2018年4月21日土曜日

【滅びの王】0頁■始まりの書『Beginning dream』【オリジナル小説】

■あらすじ
一九九九年夏。或る予言者が告げた世界の滅亡は訪れなかった。併しその予言は外れてはいなかった。この世ではない、夢の中に存在する異世界で確かに生まれていた! 恐怖の大王――《滅びの王》神門練磨の不思議な旅が今、始まる!
※注意※2007/05/04に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公


カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/

■第1話

0頁■始まりの書『Beginning dream』


………………
……何か聞こえる。聞こえるけど、何て言ってるのかまでは聞き取れない。聞き取れないけど、お祈りのような声音に聞こえる。聞きようによっては呪詛とか呪文のように聞こえなくも無い。不思議な声の叙唱。
「……とばよ、……れの許へと届け……」
やっぱり呪文のようだ。たとえ歌だとしても、オレには呪文の詠唱にしか聞こえない。……って、これはゲームのやり過ぎかな。頭がぼんやりしてて、あまり深くは考えられないような状態だけれど、その呪文の意味だけは何と無く感じ取れる。
「――遥かなる地の王の御言葉よ、この繁栄の世に住まう我の許へと届け……」
同じ文章のリピート。ずっとずっと同じ言葉を吐き続けているのは、どうやらオレの予想では女性のようで、妙に澄んだ声がオレの耳に吸い込まれていく。……綺麗な声だな、とぼんやりと思った。
大体その辺からだろうか。耳に吸い込まれてくる声が、頭の中で創られた言葉なんじゃないかって気づいたのは。まあ詰まる所、オレは夢を見ているんだと思う。こんな綺麗な声を出すような友達も親戚もいないし。
徐々に映像のようなものが浮かび上がり、オレは現実の世界とは離れた、『夢』として確立した世界を頭に刻み込む。……まあきっと、これも起きたら忘れちゃうんだろうな、とか思って、思ってもすぐに忘れちゃうから適当に考えていた。流石に夢の中だから思うように体が動かないし、ちゃんとした意志が有っても勝手に場面に流されてしまう。……夢ってそんなもんだよな? 
焦点が合わないのか、始めは曇りガラスでも間に在るかのように薄っすらとしか見えなかったが、段々と明確化していき、やがてそこが大きな教会のような場所だと悟った。
大きなステンドグラスに、首が痛くなりそうなほど高い天井、通路となる中央に続く道には金色の刺繍が入った赤い絨毯、両サイドに並ぶ多数のベンチ……部屋の奥の中央には、一瞬キリストかと思ったけど、どうやら違うようで、ただの十字架が立てかけられている。それもまた部屋の大きさに合った、何メートル有るかよく分からない大きさを保っている。
オレのいる場所は教会の本堂であろう十字架を掲げられた部屋の空中だった。どうやら浮いているようで、アングル的にはお祈りをする女性――いや背丈からして少女と言った所だろうか――を見下ろしている形になる。
少女の後姿から察するに、すごい美人さんだって分かる。長い金髪はそれ自体が光を放っている位に手入れが行き届いていて、とても鮮やかに映えている。動けるかな? と思って少女の顔を拝見しようと宙を掻くように体に念じてみた。夢なんだから、もう少し自由に行動させてくれよ。と思ってみたが、体は思うように動かない。ただ、少女の後姿を見たまま浮いた状態で固まってしまっている。
「遥かなる地の王の御言葉よ、この繁栄の世に住まう我の許へと届け……」
少女はひたすら同じ言葉を繰り返している。それがお祈りの決まり文句なんだろうか。それを繰り返す事で何か起こるのかな? オレにはよく分からない。ただ、ずっと聞いていると眠たくなるのは間違いない。
ひたすら続く歌うような言句に、オレは夢の中なのに眠気を覚えて欠伸をした。ふぁ~、眠い。
「! 届きましたわ! 託宣が届きました!」
少女はすっくと立ち上がり、妙に黄色い声を上げて喜んでいる。オレは欠伸を噛み殺しつつ、何を言ってるんだろうと訝しげに感じて少女を見下ろした。
「やはり、予言の通りでしたわ……間も無く、『滅びの王』がこの地に降りる……」
……何を言ってるんだろう? まあ夢の中だし、何を言ってても別にオレは構わないんだけど……妙にリアルな空気を感じて、オレは少しだけ働く頭で思考を開始してみる。
託宣……とか言ってたな。さっきからの呪文は、その託宣を聞くためのものだったんだな、きっと。……うん、まあ確証は無いけれど、そういう事にしておこう。だとして、託宣の中で『滅びの王』とかが地に降りるとか言ってたのは……うぅむ、サッパリ分からん。
オレの沈思も空しく、少女は扉の方に振り返って、歩きながら呟きを漏らした。
「世界が混沌に満ちる……彼の王が降りるのは時間の問題だわ……早く、皆に知らせないと!」
(お……)
振り返った金髪の少女の顔を見て、やっぱり美人さんだったと頷く。まだ幼い顔立ちだけど、充分可愛さが滲み出ていて、見るからに和やかな空気を発していそうに思える。体つきから、まだ十代も半ばに差し掛かった位だろうと推測してみる。チラリと見えた碧眼も、パッチリと開いていて可愛げが有る。早足で通路を渡る時に、小さな足がチョコチョコ動いている様が見えて、可愛いなあと思ってしまう。その可愛げな顔が苦悶の表情に彩られていたのが、唯一残念な点だ。
重そうな木の軋む音が響いて扉が開かれると、柔らかそうな太陽の光が聖堂の中に差し込んだ。少女が滑り込むように外へ消えると、扉が自重で閉まり、また聖堂の中に荘厳なる静寂が戻ってきた。
……世界が混沌に満ちる、ね。要するに、この夢の中では世界が危機に見舞われてる訳だ。それは大変だー、とは思うものの、オレに何が出来るって訳でもないだろう。所詮夢の中、世界を救う前に起きてしまうのがオチだ。オレが夢の中でぼんやりと漂っていると、やがて世界が白んでいき、徐々に記憶の中の景色となって頭の中が洗浄されるように消えていく……

