2021年3月23日火曜日

【ワシのヒカセン冒険記】第6話【FF14二次小説】

■あらすじ
二人目の加入申請者は、先達の冒険者。


【第6話】は追記からどうぞ。

第6話


ワシのヒカセン冒険記 第6話


「――え? また加入申請が来たの?」

 場所はいつもの溜まり場と化している黒檀商店街の一角。ワシはツトミちゃんの驚いた顔を確認しながら、確りと首肯を返した。
「うむ。エレット殿が加入してから、まだ三日と経たず、新たな申請が来てな」
「すごーい。爺ちゃん、もしかして文才が有るの?」
「さての」惚けた風に肩を竦めてみせる。「併も此度は驚く事に、ワシらより遥か先を征く冒険者からの申請じゃ。侍、赤魔道士をほぼ極めていると言っても過言ではない実績を残しておるぞ」
「ほえ~。ウチのフリーカンパニーで大丈夫なのかなぁ。申請先を間違えたとか?」
「かも知れんが、まずは会ってみてだろう。間違いであるなら仕方なし、話してみぬ事には何も言えまい」
 ともあれ、ツトミちゃん言う通り、不思議な事だとは考えていた。
 ワシとツトミちゃんで立ち上げた、“オールドフロンティア”と銘打ったこのフリーカンパニーは、つい二日前に新規加入したエレット殿を含めても、雛チョコボと称しても何ら遜色の無い冒険者が三人だけの、雛チョコボのフリーカンパニーと言う有様を呈している。
 先達から見て、あまりに旨味の感じられない環境に有ると思うのだが、はてさて、蛇が出るか鬼が出るか……
 待ち合わせ場所には前回同様カーラインカフェを指定し、ツトミちゃんと二人で向かってみるも、今回も先を越された態で、加入申請をされた熟達冒険者が居住まい正しく待ち受けていた。
「お待ちしていました! 初めまして、サクノと申します。宜しくお願いします」艶やかな衣装に相応しい佇まいで敬礼を見せる加入申請者――サクノ殿。
「フリーカンパニー“オールドフロンティア”代表のヤヅルと申す。此度は我がフリーカンパニーに加入申請を頂き、まずは感謝の意を表しまする」礼には礼を、と頭を下げる。
「えぇーっと。側近? 側近で良いのかな? の、ツトミちゃんって言いまーす。宜しくね~」ひらひらと手を振るツトミちゃん。
「ヤヅルさんとツトミさんですね! 改めて宜しくお願いします!」改めて頭を下げるサクノ殿。
「こちらの話は……募集文にも有る通り、新兵の冒険者が三人の小さなフリーカンパニーゆえ、サクノ殿のような先達冒険者には、利点らしい利点が無いように思うのだが……どうして、我がフリーカンパニーに声を掛けたのか、聞かせて頂いても?」
「はい! その……今までずっと一人で冒険業に励んでいたのですが、現状到達できる最高峰まで来たところで、ふと……フリーカンパニーに属してみたいなと思いまして」
「それで、ここを?」何故? と視線を問いかける。
「珍しい募集文でしたし、ここでなら気負わずに交流が出来ないかな、と思いまして。今までフリーカンパニーに加入する事が無かったので、もしかしたら失礼な事をしてしまうかも知れませんが……」
 緊張した様子のサクノ殿から、ツトミちゃんに視線を転ずる。
「ワシは全く異論が無いのだが、ツトミちゃんは訊きたい事、有るかの?」
「ん~」顎に指を添えて小首を傾げるツトミちゃん。「サクちゃんならきっと引く手数多だと思うけれど、わたしは、うん、そういう理由でここを選んだのなら、嬉しいなって思うかな」
 人当たりの良い笑みを覗かせて頷くツトミちゃんに、サクノ殿も「有り難う御座います……!」と朗らかな笑みを返した。
 であれば何も問題無い、と首肯し、サクノ殿が提出してくれたフリーカンパニー新規加入申請書にサインを返し、無事契約を結ぶ事が出来た。
「有り難う御座います! わぁ~、嬉しいなぁ……フリーカンパニーの名前を名乗れるって、凄い素敵ですよね……!」
 冒険者の証である手帳に、フリーカンパニーの名称が刻まれているのを見て頬を綻ばせるサクノ殿に、ワシとツトミちゃんは、あまりの微笑ましさに照れてしまうのだった。
「改めて、――サクノ殿。ようこそ、フリーカンパニー“オールドフロンティア”へ」スッと儀礼を見せると、ワシは握手を求めた。「これから末永く付き合えるよう、宜しくお願い申し上げる」
「こちらこそ、これから宜しくお願い致します」握手を返し、コックリ首肯を返すサクノ殿。「ツトミさんも、これから宜しくお願い致します!」
「ツトミちゃん、で良いよぅ」ニパーッと笑いながら握手を返すツトミちゃん。「わたしもサクちゃんって呼ぶから!」
「サクちゃん……!」嬉しいのか照れてるのかワタワタし始めるサクノ殿。「で、では、ツトミ……ちゃんも、これから宜しくお願い致します!」
「うんうん、宜しくね~」
「……」
 熟練の冒険者を前にしても全く変わらぬ胆力を観ていると、どちらが新兵なのか傍目には分からなくなってくるな……
 無論、お洒落云々に関してで言えば、サクノ殿が圧倒的にツトミちゃんを上回っている以上、どちらが新兵なのか、などと言う問答は無用に尽きる訳だが。
 ともあれ、これで新規加入者は二人増え、フリーカンパニーのメンバーは全員で四人となった。
 募集人数は四人と銘打っているため、あっと言う間に半分の席が埋まってしまった訳だが、はてさて次はどんな申請が来るのやら。或いはここで打ち止めか。
 ……などと、そんな余韻に浸る間も無く、次の申請が舞い込んでくるのだった。

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