2018年4月12日木曜日

【僕のヒーローアカデミア二次小説】ネロルの言【物拳】※再掲

■タイトル
ネロルの言

■あらすじ
拳藤の誕生日に物間は。
相思相愛系物拳です。色々捏造設定注意!

▼この作品は、Blog【逆断の牢】、Fantia【日逆孝介の創作空間】、【Pixiv】の三ヶ所で多重投稿されております。
※注意※2017/09/14に掲載された文章の再掲です。本文も後書も当時そのままになっております。

■キーワード
僕のヒーローアカデミア 物間寧人 拳藤一佳 物拳 ヒロアカ


Pixiv■https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8748568
Fantia■https://fantia.jp/posts/18784


■ネロルの言

※色々捏造設定なのでなんでも許せる方向けのお話だよ!

『拳藤、誕生日おめでとー!』

九月九日。拳藤一佳の誕生日。
彼女の部屋で盛大に催された誕生会で、祝辞を浴びせられている主賓の拳藤の表情は、確かに照れてはいるものの、どこか上の空だった。
拳藤に次から次へと掛かる祝いの言葉に、彼女は痺れを切らしたかのように、「ね、ねぇ八百万」と近くにいた、参加者でありクラスが違うながらもよく話をする八百万に、こそりと声を掛けた。「物間、知らない?」
「物間さんですか?」己の手で生成したグラスに注いだグレープジュースを飲み干すと、八百万は困った表情を覗かせた。「それが……お誘いはしたのですが、断れてしまいまして……」
「……そっか」
一瞬だけ落ち込んだ表情を見せた拳藤に、八百万の返答を聞いてしまったのだろう、近くに佇んでいた泡瀬が「物間ってそういう奴だろ。こういう場に来る事なんて無いんじゃないのか」と、ボソリと返したのを見て、拳藤の表情に一瞬、怒りのような、険が走った。
「あいつは、そんな奴じゃないよ」
――静かに、併しハッキリと、拳藤は告げた。
その威圧感に、泡瀬は驚きで目を瞠り、「お、おう……」と気圧されるように、目を逸らしてしまう。
己の表情が険しい事に気づいたのか、拳藤はすぐに苦笑を浮かべて、「物間ってさ、ああいう性格してるけど、悪い奴じゃないんだ、それはほんとだから……同じクラスメイトをさ、悪く言われるの、嫌だから……」と苦しそうに、照れるように、言い訳のような文言を漏らした。
そんな拳藤を見ていた同級生は、皆苦笑を滲ませて、「拳藤って本当に委員長の器だよな」「そうそう、そこまで物間を庇えるのって、拳藤ぐらいだし」「俺達も気にしてないから、拳藤も気にすんなって」と銘々に慰めのような、言い訳のような文言を交わし始める。
そんな同級生の言葉の端々に浮かぶ感情の発露に、拳藤は苦笑を濃くして、「うん、ありがとね」と愛想よく応じるのだった。

◇◆◇◆◇

深夜。学生寮の談話室で、物間は腕輪を月に照らしてぼんやりと眺めていた。
きらりと輝く銀色の腕輪を、何をするでもなく眺めるだけ。
そうしているだけの静かな時間を、物間は過ごしていた。
「よっ、誕生会をサボタージュした薄情者は、優雅に月光浴かい?」
とんっ、と肩に衝撃が走り、拳藤の声が頭上を通過していく。
物間は衝撃でリングを落としそうになったが、寸でで受け止め、テーブルに置いてから、皮肉っぽく口唇を歪めた。
「あぁ、場を乱す奴が祝いの場にいると、悶着が起こるからね」
「へぇ、それはそれは、殊勝な心掛けで」
対面の席に腰掛ける拳藤を見やり、物間は訝るように視線を投じる。
「僕に何か用?」
「あんたの顔が見たくなってさ」
――その割には、不機嫌そうだが。
そう舌に載せようと思った物間だったが、先に拳藤が口を開いた。
「何で、来てくれなかったんだよ」
不貞腐れてるのか、唇を尖らせて呟く拳藤に、物間は不思議そうに、おどけた仕草を取った。
「僕の話、聞いてなかったの?」
「誰がどう思おうが、私は、あんたにだけは、祝われたかったよ」
ジト、と怒りを露わにした視線で射抜かれ、物間は気まずそうに姿勢を正した。
「僕を付け上がらせてどうするのさ」
「そう見える?」
「……あんまり僕と一緒にいない方がいいよ、君まで誤解される」
「――“まだ、言い足りない?”」
真剣な、まっすぐな瞳に晒され、物間は流石に躱せないと察したのか、肩を竦めて降参の意を示した。
「……あんまり、からかわないで欲しいな」
どうしても、取り合うつもりは無いと。
そう、物間が表明した瞬間。
「じゃあ――」
テーブルに身を乗り出した拳藤は、物間の唇を、容易く奪った。
テーブルに乗ったまま、猫のような体勢で、物間の瞳を見つめる。
「これで、どう?」
間の抜けた表情を浮かべていた物間の顔が、瞬間、紅潮する。
羞恥心で何も考えられないのか、咄嗟に拳藤から視線を逸らそうとして――彼女の手で、顔を支えられてしまう。
「私の気持ち、伝わった?」
まっすぐな瞳に、物間は、観念したように溜め息を返した。
「……後悔するよ?」
「後悔させてみなよ」
そう言って挑戦的に微笑む拳藤に、物間は悔しそうに口唇を笑みの形に歪めると、テーブルに置いたリングを、彼女に翳した。
「これ、お祝い」
「腕輪? だよね、これ」受け取ると、右腕に嵌める拳藤。「嬉しいけど、私の個性でさ――」「発目に作って貰った特注品でね、伸縮自在の腕輪」拳藤が言葉を発する前に、物間は彼女を指差しておどけた表情を浮かべて、告げる。「拳藤ってさ、その手、って言うか個性かな、意識して、アクセサリ、付けないでしょ?」
……よく見てる。
訊きたかった事を、気になっていた事を、全部知っていて、分かっていて、このタイミングで言うのは、本当に――卑怯だと、拳藤は、嬉しそうに唇を引き締めて、頬を桜色に染める。
「……ありがと」
「精々感謝してよね、僕なんかに惚れたんだから」腕を広げておどける物間。
「そうだね、そんなあんただから、惚れたんだもんね」
そんな物間を正面から見つめて嬉しそうに微笑む拳藤に、少年は気恥ずかしそうに視線を逸らすと、顎の下を掻き始めた。
「……直球で返さないで欲しいな」
「その方があんたには効果的だろ?」
ニヤニヤと返す拳藤に、物間は完敗の表明なのか、肩を竦めておどけた。

【後書】
先週からですけど、予定では前回今回含めて、全5回に分けて物拳短編を毎週木曜に配信していく予定になりました!
と言う訳で今回の物拳。拳藤ちゃんって手が大きくなる個性持ちなのと、ザックリ登場回を見るにアクセサリってあんまり付けないのかなーと思って、モダモダっと妄想してこんな感じに。
とにかくこの二人は相思相愛であればもう何も言う事無いです……ずっと夫婦漫才しててほしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿

好意的なコメント以外は返信しない事が有ります、悪しからずご了承くださいませ~!