2019年1月9日水曜日

【滅びの王】64頁■神門練磨の書16『間儀家』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/04/04に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/
■第65話

64頁■神門練磨の書16『間儀家』


 ……どこだろう、ここは。
 目覚めてみて、オレはそこが自宅でも病院でもない事に気づいて、不思議だった。
 その後ようやく、
「誘拐されたッ!?」
「違うよぅ。拉致されたんだよぅ♪」
「どぉうわっ!?」
 ベッドから跳ね起きると、崇華が正座してオレを見据えていた。
「おはよぅ、練磨♪」
「おはようって……ここ、どこ!? 崇華も拉致られたのか!?」
「ううん。わたしは拉致されてないよぅ?」
「へえ!? じゃあ何だ!? どうなってんだ、オレ!? は? へ?」
「……練磨、分からないの? ここ、わたしの家。わたしの部屋」
 ……訳が分からない。
 えっと、つまり、オレは…… 
「――お前に拉致されたのかッ!?」
「うん、そうだよぅ♪」
「『うん、そうだよぅ♪』……じゃねェェェェ! は? え? 何でそうなってんの!? オレ、確か公園で……」
「うん、そうだよぅ♪」
「何が!? 何が『うん、そうだよぅ♪』なの!? 何でそんなご満悦な顔してんのお前はッ!?」
「えぅ……。練磨、そんなに質問されたら、応えられないよぅ……」
「あ、ああ、済まん。……訊くけど、オレは、どういった経緯で、ここに……?」
 オレがちょっと頭の整理を兼ねてゆっくりと尋ねてみる。と、崇華は昨日の事を思い出そうと小首をコックリコックリと振る。
「えとえと、昨日ね、練磨が帰った後、わたし、ジュース買いに行ったの。そしたら、公園の中で練磨が倒れてて……ここまで運んだの♪」
「何でオレん家じゃないのッ!? 何で崇華ん家なのッ!? 普通オレん家か病院に運ばない!? 倒れてたんだろ、オレ!?」
「気を失ってただけだもん」
「気を失ってたら不味いだろ?! 救急車呼べよ!? 助からなかったら、どうするつもりだったんだお前は!?」
「……酷いよぅ。わたし、練磨を助けたくて……っ」
 急に泣き顔になる崇華に、オレはやっちまった! と慌てて慰めに入る。
「うわっ、ごめんっ、崇華、オレが悪かった! そうだよな、崇華はオレを助けたくて……っ」
「……わたし、悪い事、した……?」
「うぐっ」
 仔犬のようにウルウルした瞳で上目遣いされたら、何も言い返せない。罪悪感や悔恨、良心の呵責がオレの心を覆い尽くしていく……。
「……ごめん、崇華。崇華はただ、オレを助けようとしただけなのに……。……てか、そしたら何で崇華の家に運んだんだ……?」
「だって、練磨、気を失ってたもん」
「気を失ってたら自宅搬入なの!? またお前は展開的に有り得ない事を堂々と……!」
 まあ、気にしたら負けなんだ、きっと。
 オレはベッドから降りると、――妙にスペースが余るな、と思って、気づいた。
「……崇華。オレは今、重大な事に、気づいたんだ……」
「ふぇ? 何かな? 何だろう?」
「お前……昨日、どこで寝た!?」
「どこでって……ベッドだよ?」
「どこの!?」
「どこのって……そこ」
 崇華が指差すのは、まさにオレが眠っていたベッド。
 崇華はパジャマ。オレも、ちょっと大きいけれど、男物のパジャマ。
 ……頭がグルグルしてる……色々と考えちゃいけない事が回って…… 
「……崇華さん。この家に今、家族の方は?」
「えとえと、……誰も、いないよっ?」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああ!!」
 オレ、暴走。
 因みに、崇華を襲っていません。断じて。

