2018年4月3日火曜日

【ベルの狩猟日記】030.リオレイア談議【モンハン二次小説】

■タイトル
ベルの狩猟日記

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【鎖錠の楼閣】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


次話(第31話)■2018/04/10配信予定!
前話(第29話)■
始話(第1話)■

【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
Fantia【日逆孝介の創作空間】https://fantia.jp/hisakakousuke



 クェレツン密林に行く前に、ベルは村長であるコニカに許しを得ようと村長宅を訪れていた。
 農場を設立したと言うのに村長の家の規模は全く変わらない。人一人がやっと住める程度の大きさで、村専属の猟人の小屋の方がまだマシと言える程に狭い部屋に入ると、コニカは朗らかな笑みでベルを迎えた。
「話は聞いていますよ。妹さんと一緒にリオレイアを狩猟しに行くんですよねっ?」
「えっと、まあ、そうなんだけど……いいの? また村を暫らく空けちゃう事になるんだよ?」
 反対されないとは思っていたが、こうもあっさりと許可されてしまうと、何だか釈然としないものを感じるベル。これではまるで、ラウト村には猟人がいてもいなくても変わらないと言われているようなものだ。
 そう思って少し不満そうに唇を尖らせるベルに、白皙の美女はコックリと快く頷いて見せた。
「ベルさん達には本当に感謝しているんです。村の周辺の安全が確保できたのは、ベルさん達のお陰に違いないんですから。ですから、ベルさん。この村に尽くしてくれた分、私も貴女に何かお返ししたいんです。……ダメ、でしょうか……?」
 後半を不安げに呟くコニカ。その瞳がどこか潤んでいるようで、これまたウェズのような輩が見た日には襲いかねないな、とベルは心の中で苦笑を浮かべる。
 不安げに見つめてくるコニカに、ベルは相手の意を汲み取るように、穏やかな笑みを返した。
「――分かった。ありがとね、村長。それじゃ、何日か村を空けるけど……すぐに戻って来るから、心配しないでね?」
「はいっ! ……あ、でも、相手は『陸の女王』と呼ばれている、リオレイアなんですよね? その……こう言っては失礼かも知れないんですけれど……勝算は有るんですか?」
 今度は別の心配事で顔を曇らせるコニカ。つくづく彼女は表情の変化が激しい。笑っているかと思えば泣き出しそうになり、哀しそうに伏せっているかと思えば驚いたりと、忙しい事この上ない。
 ただ、ベルもその事は承知の上で、胸を張って応じる事が出来た。
「えっとね、エルはリオレイア限定なら、プロに通じる程の腕前を持つのよ。防具を見れば分かると思うけど、あの子、リオレイアばっっっかり狩ってるのよ。相性がいいんだって。だから、心配無いと思うわ」
「そうなんですか……。分かりました、では頑張ってきて下さいね!」
 拳を固めて激励の言葉を放つコニカ。ベルも会心の笑みでそれに応じた。

