2020年7月9日木曜日

【轟爆】願いを託す日【僕のヒーローアカデミア二次小説】

■タイトル
七夕の日の爆豪と轟。

■あらすじ
爆豪に「一緒に帰らないか?」と訪れる轟の話。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【pixiv】の二ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
僕のヒーローアカデミア 腐向け 爆豪勝己 轟焦凍 轟爆


Pixiv■
「今日は七夕なんだってな」

 食堂で昼食を口に運んでいた爆豪の隣に、さも当然のように座り、声を掛けてきたのは轟だった。
 爆豪はハンバーグを口に運ぼうとしていたフォークを停止させ、怪訝な面持ちで隣の優等生に鋭い視線を突き込む。
「何勝手に相席してんだコラ……」
「爆豪は七夕の短冊、もう書いたのか?」
「テメエの鼓膜イカレてんのかオイィ!!」
 キレ散らかす爆豪などお構いなしに、轟は自身のトレーに入っているざるそばを啜り始める。
 返事はしない、反応もしないともなると、一人で癇癪を起こしているのがあまりに馬鹿らしく、舌打ちだけ返して爆豪は再びハンバーグの解体に戻った。
「俺はもう書いたぞ、短冊」
「まだ続いてんのかよそのくそみてェな話……」
「爆豪は何て書くつもりなんだ?」
「言う訳ねーだろカスがァ!!」
「じゃあ書くつもりなんだな」
 爆豪の大事な血管が大きな音を立てて千切れる気配が走った。
 ゆっくりと立ち上がり、轟の胸倉を掴み上げる爆豪に、彼は口から食み出たそばをつるるっ、と飲み込む。
「喧嘩を売りに来たのかテメエは……??」
「そんなつもりはねえが」
「どの口が言ってんだ?? 死にてえのか??」
「爆豪がどんな願いを託すのか気になっただけだ」
 どれだけ睨みを利かせても、轟の表情に変化は無かった。
 爆豪はやがて諦観と共に轟から手を離すと、ハンバーグにフォークを突き刺して、言った。
「馬鹿かおめェ。俺達は願いを託す側じゃねェ、叶える側だろうが」
 それは、ヒーローとして活動する者としての、少なからぬ矜持とも言えた。
 弱者を助ける。窮地を救う。万難を排す。
 ヒーローとは、困っている人の願いを叶えるために活動していると言っても、過言ではない。
 厳密には、まだ爆豪も轟もヒーローではない。その有精卵……駆け出しとも言えない、まだまだ子供、学徒だ。
 けれど、だからと言ってヒーローを名乗れない訳でも、誰かの願いに寄り添えない訳でもない。
 爆豪が苛立ちを消した、真剣な表情で呟いたのを、轟は見逃さなかった。
 轟からの返答が無い事を確認した爆豪は、改めて舌打ちを重ねると、再びハンバーグにがっつき始めた。
「確かに、自分の願いって言うんなら、自分で叶えるべきだよな、俺達は」
 ハンバーグを貪る手を止めない爆豪の隣で、轟はそっと呟きを落とす。
 ざるそばは既に無くなっていて、轟の箸はトレーに戻されていた。
「けどよ、自分じゃない、誰かの願いなら、託してもいいんじゃねえか」
「……は?」
 ハンバーグを食し終えた爆豪が怪訝な面持ちで轟を睨み据える。
 轟はざるから視線を上げ、爆豪を見据えた。
「例えば、お前にナンバーワンヒーローになってほしい、とかよ」
「…………は?」
「爆豪がどんな願いを託すのか知らねえし、託さねえのかも知れねえけど、そう思ったからよ。そんだけだ、邪魔したな」
 そう言ってトレーを持って立ち上がる轟に、爆豪はそっぽを向いて、一言。
「テメエがくそ下らねえ鎖から解き放たれりゃ良いなって書いといてやるよ」
 それがあまりに小さな声で。轟にすら聞かせるつもりの無い声だったとしても。
 通り過ぎていく轟の口唇には小さな笑みが浮かび、「ありがとな」と言う感謝の言葉もまた、爆豪の耳に届く事は無かった。

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