2018年11月22日木曜日

【滅びの王】57頁■神門練磨の書15『滅びの王の力』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/03/11に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/
■第58話

57頁■神門練磨の書15『滅びの王の力』


「――んま。練磨。起きなよ、練磨!」
「うぅ……?」
 体を揺り動かされてる事に気づいて、オレは瞼をじっくりと開ける。
 ……眼前には、化粧っ気の無い、でも愛嬌が有って可愛げの有る、美少女の顔。
 見覚えが有る……――と、思い出す。
「八宵……?」
「他に誰がいるってんだい! いい加減寝惚けてないで、さっさと起きな!」
 叩き起こされて、オレは布団から弾き出された。転がって、――壁に思いっきり鼻をぶつける。
「~~~っ」
「さ、朝飯の時間だよ、皆が待ってるから、さっさとしな!」
 八宵が布団を全部剥ぎ取っていくと、部屋に残されたオレは鼻を押さえたまま、ゆっくりと立ち上がる。
「ねむ……――つか、ちょっと待て。オレ今、向こうの世界で……?」
 大変だ! 路上にぶっ倒れてるに違いない! オレは二度寝をしようとして――扉の隙間からオレの様子を覗き見る存在に気づいた。
「……」隙間を見てみる。
「……」隙間の何者かも、オレを見ている。
「……」暫く沈黙してみる。
「……」隙間の何者かの瞳が、輝き出す。
 不味い! と気づいた時には既に遅し! 扉を撥ね開けて、子供達が雪崩れ込んで来る。
「おはよ―――!」
「にいちゃんあそんで―――!」
「くらえ―――!」
「ぎゃああああああああああ」
 五人分の突進をマトモに受けて、オレは壁まで吹き飛ばされ、上から伸し掛かられ、潰れる。
「やあやあ!」
「とりゃー!」
「うおりゃー!」
 バキ! ドカ! ボコ! 乱打乱打の滅多打ちに遭い、オレは短い人生にピリオドを打った…… 
 ――そんなエンド、有って堪るか!
「て、め、え、らァァァァ!」
「わー! にいちゃんがおこった―――!」
「にいちゃんをたおせ―――!」
「あはははははは!」
「こら! 朝から何騒いでるんだい! とっとと飯、食べちゃいな! 片付けできないだろーが!」
 八宵が部屋の扉を開け放して、怒鳴り込む。子供達はクモの子を散らすように部屋から飛び出していき、銘々に喚きながら遠ざかって行った。
 オレは呆気に取られつつも、八宵を見据えて、
「……ここって朝、早いんだな?」
「そうかい? どこもこんな感じだろう?」
 八宵は事も無げに応えると、腰に手を当ててオレを見据える。
「ほら! あんたも早く来な! 飯が冷めちまうよ!」
「あ、お、おう!」
 ……まあ、向こうの世界の事は、今日寝た後に考えるとしよう…… 
 ……また病院に運び込まれると言うのは、何だか嫌な感じだけどな。


