2018年10月10日水曜日

【滅びの王】51頁■神門練磨の書13『孤児院』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/02/07に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/
■第52話

51頁■神門練磨の書13『孤児院』


 太陽が沈みかけた頃、オレは歩くのに疲れて、倒壊した建物の上に座った。
 町は広かった。……それ位しか、分かる事は無かった。太陽の方角から見て東西南北に歩き回ってはみたものの、町から出られる事も無く、ただ半日掛けて歩き通しただけとなった。
 ……いや、実は一度、町の端に辿り着いた事が有った。場所は恐らく町の北側に当たる場所で、その先には草原と寂れた街道が延々と続いていたのだ。……見ていて、このまま進むべきなんだろうかと悩んでしまい、結局、今日の所はこの町で一泊する事に決めたのだった。
 その間、咲希が眼を覚ます事は一度も無く、ずっと両手の中で寝続けていた……このままだと、オレは何もしないまま飢え死にするんじゃないだろうかと不安になってきた。頼みの綱である咲希がこの調子では、どうしても不安が先立ってしまうのだ。
 砂埃の混じった風が吹き、辺りを乾燥させていく。眼を開けていると砂が入ってくるので、風の時は出来る限り動かず、ジッとしていた。
 この辺は風を遮る物が無くて、砂や埃が直接体に当たって、オレの服を砂埃塗れにしてしまう。色がちょっと白っぽくなっているのはそのためだ。
 深く座り直すと、今日の事を思い出してみる。
 まず……起きてからショッキングな事がいきなり遭った。
 折角黒一から取り返した〈ぶっ飛ばし〉の〈附石〉……いや、あの時には既に〈ぶっ飛ばし〉の文字が消されていたから、ただの〈器石〉か……が砕け散っていたのだ。それには、かなりショックを受けた。……あの行商人の親切なお礼として貰った品を壊した事に胸が痛くなったし、何より黒一に対する憎悪が倍増した。
 だからだろうか。今のオレには自身を守る術が無い。喧嘩が強い訳でも、策士のように頭脳が働く訳でもない。今のオレは、生まれて間もない赤子同然で、世界の情勢も知らなければ、ここがどこなのかも、これからどうすれば良いのかも分からず、完全に立ち往生している状態だ。
「……てか、あれが無きゃオレは戦う事すら出来ねえってのか……?」
 あんな物、なんて言ったら自己嫌悪しそうだけど、何も〈附石〉が無ければ戦えないって訳じゃあ有るまい。オレだって、一応男だ。喧嘩はしないけど、きっと頑張ったら……!
 ちょっと頭の中で戦闘を繰り広げていると、――砂塵に混じって変なモノを見かけた。
 小さな子供のような背丈の、角の生えた――小鬼。
 犬歯を見せ付けつつ、オレへとにじり寄って来ていた。
「やっ、やる気かっ!?」
「ぎぎっ?」
 一瞬、何でこんな奴にビビってんだオレ! と自分を鼓舞して、咲希を地面にそっと寝かそうとする。……寝かそうとして、ここだと砂塵をマトモに喰らってしまうだろうと思い、残骸の陰になる場所に移動して、そっと寝かした。
 立ち上がると、小鬼が一匹から三匹に増えていた。……おいおい、三対一は反則だろう?
「……来るかっ?」
 拳を上げて、小鬼を牽制する。
 そうだ、こいつらはあの時だって、ぶっ飛ばせたじゃないか。今だって、きっと出来る。……三対一となるとちょっと不利だけど……それでも、ここでオレがやらなくちゃ、咲希が危ない!
「ぎー!」
 小鬼の一匹が棍棒を持ち出し、――飛び掛かってきた! 子供らしい単調な動きだったけれど、子供らしい機敏さを擁していて、即座にオレとの距離を縮めてくる!
 ボゴっ、と腕に鈍い衝撃が走り、オレはそれを認めると、――思いっきり拳を振り抜いた!
 重い衝撃――、視界の隅で小鬼が転がっていくのが見えた。手応えは有った、コレで―― 
 思っている間に、別の小鬼が距離を詰め、――懐に爪の長い拳を突き立ててきた。嫌な感触が、腹を切り裂いたものだと悟って、オレは腹に少し力を込めて、出来る限りその感触を無視して小鬼に蹴りを放った。
