/

42頁■ 神門練磨の書12『生きたい』


「――どういうつもりだ、スイカ?」
「……?」
目覚めた……つまり現実世界ではオレは眠りに就いて、夢の世界……『向こうの世界』にやって来たという感覚を味わって、――それから、やっと今の事態に気づいた。
「……ミャリ? お前……何やってんだ?」
オレは布団から起き上がって、視界に映る異状を認めた。
僧侶姿の少女が、起き抜けに違いない少年が握っている鞘に向かって錫杖を振り下ろし、武器と武器がぶつかって、拮抗していた。
少女は――一瞬分からなかったけど、紛れも無く、さっきまで現実世界で話していた崇華だった。
崇華が、ミャリに攻撃を加えてる。何故? 何でこいつは、ミャリに喧嘩を売ってるんだ?
「見て分かるだろー? 奇襲に遭った」
「奇襲って……そいつ、崇華だろ!? 何で……戦ってんだ!?」
ミャリの話では崇華は仲間だった筈だ。オレがこの世界に来て始めて見る崇華の顔は、やけに焦燥で彩られていた。何か、焦って事を急かしてるような、そんな表情をしてる。
こんな崇華を、初めて見る。
「えとえと……練磨は、動かないでっ!」
「崇華……?」
「練磨は、この世界を敵に回しちゃったんだよ? えとえと……悪しき力が、練磨を悪い方に持ってっちゃうんだよ!」
崇華の、いつものよく分からない言葉の羅列が、今だけは何と無く悟れた。
オレの……《滅びの王》としての力が、オレ自身を悪い方へと持っていく……? それはつまり……
「オレは……これから悪くなるのか?」
「うんっ、そうだよっ!」
「なるかァァァァ!」
即座に突っ込むと、崇華はビクッと身震いして、ミャリの長刀から錫杖を引っ込ませた。
「えっ? えっえっ、練磨……?」
「確かにオレは《滅びの王》だとか言われてるけどな、オレには世界を滅ぼすつもりなんざねーんだよ! だから、悪くなるつもりも、滅ぼすつもりも、これっぽっちも無い! それとも、崇華。お前は、オレがそんな事をする奴に見えるか?」
「うん」
「即答かよ……」
それはそれで酷い。つか、すっげー傷ついた……
突っ込みながらも、ちょっと立ち直れない感が漂っていると、崇華が錫杖をブンブン振り回して、
「練磨は悪い事をしない人だって、わたし知ってる!」
「じゃあ……?」
「でもでもっ、《滅びの王》は、世界を滅ぼしちゃうんだよぅ? そんな力を持った人は、絶対におかしくなっちゃうよ!」
……崇華の言いたい事は、分からないでもない。
人間、生きていく上で必要な力以上の強大な力を手にした時、精神がマトモではなくなる。つい使ってみたくなったり、試してみたくなったりするモノだ。それによって弱き者を苛める事だって、力を持たない者に対する脅しに使う事だって有るかも知れない。それが、人間の愚かしい所だ。
オレは絶対にそんな奴じゃない! ……なんて、偉そうな事は言えない。きっとオレにもそういう部分が有って、どこかで歯止めが利かなくなる力を放出する事だって有るだろう。力……それは人を魅了し、堕落させる。
オレだって《滅びの王》の力を知ってしまったら、もしかしたらと言う事だって、充分に考え得るんだ。
「……オレは、そんな事はしねえ。そんな……おかしくなんてならねえよ」
「えとえと、……無理だよ、練磨……。《滅びの王》の力は、絶対に世界を滅ぼしちゃうもん!」
「崇華は、オレが信じられないのか?」
えとえと、と口ごもって、それ以上言葉が続かない崇華。
でも……きっとそれは良心だ。オレを信じる信じないではなく、信じなければ嫌われるとか、そういう感情が働いているんだと思う。だから、『《滅びの王》をこのままにしておけば世界は滅ぶ』と言う考えと、『練磨に嫌われたくない』と言う考えが拮抗しているんだ。……オレと世界を天秤に掛ける辺り、崇華らしいと思うが。
「えとえと……。……わたしだって、練磨を信じたいよぅ? でも、《滅びの王》の力は……」
「なら、こうしないか? もし、オレが力を見せたら、その時は崇華の好きにすれば良い。焼くなり煮るなり倒すなり。でも、今はまだ見ていてくれねえか? オレにはまだ、やる事が有るんだ」
「……」
崇華が、錫杖を両手で握り締めて黙りこくる。
……ここで崇華が取引を呑まなければ最悪、戦闘も余儀無いだろうと、オレは推測していた。出来る事なら崇華と敵対したくない。この世界でも仲良くやっていきたい。それは叶わぬ望みだろうか? 
「……じゃ、じゃあじゃあ、……何でも、して良いんだね……?」
「ああ、男に二言は無いッ」
「……う、うん、分かったよぅ。それなら……良いよぅ……」
そう言いつつ、崇華の顔が真っ赤に染まりつつあるのは何故だろう? あいつは、オレが《滅びの王》の力を使ったら何をする気なんだろう!?
ちょっとした恐怖に駆られながらも、オレはどこかで安堵していた。やっぱり、崇華だ……
「……わたしも、仲間になって良いの、かな……っ?」
ミャリが面倒臭そうに布団に寝転びながら、オレに視線を向ける。……やっぱり、決定権はオレに回ってくるらしい。
オレは当然の答を口にした。
「当ったり前だろ? 崇華は、オレの仲間だぜっ!」
「う……うんっ♪」
「じゃあオレはスイカの先輩だな。今度からミャリ先輩と呼べ」
「はい、ミャリ先輩!」
「いや、そこは良いから……」
何はともあれ、これでオレはようやく、現実世界と夢世界が繋がったと確信した。
崇華が仲間になった! ……なんて、ちょっとゲーム風に。

【後書】
「ん? 今、何でもって言ったよね??」を地で行く物語でした(笑)。練磨君と崇華ちゃん立場逆では???感で一杯ですが、当時のわたくしグッジョブ!! としか言いようが無い展開ですね!w
と言う訳で今回から【滅びの王】下巻に入っていく訳ですが、上巻最後で突然生じたヤバそうな展開も、たった一話で解決しそうで、何と言いますか、当時からそうだったと気づきましたが、わたくし問題が生じた後、可能な限り長引かせないようにする癖が有るようですw ドキドキが持続するとわたくしの心身が持たない! と当時から気づいていたのかも知れませぬw
そんなこったで遂に崇華ちゃんが正式加入で、更に賑やかになった《滅びの王》一行の明日はどっちだ!? 次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    後書最高ですw
    「ん? 今、何でもって言ったよね??」
    マジでグッジョブ!!

    崇華ちゃんほんといい娘なんだなぁw
    他を寄せ付けぬ圧倒的な天然感と行動力…只者ではないですw

    やっぱり気になるのは鈴懸さんだなぁ。
    わたしの妄想の中で一番ぼんやりしているのですが、
    なにか重要なカギを持っているような気がしてなりませぬ。

    疑問は継続中!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      最高だなんて…!w(*´σー`)エヘヘ
      「ん? 今、何でもって言ったよね??」
      これはもう綴るしかないなと!ww

      崇華ちゃんいい娘過ぎてほんと当時のわたくし素敵だなーって!w
      他を寄せ付けぬ圧倒的な天然感と行動力www全くその通りでして!ww ヤバいですよね!ww

      鈴懸さんの情報はまだまだ少ないですからね…!
      今後どういう風に絡んでくるのかも、ぜひぜひ楽しみお読み頂けたらと思います…!

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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