2018年5月6日日曜日

【神否荘の困った悪党たち】第18話 じゃあ俺と対戦してみませんか?【オリジナル小説】

■タイトル
神否荘の困った悪党たち

■あらすじ
非現実系ほのぼのニートフルコメディ物語。宇宙人、悪魔、殺し屋、マッドサイエンティスト、異能力者、式神、オートマタと暮らす、ニートの日常。
※注意※2017/03/05に掲載された文章の再掲です。本文と後書が当時そのままになっております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公

■第18話

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
Fantia【日逆孝介の創作空間】https://fantia.jp/posts/9189

第18話 じゃあ俺と対戦してみませんか?


「にー君、おねーさんとイチャイチャしない?」

 部屋でのんびり寛いでいたら突然扉が開いてシンさんが真顔で変な事を言い始めた。
「あっ、遠慮します」視線を合わせちゃいけない奴だ。
「何だよー、ノリ悪いなー」特に不機嫌になった風でもなく部屋に侵入するシンさん。「にー君、私はな、今暇なんだ」肩に手を回してニヤニヤと笑いかけてきた。
「お、おう」完全に不良に絡まれた態になってる。
「何か面白い事して?」満面の笑みのシンさん。
「無茶にも程が有りますね?」何だこの無茶ぶり特攻は。
「えー? だって暇なんだよー、私を愉しませろー」俺のベッドに跳び込んでジタバタし始めるシンさん。
「うーん……」この人一番の困ったさんだなぁ、と思いながら考える。「あ、シンさんってゲームするんですか?」ベッドに向き直って尋ねる。
「ゲーム? するけど」起き上がって欠伸を始めるシンさん。「エロゲとか」
「エロゲ以外ってしないんですか?」
「んー、あんまりかなぁ。別に嫌いじゃないけど」退屈そうに枕をポスポス殴り始めるシンさん。「なに? お姉さんとゲームしたいの? くんずほぐれつな奴?」ニチャァ、と邪悪な笑みを浮かべてる。
「ニャッツさんの遊び相手になってくれると嬉しいんですけお」
 ニャッツさん、周りに遊び相手がいないから一人……じゃなかった、一匹でゲームしてるのかなって思ってたんですよね。
 と思いながらの発言だったんだけど、シンさんは中空を見つめるだけで、暫し返答は無かった。
「シンさん?」不思議そうに目の前で手を振る。
「ん? あぁ、ニャーさんでしょ? 私はいつでもニャーさんとプレイしたいんだけどねぇ、ニャーさんが嫌がるんだよ」ケラケラと笑い始めるシンさん。「その嫌がる姿が最高にそそるんだけどさぁ」こえー。
「嫌がるって、一体何してるんですか」予想は出来るけども。
「何したと思う?」
「フレンドリーファイヤとかですかね」
「んふふ、せいかーい♪」愉しげに笑うシンさん。「アレじゃん? FFできるゲームはFFしてなんぼだと思わない?」やべぇよやべぇよ……
 因みにFF、フレンドリーファイヤとは、味方への誤射の事で、まぁアレだ、銃撃戦がメインのゲームでは外道の行いを指す単語だ。
「ニャッツさんがどうして俺を師匠にしたのか何と無く分かりました」こんな極悪非道の鬼畜プレイヤーが身近にいたら、確かに俺みたいなプレイヤーは神々しく映るのかも知れない。「因みに腕前はどんな感じなんですか?」
「ん? FPSの事?」枕をお手玉のように遊び始めるシンさん。「味方を殺す事に懸けては超一流だぜ」ニチャァと笑ってる。
「じゃあ俺と対戦してみませんか?」
 幸いゲーム機とモニターは有る。コントローラーはナモとプレイする時も有るので二つ有る。対戦プレイが出来る環境は整っている。
 シンさんは「えー? にー君、強そうだもんなー、私じゃ絶対に勝てないってぇー」と言いながらもコントローラーを受け取ってくれた。
「もう明らかにフラグ立て過ぎですよね」ゲーム機を起動させながら苦笑を禁じ得ない。「この人絶対に腕前おかしいレヴェルだよ」
「あっ、判るぅ?」ニチャァと邪悪な笑みが貼りついたままのシンさん。「そりゃあそうじゃん、相手を如何に効率よく嬲るかを考えた時、相手を上回る技量が無いと難しいじゃん? 相手が悔しさに塗れて発狂するまでがゲームの醍醐味っしょ」この人こそが本物の悪魔だとラヴファイヤー君に教えてあげたい。
 ゲームが起動して、キャラクターを選ぶ画面に切り替わった。
「おっ、にー君はアサルトライフル使うのかー。んー、じゃあどうしよっかなー、おねーさん、このゲームプレイした事無いからなー」適当な動きに見える割には、メチャクチャ洗練された動きで装備設定を終えていくシンさん。「んー、じゃあこんな感じかなぁ。ショットガンにしよーっと」
「俺の武器の方が射程は上ですけど、接近されたらシンさんに敵わないですね」と言いながら一対一のルールでゲームを始める。
「そうねぇ。まー、そんな簡単に接近できるほど、にー君もヌーブじゃないでしょー」
 ヌーブってのは「noob」と記す英語のインターネットスラングで、腕が無かったりルールを理解していないプレイヤーを指す言葉。自嘲や謙遜として自ら名乗る人もいるけど、基本的には軽蔑的な単語なので、あんまり使わない方が良い言葉だと思うよ。
「あー、こんなステージ初めてだよぉ、どこからにー君が来るのか分かんなーい」と言いながら軽快な動きで俺のキャラクターの元へ直進させるシンさん。
「絶対やった事あるゲームだよ、マチガイナイ」確信を以て言えますよね。
「フフフ、まぁおねーさんを練習台だと思っ――――?」
 会敵した瞬間、シンさんのキャラクターが死んだ。
 俺のキャラクターのアサルトライフルが火を噴き、シンさんのキャラクターの頭を一撃で撃ち抜いたのだ。
 暫し沈黙を置いたシンさんだが、やがて肩を震わせて「ひひ、うひひ……」と危険な気配のする笑い声を漏らし始めた。
「……にー君、君、強いね……?」
「シンさんが言ってたんじゃないですか」ニッコリ笑顔でシンさんに振り返る。「相手を如何に効率よく斃すかを考えた時、相手の技量を上回っていないといけないって」
 シンさんの笑顔がヤヴァい色になった。
「いいねェ、それでこそ、にー君だ! いひひ、愉しくなってきたじゃァないか!」シンさんの気配が明らかに変わった。「じゃあ私も本気で相手をしてあげよう……存分に愉しませてくれよォ!」