 また重い衝撃――サッカーボールよりも重い感触が返ってきて、オレはそのまま足を振り抜く! すると、小鬼はかなり吹き飛ばされ――残骸にぶつかり、倒れると思ったが、即座に立ち直る。……衝撃だけで、思ったよりダメージを与えられないのだろうか。
 ――次に背中に鈍い衝撃が走り、オレは痛みと共につんのめるっ。
 硬い物……恐らく小鬼が持つ棍棒だろう……で殴られて、痛みで背中を丸めて倒れ掛かったが、――オレが倒れる事でターゲットが咲希に向かないよう、歯を食い縛って痛みを堪える。
「ってぇな、チクショウ!」
 わざと声に出して、自分を鼓舞する!
 動け! 動いて、あの三人の小鬼を、何とかして追い払え!
 近付いて来た小鬼の動きを、オレはジッと見据え――棍棒をどうにかして奪えないかと模索する。武器さえ手に入れば、何とかなるかも知れない……そんな考えが浮かんだのだ。
 小鬼はオレに駆け寄ると、棍棒を振り上げ――振り下ろされる前に、後頭部の鈍い衝撃が走った。
 がつッ、と音がしてオレはまたつんのめる。今度は足が追いつかず、それと頭に衝撃が走った事で、すぐに体勢を立て直せず、無様に転がった。眼前で火花が散って、ピントが合い難く、それと同時に平衡感覚が取れず、立ち上がれなかった。
「ってぇ……ッ」
 起き上がろうとした直後に、――また後頭部に一発、それと脇腹にも一発、鈍い衝撃が走って、オレの体が壊れそうになる。立ち上がる前に、体の機能が全部破壊されそうで、オレは恐怖を覚えた。
 ドカバキッと、何度も何度も、殴られ蹴られ叩かれた。……だが、運が良いのか悪いのか、きっと良いんだろうけど、痛みや衝撃は有るけれど、骨を砕くまでの威力は無く、ただ擦り傷、打撲、切り傷が増えていくだけだった。
 痛い……抵抗する気力が失せていく……このまま死んだ方が―― 
 思って、体の内がカッと熱くなった。
 こんな所で……こんな所で、――死んで堪るかァァァァッッ!
「うっおぉおおおぉぉおおおおおおおおおッッ!」
 立ち上がりながらも足を懸命に動かして、――近くの小鬼に突進する! それだけの気力が残っていたんだ。残っていたのに、これ以上の暴力を恐れて、オレは動けなかったんだ。……でも、ここでオレが動かなくなってしまえば、自然と次の的になるのは、動けない状態の咲希なんだ。咲希に小鬼の牙が剥いたら――そう思うと、いても立ってもいられなくなった。
 咲希はオレを助けてくれた命の恩人だ。そいつを危険な目に遭わせる事は、オレの精神に反する!
 そんな事は絶対に有ってはならない! オレは全力でこいつらを屠るっ!
 突進――寧ろ奇襲と言うべきだろうか――に成功したオレは、小鬼の手から棍棒を奪い取り、そのまま蹴り飛ばして小鬼と距離を取る。
 オレにしては少し小さめの棍棒を握り締め、三匹の小鬼を見据える。……二匹は初めから凶器を持っておらず、オレの持つ棍棒を見て「ぎー、ぎー」と唸り声を発し始めた。……警戒してるのだろうか? やっぱり、人間が武器を持って対抗すれば、それだけで効き目が有るのだろう。
 思って、一歩前に踏み出してみると、小鬼達は一歩後じさった。……なるほど、効き目は有るらしい。
「失せろッ!」
 棍棒を振り回して怒鳴りながら小鬼に迫ると、小鬼は背中を向けてオレから距離を離そうとする。
 だが、それ以上の距離は離れようとしない。……まだ、オレに対して明確な脅威を懐いていない。もう少し、もう少しで良いから奴らを脅す材料が有れば…… 
 思ったけど、やっぱり実力行使しかないという考えに至って、オレは棍棒を振り回しながら小鬼を追いかけた。
「待てやァァァァ!」
「ぎー!」「ぎー!」「ぎぃぃぃぃぃ!」
 三匹の小鬼が逃げ惑う。オレはそれを追い掛け回して、そのまま去らないかと一定距離まで走り続ける。
 小鬼が本気で逃げ出したのを見て、……脅威が去った事を確認すると、オレは取り敢えず呼吸を静めて、咲希が眠る場所へと帰還した。

