2018年11月16日金曜日

【艦娘といっしょ!】第6話 天龍といっしょ!【艦これ二次小説】

■あらすじ
ちょっと頭のおかしい提督と艦娘達の日常生活を切り抜いた短編集です。
※注意※2015/12/30に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【Pixiv】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
艦これ 艦隊これくしょん コメディ ギャグ 摩耶 電 金剛


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/68881/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/series.php?id=627932
■第6話

第6話 天龍といっしょ!


「オレの名は天龍。フフフ……怖いか?」

 執務室でポーズを決めてドヤ顔を見せる天龍に、提督は真顔で「あー怖いなーすげー怖いぜー」と抑揚の無い声調で応じた。
「んだよ、もっと怖がれよ。この天龍様を何だと思ってんだ?」気分を害したと言わんばかりにむくれる天龍。
「天龍ってさ、私の中では怖いと言うより可愛いに入る子だからなー」執務に戻りながらポツリと漏らす提督。
「なッ!? 可愛い……だとぉ……!?」苛立ちを前面に出して歯軋りする天龍。「提督コラ、あんまりふざけた事吐かしてるとぶっ飛ばすぞてめえ!」
「この、何て言うの? 中高生が粋がってる感じ? 最高に中二病を感じさせちゃうよね!」天龍の様子を見ながらうんうん頷く提督。「私はこう見えて中二病の造詣は深い方だと自負してるんだけど、天龍はアレだよ、まさに中二病の直中を生きてるって感じがして、見ていて可愛いんだよなぁ」
「中二病言うなー!」赤面して手を振り回す天龍。「ちッ、胸糞悪ィ。後で覚えとけよ提督コラァ」
 どしどしと大きな足音を立てて執務室を出て行く天龍を見送り、提督は「なー? まさに青春してるって感じだろー? だから天龍って見ていて楽しいんだよなー」とニヤニヤ笑いながらソファに腰掛けていた電に話しかける。
「……司令官。そんな事言ってたら、いつか痛い目を見るですよ?」ジト目で司令官を見やり、紅茶をすする電。
「いつかも何も、ほぼ毎日痛い目を見てるけどね!」半壊した執務室を指差して告げる提督。
「司令官は懲り無さ過ぎなのです……」はぁ、と疲れた溜め息を落とす電なのだった。

◇◆◇◆◇

「チクショウ……どうやって提督を怖がらせるかな……」
 ブツブツと呟きながら廊下をさ迷っていた天龍の前に、人影が映り込んだ。
「HEY! どうしたデスカ? 天龍」
「おう、金剛か」立ち塞がる金剛に目をやり、天龍は腕を組んで応じる。「いやな、提督がオレの事を全く怖がりもしねえからよ、どうやって怖がらせてやろうか考えててな……」
「Oh! それなら私に考えが有るネー!」親指を立てて飛びっきりの笑顔を覗かせる金剛。
「まじかよ! なぁ、それ教えてくれよ! 礼はするぜ!?」透かさず飛びつく天龍。
「Really!? じゃあ天龍だけにこっそり教えてあげマース! こしょこしょ……」天龍に耳打ちする金剛。
「ふんふん……ははーん、なるほどな。そりゃ名案だ。ありがとな、金剛!」手を振ってその場を立ち去る天龍。その顔はやる気でみなぎっていた。
「OK! 戦果を楽しみにしてるネー♪」そんな天龍に手を振って別れる金剛。
「フフフ……見てろよ提督……度肝を抜いてやるぜ……!」
 教えられた悪巧みを考えるだけで、陰惨な笑顔を隠せなくなる天龍なのだった。

◇◆◇◆◇

 夜。尿意を覚えて起きた提督は、静まり返った廊下をぺたぺたと歩いていた。
「ふわぁ……寒い。流石にこの時季になると、夜は冷え込むなぁ……ぶるぶる」
 ひんやりとした廊下の冷たさを素足に感じつつ、トイレを目指す。次の角を曲がればトイレ、と言う所で不意に人影が飛び出してきた。
「オラオラ! 天龍様だぞー! オラァ!」
 突然飛び出して、大声でがなり立てる天龍に、提督の体が硬直する。
 完全に動きを静止させている提督を見て、ご満悦の表情の天龍。
「怖くて声も出ねェかァ? オラオラ!」更に俊敏な動きを見せて脅す天龍。
「ぎ……」提督の口から微かに音が漏れた。
「ぎ?」不思議そうに眉根を寄せる天龍。
「ぎゃああああああああああああああッッッッ!!」鎮守府中に響き渡るような大音声が提督の口から迸り出た。
「わあああああああああああああああッッッッ!?」その阿鼻叫喚に天龍も驚きのあまり大声を張り上げる。
 二人が上げる悲鳴に、その夜の鎮守府はまるで地震でも起きたかのように慌ただしく駆け回る艦娘達で溢れ返るのだった。