 豪勢! とまではいかないまでも、オレにしては充分の量に質も良かったから、すげー満足した朝食会だった。残念な事と言えば、子供達にオレの飯が幾つも奪われていった事だろうか。美味しかったし、食事中の会話も飽きず、どれもが新鮮で楽しかった。
 まるで小学校の頃の修学旅行みたいな感じで、懐かしい感じも受けた。
「じゃ、そろそろ出発しようか、練磨」
 食事を終えて子供達と食後の運動をしていると、八宵が初めて逢った時の装備……サラシの上にジャンパーを羽織り、右手には抜き身の槍、背中には小太刀を鞘ごと吊って、既に準備を整えていた。
「出発って? もう行くのか? もう少しいたって……」
「早めの方が良いだろ? 仕事を早めに終わらせて、戻って来る時間を少しでも短縮したいと思わないかい?」
「まぁ……そう言われると弱いんだけどさ」
「じゃあ出発だ!」
 ジャケットだけじゃダメらしく、その上にフード付きの布を渡されて、全身を包むように装備した。まるでこれから砂漠にでも向かうような装備に、オレは少しだけ不安な気持ちになった。
 因みに咲希は教会に寝かせておくのも何なので、オレのジャケットのポケットで眠らせている。
 教会を出て少しの間は背中に子供達の声援が有ったが、離れるに連れて聞こえなくなり、何十分としない内に、砂風が吹き荒ぶ荒唐な場所に入っていた。
「なぁ、八宵。オレ達、どこ向かってんだ?」
「知りたいかい?」
「こんな砂嵐の中、それ位教えて貰わねーと、ちょっと行く気が萎えるっつーか」
「想像が掻き立てられるだろ?」
「こういう時は、あまりプラスの思考は出来ねえからなぁ」
 ブツクサ垂れつつ、歩き続ける。
 彼是何時間経ったか分からないが、取り敢えず長い時間歩き続けた。太陽が砂嵐に因って遮られて見えないから、殆ど時間の感覚が無くて、どれだけ歩いたのかも分からない状態だった。
 だが、ようやく八宵の目的の場所に辿り着いたようだった。
「ここって……遺跡?」
 砂嵐のせいで全体像はハッキリしないが、相当大きな建物が在るのは確かだった。だけど、人がいる気配が無い。寂れて、もう誰も住み着かなくなって久しい、と言った空気が砂嵐と共に漂っていた。
「当たり! ここで、ちょいと探検さっ」
「探検? 遺跡発掘? ……墓荒らし!?」
「悪く言や、そうだね」
 八宵はそう言いつつ、遺跡の中へと足を踏み入れて行く。
「待てよ!」
 オレが呼び止めて、八宵が振り返る。
「やっぱ……不味くねえか? 遺跡を荒らすなんて……」
「……ウチに説法を説いたって無駄だよ」
 八宵の瞳には、どこか寂しげな色が浮かんでいた。
「ウチの言い訳を聞かせてやるよ。……あの孤児院を守っていくためには、仕方ないんだ。どんな手を使ってでも、守りたいものが有るんだよ、ウチには。……練磨。あんたには無いかい? どう有っても守りたい何かが」
「……」
 無い、と断言できる程、人間終わっちゃいない。
 だけど……素直に頷けもしない。そういう人間は、世の中にどれだけでもいると思うし、それを否定したらいけない気がした。
 鷹定だって、何をしようとしてるのか分からないけれど、それにだってオレの力……《滅びの王》の力を使うって事は、そんな簡単に済む話じゃないって分かる。必死になってるのはオレにも分かるけど、それが良い事に使われるとは限らないんだ。
 それに、オレが考える「良い事」と、鷹定や八宵の考える「良い事」ってきっと同じじゃない。皆、それぞれに自分の考えが有るんだ。それを無闇に否定して良い訳が無い。自分だって、自分の考えが否定されればムカつくし、どうしてそんな事を言われたのか考えるだろう。
「……でも、遺跡に何が有るんだ? やっぱり、価値的に高い品でも落ちてるのか?」
 認める訳じゃない。……だけど否定する事も出来なかったオレは、問題を脇に措いたまま話を進める事にした。
 きっと、こういうのを「弱い」って言うんだろう……。
 八宵はオレの心情を察してくれたのか、不審に思う様子も無く頷いた。
「落ちてる、ってのも不思議な言い方だけれど、ここには〈器石〉が転がってるって噂が有るんだよ。まあ、それはおまけなんだけどね」
「おまけ? じゃあ、本当の目的は?」
 八宵はオレを見てニヤリと口の端を歪める。
「実は……町の方でね、もう一つ噂が有るんだよ。最近、この遺跡に大鬼が住み着いたって専らの噂なんだ。お陰で〈器石〉の回収にも来れない。町の人が困ってるってんで、傭兵や旅人を雇うって話になってるんだけど、それをウチがやってやろうって申し出た訳さ」
「すげーじゃん!」
