2019年3月3日日曜日

【神否荘の困った悪党たち】第59話 大惨事だったね……【オリジナル小説】

■あらすじ
シェイクスピアさんもカンカンだよ!

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】の二ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公


カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
■第59話

第59話 大惨事だったね……


「――無事、桃=太郎は鬼=太郎を殺害し、婆=太郎は闇世界の重鎮として君臨し続けるのでした、めでたし、めでたし」

 メイちゃんの惨たらしい語りが終わり、幕が閉じていく。
 俺はその閉じていく幕の隙間から見える、感情を喪った顔をしている園児達を一生忘れる事は無いと思う。トラウマだよ。
「やー……どうなる事かと思ったけど、」絶望顔で砂月ちゃんを見るよ。「大惨事だったね……」
 正直アレなんだ、もう劇をしていた時の記憶が全く無いんだ……始まったと思ったらもう終わってたんだ……
 そんな憔悴しきった俺に、砂月ちゃんは何かやり遂げた顔してるけど、感性大丈夫かなこの子……
「皆さんお疲れ様でした! もう最高の劇でしたよ~! これは絶対に後世に残すべき! シェイクスピアに並ぶ最高の演劇でしたよ!!」シェイクスピアさんもカンカンだよ!
「何かあっと言う間だったな~。まぁさっちんが喜んでるならいっかぁ~」ふわわ、と欠伸を浮かべてるシンさん。「取り敢えず帰って寝よーぜー。寝不足だとアニメの内容も入ってこないしさぁ」元殺し屋とは思えない台詞のオンパレードだ。
「ん? 何か聞こえないっすか?」不思議そうに垂れ幕の奥に視線を凝らすラヴファイヤー君。「ほら、アンコール、アンコールって」嘘やろ……
 正気を疑いたくなったけれど、耳を澄ませると確かに聞こえる。
「うーん、アンコールしたい所ですけど、先方の都合も有りますし、ちょっと止めてきますねー」砂月ちゃんがトコトコと壇上から降りて体育館に向かって走って行った。
 俺達は手持ち無沙汰に壇上に取り残されて、暇潰しに睨めっこ大会を始めた頃、砂月ちゃんが中年のおっさんと一緒に戻って来た。
「先輩! 聞いてください!」興奮した様子で砂月ちゃんがおっさんを指差してる。「今の劇、是非映画化したいと監督が!!」
「映画化? 監督??」なにて??
「あっ、紹介します! 今回偶々幼稚園に居合わせた超有名な映画監督の、首級冠十(くびきゅう・かんと)監督です!」ジャジャーンと大気を効果音に変換させて紹介する砂月ちゃん。
「どーもー、首級です。監督って呼んでくれてもええですよ」ニッツヤァ、と、何か汚さ上限値越えの笑顔を見せてくる監督さん。「いやー、今の桃太郎、最高でしたわ。是非映画化して、カンヌ目指しましょカンヌ」何言ってんだこの人……
「砂月ちゃん砂月ちゃん」こそこそと砂月ちゃんに耳打ちするよ!「怪しさマックスハートなんだけど、この人本当に本物の映画監督なの?」
「えっ? 先輩、首級監督知らないんですか?」逆に不思議そうな顔をされてしまったぞう。「バカンヌ映画祭では毎回バカンヌ賞を授与される、名誉監督的生命体ですよ!」人間に定義されない系監督なの??
「そ、そうなんだ……知らなかったお……」
「と言う訳でね、そこの桃=太郎さん」ビシッと、汚い動きで俺を指差すのやめてくれます??「この脚本を使いたいんだが……いいかぬぇ!?」唾がべちゃべちゃ飛んでる!
「やー、これ俺の脚本じゃないんで……砂月ちゃんに許可を取って貰わないと……」マネージャーみたいな扱いになってるなぁ。
「いいですよ、ぜひぜひ! 上映楽しみにしてますね!!」めちゃんこキラキラした瞳で監督を見てる砂月ちゃんがどう考えても深夜テンションなんだよなぁ……
「おうらいっ! 任せてちょんまげ! これはもう億単位の金が動くと見たねオイラは……!」げべべ、って笑う監督がどう考えても桃=太郎に抹殺される対象にしか見えない……

◇◆◇◆◇

 翌日。
 昨日徹夜で疲労困憊した俺は一日ぐっすりベッドの中でスヤスヤした後、トイレに行こうと立ち上がったら、ふとテーブルにDVDが置かれてる事に気づいた。
 置いた覚えが無いなー、と思って見てみると、“劇場版桃=太郎~殺戮音頭は爆弾の肥やし~”って書いてあって、即真顔になったよね。
「あっ、先輩!」DVDを置き去りにしてトイレで用を足し、自室に帰ろうとしたところを砂月ちゃんに声を掛けられた!「DVD見ました?」
「あっ、もしかしてあれ砂月ちゃんが作ったの?」だとしたら納得の速さだ。
「えっ? 首級監督が作った奴ですよあれ」監督ももしかして人間辞めてる感じ??「最高の出来だったんでぜひ見てくださいよ! ぜひ!」あの桃太郎に最高の出来もへったくれも無いと思うんだけどなぁ……
 ともあれ俺は言われるがままに自室に押し込まれ、渋々パソコンを起動して視聴してみる事にした。
 感想を一言で言うなら、惨過ぎるでしょ……かな……
 これは未来の話だけど、後のバカンヌ国際映画祭で最高栄誉賞が授与されるんだけど、それはまぁ、俺の与り知らぬ所の話だよね。

■7章 惨劇の桃太郎/了

【後書】
 と言う訳でサックリ桃太郎編、完結です!w 園児達の生気を失った顔は想像でお願いします!(笑)
 何と言いますか、このエピソードって劇を演じるのはおまけで、ひたすら深夜テンションのまま練習を行う、と言うのがメインストーリーでして。あの惨たらしさMAXの劇を二回綴るのが面倒臭かったからではないですよ!w
 さてさて、次回から新章開幕です! 神否荘の夏休み最後の日が始まります。お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    確かにあの深夜テンションからの上映では記憶がなくても…
    でも、感情を喪った顔をしている園児達は一生忘れられない宝物♪
    よくもまぁ途中で打ち切られず最後までやり遂げられましたねw
    皆さんъ(゚Д゚)グッジョブ!!(←いいのかよおいw)

    最後に登場するめっちゃ胡散臭い監督、これは要注意ですわw

    新章どんな話が始まるのか+(0゚・∀・) + ワクテカ +

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv


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    1. 感想有り難う御座います~!

      そうなんですよ!ww あのテンションでは記憶を保持できてなくてもね、あんまり違和感無いですよね!ww
      まさかの一生忘れられない宝物が「感情を喪った顔をしている園児達」www
      そのグッジョブはあまりにやばみです!www

      ですです!w 要注意人物がまた増えましたよう!ww

      新章は初っ端からまさかのホラー…? なのでお楽しみに!w

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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