2018年4月17日火曜日

【ベルの狩猟日記】032.密林探索隊【モンハン二次小説】

■タイトル
ベルの狩猟日記

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G

【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/



 クェレツン密林に到着したのは、三日目の正午を回った辺りだった。
 筏に大量の荷物を載せ、湖の中央に浮かぶ島へと上陸する。湖に囲まれたその島こそ、目的地であるクェレツン密林なのである。
 筏を湖岸に係留し、流されないようにロープで確り繋ぎ止めておく。筏はベースキャンプの代わりにもなり、態々テントなどを設立する必要は無い。そういう意味ではとても便利な代物だった。
 ただ、その筏の上には今、ザレアの私物が大量に置かれている。
「……今更ですけど、ここまで大量に爆弾を持ち運ぶ猟人は、初めて見ましたわ……」
 エルが若干引き気味に、荷車に大タル爆弾Gを積み込む作業を行っているザレアとフォアンを眺め、呟きを漏らした。ベルもそれには心から頷き、苦笑を滲ませて応じた。
「あの子、爆弾馬鹿なのよ。アイルーと爆弾に関してなら、あの子に敵う猟人はいないと思うわ」
「そうなんですの……また少し、見識が広がりましたわ……」
「にゃにゃー! 準備完了ですにゃ! エルさん、どういう作戦でリオレイアを狩猟するのにゃ!?」
 荷車を筏から降ろし終えたザレアが走り込んで来る。フォアンは筏から降りて、眼前に聳える絶壁を見上げていた。
 拠点となる狩場は小さな砂浜だった。モンスターが入って来る事は無さそうな狭い空間で、砂浜に降りてすぐに首が痛くなる程の高さを有する絶壁が聳えている。東西に絶壁を迂回する道が在るが、絶壁にしても壁面に生い茂っている蔦を使えば登る事が可能のようだ。北の絶壁を見て、西側には湖岸が続き、東側は密林の入口が岩礁の隙間に開いている。地図を見ると拠点の北西の湖畔がエリア4、絶壁を登りきった所がエリア5、拠点より東へ進んだ密林地帯がエリア1と区分けされている。
「そうですわね……リオレイアの活動する場所は大体分かっていますわ。湖畔にいる事が多いのですけれど、休憩する時は洞窟に入る事も有りますの。あと、池が在るのならそこも目印になりますわ」
「――水呑場になってる訳ね?」ベルが閃きを口にする。
「そうですの、飛竜種は少し休憩するだけで体の傷をあっと言う間に癒す性質を持っていますから、もし攻撃して逃げた時はそこを目印に向かえば……と言う訳ですわ」
「それじゃ、まずはどうするの? エル。今回はあんたがリーダーなんだから、あんたが方針決めていいのよ?」
 ラウト村専属の猟人である三人のリーダーはベルと、いつの間にか決められてしまっているが、今回は外部から舞い込んで来た狩猟である。リーダーになるべきは、その筋のプロに任せるのが道理と言うものだろう。
 エルは一瞬躊躇う素振りを見せたが、ベルの優しげな眼差しを受け、こくんと一つ、顎を引いた。
「――では、まずはこの狩場を掌握する作業から始めましょう。全てのエリアを回り、どこに何が在るのか把握し、全員がそれを理解した上で、リオレイア狩猟を始めたいと思いますの。地理を把握する前にリオレイアに遭遇したら、ペイントボールを忘れずにお願いしますわ。素早く地理を把握するために、二人一組で探査をしたいと思いますわ。組み合わせは――わたくしとフォアン様。お姉様はザレア様とお願いしますわ。集合場所はここ――筏の前に致しましょう。では――散開して下さい!」
「了解です、隊長」「分かったのにゃ!」
 エルが二人の様子にこっそり吐息を漏らすと、ベルが親指を立てた手を見せて微笑みを浮かべた。
「流石じゃない♪ エル」
「そ、そうですか? ……えへへ」
「おーい、エル~。俺達はどっちから回るんだ~?」
「あ、わたくし達は密林を回って行きますわ! お姉様達は湖岸をお願いしますわ!」
「ふふ、了解♪ じゃ、行くわよ、ザレア!」
「にゃー!」

