2018年6月25日月曜日

【神否荘の困った悪党たち】第31話 俺を社会的に抹殺したいのかな?【オリジナル小説】

■タイトル
神否荘の困った悪党たち

■あらすじ
非現実系ほのぼのニートフルコメディ物語。宇宙人、悪魔、殺し屋、マッドサイエンティスト、異能力者、式神、オートマタと暮らす、ニートの日常。
※注意※2017/08/21に掲載された文章の再掲です。本文と後書が当時そのままになっております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、Fantia【日逆孝介の創作空間】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公

■第31話

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
Fantia【日逆孝介の創作空間】https://fantia.jp/posts/16245

第31話 俺を社会的に抹殺したいのかな?


「てか、どう考えてもおかしいですよ! 二人とも動き自然過ぎじゃないですか!」

 酒場の一角で、真顔で地団太を踏んでる俺のキャラクターを見て笑い転げてるシンさんと、青褪めて怯えているニャッツさん。
 シンさんはまだ分かるけど、ニャッツさんがこんなに表情豊かに操作できる事に違和感しかないんだよぉ。絶対に何かいけない力を使ってるとしか。
「自然過ぎるって言われてもニャ。我輩、ここにいるからニャ」椅子に腰かけたまま、ピンっと人差し指を立てる可愛い小さな男の子。「寧ろ師匠の方が怖くて仕方ニャいのニャ。何でそんニャ不自然ニャ、人形みたいニャ事にニャってるニャ?」
「んん? 今聞き逃せない言葉が紛れ込んでたんですが」グリリっとシンさんに首を向けるよ。「シンさん、説明してくださいよぉ」
「あー、もうバラしちゃうのー? ニャーさんってば早漏なんだからぁー」愉しそうにニャッツさんの頭をグリグリ撫で回すシンさん。
「撫でるニャと言ってるだろ殺し屋!」スパァンッ、とシンさんの手を振り払うニャッツさん。「もしかして師匠、ここにいニャいニャ?」
「あー、何と無く察しました」グリリっと首を上下させてみる。「シンさんもニャッツさんも、このゲームの世界にいるんですね?」
「まぁそんな感じよ」退屈そうに耳を穿り始めるシンさんこの野郎。「てか、にー君勘違いしてると思うけど、この世界アレだよ、ゲームの世界って思ってると思うけど、ここ現実世界だから」
「えっ」ガタッてしまうよ。「どう見ても異世界ファンタジーっぽい世界に見えますけど」もしかしてユニヴァーサルなんとかジャパンなんだろうか。
「そう、ファンタジーな異世界だよここ」シンさんがコックリ頷く。「マナちゃん、異世界に電子素子を繋げて、パソコンのデータを異世界に転送する装置を組み上げたのが、これ」人差し指を地面に向けてちょいちょいと動かした。
「ひえぇ」言葉が出てこない。「じゃあそこ、てか俺のモニターに映ってる、シンさんとニャッツさんがいるそこって、本物の異世界なんですか」
「そゆこと」コックリ頷くシンさん。「だからうっかり人を殺すと、リアル殺人犯になるから最高にエキサイティングな感覚を味わえるぞ★」ドチャクソ愉しそうに何を言ってるんだこの人は。
「てっきり師匠もこっちに来てるのかと思ってたニャ。これ、師匠の外装だけニャのか」ニャッツさんが歩み寄って来て、コンコンと俺の腹にノックしている。可愛い。「師匠はこっち来ニャいのニャ?」
「えっ、行ってみたい気持ちは有りますけど、素の俺、戦闘力皆無ですよ」つまり死ぬ気しかしないよ?
「そそ、にー君は一般ピーポーだから、殺されたらアウトじゃん?」シンさんがまるで殺されてもアウトじゃないみたいな事を言ってる。「因みにこの異世界に来てるのは私ら神否荘の住人だけで、普通のユーザーは普通にプレイしてるから安心してね」何が安心できるんだろうか。
「俺思ったんですけど、もう普通のネトゲとかマトモにプレイできる気がしませんね」散々真顔で首をグリングリンしてるとか言われたらね。「でもしゅごいですね、本物の異世界を冒険できるゲームって」
「まぁ我輩に掛かればこの程度造作も無いニャ!」ふふん、と踏ん反り返ってるニャッツさん。
