2018年10月24日水曜日

【滅びの王】53頁■神門練磨の書13『孤児院』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/02/09に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/
■第53話

53頁■神門練磨の書13『孤児院』


「あー! お姉ちゃんが帰って来たよ~~!」
「おう! ただいま、皆!」
 八宵を追って辿り着いたのは、荒廃した町の一角に在る場所だった。教会らしく、入り口から見て上方に十字架が掲げられており、中に入ってみると天井高くにステンドグラスが嵌められていた。……だけど、どれも割れていたり皹が入っていたりで、壊れていない物を数えた方が早そうだった。
「ここは……?」
「孤児院さ」
 八宵はそう言って、何十人と群がってくる子供達の相手をしている。……皆、年端もいかない子ばかりで、オレよりも年上の奴は一人もいそうに無かった。
「こんなに……?」
「一度戦争が起これば、この有様さ。……皆、壊れちまう。国も、町も、人も、心も、絆も、みーんな……」
「……」
 寂しそうな顔をしていたからだろうか、子供の一人がオレに駆け寄ってきた。男の子のようで、子供らしい純真な瞳でオレを見つめる。
「おにーちゃん、こわい人にあったの?」
「え? いや、そんなんじゃねえよっ」
「でも、ここならあんぜんだよっ。おにーちゃんも、きっとよくなるよ!」
「あ……」
 この子はこの子で、オレを励まそうとしているのだろうか? ……その心遣いは、何だか胸に熱いものを感じさせる。とても……温かな気持ちになれる。
「……ありがとな」
「へへ~♪」
 頭を撫でてやると猫のように笑って、また八宵の方へ駆けて行った。
「お姉ちゃんっ、今度はいつまでいられるのぉ~?」
「おねーちゃんっ、あそぼ、あそぼ!」
「あの人、だぁれ?」
「ほらほら、質問は一人ずつだよっ。そんなに一遍に言われても応えられないだろ? 順番を守りな、順番を!」
 わーわーきゃーきゃー喚き合って、子供達はとても楽しそうだ。
 ……オレは自然と頬を綻ばせていたけれど、彼らが皆、孤児だと言う事を考えると、笑みが引き攣ったような気がした。
 戦争。オレは体験した事は無いけれど、体験したら彼らの気持ちが分かるのだろうか? ……恐らく、答は否だ。戦争に遭ったとしても、こいつらと一緒の気持ちにはなれないと思う。分かるかも知れない、とは言えるけど、きっと完全には分かち合う事は出来ないんだろうと、悲しい事を考えていた。
「練磨は、勿論何も食べてないんだろう? どうせだからご馳走するよ?」
「えぇッ!? そんな、そこまで面倒掛けられないって……!」慌てて手を振るオレ。
「なぁに、心配は要らないよっ。……ま、ウチの料理に期待されても困るんだけどね」苦笑する八宵。
「八宵が作るのか?」ちょっと驚き気味にオレ。
「……何さ? ウチが作ったら悪いってのかい?」オレの言葉を挑発と受け取ったらしい八宵。
「ンな事言ってないって! ……でも、それなら食べてみたいな。八宵の料理って奴をさ」
 八宵は一瞬呆気に取られた顔をしたが、――すぐに挑戦的な笑みに変わった。
「言ってくれるじゃないか? なら、ウチの腕前って奴を見せてやるよ!」
「楽しみだぜ!」
 そんな事を言い合っていると、子供達が八宵から離れて、オレに駆け寄ってくる。
「お姉ちゃんのめしはうまいんだぞ!」
「おれも、おねーちゃんのめしは好きなんだ」
「あたし、お姉ちゃんの作るごはんなら、何でも食べられるよ!」
「へぇ、本当に楽しみじゃん?」
 視線を八宵に向けると、八宵は照れ臭そうに笑ってから、奥へと消えていった。
「おにーちゃんは、おねーちゃんとけっこんするの?」
「はぁ!? 何だ、いきなり突然?」
「だって、おねーちゃん、おにーちゃんみたいな人、つれてくるの初めてだもん」
 それでいきなり結婚の話か……つか、有り得ないだろ!? 今逢ったばかりなのに。
 そう思って応えようとした時、八宵と入れ違いにお婆さんが入ってきた。
 歳の頃は六十を過ぎた位だと思う。背中を丸めた愛嬌の有る小さな姿に、妙に綻びの多い服を着ている。杖が必要なんじゃないかと思ったが、腰に手を当てるだけで大丈夫らしい。
「あんたが……八宵の連れて来た男かい」
「あ、どうも。今日はお世話になります。神門練磨って言います!」
「おお、礼儀はなっとるようじゃの。ワシは須郷(すごう)きぬ、じゃ。この子らの婆やをしておるよ」
 きぬさんは物腰柔らかに告げると、並んでいる長椅子の一つに、「よっこらしょ」と掛け声を発して腰掛けた。
「……あの、訊いても良いですか?」
「何じゃ?」
「戦争って……ここで、何が遭ったんですか?」
 聞いちゃいけない事だったのかも知れない、とは分かっていた。……けれど、オレの好奇心がそれを押しやり、口が勝手に声を飛ばしていた。
 それでも聞いてみたい。ここで昔、何が遭ったのか…… 
 そしてその原因は、何だったのか…… 
「……あんたは、この世界の者じゃないのじゃろう?」
「はい。《出人》です」
「……ここには昔、大きな国が在ったのじゃよ……帝国と言う名の、大きな国がのう」
 オレは黙って先を促す。立ってるのが疲れたから、きぬさんの隣に腰掛けつつ、話に耳を傾ける。
「帝王が何を思うたか、突然宣ったのじゃよ。『王国を滅ぼせ』……と。正気の沙汰じゃなかったんじゃろうな。王国は、帝国に並ぶ大国……そこに突然、兵を攻め入らせおった。……大きな戦争になったわい。じゃが、王国は堅牢な防壁《津波の長城》のお陰で、帝国兵の侵攻を殆ど喰い止めよった。そこからじゃ、王国の一方的な殺戮劇が始まったのはのぅ……」
 ……攻め入ってきた帝国に対し、王国は正当防衛という名目の下、帝国領土を侵犯し、剰え逆に攻め滅ぼそうとした。丁度その頃、帝国はほぼ全勢力を王国に出陣させていたため、防御が間に合わず、王国の一方的な破壊と暴力によって、領土を焦土と化した…… 
 その時、帝王並びに帝国の有力者は次々と惨殺され、国民も殆どが虐殺され、残ったのは破壊し尽くされて荒廃した土地と、国に見放された子供達だけだった……。
「終戦を唱えたのは、王国の国王じゃったよ。もう二度と王国には逆らえないように、帝国を完全に葬り去り、今年で二十周年を迎えるそうじゃないか。……ワシは、もう二度とそんな事を起こして貰いたくない。こうして生きてるだけでも、価値は有るのだからのぅ」
「……」
 ……帝国、そして王国の影が、少しだけ輪郭を伴ってきたような気がした。
 鷹定が言う通り、《滅びの王》はどの国からも狙われている。それは何も、オレの命を狙ってる奴らばかりじゃない。中には、オレの《滅びの王》としての力を悪用しようとしている連中だっているだろう。そいつらはきっと、復讐のため、私怨のために、《滅びの王》の力を欲している。国を滅ぼしたり、王様を殺したり、最悪、世界を滅ぼしたり…… 
 全ては推測に過ぎないけれど、中にはそう言った連中もいる事を肝に銘じておくべきだと、悟った。
 オレの《滅びの王》としての力は、未だにどんな力なのか、全然分からない。ただ、世界を滅ぼせるだけの力が有ったとしても、オレは生きている限り、世界を滅ぼそうとは思わない。力も、悪用されないようにする。オレが幾ら《滅びの王》だと言っても、それを証明する力が無いのは、自分でも分かっているのだ、きっと何の問題も無く、普通に生きていける。
 ……普通?
 オレは、普通に生きたいと思ってるのか? ――それは断じて否! オレは、『凄い』人生を送りたいんだ! だからこそ、《滅びの王》として、《滅びの王》の力を使わずに……って、何か矛盾が生じてるような…… 
 よく分からなくなってきたところで、八宵の声が飛んできた。
「さぁ皆、召し上がれ!」
『おおー!』と子供達の合唱。
 オレも腰を浮かして八宵の姿を捉えると、きぬさんに頭を下げて行こうとした。
「……あんたも、戦争だけは起こさないようにしとくれよ」
 そんな言葉が聞こえて、オレは一瞬ドキッとしたけれど、ちゃんと振り返って頷いてみせた。
「戦争なんか、起こして堪るかよっ。……絶対に、起こさせない」
「……頼もしい限りじゃわい」
 きぬさんが優しげな顔で微笑を浮かべたので、オレは安心できた。
 男に二言は無い。絶対に、戦争なんか起こして堪るかッ!