◇◆◇◆◇

 と言う訳でベルはザレアと共に湖岸を探査する事になった。
 視界の奥――東側は絶壁が続き、西側には綺麗な色の湖が広がっている。その中央には砂浜が走り、奥に次のエリアへ続く道が在るのだが、その付近に鳥竜種――トカゲと鳥を足して二で割ったような、二足歩行するモンスターが屯していた。青い鱗に茶色のラインが走る体躯に、黄色いクチバシが特徴的な鳥竜種――ランポスである。
「ランポスがいるわね。数は三。……やっぱり狩っといた方がいいわよね……ってザレア?」
 振り返るとザレアの姿が無かった。あれ? とベルが不審に思って辺りを見回すと、何やら紙切れが落ちている。取りに行ってみると、中には――
「『爆弾の準備をしてきます。すぐに戻るので、それまで一人で宜しくお願いします。ザレア』……珍しいわね、あの子が単独行動に走るなんて」
 怒りよりも驚きの方が強かった。とは言え、仲間の規律を乱す行為は出来れば避けて貰わねばならない。戻って来たら一度キツく言ってやらねばならないな、と一人で頷くベル。
「ギャァ、グァア!」
 そうこうしている内にベルの姿に気づいたランポス三頭が駆けて来るのが視界に映り込む。発達した後ろ足で疾駆する彼らは、機敏性に関して言えば飛竜種の比ではない。あっと言う間に距離が縮められそうなのを見て取り、ベルはどうするべきか一瞬戸惑う。リオレイアが海岸線に現れ易いと言う情報が齎された今、ここにいるランポスは狩猟の妨げになる可能性が有る。――となれば、
「よしっ、いっちょやるかー!」
 背中に吊っていた弓――カジキ弓【姿造】を手に取り、同じく背中に吊ってある矢筒から纏めて矢を引き抜き、砂浜を走りながら弓に番える。足場が砂場なので少し足を取られたが、慣らす意味も込めて、始めは小走りに駆け出す。
 ランポスは二頭が左右に展開し、残った一頭が跳び上がって空中からベルへと襲いかかる。ベルは鋭利な爪を有する前脚で引っ掻かれる前に矢を放ち――空中でランポスを射止める。胴に三本の矢が突き刺さり、体勢を崩したランポスが方向を見失って、地面に叩きつけられる。
 その間に左右に展開したランポスが、それぞれ同時に前脚を持ち上げてベルへと圧し掛かるように襲いかかる。ベルは矢を放った瞬間に前転を繰り出し、二頭のランポスの間――即ち先程空中から襲いかかろうとしていたランポスが退いたために生じた空間へと逃げる。挟撃に失敗したランポス同士がぶつかり合い、啀み合いの喚声を奏でる。
 前転を終えた瞬間に矢筒から更なる矢を纏めて引き抜くと、今度は横一列に矢を番える。拡散矢――拡散するように矢を放つと、二頭のランポスの胴、そして頭に突き刺さった。二頭のランポスがそれぞれ「ギャァ!」と叫びながら踏鞴を踏む。
「グァ! ギャア!」
 初めに空中で射止められたランポスが起き上がり、再び跳び上がって襲いかかって来る。慣れてしまえば単調な動きである鳥竜種の反応を見て、ベルは横に転がって前脚の引っ掻き攻撃を躱す。
 ランポスは砂浜に着地を果たすと同時に獲物を仕留められなかったと再び喚声を上げ、獲物――猟人へ向き直る動作に入る。
 その間にベルは矢を番え終え、今度は連射矢――一列に数本の矢を纏めて発射する技術を使い、ランポスの頭を矢でズタズタにする。
「ギャェエッ」と断末魔の声を発し、鮮血を撒き散らしながらランポスが倒れ伏す。まず一頭――ベルがそう息つく間も無く、二頭のランポスが再び襲いかかる。
 今度は一頭が跳び上がって襲いかかり、もう一頭は発達した後ろ足を使って素早くベルを迂回するように走り込んで来る。少しは考えたか――ベルは感心するように口許に笑みを滲ませると、まずは口を大きく開けて跳びかかるランポスの攻撃を躱すべく、相手に向かって前転する。すると自身の足許へ消えたベルを見失い、跳びかかったランポスは何も無い砂浜へ着地する。
 迂回して来たランポスはその動きを具に見ていたので、迷う事無くベルへ攻撃を開始する。後ろ足を使って素早く回り込むと、ベルの肩口を狙って前足を振り下ろす。ベルは足音で相手の位置を確認し、すぐさま方向を変えて再び前転――ランポスの横合いに躱す。
 前脚を振り下ろしたランポスは忽然と姿を消した獲物を追い、方向転換するために足踏み――ではなく、大きくバックステップを踏み、ベルと距離を離す。恐らく、足踏みをする瞬間に攻撃を受けるとでも考えたのだろう。モンスターとは言え、彼らにも頭脳が有り、思考が有る。と、ベルは考えている。故に彼らは警戒するし、策を練って相手を攻める。人間が考える程、理屈っぽい策ではないが、それでも策に変わり無い。
 ベルは二頭のランポスが合流したのを見計らって、拡散矢を放った。今度は五本――放たれた矢はランポスの胴や頭を穿ち、更に彼らに傷を付ける。一頭は矢の当たった頭の場所が悪かったのだろう、断末魔を上げて仰け反るように倒れ込む。
 残りは一頭――ベルが再び矢を番えようとすると、ランポスは危機を察知したのだろう、足踏みをして方向転換を果たすと、背中を向けて逃げ出した。実に鮮やかな遁走だった。
 残されたベルは一瞬唖然としたが、すぐに落ち着きを取り戻して、カジキ弓【姿造】を背中に吊るし直す。当面の危機は去ったと認識したのだ。
 ランポスが逃げた先のエリアも湖岸の筈だった。丁度拠点の反対側に位置するエリアで、洞窟へと入る道、小島へと続く道、更に密林へと至る道が在ると地図には記されている。
 湖岸にリオレイアが出現し易いと言う情報が確かなら、この先にいる可能性は比較的高いだろう。ベルは若干気持ちを引き締めると、エリア3――クェレツン密林第二の湖畔へと駆け出した。

【後書】
 いよいよ密林に到着からのランポス戦です!
 ところで、ザレアちゃんが意味深な動きを始めましたが、ネタバレしないように言いますと、意味深な奴です(笑)。
 以前も綴ったと思いますが、オリジナルの地名では有りますが、P2G及びMHFの密林と同じ場所ですここ! なのでエリアの番号なども一緒なので、その辺を思い出しながら読まれると分かり易いと思われまする!
 さてさて、次回、第3章第6話にして第33話!「目指したもの」…ベルがランポスと戦闘を繰り広げていた一方で…? お楽しみに!

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