2018年4月12日木曜日

【僕のヒーローアカデミア二次小説】笑顔にする力【轟爆】※再掲

■タイトル
笑顔にする力

■あらすじ
轟君と爆豪君が漫才コンビを組むお話。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【pixiv】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の三ヶ所で多重投稿されております。
※注意※2017/08/12に掲載された文章の再掲です。本文も後書も当時そのままになっております。

■キーワード
僕のヒーローアカデミア 爆豪勝己 轟焦凍 轟爆

■笑顔にする力

Pixiv■https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8529023
Fantia■https://fantia.jp/posts/15269



笑顔にする力

「爆豪。お前に話が有る」

放課後。帰途への道すがら、爆豪は轟に声を掛けられた。
爆豪は瞬間的にメンチを切り始め、轟を威嚇しまくったが、彼は全く動じず、「お前の、ヒーローとして足りないモノに関する話だ」と淡々と告げた。
「俺の、ヒーローとして足りないモノ、だァ……!?」
もう既に腸が煮え繰り返っていた爆豪は、轟の上半身を爆破で吹っ飛ばそうと考え始めていたが、轟は相変わらず冷静そのものの声調で、「あぁ、お前には致命的に足りないモノが有る。だからお前はヒーローから遠いんだ」と、自然体そのもので煽り始めた。
「おい、おいクソ野郎……次ふざけた事を吐かしたら手前の頭は胴体とサヨナラバイバイさせてやるからな……」顔が既に人間ではなく悪魔と呼ばれる存在に近い爆豪。「ぶぶ、ぶち殺されたくなかったらなァ……そこを退け……ッ、カス……ッ!」
「それは、――笑顔にする力だ」
爆豪の瞳が白目を剥いた。
そして次の瞬間、手のひらに集まった汗が起爆し、凄まじい速度を伴って放たれた裏拳は、轟の顔面を爆砕した。
「何でじゃボゲェェェェッッ!!!」轟音と共に轟の顔面が爆発する。「グダグダ訳の分からねえ事を吐かしやがってクソボケがァ!! 何だそりゃ!? 笑顔にする力だァ!? そんなもん俺には――――」
爆風が落ち着き、黒煙が去った後、そこには首から先の無い轟が……ではなく、すまし顔だが、確かに笑顔を浮かべる轟の姿が有った。
不気味以外の何物でもなかった。
「お、お前、頭大丈夫か……?」流石の爆豪も心配な声を上げる。
「これが笑顔の力だ」フッ、と微笑む轟。
「いや絶対違うだろ」パァンッ、と轟の頬を平手打ちする爆豪。
「ヤメロ、積極的に顔を狙っていくのはヤメロ」微笑は崩れていないが、頬を押さえて痛がっている轟。「某プロデューサーが言ってたんだ。世界を明るくする力とは、即ち笑顔だと」
「プロデューサー……?」困惑しきりの爆豪。「ヒーローじゃなくてか?」
「ヒーローみたいなものだ」コックリ頷く轟。
「いやお前今プロデューサーって」
「つまりヒーローみたいなものだ」キリリッと表情を決める轟。
「ごり押し過ぎんだよ手前はァ!!」爆発する拳が轟の鳩尾にクリーンヒットした。
爆発で轟の体は宙を舞い、クルクルと回転し、ストっと華麗に着地すると、「フッ……」とまたキザっぽく微笑んでポーズを決めた。
「腹立つゥ……腹パンだけじゃ我慢できねえ腹立たしさだぞこいつ……ッ」爆豪の頭の中は花畑ならぬ火薬庫に変貌しつつあった。
「そういう訳で爆豪」まるで意に介さず爆豪に歩み寄る轟。「俺と漫才コンビを組まないか」
「お前の頭ン中、ちゃんと回線繋がってるか?」最早心配を通り越して恐怖を感じつつある爆豪。
「あぁ、最近光回線にした」コックリ頷く轟。
「お前の頭ン中どこのネットに繋がってんだよ!!」再び爆発を伴う裏拳が轟の顔面を破壊した。
「それだ!」顔面を破壊されながら轟はサムズアップした。
「アァ!?」最早轟が恐ろしくて正視もままならない爆豪。
「お前のツッコミのポテンシャルは計り知れない。それを……その力を、人を笑顔にするために使ってみないか?」
「俺の力が……人を笑顔に……?」
今まで爆豪は、この爆破の力は、ヴィランをぶち殺すためだけに使うものだと思っていた。
だが、確かにヒーローとは、誰かを笑顔にする職業でもあると、オールマイトを見て、痛感する。
オールマイトがいれば、誰も不安にならない。皆、緊張した表情が綻び、笑顔になる。
皆が笑顔になれば、それは確かに、平和の象徴と言っても過言ではない。
爆豪は歯を食い縛ると、轟の胸倉を掴み上げ、改めてメンチを切った。
「教えろやコラ。俺でも本当に、誰かを笑顔に出来るんだろうな、アァ!?」
爆豪の、まるで憎悪の爆撃のような、――心からの叫びのようでもある問いに、轟はしっかり頷き、「あぁ、お前と俺なら、大丈夫だ」と返した。

