2018年8月28日火曜日

【ベルの狩猟日記】056.視える人の意見【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G

【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第56話

056.視える人の意見


蝋燭一本分の光源しかない酒場は、ひっそりと音を潜めている。
じじ、と蝋燭の立てる微かな音だけが響く静寂に満ちた空間に、フォアンが声を投じていく。
「昔から、皆が幽霊って言う奴が視えてるんだけど、あいつらは皆が言うほど怖い奴らじゃない。俺が視た事の有る幽霊って言うのは皆、影から見守っている奴らばかりだったよ」
フォアンの独り言染みた台詞に、背中に汗を掻きながらベルが応じる。
「……もしかして、今までずっと、……幽霊とか、視えてたの?」
「ああ」
「どどどどこにいたの!? え、それとも冗談? 冗談よね!?」
焦燥に駆られるように周囲を見回すベルに、フォアンは苦笑を呈する。
「生憎と冗談じゃないんだ。それに、何度も言うけど、幽霊には――特に猟人の霊には、悪い奴はいないみたいだ」
「猟人の霊……にゃ?」ザレアが小首と共に〈アイルーフェイク〉を傾げる。
「狩場でよく視かけるんだ。防具を纏っているし、武器も持ってるから、たぶん、死んだ猟人が霊魂になって漂ってるんだろーなー、って視てる。そいつらは、いつも俺達を何も言わずに見守ってるんだ」
ゾッとする話だと、ベルは身震いする。そんな事は気にも掛けた事が無かったが、考えてみると狩場で猟人が死ぬのは当然だ。分不相応なモンスターとの対峙で狩られる猟人は実に多い。自分の力量を見誤った事が原因の死など、一般人が思っている以上に多い。だとすれば、狩場が無念を晴らす事の出来なかった猟人の霊で溢れ返っていても不思議ではないのかも知れない。
ベルが青褪めているのを見たフォアンは、微苦笑を浮かべて更に言を繋げる。
「でも、俺達がモンスターを討伐すると、それで満足して消える霊もいるんだ。たぶん、俺達が倒したモンスターに殺されたんだろうな。自分の無念を晴らしてくれた俺達に感謝する霊も視た事が有る。……たぶん、霊って言うのは未練が有るだけなんだ。自分が倒せなかったモンスターが、誰かに危害を加えるかも知れない。そういう事が気になって、あの世に行けないんだと、俺は思ってる」
皆、何も言わなかった。フォアンが言っている事が正しいのか、それは分からない。ただ、幽霊に対する見方が少し変わった。胆を冷やすのではなく、霊になってまで遺された皆の事を案じている猟人の霊が存在する事に、少しだけ胸が温まったのだ。
「皆は怖い、怖いって言うけれど、あいつらは怖い存在じゃないと、俺は言いたいんだ」
昔からそういう存在を直視していたフォアンだからこそ言える言葉なのだろう。誰も反論するつもりは無かった。
「……それにしても、本当に幽霊なんているのね……あたしは単なる夢物語かと思ってたけど……」
寒くなった肌を摩りながら、ベルは苦笑する。
「ああ……僕も実は半信半疑だったけど、まさかこんな身近に視える奴がいるなんてな……驚きだよ」ウェズも同感とばかりに頷く。
「フォアン君は、子供の頃は幽霊さんを見ても怖くにゃかったのかにゃ? オイラだったら、怖くて外に出られにゃくにゃっちゃいそうだけどにゃー」未だに震えながら呟くザレア。
「あぁ、確かに小さい頃は怖かったなぁ。でも、お袋に言われてからは、そういうものだと思って、気にしなくなったな」微苦笑を滲ませるフォアン。
「……もしかして、フォアンのお母さんも、……視えた、の?」
ベルが恐る恐る尋ねると、フォアンは確りと頷いた。
「あぁ。どうやら遺伝らしい」
「そうなんだ……。でも、理解者が身近にいるって、嬉しいわよね。もしお母さんがそういうものが視えない人だったら、フォアンはもしかしたら今とは全く違う奴になってたかも知れないし」
ベルがはにかむようにして笑むと、フォアンも応じるように微笑を浮かべた。
空気が和んできた所で、ウェズが「さーて、それじゃあ納涼怪談大会は終了かなー」と言って伸びをする。
「そう言えば、こんな話を聞いた事が有ります」
と、蝋燭の火を消して照明を点け直そうとした時、初めてティアリィが口を開いた。
「怪談などの怖い話――幽霊などの話をすると、そういったものを呼び寄せてしまうとか。噂をすれば影、と言う諺も有りますしね」
「ちょ、ティアリィさん……最後の最後にそれは無いですよ~。今、幽霊は怖くないんだよー、って良い感じに話が納まったのに……」ウェズが思わず苦言を呈する。
「ふふふ、申し訳ありません♪ 誰も私に話を振ってくれないので、ちょっと拗ねてみただけです♪」
極上の笑顔を浮かべているというのに、何故か飛竜が憤怒の気を発しているような重圧が、その場に居合わせた全員に圧し掛かった。
「あ、あれ……何か別の意味で恐怖を覚えてるんだけど……」
「まるでティガレックスに睨まれたポポになった気分だな」
「怖いのにゃーっ、ティアリィさんごめんにゃさいにゃーっ」
「すすす済みませんティアリィさんッ。僕が悪かったですッ、だから落ち着いて下さいぃぃぃぃッッ!!」
ダラダラ冷や汗を掻いて視線を逸らすベル、完全に体が硬直するフォアン、ワタワタと手を振り回すザレア、ジャンピング土下座をするウェズ、と続いた。
そして最後にコニカが、
「もうこれ以上怖がらせないで下さい~っ、このままじゃもうお外に出られません~っ」
涙目で泣訴するコニカを見て、ティアリィもつい苦笑を浮かべて許してしまうのだった。