◇◆◇◆◇

 落ち着いた頃、ようやくオレは今の状況が如何に危険であるかを悟った。
「……崇華。よく……、聞くんだ」声を厳かにオレ。
「うんうん」コクコク頷く崇華。
「……家族の方がいないのに、女の子の家に男を上がらせちゃ……ダメだッ」断言するオレ。
「何で~~??」ブーイングする崇華。
「ダメなものはダメなのっ。良いか!? こんな事をしたら、そりゃあもう……ッ、ダメなんだぞ!?」ちょっと理由を提示できないオレ。
「何がダメなのぅ?」キョトンと小首を傾げる崇華。
「それは……っ、……良いか、よく聞くんだ崇華。男はな……狼になるんだぞぅ?」狼狽えつつオレ。
「カッコいいね!」意気揚々と瞳を輝かせる崇華。
「違ァァァァう! そうじゃないだろ!? もっと怖がってくれよ!? 話が続かないだろっ!?」半絶叫のオレ。
「じゃあ可愛いの?」キョトンと小首を傾げる崇華。
「じゃなくて! 可愛いか、狼? じゃなくて! 違うだろ? 怖くないの、狼?」疑問符を浮かべつつオレ。
「カッコいい狼もいるし、可愛い狼もいたら良いなっ♪」えへへ、とはにかむ崇華。
「『いたら良いなっ♪』じゃなくて! そういう問題じゃなくて、違うんだって! ってもう良いよ! 狼は止めだ止め! とにかく! 男を部屋に上げちゃダメなの!」ちょっと怒り気味にオレ。
「大丈夫!」自信満々に崇華。
「何がッ!?」絶叫気味にオレ。
「わたし、練磨となら……良いよ?」頬を朱に染めて崇華。
「……」
 疲れて、オレは項垂れる。
 ちょっと……つか全然だけど、崇華は、ずれ放題だ。もう、どうしようもなく箱入り娘だ。こんな奴を外に放しちゃならない!
 ……敢えて考えないようにしてたけど、これでもこいつ、向こうの世界……オレが見る夢の中じゃ、何年も生活してるんだよな。どんな生活なのかすげー気になるけど、ここまで箱入り娘な奴が普通に生活してる姿が想像できない。……まさか、向こうの世界じゃ一国の姫君なのか?
 それも有り得ない想像だけれど。
 項垂れたまま、ちょっと顔を上げる事が出来なかった。……不覚にも、頬が熱い。今、顔を上げたら、朱に染まった顔を見せてしまう。それだけは、避けたい。
 オレだって男だ。そういう、男と女の事情には興味が無い訳じゃない。……ただ、それを大っぴらにする事が出来ないだけで、同時に他人に知られたくも無い。思春期真っ盛り。
「……練磨? どうしたの?」
 ――丁度その時、オレの腹が食糧難の警告音を発し、弾かれたように顔を上げた。
 崇華と眼が合い、――その瞳に笑みが生まれた。
「朝ご飯にしよっか♪」

