2019年3月16日土曜日

【ベルの狩猟日記】083.怒らすべからず【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第83話

083.怒らすべからず


 やがて戦闘が始まってから一刻が経つ頃。
 ババコンガの動きが徐々に鈍ってきた事が、ベルの目にも解った。先刻まで無邪気な子供のように走り回っていた動きにキレが無くなり、若干疲弊したかのような動きになったように見える。
 それでも膂力が衰える事は無い。両手を振り回し、眼前に立ち塞がるフォアンを薙ぎ倒そうと向かって来る。フォアンは敵の猛攻に対し大剣の腹で防御――だが、その威力を完全に受け止めるには重過ぎ、踏鞴を踏むように後退する。
 再び大剣を担ぎ直そうとしたフォアンの頭を踏むようにして跳躍する影があった。――ヴァーゼである。
「いて」と首が曲がりそうになるフォアン。
「いやっふぉ――――うっ!!」
 フォアンの頭を踏み台にして高らかに跳躍したヴァーゼは、奇声を上げながらババコンガの頭に着陸。ババコンガだけでなく、ベルも呆気に取られる。
「なっ、何してんのあんた!?」思わずツッコミを入れるベル。
「ザレアァ!! 今、行くぜェェェェ―――――ッッ!!」
 ヴァーゼは叫びつつ、ババコンガのトサカに似た頭髪を握り締める。ババコンガはその場で暴れ回るが、ヴァーゼを振り落とす事は叶わなかった。
 ヴァーゼの発言を受け、ザレアへと視線を転ずるベル。そこにはいつの間にかシビレ罠を仕掛けて手を振っているザレアの姿が見えた。
「おーらいっ、おーらいっ、にゃーっ!!」
「車庫入れ!?」意味不明なツッコミを入れるベル。
「イェア!! こう見えて俺ァ竜車の厩入れは巧ェんだぜッ☆」ベルに向かって親指を立てるヴァーゼ。
「流石はヴァーゼだぜ。俺も今度、練習しておこう」うんうんと頷くフォアン。
 トサカを握られたババコンガはその筋骨隆々の豪腕でヴァーゼを振り払おうとするが、ヴァーゼは狭い空間で巧みに動き、ババコンガの攻撃を躱していく。
「ヘイヘイ!! 俺が巧く乗りこなしてやっから、そんな暴れんなって!!」
 トサカを握り締め、乾いた音を立ててババコンガの背中を蹴り立てるヴァーゼ。その一撃にどれだけの重みが有ったのか、ババコンガは「ウホゥッ!?」と頓狂な声を上げ、四つん這いになって走り出す。向かう先は、ザレアの許だ。
「おーらいっ、おーらいっ、にゃーっ!!」
 両手を大仰に動かしてババコンガを受け入れる態勢になるザレア。猛進するババコンガが、彼女の足許に設置されたトラップに気づく事は無かった。
「ウホォゥッ!?」
 前脚がシビレ罠の信管を踏み抜き、全身にゲネポスの麻痺毒が駆け巡ったのだろう、動きを拘束されるようにその場に静止するババコンガ。何とか離脱しようと全身に力を込めるが、ゲネポスの麻痺毒は中々の効力を有している。即座にババコンガが解放される事は有り得なかった。
「喰らうのにゃ☆」
 そう言って、ザレアは拳大ほどの球体の道具を放り投げる。球体の道具はまっすぐにババコンガの鼻先に衝突。もわっ、と乳白色の煙が舞い、ババコンガの瞳がとろん、と虚ろなものへと移ろう。
 強烈な眠気に抗えなかったのだろう、ごろん、と体を横たえ、腹を上に向けてイビキを掻き始める。――捕獲成功だ。
 観客席からは割れんばかりの喚声が湧く。今までの死闘さえ、彼らにとってはエンターテイメントの一部だったのだろう。考えただけでもベルは激情を炸裂しそうになる。
「――ザレア」
 冷たい、心臓をも凍らせるような声で、ベルが呟きを落とす。三人はそれぞれにベルへと視線を向け、ザレアは「にゃ!」と声を出して反応する。
「――派手にかましちゃって」
 鮮烈な笑顔で告げるベルに、三人が応じるように似たような笑みを刷く。