 村長の許可が出たので、一度集会所に戻り、皆でどんな道具を持って行くのか相談を始める事になった。
「考えてみると、俺はリオレイアを狩った事ってあまり無いんだよな。どんな道具が通用するんだ?」
 丸太で造られたテーブルを四人で囲むようにして座している状況で、まずフォアンが口火を切った。
 ベルも似たような感想を懐いていた。大型のモンスターは幾つか狩猟を行った事が有り、リオレイアも中に含まれているが、それは街にいる凄腕の猟人と共に何度か行った事が有るだけで、ただ後方から弓を射て終わったような気がする。その頃はまだ、ベルもアマチュア猟人だったので、仕方ないと言えば仕方ない事だったのだが。
 実際、成長して中級者と自称できる程に腕を磨いた今に至るまで、リオレイアに挑む事は一度としてなかった。良い機会だな、と思わずにいられない。
「リオレイアには閃光玉が有効ですわ。動きを止められますの」
 フォアンの質問に応えるのは、リオレイアに関しては頗る詳しいエルだ。得意気に話す彼女は、フォアンに体を向けて、身振りを交えて演説を続ける。
「ただ、閃光玉を使用して、リオレイアの動きが止まった時、尻尾に近づいてはいけませんわ」
「何でだ? まさに尻尾をぶった切る絶好のチャンスだと思うんだけど」
「それがそうでもないんですの。閃光玉の効果が持続している間は、尻尾が小刻みに動いていますの。それに触れると凄く痛いんですわ。触れ続けるだけで、いつの間にか体力が削られているなんて、ザラですのよ」
 リオレイアに限らず、同じ飛竜種である、通称『空の王者』リオレウスにしても同じで、彼らは尻尾の先に毒性の棘を有している。彼らは閃光玉で動きを止められた時、威嚇の唸り声を上げつつ尻尾を振り回すのだが、それに触れると毒が人体に回り、僅かな時間でも体力が削られるのだとか。
「なるほど」と納得して頷くフォアン。
「でも、それじゃ尻尾は斬る事は出来にゃいのかにゃ? そんにゃ毒棘を持つ尻尾が有ると、危険じゃにゃいかにゃ?」
 ザレアの言う事は尤もだ。そんな毒の含んだ棘が付いたままの尻尾が振り回された日には、一撃で致命傷になりかねない。
「斬るとしたら、シビレ罠に掛かっている間か、或いは平時ですわ。平時は危険ですけど、シビレ罠中なら危険も少ないですし……狙うとしたらシビレ罠に掛かっている間ですわね」
「シビレ罠は効くのか。じゃあ落とし穴はどうなんだ? 嵌まるのか?」
「ええ、落とし穴も通用しますわ。併も落とし穴の方がシビレ罠よりも効果時間が長いですわ。総攻撃を仕掛けるなら落とし穴中が有効ですわね」
「つまり、落とし穴に嵌まっている間が、爆弾チャンスにゃ訳にゃね!?」
「そんなシャッターチャンスみたいな風に言わないでよ……」
 意気込んで告げるザレアに、思わずと言った様子でツッコむベル。
「でも、確かに大タル爆弾などを使うのに適した瞬間ですわよ、お姉様。ですけど、大タル爆弾を使う方はそういないのでは……?」
「いいや、それがいるんだ。俺達の前に」
 小首を傾げるエルに、フォアンが意味深な笑みを浮かべて頷いてみせる。その意味を勘違いして、エルは口許に手を当ててベルを見やった。
「お姉様、そんな危険な真似を為さっていたんですの!?」
「命令されてもしないわよそんな事! あたしじゃなくて、この子! ザレア!」
 思わず声を大にして〈アイルーフェイク〉を被った少女を指差すベル。
「そんにゃに褒めにゃいでほしいにゃ……照れるのにゃ♪」
「微塵も褒めてないからね、気づいてね、その事実に……」
 悶絶するように照れ始めるザレア。その様子に呆れ返りながらも辛うじてツッコミを入れるベル。
「ザ、ザレア様でしたのね。……良かったぁ……。――それはともかく、話を戻しますわよ? リオレイアの攻撃で一番注意しなければならないのは、サマーソルトですの」
「サマーソルトなんかするのか、あの飛竜。サマーソルトって、あいつ宙返りでもするのか?」フォアンが小首を傾げる。「そういえば、したよーな……」
「ええ、そうですの。宙返りの際に尻尾も一緒に回転するのですが、それに当たると、当たり所が悪ければそのままお亡くなりになる事も……」
 一瞬、場が凍ったように静まり返る。
「……えーっとー……即死するの、尻尾に当たると?」
 戸惑いがちに尋ねるベルに、エルは慌てて身振り手振りを交えて補足する。
「あ、いえ、その、当たり所が悪くて、運が悪ければお亡くなりになるだけで、当たり所が良くて、運が良ければお亡くなりには……」
「……可能性は有る訳だ。それってやっぱり、……毒で?」
「……はい。リオレイアだけでなく、リオレウスもそうなのですが、彼らの尻尾の毒は強力ですの。流石にゲリョスやバサルモス、グラビモスのような猛毒ではありませんけど、酷い時は失明する事も有りますわ。解毒薬、或いは漢方薬は必ず持って行った方がいいですわ」
「ああ、解毒薬なら、あたしのフルフルDシリーズの〈広域化〉のスキルで全員解毒する事が出来るしね。持ってっといて損は無いでしょうね。……そっか、皆、尻尾にだけは気を付けるのよ?」
「了解です、隊長」「分かったのにゃ!」
 フォアンが頷き、ザレアが挙手で応じる。
「他に、何か留意すべき事って有る? エル」
「そうですわね……突進攻撃後の振り向きの速度で攻撃が変わる、と言う点でしょうか」
「振り向きの速度? どう変わるのよ?」
 ベルが小首を傾げて尋ねると、エルは自分の首を使って説明を始める。
「突進攻撃をした後は、どんなモンスターでも大概は猟人に向かって振り向き直しますわよね? その速度が速ければ、再び突進攻撃をしてくる確率が高いんですの。逆に遅ければ、ほぼ確実にブレスを吐き出す筈ですわ。それを憶えておけば、攻撃のタイミングは確実に増える筈ですわ」
