2018年4月13日金曜日

【スレアリ】夜伽話sideスレイ【TOZX二次小説】※再掲

■タイトル
夜伽話sideスレイ

■あらすじ
アリーシャがスレイを夜伽に誘う話。スレイ視点。
※アニメ版仕様で、更に設定を捏造しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【pixiv】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の三ヶ所で多重投稿されております。
※注意※2017/07/09に掲載された文章の再掲です。本文も後書も当時そのままになっております。

■キーワード
TOZX スレイ アリーシャ スレアリ
Pixiv■https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8394182
Fantia■https://fantia.jp/posts/12079



■夜伽話sideスレイ

「アリーシャに夜伽に誘われた?」

 夜風に当たっていたミクリオに相談を持ち掛けたスレイは、戸惑いを全身で表現するように、気まずそうに頷いた。
 ミクリオは驚きに目を瞠ったが、すぐに嬉しそうに表情を綻ばせ、スレイの肩にぽすんと拳を当てた。
「良かったじゃないか。断らなかったんだろ?」
「断らなかったけど……」
「何でそんなに困り果ててるんだ? スレイはアリーシャの事が好きなんだろう?」
 ミクリオの不思議そうな問いかけに、スレイはまごつきながらも頷く。
 アリーシャが好き。確かにその通りだった。
 強く、素敵な人だな、と、一緒に災禍の顕主を浄化すべく旅を共にした時から、意識はしていた。
 女性として認識していなかった訳ではない。彼女と話すと楽しいし、気持ちが高揚する事も否定しない。
 けれど彼女は、今やハイランドの国王だ。どれだけ気軽に話し合える関係であっても、己とは身分が違い過ぎる。
 導師と言ったって、その実態は根無し草の流浪人だ。世界各地を巡り、穢れを浄化するのが責務故に、一つ所に留まる事は無い。
 ふらっと訪れては、ふらっといなくなる。そんな生活をしている己に夜伽を持ちかける事など、有り得ないと考えていた。
 ――私に……夜伽を、してくれないか?
 決意を固め、精一杯の勇気を振り絞ったであろうアリーシャの頼みに、スレイは晩餐会でも感じた、顔面が熱くなる感覚に襲われる。
 アリーシャが、覚悟を据えて宣告したにも拘らず、スレイ自身は、未だに心の整理がついていなかった。
 彼女を抱く。それは、旅の途中で意識しないように努めた劣情の発露になる。……穢れの、元になる感情とも、言える。
 人間は、誰しもが穢れを有している。導師とて、例外は無い。
 アリーシャを愛している。けれど、本当にそれだけだろうか。
 清く、愛らしい存在を、己の手で穢そうとしているのではないか。
「……アリーシャは、きっとそう望んでるんじゃないかな」
 ミクリオが、月明かりに照らされたレディレイクの夜景を望みながら、ぽつりと零した。
 沈思に落ちかけていたスレイは彼に視線を転じ、話の続きを待った。
「聞き耳を欹てるつもりは無かったんだけどね。つい、城の中での話を耳にしたんだ。アリーシャに見合いの話が来てるんだって。――世継ぎの話が、出てるらしいんだ」
 ミクリオの淡々とした言葉に、胸がざわついた。
 アリーシャに、見合い。国王として、ハイランドの繁栄のために、世継ぎは必要不可欠だ。
 その事を、今まで考えないようにしていた。いつか誰かと結ばれる。素敵な人と、夫として誇れる人と、――己ではない誰かと。
 それが想像の中での光景と、現実の言葉として耳に入るのとでは、厳然たる格差が有った。
 アリーシャが、誰か別の人のものになる。
 それが堪らなく、恐ろしかった。
「きっとアリーシャも、スレイと同じ事を考えて、そう言ったんじゃないかな」
 振り返ったミクリオの顔は、呆然と立ち尽くすスレイに向けて、柔らかな月明かりのような微笑で満たされていた。
 頼りない相棒の窮地に、救いの手を差し伸べるように、ミクリオは更に続ける。
「まぁ、スレイがヘタレなのは知ってるからね、アリーシャを今すぐどうにかするなんて出来ないだろうから、問題を先送りにする、ちょっと卑怯な手を教えてあげよう」スレイの肩に拳を当て、ミクリオは意地悪そうに笑んだ。「夜伽って、寝る前に物語を聞かせる事でも有る、って知ってたかい?」
「そ、それくらい知ってるよ!」思わずムッと声を上げるスレイだったが、その瞬間、ミクリオが何を言いたいのか理解して、「なるほど、そういう事か」と首肯を返した。「ありがとな、ミクリオ!」
 拳を掲げるスレイに、ミクリオは苦笑を浮かべながらそれに応じ、「全く、世話の焼ける導師様だ」と拳を合わせるのだった。

