2018年9月4日火曜日

【ベルの狩猟日記】057.ミャオ【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G

【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第57話

057.ミャオ


 そして、本当に蝋燭を消す直前だった。
「お邪魔しま~す~」
 と、全く知らない者の声が響いたのは。
 流石にその場に居合わせた全員が身構える。本物の幽霊が現れたと思ったのだ――尤も、その声があまりにのんびりとした穏和な声だったので、すぐに違うと気づいたが。
 音源を辿ると、いつの間に入ってきたのか、酒場の戸口に人影が見えた。蝋燭の僅かな光源でも分かるのは、人影が女性だと言う事と、猟人である事。
 皆が女猟人を注視している間にティアリィは蝋燭の火を消し、照明を点ける。瞬く間に光の軍勢の支配下に置かれた世界で、女猟人はその姿を衆目に晒した。
 黄色い蝶を連想させる防具――パピメルシリーズと呼ばれる防具一式で身を固めている。その外見からも分かる通り、大量の虫の素材で生産された防具で、とても煌びやかだ。勿論、見た目に反して、ちゃんとモンスターからの攻撃を防ぐだけの硬度を有している。若い女性猟人に似合う防具と言えた。
 背中に担いでいる武器はシャミセンのようだ。猟人が使う武器の中に、狩猟笛と言うカテゴリが存在するが、その一種だろう。紫色のシャミセンは、恐らく『黒狼鳥』の二つ名を持つイャンガルルガと呼ばれるモンスターの尻尾から作られたのだろう、形も色も瓜二つだった。中に三本の弦が入っている事から、やはりシャミセン……楽器として使えるのだろう。
 見た所、ベル達と同じ中流に位置する猟人のようだが、ベルには見覚えが無い。周囲を見渡すと、皆が「誰だろう?」と言う顔をしている。
 一人を除いて。
「……? フォアン、あの人、知ってるの?」
 フォアンはどこか気恥ずかしそうに女性を見ている。若そうな女猟人はニコニコしながらフォアンを見つめている。どうやらフォアンからの説明を待っているようだ。その事に皆が気づき始め、自然とフォアンに視線が集中する。
 皆が自分に意識を向けたので、フォアンは頭を掻きながら気まずそうに告げる。
「えー、と。あれ、俺のお袋」
 間。
「……え? あの人、フォアンの……?」
「――お母さんだったのにゃ!?」
 ベルが無礼にも女性を指差し、ザレアが驚いた仕草をする。フォアンはコクリと頷く。
「えー……何か、思っていた以上に若いなぁ……てか若過ぎない!? 見た感じ二十代なんだけど!?」
「お姉さん、って言われてもおかしくにゃい若さだにゃ!」
「うふふ~♪ 皆さん~、お世辞が~、お上手だわ~♪」
 瑞々しい声で応じるフォアンの母。彼女はおっとりとした仕草で歩み寄り、フォアンの耳を摘まんだ。
「いててて」耳だけを持ち上げられて顔が引き攣るフォアン。
「お母さんに向かって~、“あれ”は無いでしょ~、“あれ”は~」ニッコリ笑顔でフォアン母。
「痛い痛いいたたたたたッ、ごめん悪かったッ、悪かったから離せってッ」耳を摘ままれてジタバタ暴れるフォアン。
「うわー、フォアンが謝ってる姿を初めて見た……」
「オイラもにゃ……」
 猟人が二人ともしみじみとフォアンを見つめる。
 やがてフォアンの母は息子の頭を下げさせながら礼をする。
「ご挨拶が~、遅れましたね~。改めて初めまして~、フォアンの母の~、ミャオと申します~」
「あ、初めまして。あたしはフォアンと一緒に猟人やってる、ベルフィーユです。ベル、って呼んで下さい」ぺこ、と頭を下げるベル。
「オイラはザレアだにゃ! フォアン君とベルさんの狩友にゃ!」元気よく挙手しながらザレア。
「あ、私はこの村の村長のコニカです。フォアンさんにはいつもお世話になっております」静々と頭を下げるコニカ。
「僕は行商人のウェズって言います。お見知り置きを。……って、ミャオ? どこかで聞いた事が有るような……」難しい顔をして悩み始めるウェズ。
 ティアリィは挨拶をせず、ニコニコと営業スマイルのままカウンターの奥からこちらを見守っているだけだった。
「あらあら~、フォアンに~、こんなにお友達がいるなんて~。それも~、よく見ると~、可愛らし~い女の子ばっかりじゃな~い~? フォアン~?」
「何だよ」ぶっきら棒にフォアン。
「目指すなら~、ハーレムよ~?」