 リオレイアの習性を完全に掌握しているからこそ言える戦術。それを今、ベルは感じずにいられなかった。リオレイアを何十頭と狩猟したからこそ、エルはこれだけの情報を手に入れたのだ。ベルにはまだ到達できない域に、エルはいる。
 ――これでマトモな子だったら、多分最強を冠するのも時間の問題だったんでしょうけどね……
 ベルは誰にも気づかれないように嘆息する。エルを見る度に思う事なので、あまり感慨も無くなってきていたが。
 話も纏まってきたと思ったのか、フォアンが席から立ち上がる。
「それじゃ必要な品は、シビレ罠、落とし穴、そして閃光玉に解毒薬。後は個々に回復薬とか、だな。今から揃えてくるぜ」
「オイラも揃えてくるにゃ!」
 二人の猟人が視線を定めたのは、集会所でティアリィ相手に自慢話を繰り返しているウェズだった。狩猟関係の話に興味が無い彼にとっては、ティアリィのような美人と話をする事の方が比べるまでも無く有意義なのである。
「――その時の僕の脚は何か違っていました……そう、まるで幻獣キリンが舞い降りたかのように、自分の脚なのに、自分の脚じゃない感覚が有ったんですよ! その時、僕はこの脚ならゲリョスでも追いつけまいと――気づいてしまったんです。いやぁ、奴のパニック走りを以てしても、僕に追い縋る事など出来なかったんですよ!!」
「まぁ、凄いですね♪」
「凄いでしょ!? 凄いですよね!? いやぁ、僕も自分の力の底知れなさには自分でも恐怖を覚えちゃいましたよ。僕はもしかして、猟人を超える人間なのではないか――ってね!」
「おーいウェズ~」
「それで――え? あ、フォアンか。何だよ、今いいトコなんだよ、後にしてくれよぉ」
「ベルがラージャンの如く怒ってるぞ」
「――ッッごめんなさいッ! 何か分かんないけどわたくしめが悪かったです! だから殴らないで叩かないで蹴らないでッッ!!」
 その場に蹲って亀のように動かなくなったウェズ。ティアリィはその様子を見ると、フォアンに視線を向け、朗らかな微笑を滲ませた。
「ウェズさんの扱い方が分かってきたんですね?」
「はて、何の事でしょう?」
「ふふ、――そうそう、道具なら私も扱っていますよ? ウェズさんがお持ちで無い道具をお売り致しましょうか」
「え、」ティアリィの声を耳聡く聞いたベルが声を上げる。「ティアリィって、道具を扱ってるの?」
「ええ、或る程度の品ならギルドの方から送られてきますので」
 全く知らなかった。同じ村に住んでいながら、と言うかほぼ毎日顔を突き合わせていたにも拘らず、その事実が今の今まで知らされなかった事が驚きだった。何故このタイミングなのか、その方が気掛かりだった。
「その、皆さんが道具を全て自前で賄っていらしたので、実質私の出番が無かったのです。皆さんの実力が有ればこそ、今までモンスターを狩猟できたのでしょうし」
「……じゃあ、リオレイアはあたし達の実力だけじゃ敵わない、――そういう訳?」
 ティアリィは微笑を僅かに曇らせ、苦笑を漂わせる。
「そうではありません。……正直なところ、今まで私の出る幕が無かったので、やっと今話す機会を見つけた、と。それだけです。他意は御座いません」
 ……つくづく底の知れない女性だな、とベルは思う。尤も彼女には逢った時から何か敵わないと感じていたベルである、これからも彼女には色々驚かされそうな気がした。
 相手に心中を全く悟らせない表情で佇むティアリィを見て、諦めたように嘆息するベル。彼女を詮索しても始まらない。今はクェレツン密林に棲みついたリオレイアの狩猟に集中せねば。
「……お姉様、彼女は何者ですの?」
 エルがベルの耳元でこそこそ呟いたのが聞こえた。ベルはエルに意識を向け直して応じる。
「ん? ああ、彼女はこの酒場兼ギルド直営集会所の給仕さんだよ。名前はティアリィさん。いつも彼女にご飯を作って貰って、ギルドからのクエストを紹介して貰ってるんだよ」
「……そうなんですの」
「どうかした?」
「いえ、」エルは歯切れ悪く呟く。「……どこかで見た記憶が有るんですの……気のせいかしら……」
「ふぅん……。――あ、そういえばエル。今回のリオレイアの依頼も、ティアリィさんに受注しないといけないんじゃないの?」
 ハンターズギルドからの依頼であるならば、ギルド関係者から依頼を受注しないと狩場へ出掛ける事は叶わない。まずはギルド関係者――つまり集会所兼酒場の主や、そこの給仕などに話を通さなければならない。
 併しエルは首を小さく振って否定した。
「この依頼はクェレツン密林近隣の村がギルドへ要請して、依頼が各地へ申請されたものなんですの。それをわたくしがギルドへ狩猟依頼を要請した村で引き受け、狩猟仲間を募りに来たのですわ。なので受注はもう必要無いですわ」
「あ、そうなんだ。なら、後は道具を揃えて出発、だね!」
 陽気に告げるベル。だが、エルの相貌は怪訝から変わる事は無かった。
 ティアリィはそれを笑顔で受け止めていたが、結局エルが彼女をどこで見たのかは、その時は思い出せなかった。

【後書】
 と言う訳で今回はリオレイアに就いてのお話をする回でした!
 振り向きの速度うんたんのお話は、あくまでP2G時代のお話なので、最近の作品では通じない可能性が有ります! 当時は通じたんです!w
 尤も、今の作品は今の作品でそういう事前モーションのチェックはなされていると思いますが! わたくしはもう前線を退いてのんびりまったり系ハンターに落ち着いてしまっているので詳しい事はサッパリなのです(^ω^)
 そしてティアリィさんに関してちょろっと不穏な影がちらつきましたが、この章で明かされる事は無い要素なので、「何かティアリィさんってミステリアスな雰囲気だよね…」と思っておけば大丈夫です(笑)。
 と言う訳で次回、第3章第4話にして、第31話!「ザレアの初恋」…個人的に3章で一番気に入っている回です!w お楽しみに~♪

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