2018年11月28日水曜日

【滅びの王】58頁■神門練磨の書15『滅びの王の力』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/03/13に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/
■第59話

58頁■神門練磨の書15『滅びの王の力』


「すみませーん」
「なんだぁ~? ! おめえ、人間でねえか!」
「ちょっと聞きたい事が有って来たんですけど~」
 そう言うと、骸骨さん達は戸惑ったように顔を見合わせた。
「おい、三与吉(みよきち)。どうするだぁ? 人間がわしらに話し掛けてくる事だ、初めてだぁ」
「んだんだ」
「どうするっぺおめえ……オラ達ゃ守人だべ? 話なんか聞けねえだ!」
「あの~。話、出来ませんか?」
 オレが食い下がると、骸骨さん達は互いに視線(瞳じゃなくて眼孔)を向け合って、思案しているようだった。脳味噌が無いように見えるんだけどな…… 
「どうするだぁ? ちょこっとばかし、聞いてみるだか?」
「んだな、そうするべ」
「そこさ御仁、オラ達に何の話が有るべ?」
 やった! 話が通じたらしい。
 オレはちょっと思案してから、訊いてみた。
「あの、最近、ここに大鬼って来ませんでしたか?」
「! あんの大鬼だべか?」
「おうよ、来たっぺ。あんの大鬼さには、わしらも困っとるべよ」
「どうにかして貰おうと思っでも、そこらの鬼じゃ勝てねえでさぁ」
「オラ達ゃ困り果ててるでよぉ」
 どうやら、この骸骨さん達も困ってるらしい。
 これは契機! オレは早速八宵を呼びに行った。
「あの骸骨兵が困ってる? ……どうにも胡散臭いけどねぇ」
「そう言うなって! これで、大鬼の居場所が分かるだろ?」
「そりゃあ、まあ……」
「決まりだな!」
 オレは八宵を連れてきて、骸骨さん達に言った。
「オレとこいつ――八宵で、その大鬼をぶっ倒してくるぜ!」
「そげな事できるだか!?」
「そげばすげーこったで」
「んだんだ」
 ……方言が凄過ぎて、何を言ってるのか分からない…… 
「だからさ、大鬼のいる場所って分からないか? すぐに倒してくるから」
「だどもなぁ……」
「ここは肋骨さ括るべ、三与吉!」
「んだんだ」
 腹じゃないんだ、と突っ込みを入れたかったけど、止めました。
「……んだ、オラからも頼むだ。あの大鬼さ、やっつけてけろ!」
「任せとけっ!」
 オレが胸を張って叩くと、三与吉と言う名の骸骨兵が居場所を教えてくれた。
「オラ達ゃ怖くて行けねえんだども、それでも良いが?」
「全然構わねえって! ちゃんとぶっ倒してくっから、楽しみに待ってろよ!」
 そう言い残して、オレは八宵を連れてその場所へ向かう事にした。
「……心配だ」
「え? 何が?」
 不意に零れた言葉を拾って、オレは八宵を見据える。
 八宵は眉を顰めて、難しい顔をしていた。
「こんなに簡単に大鬼の居場所が割り出せるなんて……罠とも考えられるんじゃないかな、と思った訳で……」
「そんな事ねーって! あの骸骨達も大鬼に苦しめられてたから、あんなに正直に教えてくれたんだろ? そうに違いねえって」
「そうかなぁ……」
 妙に憂鬱そうな顔の八宵に、オレはちょっと不貞腐れる。
「心配なら、オレだけで行っても良いんだぜ?」
「それはダメ」
 ピシャリと、まるで拒絶するような速度で八宵は断言した。
 オレはちょっと気圧されて、驚いた感じで八宵を見やる。
「……あんたがこんな所で死ぬような奴だとは思ってないけど、何の武装も無く一人になるなんて、あまりにバカ過ぎるぞ?」
「あ……」
 そうだった。今のオレには、あの人から貰った〈ぶっ飛ばし〉の〈附石〉も無い、ただの人間に過ぎないんだ。幾ら《滅びの王》だからって、その力が分からなければ、その辺の人と全然変わらない。まだ、教会の子供達の方が戦えるかも知れない位だ。
 嫌な事を思い出して、ちょっとブルーになりかけたけど、何とか立て直そうと、話題を変えてみる。
「……そう言えば、八宵の武器は〈附石〉じゃないのか?」
 オレには不思議に思っていた事が有った。
 それは先日、虚無僧軍団に襲われた時の事だ。オレはあっさりとやられてしまったが、あの時、確か麗子さんが使っていたのは、〈附石〉の杖だった。あんな風に武器を〈附石〉として持つ事が出来れば、荷物にならずに済むんじゃないかって、思ったのだ。
 その点、八宵は槍も小太刀も〈附石〉ではないように見える。逆に、こうしていた方が相手に対して威嚇になるのだろうか? 
「〈附石〉の武器よりも、ウチはホンモノの武器を使いたいのさっ」
 八宵はそう言って槍の表面を撫でる。
「……〈附石〉の武器がニセモノって言いたい訳じゃないんだけど……やっぱり、武器ってのは〈附石〉なんかじゃなくて、ちゃんとした物を使いたいんだよ、ウチは。……ま、無理にウチの感性を理解して貰うつもりは無いし、忘れて結構」
 ……何か、オレにはよく分からない話だった。
 まあ、八宵が良いって言うなら、オレも無理には追及しないけれど、きっと芸術家のそれに似てるんじゃないかな、とオレは感想を懐いた。
「それはともかく! ……本当に行くのかい? 大鬼の罠かも知れないのに」