◇◆◇◆◇

 夜伽を勘違いしたふりをして寝物語を聞かせながら、スレイはウトウトしているアリーシャを横目で見て、内心で謝罪の言葉を並べていた。
 アリーシャの覚悟を台無しにした己は、卑怯な男だ。アリーシャ自身も、気づいている筈だ。けれど、訂正の言葉は無かった。
“何も間違ってない”と、言ってくれた。
 そんなアリーシャの優しさに、スレイはまた、救われたような気がしたのだ。
 そんなアリーシャを、独占したい気持ちは、確かに有る。
 けれど、導師として、彼女の仲間として、――大切な人として、アリーシャを抱くのは、怖かった。
 アリーシャを壊してしまいそうで、どうしても手を伸ばせなかった。
 それは、アリーシャを諦めると言う事だ。どこかの国の偉い人と結ばれる彼女を、遠くで見守る。それはどれだけ歯痒く、悔しい想いを懐く未来だろう。
 そんな選択をしてしまった己に、スレイは暗澹たる想いを懐きながらも、それがアリーシャのためになると信じて、押し潰す。
 ――穢れが、湧いたような気がした。
「……アリーシャ?」ふと、アリーシャから小さな寝息が聞こえてくるのを確認して、スレイは本から目を離した。「寝ちゃったかな」
 すぅすぅと規則正しい寝息を立てて寝顔を見せるアリーシャを見つめていると、とても愛おしいと言う穏やかな気持ちとは相反する、独占欲が胸の内を焦がしていく。
 彼女の隣を歩きたい。彼女と共に有りたい。彼女と、一緒になりたい。
 そこから先は、無意識だった。アリーシャの額に唇を押し当て、ゆっくりと顔を離す。
「今はこれが限界。ごめんね、アリーシャ」弁明するように、独り言が口から漏れていた。「いきなり夜伽って言われてビックリしたけど、ミクリオに相談して良かった……これで誤魔化せたよね」
 己に出来る限界。スレイは、己の気持ちを明かさないまま、彼女の元を去ろうと決意した。
 きっと彼女も判る筈だ。スレイではなく、導師ではなく、別の素敵な人が現れる事を。
 それが誰であっても、スレイは、それでアリーシャが幸せになるのなら、構わないと。
 そう思って、寝台から下りようとした時、体が引っ張られる感覚がした。
 服の袖を、アリーシャが握り締めていた。
 驚きに瞠目し、スレイは緊張感で胸が張り裂けそうになった。
 振り向くと、アリーシャは目元に微かに涙を湛え、スレイを前に、瞳を開いていた。
「……ズルいぞ、スレイ」
 震えるような、か細いアリーシャの声。
 スレイは己の落ち度に、悔恨と――安堵を、同時に懐いた。
「……もしかして、今の、聞こえてた?」
 確認するように、そう問いかける。
 もしかしたら――スレイは考える。もしかしたら己は、聞いて欲しかったのかも知れない。伝えたかったのかも知れない。
 本来伝わってはいけない想いを。彼女を縛り付けてしまう気持ちを。――国を惑わせてしまう、エゴを。
「……今夜は、帰さないからな?」
 アリーシャの瞳は、スレイを捉えて離さなかった。
 覚悟したのに。決意したのに。スレイは、アリーシャから逃れる事が出来なかった。
「……本気?」
 それは確認ですらなかったのかも知れない。
 アリーシャの本気が心地良くて、――ただ、その愛情をもう一度、口にして欲しくて。
「……本気だ」
 アリーシャの笑顔に、救われて。
 スレイは、彼女の口唇を奪うのだった。

 きっと幸せはすぐ傍に有って。
 気づかないふりをして、認めたくなくて、遠ざけてしまって。
 それでも彼女が待っていてくれた事が、引き留めてくれた事が嬉しくて。
 導師は、その時、皆のためでなく、彼女だけのために、笑った。

【後書】
 二人とも生涯ピュアッピュアでいてほしいので、このままゴールインしてくれるとドチャクソ嬉しい(会心の笑顔)。
 スレイは王の器って印象なので、きっと夫に迎えればハイランドも安泰だよ! 幸せな王国になるよ!
 と言う訳で甘々の妄想を吐き出しきりました。濡れ場を妄想するだけで高ぶりますけど、流石に野暮ですよね!
 また機会が有りましたら、と言いますか、ネタが浮かんだらテイルズオブシリーズの二次小説もちょろちょろ綴っていきますお! ここまでお読み頂きまして有り難う御座いました!

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