 さっき遺跡荒らしを咎めてたオレが恥ずかしくなりそうな発言に、オレは少し心を打たれた。こういう、自ら進んで事件に乗り出したり、人助けをしたり出来る人ってのは、そうそういないし、それだけ凄いと思う。
 ちょっと……いや、かなり見直した。
「その大鬼ってのは、やっぱり……でかいのか?」
「それが、分かんないんだよね」
 八宵は前に向き直って、遺跡の中を無防備に突き進む。
「分かんないって?」
「大鬼を見た奴がいないのさ。いつも、その尖兵にみーんなやられちまってるからさ」
「尖兵っつーと……小鬼とか、って事か?」
「ま、そんなトコ。んで、ウチがその大元を潰してきてやろうって、そういう話な訳」
 八宵は気軽に言ったが、オレにはどうもそう簡単な話じゃないと思えた。小鬼を尖兵として出している大鬼……ボスがそうそう姿を現すだろうか? 姿を拝むだけでも難しい話なんじゃないかって思う。
 でも……八宵を見ていると、そんな不安を掻き消されてしまいそうだった。自信たっぷりな眼差しには、大鬼なんて一撃で倒してしまうぞ! って気迫が満ち溢れている。
 頼もしい事この上ない!
「……あ、あれって……」
 オレは不意に視界に入ったものに眼を奪われて、八宵に声を掛けた。
 八宵は振り返ってオレの視線を追うと―― 
「隠れてッ」
「へっ?」
 八宵に腕を引っ張られて、瓦礫の山に身を隠された。
 ちょっと埃が舞って、口の中に入った砂を吐き出していると、八宵が舌打ちした。
 オレが顔を上げて覗き込むと、――やっぱりどう見ても骸骨が座っているようにしか見えなかった。
「なぁ、八宵。あれって……」
「見た事無いのかい? 骸骨兵だよ」
「骸骨兵……」
 名の通り、座っている骸骨達の腰には、細い刀が提げられている。服も着ているが、どこもかしこもツギハギだらけで、その上擦れたりしたのか穴が開いていたりする。
 骸骨は三人分。三人の骸骨は互いに顎の骨をカタカタ鳴らしながら雑談に興じていた。
「おめえ知っでるか? この間、太郎作(たろさく)の家さ行っだら、まぁだ線香焚いてるでよ」
「んがははは! 太郎作もそろそろ嫁ぇもらわねえどなぁ。三十路過ぎたら嫁も来ねえっぺよ」
「んだんだ」
 ……やけに人間臭い会話だな。
「なぁ八宵……何かすげー親近感湧きそうな奴らなんだけど……」
「何言ってんだい! あいつらは魔族なんだよ? ウチらの存在がばれたら、殺しに来るよっ」
 そうとは思えない程、爺様的な会話を繰り広げている骸骨三人組。……本当に、人を殺すような人達なんだろうか? オレには不思議でならない。
「奴らは大鬼に与する魔族の一派に違いないよ!」
「そうかなぁ……? ちょっとオレ、確かめてくるよっ」
「確かめて来るって……ちょっ、ちょっと練磨っ!?」
 八宵の制止も無視して、骸骨三人組に駆け寄ってみる。

【後書】
 眠り病に罹って一日配信遅れちゃいました! ごめんご!!
 と言う訳で後書をば。骸骨兵ですが、方言に関してはグダグダの極地です(笑)。だいぶ適当に、「適当なおっさん」をイメージして綴っていた筈ですw 三十路過ぎたらうんたんはアレです、当時はそう思ってたんです…(苦笑)
 そんな感じで始まりました、大鬼編。骸骨兵は本当に悪い奴なのか…?? 次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    骸骨三人組ってもしかしたら後藤・吉田・田中さんなのかな?w
    悪い人たちにはみえませんよねぇw
    でもそこで即行動できる練磨くん相変わらず青っぽくて素敵v

    後藤・吉田・田中さんの無事を祈ります!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv



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    1. 感想有り難う御座います~!

      たたた確かにー!?!?!www 後藤・吉田・田中さん感あるぅ~!www
      初代の後藤・吉田・田中さん枠と言っても過言じゃないですよこの人達!ww と、言われて気づく作者なのであったww
      練磨君、やっぱり青いですよね…!w 何かこう、それ以外言い表しようがないくらい、こう、青いんですよね…!w

      後藤・吉田・田中さんって羅列を見るだけで、もう無事が祈れないのは何故!?www

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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