「オレはさっきの骸骨……三与吉さんを信じるぜっ! 絶対に罠じゃない!」
「……言っても聞かないか。分かったよ、ウチも付き合ってやろうじゃん。……ま、罠だとしても、臨むところだけどね……!」
 八宵の頼もしくも恐ろしい発言を聞いていると、――その姿が見えた。
 遺跡の奥まった場所に在る祭壇。その棺の上で肘を立て、手のひらに頭を乗せ、寝転がっている男。年の頃は二十代前半のように見える。黒髪は刈り上げられ、黒瞳は大きくも無く小さくも無く。胸には小石のような物で出来たネックレスを下げていた。不機嫌そうに顔を歪ませている。
「おいおい、何か侵入者がいるんじゃねえのぉー?」
 男――頭に一角獣を思わせる小さな角を構えた、恐らく鬼――はそう言って唾を吐きつける。唾は然程飛ばず、オレの一メートル手前位に落ちる。
「帰れよ、クソガキ。テメエのような雑魚が来る所じゃねーっつーの」
「お前が大鬼か?」
「あん?」
 鬼は起き上がり、不機嫌そうな顔に、更に瞳が血走り始めた。
「だったら、どうだっつーんだよ、ああ? オレ様に何か用か? 大鬼の蟹頃(かにころ)黄一郎(きいちろう)様によぉ?」
 やはり、大鬼らしい。……つか、
「鬼なのに蟹なのかッ!?」
 そこが疑問だった。
 蟹頃は露骨に苛立つ。
「ンだこの野郎? オレ様の名前に文句でもあんのか、おあ?」
「いや……じゃあ蟹頃、お前、何か悪い事してんだろ? 止めろよ」
「ああ!? 呼び捨ての上に命令か、クルァ!? テメエ調子扱き過ぎなんだよ、ええ?」
 ……そうだ、何もオレはここに喧嘩しに来た訳じゃない。出来る事なら穏便に、平和的に終わろうじゃないか。
「あっと、ごめんな? じゃあ、頼む。悪さをするの、止めてくれないか?」
「練磨……?」
 背後で八宵の不快そうな声が聞こえたけれど、それは無理矢理スルー。
 蟹頃はオレを睨み据え、立ち上がって歩み寄ってきた。
「そうだなぁ、悪さ、止めてやっても良いぜ」
「本当かっ?」
「おうよ、オレ様、こう見えても心は広いからな。じゃあまず、――死ねや」
 ゴッ――、視界がぶれて、何も見えない、……気づくと地面に這い蹲ってた。腹に激痛が走って、瞬間、吐き気に変わる。
 殴られたんだ――気づくまでに時間が掛かったけれど、その時には蟹頃の足が眼前に迫っていた―― 
 ざしッ、と言う物が切れる音がして、オレはまた痛みが走る事を予期して歯を食い縛った。……が、痛みどころか衝撃さえ伝わらず、そっと眼を開けてみる。と、そこには、
「――ってんめぇ……!」
「あんたこそ、調子に乗り過ぎだよ!」
 八宵だった。八宵が槍で蟹頃を牽制している。初撃は首元を狙ったのだろう、石のネックレスがバラバラと落ちる音がした。
 蟹頃は完全にお冠のようで、どこからか棍棒を取り出した。ゴツゴツの、まるで釘バッドを連想させる棒切れ。
「クソアマァ! テメエ、ぶっ殺されてェか!」
「そりゃこっちの台詞だクズ鬼! 今ここで、その腐った脳味噌貫いてやるよ!」
「んだとぅ……ッ!?」
 売り言葉に買い言葉だ。流石の蟹頃も、苛立ちと同時に動揺も生まれてきたらしい。
「さっ、掛かって来な、クズ鬼。ウチが軽~く逝かせてやるからさ!」
「~~~ッッ嘗めやがって……! その体、ズタズタにしてやらァァァァ!」
 蟹頃が棍棒を振り回して八宵との距離を一気に縮める!
 八宵は槍を両手で携え、――鋭い突きを放つ!
 一瞬、視線が追いつかなくて、瞬時に突き出された矛先を蟹頃が躱すシーンが見え、――次の瞬間に矛先は引っ込み、更に続けて二撃目が走る!
 突き出す、引っ込める、この二つの動作を極限まで高速化し、同時に相手の急所を的確に狙う攻撃は、そのまま防御にも繋がった。高速化し過ぎてて、蟹頃も殆ど感覚で避けてる節が窺える。
「すげぇ……」
 ようやく体が動けるようになって、立ち上がると同時に下の方から声が聞こえてきた。
「全く……酷い目覚めだわ」
「咲希!? 気づいたのかっ?」
「気づくわよ! あんた、何攻撃マトモに受けてんの!? ここにあたしがいた事、忘れてんじゃないでしょーね!?」
「あ」
 そうか。さっきの蟹頃の一撃、もしかして咲希に…… 
 咲希はジャケットのポケットから這い出ると、フワンと浮かんでオレの鼻先を指差す。
「女は繊細なのよ? もっと丁重に扱いなさいよね!」
「わ、悪かったよ……。それで、大丈夫なのか? もう、動けるのか? 死んでないよな?」
「……勝手に殺さないでくれる? あんた失礼過ぎ。蹴るわよ?」
「良かった……ホンモノの咲希だ……」
「どこにニセモノがいるってのよ!」
 本当に良かった……無事で何よりだ。
 安心し掛けて、――現状を思い出す。
 蟹頃と八宵を見ると、八宵の手数に押されて、蟹頃は殆ど手が出せない状態だった。が、このまま続けば八宵は負けてしまうんじゃないだろうか、そんな危惧を感じた。
「……その様子だと、まだ自分の力に気づいてないようね?」
「へ? 何の話だ、咲希?」
「自覚も無いのね……はあ。もう、あんたを見てると、あたしのしてる事がバカらしくなってくるわ、ホント」
 何の話なのか分からなかったけれど、バカにされてる事くらいは分かる。ちょっとムッとして、咲希を睨みつけると、咲希は逆に睨み返してきた。
「あんた、――やっぱり《滅びの王》に間違いないわ」

