2018年4月20日金曜日

【スマブラX二次小説】酒肉【アイウル】※再掲

■タイトル
酒肉

■あらすじ
アイクがクリスマスパーリーをしたいと言ってきた。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【pixiv】、【ハーメルン、】Fantia【日逆孝介の創作空間】の四ヶ所で多重投稿されております。
※注意※2015/12/24に掲載された文章の再掲です。本文も後書も当時そのままになっております。

■キーワード
スマブラX ウルフ アイク アイウル 腐向け 二次小説 二次創作 Novel

Pixiv■https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6192256
ハーメルン■https://novel.syosetu.org/71368/
Fantia【日逆孝介の創作空間】https://fantia.jp/posts/20803

■酒肉

「ウルフ! クリスマスパーリーしないか!?」

ある日、何の脈絡も無くアイクに声を掛けられ、ウルフは「は?」と訝しげな視線を返さざるを得なかった。
「それ、あれだろ? どうせまた肉を食わせろ的展開なんだろ?」呆れ返った様子で嘆息するウルフ。
「バカ野郎!」ぽかっとウルフの頭を叩くアイク。「俺はお前とパーリーがしたいんだよ!! 肉とか関係ねえ! 俺は! ウルフと! パーリー! したいんだ!!」
「お、おう、そうかよ……」ドン引きしつつも、今回は割と真面目な様子のアイクに空咳を返すウルフ。「まぁ、お前がそこまで言うなら、行ってやってもいいぜ?」
「本当か!? ヤッター! ありがとな、ウルフ!」
手を掴まれてぶんぶん振り回され、ウルフは「お前どんだけはしゃいでんだよ……」と呆れ半分照れ隠し半分で呟く。
「俺以外には誰が来るんだ?」
「マルスとメタナイトを呼んでおいた! よし! そうと決まれば早速家に来てくれ! すぐパーリーしようぜ!」アイクがぐいぐいウルフの手を引っ張って行く。
「どんだけパーティしたいんだよお前……」照れ隠しが消えて最早呆れ顔のウルフ。
アイクの亜空間での貸家に向かう道すがら、アイクはウルフの手を離そうとしなかった。
「おい、流石にもう離してもいいだろ」思わず声を上げるウルフ。
「? 何をだ?」不思議そうに振り返るアイク。
「手だよ手。パーティには行くって約束しただろ? 別に逃げも隠れもしねえから、手ぇ離せよ」
「ウルフの手ってモフモフだよな」アイクがウルフの手をにぎにぎと感触を確かめるように触る。
「そりゃ、狼だからな」何を当たり前の事を、と鼻息を吐くウルフ。
「こう寒くなってくるとさ、このモフモフが恋しくてな」結局離さないまま再び歩き出すアイク。「ずっとモフモフしてたくなるんだよ」
「お前なぁ……」溜息を落としながら、しかしアイクの手を離そうとしないウルフ。「つーか、フォックスだってモフモフだろ?」
「でも今ここにはウルフしかいないだろ? つまりそういう事だ!」ふふん、と誇らしげに笑むアイク。
「ったく、しょうがねえ奴だなてめえは……」
呆れ返りながらも、ウルフは自ら手を離そうとはしなかったし、アイクも手を握り締めたまま歩き続ける。
その時間を妙に懐かしく感じて、ウルフはぼんやりとアイクの横顔を見つめるのだった。

◇◆◇◆◇

「さぁ飲め飲め! 今日はクリスマスパーリーだぞ!」
アイクの声に応じるのは、ウルフ一人だけだった。
「おー、って、俺しかいねえんだけど。マルスとメタナイトはどこ行ったんだよ?」酒の入ったグラスを傾けながら尋ねるアイク。
「おかしいな、確かに呼んだ気がするんだが……」不思議そうに肉をかじるアイク。
「気がする!? お前呼んだ事すら憶えてねーのかよ!」思わず酒を吹き出しそうになるウルフ。
「まぁそういう事もある! ともあれ飲め飲め! 今日は良い酒を用意したんだぞ!」少しだけ空いたグラスにガンガン酒を注いでいくアイク。
「おっ、悪ぃな」再びグラスの酒を口に運ぶウルフ。「クァーッ、うめえ! アイクにしちゃぁ、良い酒を用意したもんだ」
「無論、肉も最上級を用意したぜ?」ふふん、と胸を張るアイク。
「つか、突然どうしたんだお前? いつもぱっぱらぱーな事ばっかり言ってるお前にしちゃぁ珍しい」酒を呷りながら尋ねるウルフ。「ようやくマトモな思考が出来るようになったのか?」
「それがな、聞いてくれよウルフ。つい最近、とても良い話を聞いたんだ」得意気な表情のアイク。「肉ってさ、酒に漬けると美味しさが増すんだって」
「ほー」再びグラスを空にした瞬間、ウルフは自分の視界が霞んでいる事に気づいた。酒には滅法強いと自信が有ったウルフが、である。「……って、おい、お前、その話……」
思考力が奪われていく。何でこのタイミングでそんな話をしたのか、どうしてここまで自分に良くしてくれたのか、悪い方向にばかり思考が傾いていく。
「酒が効いてきたのか?」肉をかじりながら笑むアイク。「じゃあ俺も、最上級の肉を堪能しようかな」
「て、ん、めぇ……」立ち上がり、何とか逃げようとするも、そこでウルフの意識は途絶えた。

◇◆◇◆◇

――温かい。
全身がポカポカと、温かなものに包まれている事が、朧気ながらに分かる。
それは普段感じる事の無い、生物の温もり。
久しく忘れていた、温かなもの。
「……」
少しずつ意識が覚醒に近づいていく。意識を失う前に聞いた話が徐々に蘇り、我に返った瞬間――体ががっちりと押さえられている事に気づいた。
背後から、抱き締められている。
「アイクてめ――っ」
羞恥心と苛立ちを込めて全力で振り解こうとしたが、すぐに気づく。
「……すぅ……すぅ……」
「……寝てる、のか……?」
間近で聞こえる寝息は、確かにアイクのものだった。
ウルフを抱き締めたまま、行為に及ぶ訳ではなく、爆睡している。
訳が分からないと言った様子でそっと手を外そうとするも、力がこもっていないようで、しかし外そうとすると嫌がる子供のように眉間に皺を寄せて再び抱き締めてくる。
「何なんだこいつは……」
考えるのが馬鹿らしくなり、酔いがまだ醒めきってない事を理由に、諦めてアイクにされるがままを選択するウルフ。
こうやって、誰かに抱き締められて寝るなど、子供の頃に数度有ったきり……いや、そんな過去は無かったかも知れない。
色恋など縁遠かったウルフにとって、老若男女問わず、こんな事をする相手はいなかった。
「……もふもふ……」
不意に背後から聞こえたアイクの声に、ようやく納得する。
単にアイクは、ウルフのモフモフの毛皮で暖を取りたかっただけなのだと。
そのために高い酒まで用意して、パーティまで開いて……本当に、苦労の掛け方が馬鹿らしいな、とウルフは鼻で笑った。
「仕方ねえ、今日だけだからな、ったく……」
そう呟くウルフの声はどこか嬉しげで、眠っている筈のアイクの口唇に笑みが刻まれた事に、気づく事は無かった。

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