2018年9月5日水曜日

【滅びの王】46頁■神門練磨の書12『生きたい』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/01/08に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

断さん作
カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/
■第47話

46頁■神門練磨の書12『生きたい』


「――〈還元せよ〉」
 唱えると〈附石〉が輝き出し、……光が収まると、ただの石がそこに有った。
 ここからじゃよく見えなかったけれど、……石に刻まれていた文字が消えているように見えた。
「これで、――〈附石〉じゃなくなりました♪ ただの〈器石〉です♪」
「あ? え? そ、んな……っ、てめ、ぇ……!」
「どうしました? 君はこの石を返して欲しかったのでしょう? 今、返して差し上げますよ。ちゃぁんとね♪」
 投げてよこされた石からは、やはり文字が消えてなくなっていた。
 ただの〈器石〉に戻ってしまっていた。
「どうです? まだ、刃向かいますか? 僕は構いませんよ♪ 弱者を嬲るのは好きじゃないのですが、偶には日頃溜めている鬱憤を晴らすのも良いですしね♪ それもまた一興、と言う奴です♪」
 ……この〈附石〉は、あの青年を助けた時に貰ったモノだ。それを……こんな簡単に失ってしまうのは、オレの中の何かが許さなかった。
 しみったれたプライドか。
 貧弱な正義か。
 ……何でも良い。オレの中のそう言った感情が渦巻いて、神経系を全部焼き切ってしまう……!
 憎しみ。怒り。憤り。……何でも良い、爆発するのに理由なんて要らない。
 あのバカを、殴らないと気が済まない。
 殴らないと、オレはオレを認められない。
「……おや? どうしました? 練磨さん。戦意喪失、ですか? 僕はそれでも――」
「黙れ」
 自分でも驚く程、冷静で低い声が出た。
 ……少し怖かった。自分が、自分でなくなってしまいそうで。オレが……オレ以外の何かに変わってしまいそうで。
「……そうですか♪ でも僕は黙りませんよ? 僕を黙らせてみてくださいよ、その――《滅びの王》様の力を以てして、ね♪」
「……」
 応えてやるつもりなんて無い。ただ、殴ればそれで解決だ。
 その時に、あのバカが死のうが逝こうが構わない。今の最優先事項は、あいつを一発、ぶん殴る事に有るのだから。
 ――気づけば、足が先に動き始めていた。体は後から付いて来る。拳が、自然と振り被られる。
「やれやれ。またごり押しですか。芸の無い方ですね♪」
「うおおぉおぉぉおああぁああぁぁああああぁぁあぁあ!」
 ステッキが、見えない速度で振り被られる。
 オレの体は追いつかない。また、頬を殴られる。今度は左頬。
 オレの体が吹き飛ぶ。地面を滑って、また体も服も擦り傷だらけになる。
 オレが起き上がる。今度こそ一撃見舞わせてやろうと黒一に向かって駆け出す。
 黒一が面倒にステッキを振り直す。オレの側頭部が殴られる。視界で火花が散る。
 オレは転がって、それでもまだ、オレは立ち上がる。
 何度と無く繰り返される同じシーン。
 何度だって殴られて、飛ばされて、倒れて、立ち上がり、駆け出して、――殴られる。
 オレはいつからか、泣いていた。
 自分の弱さに。自分の情けなさに。自分のどうしようもない不甲斐無さに!
「わああああああああああああ!」
 どれだけ立ち上がっても、――殴られて。どれだけ起き上がっても、――飛ばされて。
 ……オレは泣いていた。悲しいんじゃない。自分に、呆れてるんだ。自分を、憐れんでるんだ。
 いい加減、体が麻痺してきた頃、オレは地面に突っ伏して動かなくなっていた。
 痛い……体のあちこちが悲鳴を上げて、もう動きたくないとストライキを起こしてる。……精神も、死に掛けていた。この男にはどうあっても敵わない。諦めろ。……そう、心の底で理性が叫んでる。砕かれた心は、中々修復されなくて、オレは苦しいままだった。
「ふぅ。一仕事でしたね。君もそんなになるまで頑張らなくても良かったのに。……僕も一思いに殺すべきでしたかね? 大丈夫♪ 今、その努力に免じて、一撃で葬り去ってあげます♪ 練磨さんも、もう苦しみたくないでしょう? 楽になりたいでしょう? 任せてください♪ 僕の力を貸してあげますよ♪」
「……」
 ……言葉が、出ない。
 オレは、こんな奴にやられるためにここまで来たんじゃない…… 
 オレは、世界を滅ぼすために生まれてきたんじゃない…… 
 オレが生まれた理由なんて、オレが決めてやる。
 オレしか決められないんだ、誰にも決めさせてなんかやるか。
 だから……こんな所で死ぬ訳にいかないって、言ってるだろ……!
「じゃあ、――さようなら、練磨さん。今度は地獄で逢いましょう♪」
 頭に衝撃が走って、……何も考えられなくなった。
 生きたい……それだけが、オレの口の中で反芻していた……
 そこには闇しかなかった…… 

【後書】
 と言う訳でやっとサブタイトル回収できました。
 練磨君、また死んでしまった感溢れる締め括りですが、以前の死を連想させるシーンとはちょっと異なっているのですけれど、どこが違うのかーと言われたら説明に窮するマンです( ˘ω˘ )
 と言う訳で次回は練磨君の書ではない物語です。大変な通知が届いてしまい…? お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    一・大・事☆ミ
    死んでしまった感溢れまくってますが、大丈夫だろうか?
    このへんでチョチョイと王の力を使っちゃって黒一さんを
    やっつけちゃってもいいんだよーw

    練磨くんすーぱーさいやじんになる!の巻(以下自粛

    どこが違うのかーと言われたら、あからさまに違うじゃん!
    違うんだよぅ(説明に窮するマン

    次回、誰に大変な通知が届くんだろ?
    そもそもなんの通知?
    うーーーーーむ
    これあれだ、一週間妄想楽しめってやつだ!

    疑問はすべて継続中!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      一・大・事!ww
      大丈夫…じゃないような気がしますね…!w
      王の力が分かってないばっかりに突然の惨たらしい展開ですが、
      次回で更に「ええぇ!?」と言う展開が待っておりますのでお見逃しなくっ!w

      練磨君突然金髪になったよう!?!?!(そして力でごり押す展開)

      あからさまに違うのに!w 何故か説明に窮しちゃうんですなぁ!ww
      どう説明したらいいのか未だに分からぬい…(´ω`)

      ぜひぜひ妄想をガッツリ愉しんで頂けたらと思います…!
      何の通知か分かった瞬間、大変な事になる予感ですので…!w
      一週間、妄想を捗らせたり、ドキドキしてお過ごしくださいませ~!

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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