2018年4月16日月曜日

【僕のヒーローアカデミア二次小説】君がいるから言える言葉【物拳】※再掲

■タイトル
君がいるから言える言葉

■あらすじ
拳藤がいない時は物間が大人しいと聞いて。
相思相愛系物拳です。色々捏造設定注意!

▼この作品は、Blog【逆断の牢】、Fantia【日逆孝介の創作空間】、【Pixiv】の三ヶ所で多重投稿されております。
※注意※2017/10/05に掲載された文章の再掲です。本文も後書も当時そのままになっております。

■キーワード
僕のヒーローアカデミア 物間寧人 拳藤一佳 物拳 ヒロアカ



Pixiv■https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8752048
Fantia■https://fantia.jp/posts/20989



■君がいるから言える言葉

※色々捏造設定なのでなんでも許せる方向けのお話だよ!


「あー……久し振りにやっちゃったなぁ……」

 銜えていた体温計を取り出すと、39.2と言う数字が表示されている。
 昨夜、暑くて寝苦しかったのを理由に、クーラーで部屋をガンガンに冷やした挙句、布団を被らずに寝た事で、夏風邪を召したのは明白だった。
 ぼんやりする頭のまま、拳藤はクーラーを切って携帯端末で教諭に欠席の連絡を取ると、市販の風邪薬を飲んで布団に潜り込んだ。
「……物間、大丈夫かなぁ……」
 普段は物間が誰かに煽情的な挑発をしても、止めるのは決まって委員長の拳藤だった。その己が欠席してしまえば、彼の暴走を止める者は誰もいない……それはBクラスとしても、雄英高としても、不味い事態である事は、流石に拳藤にも判る。
 無理して出席しようとも思ったが、それでクラスメイトに風邪が伝染すれば目も当てられない。とにかく今は復調に努め、早く復学できるように体を休める事が大事だ。
 そう思い、拳藤の意識は闇に吸い込まれていった。

◇◆◇◆◇

「拳藤~? 生きてるか拳藤~」
 うつらうつらとした意識の中に、部屋の外からクラスメイトの声が聞こえる。
 拳藤はそれが泡瀬の声だとやっと理解できると、見舞いに来たのだろうと察しを付け、布団から出て扉を開けた。
 廊下には泡瀬他、Bクラスの生徒が大挙して押し寄せていた。
「大丈夫か? 夏風邪って聞いたけど」泡瀬が心配そうに表情を曇らせる。「これ、Bクラスから」と言って色取り取りの果物が入ったバスケットを手渡す。
「あぁ、ありがと……」元気無くバスケットを受け取ると、拳藤はその場にいない者の影を探した。「物間は……」
「あぁ、物間なら今日大人しかったから安心してくれよ」苦笑を浮かべる泡瀬。「Aクラスどころか、誰にも喧嘩売らずに、ずっと読書してたからよ」
「……そっか」安心したような、拍子抜けしたような、肩透かしを喰らった気分で、拳藤は微笑んだ。「これ、ありがとね」とバスケットを掲げる。
「おう、早く元気になって戻ってきてくれよ、物間が暴走したら、止められるの拳藤だけなんだからよ」
 そう言うと、Bクラスの面々は銘々に別れの言葉を告げ、立ち去って行った。
 扉を閉め、バスケットをそのまま冷蔵庫に押し込むと、拳藤は布団の上に倒れ込んだ。
「……大人しく出来るんじゃん」
 不服そうに、拳藤の愚痴が部屋に溶けて行った。

◇◆◇◆◇

「……」
 朝の教室。数名のクラスメイトが楽しそうに談笑する中、物間は一人静かな表情で読書に励んでいた。
 単行本を片手で開いて、微動だにしないその姿は、一種の彫刻作品のようにすら思える。
「よっ、あんたも大人しく出来るんなら、普段からそうしてよね」
 ポン、と頭を叩かれた物間は、単行本を閉じて片眉を持ち上げ振り向く。
「君も風邪を引けば大人しくなるんだね」
「あんた程じゃないけどね」
 剽げた表情で物間の前の席に陣取る拳藤に、彼は肩を竦めて応じた。
「具合、もういいのかい?」
「お陰様で。そういうあんたは、昨日珍しく大人しかったんだってね?」
「まるで僕が普段大人しくないみたいな言い草じゃないか」
「違うのかい?」
「Aクラスの連中と一緒にしないで欲しいな。僕はいつだって大人しいさ、ヒーローの有精卵が自発的に問題を起こす方がおかしい、Aクラスみたいにね」
「そうだね、いつもの調子の物間だ」
 腕を組んで納得した風に頷く拳藤に、物間は怪訝な表情を覗かせた。
「何だい? 僕の調子がおかしいとでも?」
「私がいない時だけ大人しいって聞いて、どうしてかなーって思ってさ」
「あぁ、そんな事か」
 不思議そうに物間の瞳を覗いていた拳藤に、彼は特別な感情を見せずに、淡々と応じた。
「僕を止める者が不在の時に問題が起これば、Bクラスの沽券に係わると思ってね」
「……へぇ」
「拳藤がいないと、Bクラスを纏める者が僕一人になってしまうしね」
「……ほほぉ」
「……何だよ? 何か言いたい事が有るのかい?」
 ニヤニヤと笑う拳藤に、物間が不服そうに唇を尖らせる。
 拳藤は「いーや、別にぃ」と嬉しそうに口唇を緩めて立ち上がると、物間の頭をポン、と改めて撫でた。
「じゃ、私がいる時は安心して問題起こしなさいな、私がちゃんっと、止めてあげるからさ」
「……僕がまるで問題を起こすトラブルメイカーみたいな言い方やめてくれないかな?」
 怪訝な表情の物間だったが、嬉しそうに立ち去る拳藤を見やるその眼差しには、嬉々とした色が滲み出ていた。
「勿論そうするさ、君がいないと張り合いが無いしね」
 誰にも聞こえない声量で呟かれた物間の独白は、朝の教室に淡く溶けていった。

【後書】
 互いに「こいつには自分がいないと!」って思える関係ってドチャクソ尊いですよね……(挨拶)
 と言う訳で、物間君は大体いつも心に名の有る病を患ってるかのような発言が多いですけど、拳藤さんがいない時は大人しかったらいいなって妄想でした。合宿での遭遇時では最早心壊れてた感有りますけどね!(笑)
 更に朗報です! 元々今回の配信で終わる予定だった物拳短編ですが、その後全7回に増えまして、それが更に全10回に変更になりました事をお知らせ致します! 10月一杯毎週木曜に物拳短編を更新して参りますので、どうか楽しみにお待ち頂けたらと思います!

0 件のコメント:

コメントを投稿

好意的なコメント以外は返信しない事が有ります、悪しからずご了承くださいませ~!