◇◆◇◆◇

「いやー、あの時の提督の顔、まじで最高だったぜ! 子供みてえな声出して泣いててよー! 傑作傑作!」
 ケタケタと笑い転げる天龍に、食堂で同席していた龍田が「あらぁ~それは良かったわね~」とのんびりと応じる。
「これでオレの怖さが身に沁みて分かっただろ、提督の奴も。フフフ……」満足そうにカレーを口に運ぶ天龍。
「そうねぇ、でも天龍ちゃん? 提督は今回の件でとってもご立腹みたいよ~? 何でも、天龍ちゃんに特別に辞令を出すって言って聞かないみたい~」
「……は? 辞令? な、なんだそれ、オレはそんな話聞いてねえぞ」
 のんびりとした普段の口調ではあったが、龍田の雰囲気から深刻さが伝わったのだろう、天龍が焦った様子で問い詰める。
「それはそうでしょ~、提督は天龍ちゃんに対して怒ってるんだもん~、天龍ちゃんとは口も利きたくないと思ってるんじゃないかしら~?」
「え……?」天龍の手からスプーンが転げ落ちる。「そ、そんなに怒ってるのか、提督……?」
 普段全く怒りもしない提督が、口も利きたくない程に怒るなど前代未聞だ。天龍は今になって自分がした事の重さを悟り始める。
「ど、どんな辞令を出すって、言ってた……?」青褪めた表情で、龍田に尋ねる天龍。
「確か~、遠征のメンバーから外して~、出撃もさせないって~、言ってたかしら~」
「ま、まじか……」事の重大さがいよいよ分かってきた天龍は、泣きそうになる顔を懸命に整えて、席を立った。「済まん、龍田。オレ、ちょっと提督のトコ行ってくる! また晩飯誘ってくれよな!」と言って返事も待たずに執務室に向かって走って行く。
「あらあら~……天龍ちゃんたらしょうがないんだからぁ~」頬杖を突いて、とろん、とした眼差しで見送る龍田。「でも、そうねぇ、天龍ちゃんを悲しませるようだったら、幾ら提督でも、ぶった切っちゃうかも~♪」
 食堂に不穏な空気が流れたのを察知した駆逐艦達が、いそいそと席を立っていなくなっていく。その只中で一人「ウフフ、ウフフフ~♪」と笑う龍田なのだった。

◇◆◇◆◇

「おい提督! オ、オレに辞令を出すって、本当なの、か……?」
「……」
 執務室にやってくると、提督は書類から視線を上げず、天龍の言葉を容易く無視した。
「ほ、本当にオレを遠征のメンバーから外すつもりなのか……?」眉をへの字にして、恐る恐ると言った態で尋ねる天龍。
「……」聞く耳を持たない提督。
「き、昨日の事は悪かったって、謝るからさ……オレをメンバーから外さないでくれよ、頼む!」手を合わせて頭を下げる天龍。「この通りだ! 許してくれよ提督! オレが悪かっ――」「ダメだ。辞令は辞令だ。軍紀は守れ」
 にべも無く告げる提督には、普段の穏和な、優しげな面影は全く見られなかった。
 厳しい表情で書類に目を落とす提督に、天龍は目元を潤ませ、自分のしでかした事の重さを噛み締めるように、俯く。
「……分かった。軍紀には従う。だけど、これだけは言わせてくれ」顔を上げ、提督を正面から見据えると、涙を流しながら、震える声で告げる。「本当に、ごめん。オレ、提督に酷い事をした。だから、ごめん。もうあんな事、二度としない。……じゃあ」くるっと背を向け、執務室を後にした天龍は、執務室の前で大粒の涙を零し、立ち去った。
 執務室の中の提督は、何も言わずにそれを見送るのだった。