「何の話をしてるの!?」ツッコミを入れたのはベルだった。
「安心しろベル。目指すつもりは無い」うん、と一つ頷くフォアン。
「つまり~、も~う~、意中の子が~、いるのねぇ~?」にまー、とミャオ。
「お袋。あまり冗談が過ぎると怒るぞ」平坦な表情のままミャオを見やるフォアン。
「あらあら~?♪ 図星なのかしら~?♪」全く動じないミャオ。
 今の会話で分かった事が有った。それは――
「……フォアンのマイペースは、間違いなくお母さんの遺伝ね……」
 と言う事だった。
「で、お袋。一体どうしたんだ? そんな姿でこんな所まで来て。俺に何か用事か?」
「まぁまぁ~♪ 急がない~急がない~♪ 息子の様子を~、見に来ただけよ~♪ 元気にしてるかな~ってね~♪」人差し指をクルクル回して告げるミャオ。
 併し……見れば見るほど、歳を感じさせない女性である。フォアンの母なのだから少なくとも三十は過ぎている筈だが、皺は一切無いし、肌には張りが有り、髪には艶が掛かっている。胸が大きいし、腰は括れが有るし、尻は小さいし……背は高いし、顔立ちは整ってるし、と、どこを見ても非の打ち所の無い美女と言えた。
 ミャオはフォアンを見つめて、満足そうに頷くと、
「ねぇ~、そこの行商人さん~?」不意にウェズに振り返った。
「は、はい? 僕ですか?」思わず自分を指差して問い返すウェズ。
「そう~、貴方~。何か~、彼女に渡す物が有るんじゃな~い~?」
「へ?」
 ウェズはキョトン、とミャオを見つめる。そして顎を摩り、暫く沈思すると、ようやく何か思い出したらしく、ぽん、と手を打つ。
「そうそう、納涼大会なんかやってたから忘れてたよ。――ベル。エルちゃんから手紙が来てるよ」
「え? エルから?」
 ウェズは酒場の隅に置いていた大きな風呂敷を解くと、中から一通の書簡を取り出し、ベルに手渡した。ベルはエルからの手紙に驚きを隠せなかったが、それよりも何の関係も無いフォアンの母がその事を言い当てた事に驚いた。
 フォアンにその旨を伝える視線を向けると、彼は肩を竦めて応じる。
「お袋は、猟人になる前は占い師だったらしい。人を見るだけで、或る程度の情報が読み取れる、って聞いた事が有る」
「……それはもう超能力者の域じゃない?」
 どうツッコミを入れようか悩んだ末のツッコミだった。
 ともあれベルはウェズから手渡された書簡を開いてみる。エルから手紙が来るのは何も今日に限った事ではない。パルトー王国で姫の替え玉として生活しているベルの妹――を自称している弟――エルは、姉が恋しくなるのか、ちょくちょく手紙を寄越した。そういう事に関して不精なベルは、よく返事を書き忘れるのだが、偶には返事を出している。もしかしたらその催促でも来たのかと思って広げてみると――
「……う~ん、どうやら救援要請みたいねぇ……」
 手紙の内容は簡潔だった。パルトー王国近辺に在る砂漠地帯に、大型のモンスターが棲みついたらしいので、それを狩猟してほしい、との事。
 パルトー王国は極めて小さな国で、兵力が充実していない。そのため兵士をモンスター討伐に向かわせようと思っても、人手不足と実力不足でどうにも出来ないらしい。挑まなくても、元猟人であるエルと、側近の騎士長であるゲルトスの見識では、そのモンスターに敵う程の腕の立つ兵士が育っていないらしい。
 最近になってようやく情勢が安定して来た小国である、この騒動でまた民に不安が広がらぬよう、速やかにモンスターを狩猟して民を安心させたいらしい。そのため、実力のある猟人に依頼したい。エルが誰よりも信頼できるのは、勿論ラウト村の猟人である。
「にゃにゃ? エルさんが困っているのかにゃ? ――それは助けに行くしかにゃいにゃ! 今すぐ行くにゃ!」
 ザレアが興奮気味に両腕を回し始めるのを見て、ベルが頷く。
「そうね、一国の姫からの頼みと言う事は、報酬も……ぐへへ」
「ベル、涎、涎」
「おっと、じゅるり」
「その狩猟だけど~、私も~、手伝って良いかしら~?」
 挙手したのはミャオだった。全員の視線がミャオに向く。
「……初めからそのつもりだったんだろ?」
 呆れた表情で問い返すフォアンに、ミャオは「うふふ♪」と含みを持たせて微笑を返す。
「でも、助かります。エルは今や一国の姫だから狩猟には参加できないし……四人で狩猟した方が安全だしね」
「そ~う~? 話が分かる子で~、助かるわ~♪」
 上機嫌に応じるミャオに些かの不安を感じずにいられないベルだったが、ここは逆らわない方が良いと本能が告げていた。