◇◆◇◆◇

 久し振りに入った崇華の家。
 崇華を象徴する匂いが部屋に充満してて、ちょっとドギマギしてしまう。
 ……生まれてこの方、女の子の家にはあまり寄らない類なので、こういう時はどういう対応をすれば良いのか、全然分からない。でもまあ、今日は崇華の両親はいないようなので、そんなに緊張する必要は無いだろうけど。
 って、言ったら崇華に怒られそうだな。そういう意味では、緊張してるんだけど。
「わたしが何か作ってあげよっか?」
 そう言って崇華が台所に立って数分、オレは暇そうにボーっとしていた。
 まだ頭が醒めていない、と言う訳じゃないんだけれど……何か、落ち着かない。
 向こうの世界じゃ、今は夜中だから鷹定やミャリも寝てるんだろうけど……それでも、気になる。もしかしたらもう教会に到着してるんじゃないのか? そうすれば何日か振りに鷹定に逢えるのだ。オレの心も躍り出すと言うものだ。
 ……でもそしたら、その時にオレは選択を迫られる。世界を取るか、鷹定を取るか……心の中では、もう決まってるんだ。迷う事無く、そっちを選ぶ事が出来る。……分かってるんだけど、もう答は決まってるのに、どうしても悩んでしまう。抵抗が有るんだ、きっと。分かってても選べない時だって、有るに違いない。
 悶々と考えていると、崇華が台所から帰還した。
「出来たよぅ~♪ はい!」
「待ってました! ……って、これって……グラタン!?」
「そうだよぅ♪」
 見紛う事無きグラタンが大きな皿一杯に広がっている! オレの嫌いなパセリを大量に投下して!
 グラタン自体は、大好きだ! でも……パセリが、あの緑色の物体が、オレの天敵だとこいつは知ってて……!
 渡されたスプーンを掴んだまま固まっているオレを見て、崇華がポンと手を打つ。そしてオレの手からスプーンをもぎ取り、パセリを大量に載せたグラタンを掬い上げると、
「あ~ん♪」
 と、スプーンを口許に運んできた!
 ゴクリ、とオレの喉が蠕動する!
「ちょっ、待っ! 崇華! 待ちなさ――あづッ! あづい! 痛い! ホカホカのグラタンを――あづッ! 止めて! スプーンをぶつけ――あづッ! あふっ、あふっ、あふい! ぱっ、ぱふぇふぃは……!」
 因みに状況説明。崇華の持ったスプーン(ホカホカのパセリグラタンが載った)がオレの口を目掛けて激突! 熱くてオレが逃げようとしたところを、また崇華がスプーン攻撃を繰り出す!(熱い!) 最後、オレの口にスプーンの中身が投入され……パセリの味が仄かに香る……(涙目で死に掛けの顔のオレ)。
 グッタリと倒れ込むオレに対して、崇華は満面の笑みを浮かべていた。
「美味しいんだねっ♪」
「……この顔を見て、ンな事言えるのは、恐らくテメエだけだろうよ……」
「じゃあ、あ~ん♪」
 その時、オレは自身の死を覚悟した。……マジで。

【後書】
 今読むと、正直こっ恥ずかしいんですが、当時は嬉々として綴ってたんだろうなワシ…w 文章が躍ってるもの…w
 と言う訳で現世に戻ってきたと言う事でいつものコメディパートです! 異世界編と現世編が対照的になっていると言いますか、明確にシリアスとコメディを分けて綴ってる感じになっておりますね! 今更な話ですが!w
 コメディを入れないと死んでしまう病と言う訳ではないのですが、わたくしのオフラインの方の読者様は大体コメディをお求めになる方が多い(編集長の意向も有りw)ので、自然とそういう形になった、と言うのも有りますが! やっぱりコメディって読むと、と言いますか、笑うと幸せになれると思うんですよ! 読者様が笑ってくれるだけでわたくしもハッピー! その割には惨たらしい物語多いですけどね先生!ww
 さてさて、青春真っ盛りな二人のシーンはもう少し続きます。グラタン美味しいよね! ではでは次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    練磨くん気をつけて!もうあなたはほぼ蜘蛛の糸に絡め取られてるわ!
    崇華ちゃんやりますねぇw

    たしかに踊ってる、文章w
    心なしか崇華ちゃんと練磨くんの絡みの時はその傾向が高いっぽいよw
    思春期真っ盛りだなぁww

    グラタン美味しいですよね!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv(チェックおっk-)

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    1. 感想有り難う御座います~!

      ほんそれ!www
      崇華ちゃんも天然に見えて確信犯ですからねこの子!ww

      文章が踊ってるの分かりますか!ww
      納得ですww 一番青春味が香ばしいシーンだ…!ww
      やっぱり思春期真っ盛りの頃に思春期真っ盛りなシーンを綴ったからですかね…!ww

      グラタン美味しいですよね!w 

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪(ヨシ!w(現場猫並感))

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