【後書】
 と言う訳でようやっとサブタイ回収です! 長かったなー!w
 今回はこの【滅びの王】の世界観に就いてちょこっと触れる形になりましたが、帝国と王国の間に戦争が起こったと言うお話。二十年を経てもなお荒廃している、と言う所にモヤモヤを感じてしまいますが、この世界の復興ってすんごい遅いと言いますか、帝国側には復興するだけの力が無く、且つ王国側が何の手も加えていない、と言うのが合わさって…と言う背景が有ります。
 いや待て二十年も経ているのに子供ばかりっておかしくないか?? と言う問題はアレです。二十年前の戦災で孤児になった子が、大人になる前に、何故かいなくなるんですね。その辺の謎解きはまた後日! たぶんふんわり明かされる…筈!w
 とまぁこの物語、そこたらじゅうにふんわりした謎が蟠っておりますので、妄想し始めたら止まらないんですなw そんなこったで次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    長かったなー!w

    『凄い』人生を送りたい練磨くん、もう十分凄いのでは?
    なんて思ってしまいますが、まだたりなのかなぁw
    ほんと確りしててかわいい!w弟にほしい~vv

    ふんわりした謎大歓迎でございます!
    あれこれ妄想しながら楽しむのがちょーいい感じですv
    先生サービスし過ぎでは?w


    疑問はすべて継続中!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      長かったー!w ほんとお待たせ致しました!w

      そうなんです、練磨君、もう充分に凄いのに、体感ではまだ「凄い」人生ではない様子だったりしますw
      こんな弟がいたら毎日めちゃめちゃ振り回されそうですな!w 乳児より目が離せない…!(笑)

      やったー!w
      ふんわりした謎、今後もちらちら増えて参りますと思いますので、良かったらお付き合いくださいませ~!w
      (*´σー`)エヘヘw 気ままに綴るだけでサーヴィスし過ぎだなんて、嬉しさでてんやわんやですよう!w

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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