◇◆◇◆◇

「――どうなっておる! どうしてあの者共は死なぬのじゃ!!」
 VIP席で喚き散らしているのは、明らかに肥満型の男――ヒボップだった。唾を吐き散らし、目を剥いて狼狽している。
「だから言ったネ! あいつらは猟人だヨ! 早く始末しないと後々不味くなるネ!!」
 ネズミのような顔をした中年の男が大声で勧告するも、ヒボップの錯乱は回復する事無く、周囲へと矛先が向けられる。
「つ、次じゃ! 次のモンスターを早う用意せい! あの忌々しい者共を始末せい!!」
 周りを囲っていたメイド達は互いに視線を交えると、ヒボップに向けて全員揃って極上の笑顔を向けた。
『――手前様は、お黙りになって、お座りなさいな♪』
 総勢十人以上ものメイド達による唱和に、ヒボップは固より、中年の男も目を瞠る。
 何が起こったのか、理解が及ばない。周囲のメイド達の表情は不変の微笑のまま凍りついている。まるでそういう仮面を被っているのだと言われても頷ける、鉄のように硬い微笑。
「な、な、何を申しておるのじゃ!? マロの命が聞けぬのか!?」
 動揺を隠せないヒボップ。中年の男は恐怖のあまり、取り囲むメイド達から逃げるように彼へと駆け寄る。
 メイドの一人が極上の笑顔を貼りつけたまま、酷く凍えた声を吐き出す。
「良い事を教えてあげやがりますわ、豚野郎様。わたくし共は皆、腐りきった肥溜めのような手前様を監視してやるために遣わされた者ですの。――ですが、わたくし共にも譲れぬ一線と言うものが有りますわ。――お嬢様を危地に晒した罰、ご堪能あれ♪」
 告げたメイドが指を鳴らすと、周囲のメイド達が一斉に裾を翻し、短剣――ニンジャソードと呼ばれる片手剣を抜き放つ。皆、笑顔のままヒボップの許へと歩み寄り、口々に、「ようやく屑野郎様から解放されますわね♪」「追加給金はきっちりと頂きますわよ♪」「退職手当も勿論頂きますわ♪」「度重なるセクシャルハラスメントも訴えさせて頂きますわよ♪」と楽しげに囀る。
 現状を把握する術を持たない二人の男が悲鳴を上げるのは、時間の問題だった。
 その時だ。闘技場を激しく揺さ振る爆音が響き渡ったのは。

◇◆◇◆◇

「いっけーザレア!! 今回だけは大目に見るから、派手にやっちゃって!!」
「にゃーっ、ベルさんのお許しが出たのにゃーっ!! 爆弾祭り、はーじまーるにゃーっ♪」
 大タル爆弾Gを持って闘技場を走り回るザレア。十個もの大タル爆弾Gを設置し終えた彼女は、楽しげに着火用の小タル爆弾を設置していく。
 ――闘技場が瓦解しかねない轟音が走り、観客席が崩れていく。
「こっちも行くぜ」
「イェア!! ジャンジャンバリバリ行こうぜベイビーッ!!」
 フォアンとヴァーゼはザレアから渡された打ち上げタル爆弾を次々に撃ち放ち、闘技場のあちこちに爆撃を加えていく。
 ――阿鼻叫喚の地獄絵図の完成である。
 あちこちで建物が倒壊する音が掻き立てられ、観客の奏でる喚声と怒号が鼓膜にまで届いてくる。ベルは更にトドメだと言わんばかりに弓を構える。
「あんただけは――許さない!!」
 矢には小タル爆弾が括りつけられている。爆弾など括りつけても飛ばないのでは――と思ったのも杞憂に終わり、ベルの技術を以てして射られた爆弾付き矢は天井に建造されたVIP席の支柱に着弾。――爆撃と共に、VIP席が大きく傾ぐ。

