2018年11月23日金曜日

【艦娘といっしょ!】第7話 加賀といっしょ!【艦これ二次小説】

■あらすじ
ちょっと頭のおかしい提督と艦娘達の日常生活を切り抜いた短編集です。
※注意※2016/01/06に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【Pixiv】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
艦これ 艦隊これくしょん コメディ ギャグ 摩耶 電 金剛


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/68881/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/series.php?id=627932
■第7話

第7話 加賀といっしょ!


「作戦司令部より連絡よ」

 ツン、と澄ました顔で書類を机に置く加賀に、提督は「てんきゅー」と言いながら手に取ると、書類をパラパラとめくって確認していく。
 その間、加賀は黙然と提督を見下ろすだけで、一切の言葉を発しない。
「うーん、どうやら作戦司令部はカンカンみたいだなー」
 書類をパサリと机に放ると、提督は困った風に頭を抱える。
「何か問題でも?」表情筋をピクリとも動かさずに尋ねる加賀。
「こないだの、えーと、何だっけ……」書類の山を漁り、一枚の用紙を引き抜く提督。「これこれ、【突入!海上輸送作戦】でさ、私、最後まで作戦を遂行できなくてさー」
「……あぁ、【西方戦線!機動部隊派遣】作戦で、グラーフ・ツェッペリンの捜索のために、攻略を放棄した事ですか」すらすらと諳んじる加賀。「それで、作戦司令部は何と?」
「近い内に来いってさ。近々辞令も貼り出されるらしいし。最悪左遷かなぁ」
 提督の何気無い一言に、加賀の眉目がピクリと動いた。
「……提督に限って、そんな事は無いでしょう。あなたの功績は、私が認めています」
「ありがちょろ~」ふんわりと笑む提督。「加賀さんはいつもクールで優しいよね」
「……」何も言わず、提督を見下ろすだけの加賀。
「さて、じゃあ司令部から催促の電文が来る前にちょっと行ってくるよ」そう言って立ち上がると、掛けてあったコートを羽織る提督。「すぐ帰ってくると思うけど、もしかしたら泊りになるかもだから、先に帰っちゃってね」
「分かりました。どうかお気をつけて」
 一歩引いて腰を折る加賀に、「うん、じゃあ行ってくるほー」と出掛けて行く提督。
「……」
 そんな提督の足音が聞こえなくなった頃、加賀はちら、と机の上の書類に目をやる。
 半分隠れていたが、そこにはこう記されていた。
【テイトク オリヤ
 サクセン ミッタセイ ヲ カンガミ
 サセン ヲ メイズ】
「……!」
 加賀の瞳が大きく見開かれ、慌てた様子で執務室の扉を開いて廊下を見るも、既に提督の姿はどこにも無かった。
 心臓が破裂しそうな程に脈打ち、加賀はしばらくその場から一歩も動けなかった。