【後書】
 今章のキーキャラクターとなるハンター、ミャオさんの登場です!
 フォアンのお母さんと言う事で、もう性格は「天然」+「マイペース」+「ミステリアス」以外の要素が見当たりませんでした(笑)。この間延びした口調がね~ふわふわにさせるんですね~(欠伸しながら)。
 勿論この物語に登場するからにはぶっ飛んだキャラクターに違いない訳ですが、もう既にその片鱗を覗かせておりますね!w
 てかアレなんですよね、わたくし大体どの物語にしても大人や親などの保護者のロールに当たるキャラクターは、大抵すんごい人にしちゃう癖みたいのが有りまして。そういう観念がわたくしの芯に有るんだと思います。年長者には絶対に敵わぬぇーみたいな観念がw
 さてさて懸念されていたサルベージですが、何とかかんとか進捗ドブネズミは忌避できましたので、今月はしっかり更新できると思います。たぶんw そんなこったで次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    ミャオさんついに登場ですねw
    マナさんみたいな涼子さんみたい(何を言ってるんだお前は…

    たしかに先生のお話に出てくる保護者の方はぶっ飛んだ方が多い印象です。
    パッと思いつくだけでも練磨くんのお父さんのジャムおじさんとか、
    (練磨くんのお母さんもぱないの)けいちゃんのお母さんの小夜子さん、
    別な意味でぶっ飛んでるミコトくんのお父さんなどなど無限かよw
    おっしゃる通り絶対に敵わぬぇーってところ、ありますよね。
    超共感しております!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      ミャオさん、遂に登場致しました!w
      確かにマナさん感は否めませんね!w 涼子さん感はアレですね、ミステリアスチックな側面がどうしても似通ってる所有る気がします!w 両者ともにわたくしの作品の系譜と言えますなぁ!w

      ですよね!w>保護者の方はぶっ飛んでる
      無限wwwてかアレですよね、どの作品でも出てくる保護者の方々で寧ろマトモな方がいない感が漂ってきましたよね!(笑)
      共感して頂けて嬉しいです~!。゚(゚^ω^゚)゚。 何なんでしょうね、わたくしはもしかしたら年上の方には絶対に敵わないって、潜在的に思い知らされているんでしょうか…?(笑)

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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