【後書】
初めての方は初めまして、お馴染みの方はどうも! 日逆です!
今年の五月でネット上に物語を投稿し始めて十一周年と言う節目になると言う事で、十一年前、初めてネットに投稿した物語を修正して再配信しようと思いまして!
それがこの物語、【滅びの王】です。この物語も【ベルの狩猟日記】同様、色々思い入れの有る作品でして、ネタが浮かんだのが丁度盲腸で入院した時と言うのが今でも思い出せます(笑)。
今回の配信は我慢できずでパパっと投稿致しましたが、今後は毎週金曜に1話ずつ更新して参りますので、のんびりお付き合い頂けたら幸いです!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    ご無沙汰しておりますm(_ _)m
    先生のネットデビュー作ということで、矢も盾もたまらず参上いたしました。

    まずは十一周年おめでとうございます。
    千里の道もいっぽかふぇfooイテテ舌かんだw
    えーとそんな感じですっvv

    盲腸で入院中に浮かんだネタとは思えない導入部に
    すっかり引き込まれてしまいました。
    つかみのうまさはすでに完成されていたのですなぁw
    次回以降がとても楽しみです! はよぅ!!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      お久し振りです~! お待ちしておりましたぞ~!!┗(^ω^)┛
      本当によくお越しくださいました…! ぜひこの世界観を堪能していって頂けると嬉しいです!!

      お祝いのお言葉、有り難う御座います~!
      まさか十一年もネットで活動する事になるなんて、当時は思いもしませんでしたw
      大事な所で舌噛みよってからにー!ww 許すっ!w

      そうなんです、これ盲腸で入院した時に、ベッドで寝転がりながら悶々と浮かんだと言う、今でも鮮明に思い出せる物語でしてな!
      「つかみのうまさはすでに完成されていた」とかこれ以上無い褒め言葉です…! (*´σー`)エヘヘドチャクソ嬉しいですぞ~!w
      次回以降もぜひぜひ楽しみにお待ち頂けたらと思います!! 暫し待たれよ!w

      今回もお楽しみ頂けたようでめちゃんこ嬉しいです~!
      次回もお楽しみに~!!

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