◇◆◇◆◇

「オロロロロ!?」「こ、今度は何ネ!?」
 VIP席でメイド達に囲まれていた二人の男は、部屋が大きく傾いた事に気づくが、時既に遅し。メイド達は猟人並みの機敏な動きで部屋を離脱するが、自分を支える物を持たない二人は、滑るようにガラスを突き破り、部屋から転落する。
「な、何じゃこれはァァァァ!?」「ど、どうなってるネェェェェ!?」
 部屋から放り出され、闘技場のど真ん中――ババコンガが撒き散らした糞の中へと落下する二人。ヒボップを潰すように中年の男が被さり、下敷きにされた男が喚き散らす。
「痛いのじゃーっ、臭いのじゃーっ、早く退かんかーっ!」「痛くて臭いのはワタシもだヨ! 何がどうなってるネ!?」
 起き上がった糞塗れの中年の男の視界に、一人の少女が映り込む。
「さて……覚悟は出来てんでしょうね……?」
 ニコニコと、真っ黒に見える笑顔を見せられた男の背筋が凍りつく。弁解の余地は無い。だが――
「ワ、ワタシじゃないヨ! こいつの命令でやっただけなのヨ!! 悪いのはこいつネ!!」
「き、貴様!? マロに向かって何と言う口の聞き方じゃ!? 許さぬぞ!!」
「シャーラーップッ!!」ベルの大音声が闘技場に朗々と響き渡る。
 体を震わせて怯える二人の男に向けて、ベルは鮮烈な笑みを浮かべたまま、言葉を紡ぐ。
「――良い事を教えてあげよう。あたしは今、言い訳が聞きたい訳じゃない。謝罪の言葉も要らない。ただ――この有り余る激情を向ける矛先を決めかねていただけさ。――それももう、必要なくなったけどね♪」
 ニッコリと笑み、――そこから先はとてもではないが文章化するには危険過ぎるので、割愛させて頂く。

◇◆◇◆◇

「……な、言ったろ? ラージャンが可愛く思えるって」
「にゃー、怒ったベルさんは、猟人は疎か、モンスターでも止められにゃいのにゃ!」
「……オーライ、それには激しく同意だが、いい加減止めねェとガチで死ぬんじゃねェか? あの二人」
 糞塗れの男二人を相手に暴れ千切っているベルを指差して苦笑するヴァーゼだったが、誰も止めに向かないのが現状だった。

【後書】
 勧・善・懲・悪★ と言う訳で小物臭の漂う悪党さんはバッサリ討伐されるのでした。めでたし!w
 さてさて、今回からまた週二回更新になりますので、改めて宜しくお願い致します(*- -)(*_ _)ペコリ
 と言う訳で、今回のお気に入りはメイドさんが反旗を翻すシーンですね! この辺の発言に関しては編集長と相談して決めていたりします。とにかく丁寧語と言いますか、穏当な発言に見せかけた罵倒で悪人を罵りたかったのです(笑)。今思うともうちょっと手を加えたかった感は有りますが、これはこれでw と言う感じですw
 そんなこったで次回は“実質”今回のエピソードのエピローグです! お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    やっぱベル日はこうでなくっちゃw
    超スカッとしました!!

    メイドさんたちが反旗を翻すシーン確かにカッコいいです!
    外国映画のワンシーンのようですw

    文章化できないほどの仕打ちを受ける彼らに明日は来るのか!(多分無理)
    以下次号!!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      ですよね!w 超スカっとして頂けて嬉しいです!w

      カッコ良かったですか!w ヤッター!┗(^ω^)┛
      外国映画のワンシーンとまで言われたらもうぐにゃんぐにゃんですよ!ww(*´σー`)エヘヘ!ww

      もうあの二人はね!w その後一切描写が無いレヴェルですからね!ww 明日は…無いんじゃないかなぁ…!ww(笑)

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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