【後書】
 練磨君が男を見せてくれました! と言いますか、相変わらず無鉄砲な所は治らないと言いますか、すぐ熱くなっちゃうんですよね…w と言うのも、この当時のわたくしの中に有る「中学生」の像と言うのがその、そういうイメージになっていたと言いますか…w
 そんな聞き分けの良い存在じゃないと思うんですよ。なんとなーく違うと分かっていても、ついカッとなったり、感情だけで判断したりと、そういう事が有る時分だと思う訳です。今も大概なので、つまりわっちは中学生だった…?(突然の年齢詐称)
 そんなこったでまだまだ出てこない“孤児院”ですが、次回はそれに纏わる新キャラが…? お楽しみに~♪ 

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    胸熱!
    練磨くんよく頑張りました!!えらいぞvv
    ただ…以前鷹定くんが言ってたように、早死しそうで怖いです。
    その熱さは維持したままもう少し考えてこうどいやそのままがいいのかなw

    練磨くん、中学生にしてはちゃんと自分の考えがあって
    その考えに基づいて行動してるように見えます。
    自分が中学生だった頃と比べると雲泥の差ですねw
    カッとなったり、感情だけで判断したりっていうのは
    ちゃんと自分の考え、想いがあるからこそだと思うのですが…

    先生、中学生だったのですか!わたしは今年17になりましたっ
    よろしくねっ☆(ゝω・)vキャピ←(オイオイ

    疑問はすべて継続中!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      胸熱!!
      練磨君、すぐ突っ走りますけど、頑張る時は頑張る子ですからね! 褒められるとめちゃんこ照れそうな予感です!w
      早死にしそうで怖いと言うのはもー作者も全く同じ意見です…w
      現にもう何度も死んだり死にかけたりしておりますからねこの子…w もう少し考えて!w でも、そう、うん、そのままでいいような気もします(笑)。

      あんまり考えていない、と言うのは、アレですな、作者が勝手にそう思い込んでいただけで、とみちゃんはしっかり練磨君の考えを読み取れていた、と言う事なのでしょう!w たぶんw
      実際、戦争の事に就いてや、《滅びの王》の事に就いても、ちょくちょく考えをモヤモヤッと浮かばせているシーンも有りますし、中学生の中では、もしかしたら割と考えて行動するタイプ…なのかも知れませぬ。
      ちゃんと自分の考え、想いが有るからこそ、カッとなったり、感情だけで判断したりする…その発想は有りませんでした。確かに言われてみれば、判断基準がしっかりしてるからこそ、その閾値に触れた瞬間にカッとなり、って言うのは凄くよく分かりますし。
      この練磨君…実はしゅごい子なのでは…!?(目から鱗事案w)

      とみちゃんが17歳って事は、わっちの先輩でしたか!w
      宜しくねっ♪(^ω^)ニチャァ…(すぐ調子に乗るマンw)

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいですわふ!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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