◇◆◇◆◇

「あ、天龍さ――ど、どうしたのですか!? お、お腹痛いのですか……?」
 号泣しながら廊下を歩いていると、電に見つかってしまった。天龍は涙を乱暴に拭うと、「いや、何でもねえよ。電こそ、こんな所で何してるんだ?」とぎこちなく笑いかける。
「ほ、本当に大丈夫なのです……?」心配そうに見上げる電だったが、天龍は何も返さなかった。「えぇと、天龍さんへの辞令が出てたので、お知らせに行こうと思ったのです……」
「……そうか、もう出たのか辞令」心を入れ替えるように、前を向く天龍。「オレ、次の配属先でも頑張るからよ、お前も頑張れよな、電」
「え、あ、その……」言い難そうに口ごもる電。「て、天龍さんもその……頑張ってください、なのです……」名状し難い微苦笑を浮かべている。
「おう、任せとけ! 提督に鍛えられた天龍様だぜ? どこに行っても間に合うに決まってるじゃねえか!」力瘤を作って腕を叩く天龍。「で? 辞令ってのはどこに貼り出されてるんだ?」
「あ、あれなのです」指差す先には、艦娘の人だかりが出来ていた。
「あれか。よし、」ぱんっ、と音を立てて頬を叩き、気合を入れる天龍。「じゃ、行ってくるぜ! じゃな!」電に手を振って掲示板へと向かう。
 掲示板の前に出来た人だかりを縫うように近づき、中身を改める。これでもう、提督とは逢えないかも知れないと思うと心は痛むが、自分が提督に対してやった事に対しての罰だと思えば、何だって耐えられる気がしていた。
 別の鎮守府に配属されようと、艤装を剥がされて鎮守府を追い出されようと、それでも、提督を想う気持ちは変わらないから――――

【辞令

 艦娘 天龍

 本日より一ヶ月間、夜間の提督のトイレに付き添うこと

 以上】

 暫く言葉を失っていたが、やがて天龍の体が灰になっていった。

◇◆◇◆◇

「……おい提督」懐中電灯を持って歩く天龍。
「何だよ?」そんな天龍のパジャマの袖を握り締めてぷるぷる震える提督。
「夜トイレに一人で行けねえって、子供かよお前!? つか辞令にンなアホらしい事書くんじゃねえよ!! ふざけてんのか!?」大声を張り上げる天龍。
「誰のせいだと思ってんの!? 天龍があんな恐ろしい事しなかったらこんな事にならなかったんだよ!? 責任取ってよ責任!!」カンカンの提督。
「ったく……何だよくそっ、そんなバカらしい事でオレは……」ブツブツと呟いていた天龍だったが、そこで提督から視線を逸らすと、小さな声で尋ねた。「じゃ、じゃあオレの事を嫌っては、いねえのか……?」
「何で天龍の事を嫌わなきゃならんのよ?」意味不明だ、と返す提督。「私これでも怒ってるんだからね? ちゃんと反省しろよー? 分かってるのかー?」
 膨れっ面の提督に、天龍は「悪かったって。反省してるよ」と、そっぽを向いて若干赤らめた頬を隠すのだった。
「……フフ、良かったぜ、提督が提督でよ」
「あん? 私が私じゃなかったらおかしいだろ?」
「それもそうだな。フフフ……」
「お前も大概変な奴だな……」
 怪訝な面持ちで天龍を見やる提督に、嬉しくて堪らない天龍。
 その二人がトイレの近くに有る曲がり角に差し掛かった時、人影が飛び出してきた。
「HEY! 提督ぅー!? 金剛ダヨー!!」
 大声を張り上げて現れた金剛に、天龍はビクッと体を震わせ、提督は固まってしまった。
「な、何だよ金剛かよ……驚かせるなよ……って、提督?」提督の異常に気付いて声を掛ける天龍。
「提督? どうしたネー?」ふりふり、と提督の前で手を振る金剛。
「ぎ……」小さく声が漏れ出る提督。
「「ぎ?」」
「ぎゃあああああああああああああああああッッッッ!!」
「「わあああああああああああああああああッッッッ!?」」
 提督の絶叫と、それに驚いて吐き出される二隻の艦娘の叫喚に、再び鎮守府は真昼のような慌ただしさを迎えるのだった。
 そして翌日、金剛に辞令が下される事になるのだが、それはまた別のお話……

【後書】
 天龍ちゃんの可愛さをここぞとばかりにアピールしたいマン日逆さんです(^ω^)
 こう、作中で檻夜提督も語っておりますけれど、粋がってる中二病患者感がね、もうね、最高に堪らないんです…! からかいまくりたい…! そして膨れっ面にさせたい…!
 まぁそんな事するから痛い目を見るんですけどねこの提督! それも含めて提督が提督してるので、わたくしこの物語に関しては満足度めちゃ高だったりします…!w
 そんなこったで次回もお楽しみに~♪

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