【後書】
モンハンの世界観で幽霊さんがいるとしたらこんな感じかな~とふわふわ妄想した結果がこれでした(^ω^)
実際、幽霊さんの存在する理由とか妄想し始めると、大体「怖がらせる~」系ではなく、「誰かにこんな想いを伝えたい!」系の、何と言いますか、映画「黄泉還り」を見てっってなります(笑)。※突然の宣伝!
さてさて、ティアリィさんがとんでもない爆弾を投下して次回っっ。サルベージまだ終わってないのでこれから全力全開でサルベージです!!! お楽しみに!!!w

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    霊感とはまるで無縁のわたしですが、
    一度だけ不思議な体験をしたことがあります。
    それは小学生の時かわいがっていたポメラニアンが亡くなった時。
    もう老衰で長くはないですと言われていた子だったのですが、
    授業中に、おやつをねだる声が聞こえたのです。
    子供心に「あっ!」って思って学校が終わると走って帰宅しました。
    ちょうどその声が聞こえた時間ぐらいに亡くなったそうです。
    空耳だったかもしれません。
    でも…想いを伝えに来てくれたって思いたいですよね。

    ティアリィさんヤバすぎぃーw
    そしてサルベージガン( ゚д゚)ガレ
    なんか今回は感想じゃないですね申し訳ないw

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      霊的なモノを感じる…と言うよりも、こう、何と言いますか、言い表し難いのですが、ポメラニアンのその子が、最後にとみちゃんに言い残した言葉が有って、それがふっととみちゃんに届いたのかなぁ、とか、妄想してしまう私なのでした…
      確かに、「空耳だよ!」と言われたらそれまでなんでしょうけれど、絆と言いますか、親しい子との繋がりを感じるエピソードのように感じましたので、大切に残しておきたいお話だなぁと、他人事ながら、すんごくほっこりさせて頂きましたw お話して頂きありがとうございます…!
      あとこれはわたくしの勝手に思ってしまった、言わばとみちゃんの思い出に対する感想なので、聞き流して頂きたいのですが、きっとその子は最後に、とみちゃんに「おやつ欲しいです!」って言って、旅立たれたんじゃないかなぁって…! きっと最後にとみちゃんからおやつを貰って行きたかったんじゃないかなぁって…! そんな気がしました。お目汚しかも知れませぬが、どうしてもそれだけ、わたくしの想いをそっと添えさせて頂きます(*- -)(*_ _)ペコリ

      ティアリィさんは何だかんだ言って一番恐ろしい人なんですよね…!ww
      そしてサルベージがんがります!(`・ω・´)ゞ
      いえいえ~! とっても素敵なお話を有り難う御座いました! 霊的なお話ってすぐに恐怖に直結するようなお話が散見されますけれど、とみちゃんのように、誰かをほっこりさせられる霊的なお話がわたくしとっても大好きでして、その想いでこの章を綴ったと言うのも有りますから、感想の場でこんな貴重なお話を聞けるとは思わず、とっても嬉しく思っております! 改めて感謝を!
      って何か嬉しい気持ち爆発して文字数が大変な事に!w わたくしの方こそ短く纏め切れず申し訳ぬい~!w

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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