2019年2月1日金曜日

【艦娘といっしょ!】第17話 電といっしょ!その2【艦これ二次小説】

■あらすじ
ちょっと頭のおかしい提督と艦娘達の日常生活を切り抜いた短編集です。
※注意※2016/09/22に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【Pixiv】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
艦これ 艦隊これくしょん コメディ ギャグ 電 金剛


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/68881/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/series.php?id=627932
■第17話

第17話 電といっしょ!その2


「司令官が、電をちゃんと見てるのか、不安になる時が有るのです」

 場所は執務室、ではなく間宮食堂の一角。電は金剛と一緒にカレーライスを食していたのだが、スプーンの動きはいつもより鈍かった。
 そんな電に、金剛は「何か遭ったのデスカー?」と不思議そうに小首を傾げる。
「前に司令官に名前を呼び間違えられたり、別の艦娘と間違えられたり……そんな事が有ったので、ちょっぴり不安になったのです……」
 自分は誰かと間違われてしまう程に影が薄いのか。名前を呼び間違えられてしまう程にぞんざいな扱いを受けているのか。
 そんな不安の種が電の心に芽吹いているようだった。
 金剛はスプーンを銜えたまま「fmmmm……」と悩ましげに腕を組んで天を仰いだ。電の悩みをどう解決しようか本気で考えてくれているのだろう、そんな金剛の姿を見ているだけで少しずつ心が楽になっていく電。
「だったら提督が電を見分けられるか、試してみるのがいいネー!」
 名案だっと手を打つ金剛に、電は意味が分からない様子で「電が見分けられるか試す……?」と頭の上に疑問符を浮かべていた。
「このChallengeには、よその提督の力が必要ダヨー! ちょっとMailを打ってくるから、電は執務室で待っててクダサーイ!」
 説明をするでもなく、バタバタと食堂から出て行ってしまった金剛を見送り、電は途方に暮れた様子で「何が始まるのです……?」呟きを落とすのだった。