◇◆◇◆◇

 翌日。掲示板に貼り出された書面は、昨日加賀が見た文面と全く同じで、見たまま言葉を失ってしまう。
「提督が左遷って、どういう事よ……」
 飛鷹が愕然とした様子で呟いたのが聞こえてくる。
 加賀はいても立ってもいられず、執務室に駆けた。
 提督は、確かに作戦を放棄した。本来作戦完遂が可能なだけの戦力を有していながら、大本営の意向を無視した事は、謀反と取られても仕方ないかも知れない。
 彼自身が優先したワガママである、グラーフ・ツェッペリンを保護すると言う作戦は、全く作戦司令部が意図しない作戦ではなかった筈だ。にも拘らず、一切の警告も無くいきなり左遷など、常軌を逸している。
 何かの間違いだと、悪質な嫌がらせだと信じて、加賀は執務室の扉を開けた。中では、提督が外出の準備を整えている所だった。
「あ、加賀さーん、ちょっとネクタイの締め方を教えて欲しい、ん、だけ、ど……」加賀の姿を視認して驚きを隠せない様子の提督。「ど、どうしたの加賀さん……? お腹痛いの?」
 そこで加賀は気づく。己の目から止め処なく涙が溢れ出ている事に。拭う事も忘れて、提督を見つめる。
「……提督。あの辞令は……本当なのですか……?」
 胸が張り裂けそうなほど、苦しい。加賀はそれだけ告げるだけで精一杯だった。
 提督は気まずそうに、「あー、うん、まぁ仕方ないさ、私にも落ち度が有る訳だから――」「提督に落ち度などッ」
 提督の発言を遮って大声を張り上げてしまった加賀は、そこで興奮していた己を静めるように胸に手を当て、深呼吸した。
「……提督は、この鎮守府に無くてはならない方です。そんな提督を左遷させるなど、私は認めません。……抗議してきます」
「待った待った!」涙を拭わずに立ち去ろうとする加賀の手を取り、引き留める提督。「そんな事したら加賀さんの評価まで落とされちゃうじゃん! 私は大丈夫だから! それにそんな顔で外出たら不味いでしょ。えーと、ほら、ハンカチ」
 軍服のポケットから取り出したハンカチを手渡そうとする提督に、加賀は更に顔をくしゃっと歪め、その胸に顔を埋めた。
「どうしたー? いつものクールな加賀さんはどこ行ったんだー?」加賀の頭を撫でる提督。
「……ッ、私は、嫌です……ッ。提督と離れ離れになるなんて……ッ、私はッ、嫌です……ッ」
 声を殺して泣きじゃくる加賀に、「おいおい、今日の加賀さんは甘えんぼさんかー?」と頭を撫で続けるのだった。
「提督は……ッ、私と離れ離れになるのは、……嫌じゃ、ないのですか……ッ?」
 左遷されると言う事は、提督ではなくなるかも知れないのだ。つまり、艦娘とは係わらない環境に置かれる可能性が有ると、そう明示している。
 それはつまり、提督と加賀がこうして話す事も、もう無くなるかも知れないのだ。
 提督は加賀の髪を優しく梳きながら、「離れ離れって……またすぐ逢えるだろー?」と苦笑を浮かべる。「でもまぁ、加賀さんと離れ離れになるのは、私も嫌だなぁ」
「……でしたら、抗議しましょう」顔を離し、赤くなった鼻の頭を提督に見せる加賀。「作戦司令部の命令には従えないと。私もお供します」
「うぇえ? どうしてそうなるの?」訳が分かってない様子の提督。「私ただ謝りに行くだけだよ?」
 間。
「……は?」よく分かってない様子の加賀。「ですが、辞令には左遷と……」
「あぁ、あれ誤植ね誤植。私の上司のシロって提督がさー、いや元は後輩だったんだけど、今は上司になった奴なんだけどね? こいつがもー誤字誤植のオンパレードな電文打つ奴でさー」笑いながら説明する提督。「“サーセンを命ず”って打ちたかったらしいんだわ。まぁ私も付き合いが長いからすぐに分かったんだけど、まじ紛らわしいよなー」
 ケラケラと笑っていた提督だったが、加賀から反応が返ってこない事に気づき、「あれ、どうしたの加賀さん?」と声を掛けるも、その尋常ならざる気配にたじろぐ。
「……本当に、紛らわしいですね……」ゴゴゴゴ、と言う効果音が似合いそうな形相の加賀。
「う、うん、そ、そうだね! ま、紛らわしいよねー! うんうん!」冷や汗を垂れ流しながら必死に首肯する提督。
「……頭に来ました」
 最早何も言えなくなった提督は、死のオーラを纏って執務室を後にする加賀を止める事が出来なかった。
「……す、済まんシロ、骨は拾っておいてやる……」
 南無ーと両手を合わせる提督なのだった。

【後書】
 友達提督初登場の回でした! このシロ提督、今も変わらず凄まじい戦果を挙げ続けている、後輩でありながら最早先輩でもある提督だったりしますw 一言で言うとヤバいです(笑)。
 それぐらいもー、毎度毎度イベントでは様々な場面で知恵を貸して頂いている提督さんだったりするので、頭がまるで上がりませぬw 今度は冬イベでお世話になりそうですね…!

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