2019年3月10日日曜日

【神否荘の困った悪党たち】第60話 神否荘の夏休み最後の日AM:05:30【オリジナル小説】

■あらすじ
神否荘の夏休み最後の日は、そうしてふわふわと幕を開けた。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】の二ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公


カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
■第60話

第60話 神否荘の夏休み最後の日AM:05:30


「んあー……暑い」

 あまりの暑さに俺はモソモソと起きてエアコンを起動した。
 ふぃーんと気持ちいい風が吹き始めて、俺はまたモソモソとベッドに横たわろうとして、不意に尿意に襲われて、渋々部屋を出た。
 朝方の日が差し込んだ神否荘は清潔な空気で満たされていた。俺はそんな中をのたのたトイレに向かって歩いて、コンコン、とノックして、五秒ほど待ってから扉を開けた。
「え?」
「ん?」
 女の子が俺を見上げている。
 スパパパーンッ、と思いっきり扉を叩き閉めて、「ごごごめんなさーい」と大慌てで謝った。
 中から反応は無い。やべぇ……これはガチギレ案件では……
 てか、神否荘の住人じゃなかった感。誰だろう?
 いつまで経っても出てこないのはこれ怯えられてるんだろうか。でもあの、俺もそろそろ漏れそうなんですけお。
「あのぉ……」コンコン、と控えめにノックする。「失礼ですけれど、ままままだ時間が掛かりそうでしょうか……?」
「……」沈黙が返ってキター。
 ヤバい。これはドチャヤバだ。主に俺の膀胱が。おむつ買わなくちゃダメな奴かな?
 もじもじしながら、もうこれダメだ、間に合わない奴だ、と思って、近所のコンビニを探そうと歩き出した瞬間、トイレの扉から透明な腕が伸びてきた。
「ほぺぺぺ」変な声が出た。
「えっ、あの……」透明な手が止まり、トイレの扉からにゅっと、半透明の女の子の顔が飛び出した。「もしかして、見えてるの?」
「えっ、見えてるけ、お……」
 ……俺はそっと部屋に戻ってズボンとパンツを取り換えた。

◇◆◇◆◇

「亞贄様の尿はしっかり拭き取りました」
 雑巾を手に満足そうに告げるメイちゃんに、俺はもう仏の顔になって「ありがとぉ……」と涙をちょちょぎった。
 そのメイちゃんが、俺と一緒にトイレの中に視線を注ぎ込む。
 俺も一緒になってトイレの中を覗き込むんだけれど、そこには半透明の女の子が座り込んでいた。
 見た目は、小学生くらいの子だ。白いシャツに、サスペンダーで黒いスカートを釣っている。頭には大きな紅いリボン。
 女の子は怪訝な面持ちで俺を見つめている。
「……えぇと、神否荘の住人……なのかな?」こて、と小首を傾げてみる。
「……ここ、もしかして神否荘って言うの?」女の子がふわふわした声で呟いた。
「うん、そうそう」コクコク頷くよ。
「……日色って奴、知らない?」
「俺の祖母ちゃんだね」
「あんた、あいつの孫なの!?」突然女の子が吼えた。「全然そうは見えないわ……」
「うーん、まぁ、そうだろうね」納得しかない。「案の定って言うか、やっぱり俺の祖母ちゃんの知り合いなのかー」
「そうよ! あいつの呪いであたしは……!」ギリギリと凄まじい表情で歯軋りし始めたぞ!「――まぁいいわ。自己紹介が遅れたわね。あたしは旗拠所奈子(ハタヨリドコロ ナコ)。いわゆるお化けよ」
「いわゆるお化け」そんな紹介できるの神否荘だけだよね。「俺は亞贄。二糸亞贄。奈子ちゃんは何でここに?」
「あの日色とか言う奴の呪いのせいよ!!」怨嗟の塊みたいな表情をしてる。「あたしはただ学校のトイレで男の子を脅かすのが好きで好きで仕方なかっただけなのに……!」悪霊だこれ!
「えっ、ちょっと待って。奈子ちゃん女の子なのに男子トイレに待ち伏せてた感じなの??」わたし、気になります!
「……」奈子ちゃんが真顔で俺を見つめている。
「ん?」俺は不思議そうに奈子ちゃんを見つめるよ。
「だって、女って怖いじゃん」吐き捨てるように奈子ちゃんが呟いた。
「お化けより怖くないと思うけお……」
「まぁとにかくよ! あの日色って奴が、何かこう、ふわっとした呪いみたいな何かで、あたしをこのトイレに封印した訳よ! たぶん!」久し振りにふわふわした説明を聞いたぞう!
「えっ、封印? 何か封印が解かれた感じのアレなの?」俺もふわふわ応じてみる。
「そうよ。昨日の晩に封印が解かれた的なアレよ」コクコク頷く奈子ちゃん。「だからまぁ、早くあたしを学校のトイレに戻して。急いで。あく。あくしろ」何だこいつ……
「うーん、何かよく分からないけど、これは神否荘案件って事だね」事情がまるで掴めないけど、俺一人じゃ手に余る奴だ。「皆起こしてこよう」
 このよく分からないお化け、奈子ちゃんが現れたのが、八月三十一日。
 神否荘の夏休み最後の日は、そうしてふわふわと幕を開けた。

【後書】
 新章開幕です! 今回はお化けの女の子に纏わるお話です。明らか悪霊なんですが、これ封印解いて良かった奴なんですかね…?(笑)
 話は変わりまして、今回の章の完結を以てちょこっと連載をお休みさせて頂く事になりそうです。理由は単純にストックがもう無いんですね…w と言う訳でアレです、少しずつ更新する頻度をね、減らしたいんです!w 新作を綴る余裕があまりに無さ過ぎる事を体感してる次第です!ww(今更)
 そんな感じでして、現在4月の更新を目途に休載を挟む予定です。どうか悪しからずご了承頂けたら幸いです~! ではでは次回、住人を起こしに行きましょう!(惨事の予感) お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    これあれだ、けいちゃん呼んでこようw
    きっと丸く収めてくれるはず!
    がしかし、丸く収まってしまうのも神否荘的にはいかがなものか…
    ここはやはりいつもの火に油を注いでいくスタイルで!

    連載お休みの件了解ですぞーv
    余裕を持っていこーvv

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

    返信削除
    返信
    1. 感想有り難う御座います~!

      確かにww これけいちゃん事案ですね!ww(笑)
      そうなんですよねww丸く収まってしまうのは、こう、神否荘って感じでは…いやいやほんとにそうかしら!?www
      火に油を注いでいくスタイルでwwwこれはもう大変な事になる予感しかない!ww

      連載お休みの件、何卒よろしくお願い申し上げます~!!
      ですです! 余裕を持って参りますよう!┗(^ω^)┛

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

      削除

好意的なコメント以外は返信しない事が有ります、悪しからずご了承くださいませ~!