■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/02/05に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。
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■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公
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小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/
■第50話
49頁■神門練磨の書13『孤児院』
……頭が重い。
つか、この感覚は重いと言うより……痛いとか、怠いとか、そういうのに、近い……
動きたくない。でも、暗闇に沈んだままだと、心まで黒く染まりそうで、何だか嫌だった。
瞼の裏は黒かったけど、それが透けてくる程に外は明るいみたいだ。……朝なのか? ……分からない。ただ、ぼんやりとしていて頭が上手く機能しない。考えても考えても、闇の坩堝に落ちていく。
……オレ、どうなったんだっけ。
よく思い出せない。記憶が前後してる気がする。
まずは、思い出せる所から思い出そうか。……それすらも億劫になって、ただぼんやりと闇の湖に沈み続ける。
何で起きないんだろう……そう思う心が有った。
起きない。て事はオレ、寝てるのか……? ……それすらも分からない。起きてるのか、寝てるのか、何も。
闇の中だけど、光は見えている。……いや、感じている。
闇の中で光を浴びている、と言う感覚なんだろうか……?
起きたい。でも、起き方が分からない。どうすればこの闇から解放されるのか、分からない。
……そうだ、オレ……崇華と逢ったんだ……
ようやく崇華との邂逅を果たしたオレは、浮かれてた。……んだと思う。それでちょっと、何かヘマをしたんだと思う。……だから今、オレはこんな事になってるんだろう。
ちょっとだけ思い出せてきた。……変な奴が現れたんだ。猫の面を被った、奇術師然とした、変な奴。そいつがオレ達に喧嘩を売ってきて……それで……
思い出せてきて、同時に怖くなってきた。このまま思い出せば、きっと後悔する。心のどこかで、そんな危険信号を発してる部分を、オレは認めた。これ以上、思い出しちゃいけない。そんな事をすれば、オレは……
オレは……
――殺されたんだ。
……
……
……
……――そうだ、あの変な奴に、頭を、貫か、れ、て……っ、
……もう、思い出した。死んだんだ、あの時。それで今、こんな所にいる。
……バカな事をした。今更後悔したって遅い。それは分かってる、分かってるけど、でも――!
……手遅れだって事も、今更何を思った所で何も変わらないって事も、全部分かってるつもりだ。
それでも……またやり直したいって、もう一度だけチャンスをくれって、叫んでる。胸が張り裂けそうで、泣きそうで、怒られてもいいから、ちょっとだけ痛くてもいいから、もう一回だけ……!
……都合が良過ぎるんだ、オレは。そんなの、出来る訳が無い。出来たとしても、オレはまた間違える。何度でも、生きてる限り、間違いばっかりだ。それでもオレは、もう一度蘇りたいと、願ってる。
誰でも願うと思う。自分の人生がいきなり終わってしまったら、どんな人でも、きっと……。
……ここで死んでも、もしかしたら良かったんじゃないかって、そう思えてきた。
オレがここで死ぬ事によって、夢の世界は滅亡を免れたんだ、それは喜ばしい事だ。オレ一人の命と引き換えに世界が救われたのなら、どれだけ安上がりだろう。
……だけど、だけれどっ、オレは生きていたかった。世界を滅ぼす存在だと罵られても、どれだけ蔑まされようと、オレはあの世界で生きていたかったんだ! ……究極的に世界を滅ぼしてしまうのだとしても、オレは生きていたかった。それこそ、世界が滅んでも良かったと思う位だ。
自己中心的過ぎると、自分でも分かる。自分のために世界を滅ぼしてしまうなんて、そんな人が生きていて良い筈が無い。……それでもオレは生きていようと自分に誓いを立てたんだ。何が遭っても、生き抜きたかった。
……どれも過ぎ去った事だ。どうしようもない。
ウダウダと思っていて、……そう言えばこの光は何だろうと、気づいた。
闇の中にいる筈なのに、体を包み込むような光を感じる。……温かくて、太陽でも浴びているような心地良さが有って、母体の中の胎児に退行したような錯覚を感じる。癒されるとは、きっとこんな状態を指すに違いない。
温かい……と思いつつ、オレはゆっくりとだが、『起きる』という行為を思い出せた。どこをどうすればいいのか、徐々に脳裏に浮かび始めて、オレはそれに倣って体を動かし始める。エンジンを掛けるためにはキーを回すと言う、単純な行為すら思い出せなかった先程に比べて、今はアクセルの吹かし方まで鮮明に分かり出したのだ。
瞼を上げる……その行為が億劫になりそうな程ゆっくりで、――光に包まれていたのは、現実だったと知った。