【後書】
 大鬼の名前雑過ぎ問題(笑)。この時丁度「カニクリームコロッケ」が頭に有って、で、付いた名前がアレです。あまりにも雑過ぎて、この名前だけ執筆が終わった後もずっと頭に残っておりました(笑)。
 そして咲希ちゃん復活です! 良かった良かったw からの、意味深発言が飛び出ましたが、もしかして近々その力が明らかに…!? 乞うご期待!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    遅くなってしまいましたm(_ _)m

    後藤・吉田・田中さん今の所無事っぽい!うれしい!!
    そしてそして咲希ちゃん復活!!
    いつもどおりの二人にほっこりw
    だけじゃないぞ、爆弾発言キタ━(゚∀゚)━!
    練磨くんの力それは…清々しいほどの青さだっ!!!

    カニコロさん秘話で大笑いw

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      いえいえ~! お待ちしておりましたぞ~!!ヾ(*ΦωΦ)ノ

      何とか無事でした!w やったぜ!!
      遂に咲希ちゃん復活です! (*´σー`)エヘヘw ほっこりして頂けてわたくしもほっこりです!w
      清々しいほどの青さwwwこれは納得せざるを得ないっっ!ww(えっw

      蟹頃さんの秘話お楽しみ頂けたようで嬉しいですww ほんと何故かこの名前だけはずっと頭に残ってるんですよねぇww

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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