◇◆◇◆◇

「えぇと、かっちゃんが言ってた会場はここか……」
雄英高校の近くに在るショッピングモールの一角を会場に見立てた、特設のステージ台が設置されていた。
観客の入りは少ないけれど、見知った顔が有る事に出久は気づいた。
「あっ、飯田君! 麗日さんも! 切島君まで! 皆来てくれたんだ!」
一角に集まっているクラスメイト一同に声を掛けると、集まっていた彼らも銘々に出久を迎え入れた。
「そりゃ来るさ、爆豪君と轟君が漫才を見せてくれるなんて、今世紀最大のミステリーだからね!」不思議なジェスチャーを交えて応じる飯田。
「うん、僕も全く同じ事を考えてたよ……」曖昧な笑みを浮かべる出久。「もう心配で心配で……」
「きっと大丈夫だよ! 爆豪君一人だったら、ちょっと、うん、あれだけど、轟君も付いてるし!」むんっと拳を固めて意気込む麗日。「だからきっと、大丈夫!」
「そうだぜ緑谷。確かに爆豪一人だったら俺も諦め通り越して止めさせるところだったんだけどよ、何せ相方が轟とあっちゃ、もう心配する余地ねえだろ!」快活に笑う切島。
「う、うん、皆、轟君の信頼度が凄い高いのはよく分かったよ……」そしてどんだけかっちゃんが信頼されていないのかもよく分かる……と、出久は続けなかった。
「レディイイイイスエンッ、ジェントルメェェェェン!! 遂に始まるぜあの雄英祭でトリを飾った二人が漫才するっつぅ、史上初の頭おかしい漫才がYO! その眼球に雄姿焼きつけて帰れよチェケラッ!!」
「司会、プレゼント・マイクなんだ……」そんな気は確かにしてたけども……とは口の中で留めておく出久。
特設ステージに、爆豪と轟が現れた。
二人ともタキシード姿だ。見た目以上に似合っていたし、しっかりしている印象を与えている。
爆豪は相変わらず観客にメンチを切り、轟は無表情なのが、既に違和感モリモリだったが。
「……おう、何見てんだコラ!?」突然観客にメンチを切り始める爆豪。
「最悪の出だしだよかっちゃん!」もう目も当てられない様子の出久。
「……ところで爆豪。こんな話を聞いた事が有るか?」ぼそぼそと轟が喋り始める。
「轟君が辛うじてフォローしてくれてる……のか? もう既に取り返しが付かない勢いで観客が冷え切ってるけど……」深、と静まり返る特設ステージで肩身が狭い出久。
「アァ? 知らねえよ黙ってろカス」吐き捨てる爆豪。
「僕は一体何を見せられているんだ……」サラサラと体が砂状になっていく出久。
「お前、一部では、轟克己、って呼ばれてるらしいぞ」
轟の台詞の後に、凄まじい空気が会場を席巻した。
「……だから何だクソボケがァァァァッッ!!」
爆豪の裏拳が轟の顔面に叩き込まれ、凄まじい爆音が轟いた。
観客から悲鳴が上がり始めた。
黒煙が引くと、顔を氷でガードしていた轟が、「ナイスツッコミだ爆豪」と無表情でサムズアップを見せた。
「ちッ、今のは殺す気でやったっつうのによ……」苛立たしげに吐き捨てる爆豪。
「以上、漫才、轟爆でした」スッとお辞儀をして、爆豪を引き摺って会場を後にしていく轟。
「おい、そこは爆轟だろ間違えんなカス!」
爆豪の捨て台詞を最後に、会場は恐ろしく冷えた空気で静まり返っていた。
「ブ、ブラボーッ! アハハハハ! 最高に面白かった! そうだな皆!?」
突然立ち上がって拍手喝采を始める飯田に、麗日も、切島も、そして出久も、仏のような顔で「飯田君、サクラだったんだね……」と呟くだけだった。

【後書】

轟爆と言う名目でやりたい放題やらせて頂いた感(笑顔)。
轟君のボケは先日アニメを一緒に見ていた友達に漏らした謎の台詞です。「あれ? 何でかっちゃん呼びなのに、轟君は轟君って呼ばれてるんだろう?」って真顔で尋ねて友達をうっかり萌え殺してしまいましてな……

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