オレは天を見上げて寝転がっていた。視界にはどんよりとした雲が空を覆っていて、いつ雨が降ってきてもおかしく無さそうな天候が映っていた。……なのに、どこからか温かな光を感じる……。
「……ここ、は……っ」
起き上がろうとして、――全身から悲鳴が上がり、また頭を戻した。……硬さ加減から、オレは地面に何も敷かずに寝かされている事に気づいた。いつも枕をして寝ているからだろうか、妙に寝心地が悪い。
「ようやく……気が付いたわね」
聞き覚えの有る声が間近で聞こえ、オレは跳ね起きようとして――激痛が走って寝転がったまま声の主を探す。
「咲希かっ?」
「他に誰がいるってのよ、全く……」
確かに咲希の声だったが、妙に疲れたような声音で、いつもの快活な口調ではなかった。やけに弱々しく感じる。
「オレ……どうなったんだ?」
さっきも考えていたけれど、オレは黒一に殺された筈だ。散々殴られて、最後に脳天にステッキを……っ、
背筋に冷たいものが滑り落ちて、ぞくっとした。あの感覚は、きっと忘れる事を許されないだろう。それだけ恐怖を感じ、……絶対的な『死』を、頭に、体に刻み込まれた。
頭を触るのが怖かった。そこに……穴が開いていそうで。何より、触れた途端に自分が壊れてしまいそうで。
「……死んだのよ、あんた」
咲希が弱々しい声で応じる。
光が徐々に薄くなっていくのが分かり、それが何故か、咲希が発しているものなんじゃないかって思えて、慌てて言葉を繋いだ。
「じゃあ、咲希がオレを生き返らせてくれたのかっ?」
「違うわ……あんた、何も憶えてないの?」
光が消えていく。それがオレには、咲希が死んでしまうんじゃないかって、不安にさせた。
何も憶えてない? ……黒一に脳天を貫かれた後の記憶は、無い。恐らくオレは、死んだんだ、その時。だから、その間の事は何も思い出せない。死んでいるのに憶えている方が、逆におかしいだろう。
思いつつ、光が消えた事を察したオレは、悲鳴を上げる体に無理を言わせ、起き上がった。
オレの腹の上に、ゆっくりと落ちてくる咲希を見た。
「咲希っ」
オレが慌てて両手で受け止めると、――全身が軋んだ。咲希が重かったんじゃなくて、寧ろ予想以上に軽くて驚いたけれど、そうではなく、体を動かした事によって、体が絶叫を発したのだ。……情けない話だけど、受け止めた姿勢のまま、体が動かなくなってしまった。
手の中に舞い降りてきた妖精を見て、……凄く弱ってるのが、分かった。
「大丈夫、か……?」
「……見て、分からない……? はぁ……」
溜め息、と言うより苦しげな吐息を漏らした咲希は、オレの手の中で寝転がる。
「……ちょっと、魔力を使い過ぎたわ……少し眠るから、変な事、しないでよね……」
「誰がするかッ!」
「それと……〈風の便り〉は使わないで……」
「え? 何で、だよ?」
「……」
返答は無し。
オレの手の中で、咲希は猫のように体を丸めて、……眠ってしまった。
【後書】
にゃんと! 何故か生きていた練磨君なのでした!
咲希ちゃんが何かしてくれたように思えますが、実はこの謎、この物語上で明かされる事の“無い”謎だったりします。何で練磨君生き返ったの…?? と思わずにいられない方がいらっしゃるかと思いますが、最後までお読み頂いた時に、搔き集めた情報で「もしかしてこういう理由だった…?」と推測して頂くのが、この謎を解く最大のヒントになります(要は投げっ放しw)。
ふんわりと匂わせる程度の情報自体は物語に鏤められている筈なので、読者様各々の妄想で愉しんで頂きたい要素の一つです。け、決して丸投げした訳じゃないんだからね!w
そんな訳で何故か生き返った練磨君の新しいお話が始まります。サブタイトル回収はもう少し先…って言えるぐらいには、またしても長めのエピソードですw お楽しみに~♪
更新お疲れ様ですvv
返信削除「あれれ? お、お前…???」
赤い〈風の便り〉まで送付されたのにぃ~
でもですね…よかったですよw
さらに、とっても楽しそうな謎解きをぶん投げられたりして
読者冥利に尽きるってもんですね(謎
咲希ちゃんここのところ登場してなかったから、
またおやすみ中なのかと思ってましたがしっかりサポートお疲れですv
早いとこ目を覚ましてもらってまた夫婦漫才シーンがみたいですw
意味深なサブタイトル…気になります。
疑問はすべて継続中!
今回も楽しませて頂きましたー
次回も楽しみにしてますよーvv
感想有り難う御座います~!
削除そうなのです!w その台詞の意図がやっと判明しました!(笑)
とっても楽しそうな謎解きと言われてほっこりしております!(´▽`*) ぜひぜひのんびりと謎解きを楽しんで頂ければ幸いですぞ~!
そして咲希ちゃん! この子もアレなんです、普段は全然活躍しない上に、出てくる度に練磨君とやんややんや騒ぎまくるのですけれど、こういう、実は活躍してるんだぞ! って風に出てくるのがもー堪らない奴です!w
ですね! また夫婦漫才シーンが出てくるまで楽しみにお待ち頂けたらと思います!(ニッコリ!)
意味深なタイトルはそのうち回収されますが、もう少しだけ楽しみに妄想して頂けますように…!w
今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
次回もぜひぜひお楽しみに~♪