◇◆◇◆◇

 十回の殺し合いの結果、全て僅差で俺の負けだった。
「にー君、地味に強いの反則でしょ~」戦績を観ながら真顔で呟くシンさん。「ちょっとおねーさん本気出しちゃったよ」
「普段ゲームして過ごしてるぐらいの強さは有りますよ」でも負けたー。「シンさんが予想以上に強かったのが悔しいなー」
「いやー……あれだけフラグ立てて負けたくないからねー」苦笑を浮かべて寝転がるシンさん。「んー、もっと練習しなきゃなー。このままじゃ、いつかにー君に負ける日が来るかもだし」
「偶には勝たせてくださいよ」抗議の声を上げるよ。
「やだよぉ、相手が負けて悔しがる姿を見るのが生き甲斐なんだからぁ」邪悪な笑みがデフォルトだこの人。「あっ、もうそろそろテイルズのアニメ始まるから行くわ~あんがとね~」と言って立ち上がるシンさん。
「えっ、あぁ、もう日付変わってたのか」ふわわ、と欠伸を漏らす。「俺はもう寝ますねー、おやすみなさーい」
「えっ、寝るの?」シンさんが振り返った。
「えっ、寝たらダメですか?」
「ダメだね」
「ダメですか」
「おねーさんが添い寝してあげよう」ニチャァと笑ってるシンさん。
「それはガチで眠れない奴ですね」
「フフフ、正直で宜しい。んじゃ、おやすみぃ」パタン、と扉を閉めて部屋が静かになった。
 そう言えば今日は火曜だからテイルズのアニメやってるんだった……と思い出したけど、FPSって頭が疲れるからね、寝ちゃおう。
 ベッドに潜り込むとシンさんの匂いが仄かにして、案の定眠れなかったよね。

【後書】
 ビギナーズラックを騙って襲い掛かる系プレイヤーは絶対いる(確信)。
 と言う訳でシンさん回でした。この人が登場すると最高に楽しいです。何せ外道ですからね! 紛う事無き腐れ外道ですからそりゃもう愉しくもなりますよ!!
 そんな感じで今月はちょこっと更新頻度が加速する予定です。4月からの有料化に合わせて、今月中に二十一話まで更新したいのでして……! あと3話残ってますから、毎週更新してギリギリコースかな?
 次回、「負けられない戦いが始まりますね」……マナさん&メイちゃん回です。お楽しみに!

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