◇◆◇◆◇

「あれ、電ちゃんもしかして元気無い?」
 執務室に入るなり司令官が不思議そうに声を掛けてきたのを見て、電は若干驚きを隠せない様子で「だ、大丈夫なのです!」とフルフル首を振って返す。
「そう? あんまり無理しちゃダメだからにゃ~」
 それ以上声を掛けてくる事は無く、執務に戻ってしまった司令官に、電は何とも言い難い想いを懐きながら見つめるのだった。
「ん? 私に何か付いてる?」ペタペタと自分の顔を触り始める司令官。
「いえ、付いてないのです」フルフルと首を振る電。
「ほむ? まぁいいか」とすぐに執務に戻ってしまう司令官。
 カリカリとペンが動く音だけが響く執務室で、電はソファに腰掛けたまま、何となしに司令官を見つめる。
 アフロが目立つ男だが、それ以上の奇抜な要素は無く、髪型以外は至って普通の提督だ。執務は真面目とは言い難いが、全くやらない訳ではないし、鎮守府が運営できているくらいには執務をしっかり熟している。
 突然数多の艦娘の中から己の感性に合う艦娘に執着しだして暴走する所も有るが、それとて長続きはせず、普段はサボタージュ気味の職務怠慢司令官である。
(どうして電とケッコンカッコカリしようって言いだしたのか、気になるのです)
 確かに司令官が鎮守府に訪れた時の、初めての艦娘であり、初めての秘書官として任命された電ではあるが、ケッコンカッコカリをする関係になるとは思っていなかった。
 彼が提督業を始めて暫く経った時に金剛と出逢ったのが、彼にとって天命だったのだろう。一目惚れのベタ惚れ状態で、何をするにも金剛と一緒だった頃が、彼には有った。
 そんな司令官ではあるが、何だかんだで電を海域に連れ回しては、練度を上げる手伝いをしたり、演習で配慮してくれたりして、最高練度まで上げてくれた実績が有る。他にも色んな好きな艦娘がいる中で、金剛の次にケッコンカッコカリを結んでくれた、司令官。
 彼はどんな想いで自分を見ているのか。どんな想いで自分を選んでくれたのか。ふとざわめきだした胸のさざ波に、電は苦しそうにキュッと胸を押さえるのだった。
「Hey! 提督ぅー!」バァーンッ、と扉を蹴り飛ばして執務室に入ってきたのは金剛だった。「今からTestをしマース!」
「あん? テスト? 何の?」執務の手を止めて金剛を見やる提督。
「電とのLoooooveを測るTestネー!」
「はぁ……」よく分かってなさそうな顔で呟く提督。「それで私は何をすればいいの?」
「一度執務室から出て行くネー! Hurry Up!」「何だ何だー?」金剛に押されて執務室を追い出されていく提督。
 提督のいなくなった執務室の扉が開き、今度は電が何人も入ってきた。
「!? い、電が一杯なのです……!」
「よその鎮守府から来て頂きマシター! 練度はバラバラ、でも見た目は一緒! これで提督が電を当てられたら――Loveは本物って事ネー♪」
 確かに、これだけ多くの電の中から、檻夜司令官の鎮守府に属する電を一目で当てられたら、愛情は本物……と言う見方が出来るかも知れない。
「い、電でもゲシュタルト崩壊してきそうなのです……」
 数多いる電の群れに、電自身が自分の存在意義を無くしそうな勢いで消沈していく。これだけ電がいるなら、一人ぐらい電がいなくてもいいのでは……と暗い思考が脳裏を過ぎる。
「No Problem! 提督のLoveを信じなサーイ♪」
 ぷに、と頬をつつく金剛に、電は勇気づけられたような気がして、「分かりました、司令官を、信じてみるのです!」と拳を固めて意気込む。
「では~、提督ぅー! 入ってPlease!」扉を開けながら宣言する金剛。
「出てけって言われたのに今度は入れって、何をさせたいんだ……」疲れ果てた様子で執務室に戻ってきた提督は、執務室を埋め尽くす無数の電の群れに「うお、なんじゃこりゃぁ!?」と驚きの声を上げる。
「よその鎮守府から電に来て頂いたのデース! さぁ提督ぅ~? この中から、本物の電を探し出せマスカー!?」
「本物の電ちゃんって、ウチの電ちゃんの事?」要領を得てない様子の司令官。
「Yes! この中に紛れ込んでいるから、提督のLove Powerで探し当ててヨー!」
「また無茶な事を要求するなぁ……」
 困った風ではあったが乗り気のようで、じろじろと電の顔を覗き込んでいく。
(来たのです……!)
 目の前に司令官の顔が来ても平静を装ってるつもりだった。これだけ動揺してたら気づかれるか……? と思っていたにも拘らず、司令官は軽くスルーしてしまう。
「うーん、分かんないね」
 テヘペロ☆ と舌を出して誤魔化す司令官に、金剛は「Shit! 提督のLove Powerはその程度なんデスカー!?」とお冠の様子だった。
 対する電は、頭の中が暗い感情で一杯になっていく。
(やっぱり、司令官の愛情なんて、そんなものなのです……)
 ガッカリしていると、司令官が自分を見つめている事に気づいた。
「あー、あの子だ。今ガッカリしたあの子がウチの電ちゃんでしょ?」
 司令官が指差したのは、まさに自分――探し当てられた。
 けれど、それはズルだ。ガッカリしている所を見て分かったなんて、当たり前だ。そんなの、誰だって当てられるだろう。
「司令官、そういう卑怯な真似はダメなのです!」人差し指を立てて説教する電。「司令官の審美眼なんて所詮その程度のモノだったのです!」
「ひでぇ言われようだなー。そもそもこんなにたくさん電ちゃんがいる中で探し当てろって言う方が無理だって。特徴も全部同じなんだぞ? 間違い探しより難易度高いって」
「言い訳無用なのです! 司令官なんて知らないのです!」
 ぷいっと顔を背けて執務室を出て行く電に、司令官は「何でぇー!? 何で私がこんな悲しい目に遭わないといけないの!? 電ちゃん待ってよー! 許してぇー!?」と慌てふためいた様子で追い駆けて行く。
 残った無数の電と金剛は顔を見合わせて、不思議そうに呟くのだった。
「今の電、ガッカリした顔なんてしてマシタカー?? 私にはいつもと同じ顔にしか見えなかったのデスガー……」

【後書】
 電ちゃんの話をリヴェンジしたくて綴った話ですね! 何と無~く檻夜提督の愛が伝われば嬉しいです…!
 こういうほんわかしたりちょこっとしんみりする系のお話が好きでしてね…! 時折読んで(・∀・)ニヤニヤしたくなりますw

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