「ニャッツさんも開発に係わったんですか?」グリリっと首を曲げてみる。
「こわっ。師匠~、真顔で首をグリグリ動かすのやめて欲しいニャ~夢に出そうニャ~」
「ニャッツさん、俺も泣きそうなんで我慢してください」
「神否荘の住人全員で開発してるんだよなぁ。勿論にー君も係わってるよ」
「えっ、俺何もしてませんよ?」気づいたらゲーム出来上がってたよ?
「何だっけ、あの仔豚ちゃん。えーと、あー、そうそう、ナモって子が、開発費を出してくれたんだよ、にー君の財産から」
「あー、なるほどですね」いつの間にシンさんとナモが逢っていたのか、そこがビックリだけれど。
「あれ? 怒らないの? にー君の莫大な貯金を勝手に使われてるのにー、何で怒らないのー?」シンさんの言い方の方が数倍腹立たしいですね??
「ナモには俺の財産全て預けてますからね」適当にカメラをグリングリン回してみる。「それにナモは、俺のためになるって判断した時にだけ俺の金を使うから、何も心配してないんですよ」
「こわっ」「こわっ」シンさんとニャッツさんの声が重なった。
「えー、もっと怒って欲しかったなー、勝手にお金を使われたー、ムキーッて」不服そうなシンさん。
「師匠が人間辞め過ぎて正視に耐えられニャいニャ! 科学者に文句言ってくるニャ!」突然フッと体が消えるニャッツさん。
「あれ、ニャッツさんが消えましたよ」
「トイレじゃないの?」適当なシンさん。
「科学者~!」部屋の外からニャッツさんの声が聞こえてきて、「えっ、帰ってきた?」と素で変な声が出た。
 慌ててコントローラーを置いて部屋を出ると、さっきの魔法使い姿のニャッツさんがマナさんの部屋に入って行く瞬間を見てしまった。
 追い駆けてみると、マナさんの部屋に辿り着く前にニャッツさんと一緒にメイちゃんが出てきた。
「あっ、師匠ニャ! リアル師匠ニャ! やっぱりリアルの師匠は安心するニャ~!」嬉しそうに俺の周りをぴょんぴょん跳ねる小さな男の子が可愛過ぎて鼻血が出そうだった。
「亞贄様、たった今ヴァージョンを切り替えましたので、亞贄様もフドハクコにログインできるようになりました」ぺこりと頭を下げるメイちゃん。
「えっ、でも俺ログインしても普通の人間だから役に立たないと思うよ」剣も振れないだろうし。
「そうですか。申し訳ありません、不要なシステムを構築してしまった以上、お詫びにガチャを回すための石を配布させて頂くと共に、謝罪の場を設けさせて頂きます」「やめてやめて」無表情なのにドチャクソ悲しそうな目で頭を下げるメイちゃんの前で盛大に狼狽えるよ!「ごめん、やっぱりいるよその仕様、実は俺もゲームの中に入ってみたかったんだ!」
「では、メイの胸部スイッチに触れてください」
 間。
「なにて?」
「メイの胸部スイッチ、つまりおっぱいのちく」「あああ」思わず伏字になるように声を上げるよ!
 メイちゃんがきょとんとしている。俺は目元を押さえて沈黙してた。
「……メイの胸部スイッチを押すのが、ご不快ですか?」「ご……不快じゃないです」言葉にするのがつら過ぎる。
「サイコーですか?」「俺を社会的に抹殺したいのかな?」そんな意図を感じる。
 ニャッツさんに助けを求めようと視線を向けると、「何してるニャ? 早くその人形のボタンを押すニャ! そしたら師匠とゲームが出来るニャ!」とワクテカした様子を隠せない様子で鼻息が荒かった。
「あああ、分かりました、俺も覚悟を決めました」と言って、メイちゃんの胸を押す。
 と、
 突然視界が切り替わった。
 さっき見た、異世界ファンタジーの、酒場の中だ。
 眼前には、シンさんが欠伸をしながら佇んでいる。
「あっ、今中身入ったな?」とシンさんがニヤァと笑った。「ちぇー、どうせなら悪戯しときゃ良かったか」
「分かるんですか?」自分の姿を見下ろして、俺の恰好が実はファンタジーな姿である事に気づいた。
 シャツとズボンの上から、革の胸当てと腰当て、膝当てを纏っている。剣はいつの間にか鞘に戻っていた。
「よくこの恰好見て俺だって分かりましたね」不思議そうにシンさんを見やる。
「分かるだろそりゃ。いきなり“シンさんですか?”って訊いてくる冒険者、君以外にいると思うぅ?」
「あー、なるほどですね」
「師匠ニャー! リアル師匠キターッ、ニャーッ!」
 消えた時のようにパッと現れたニャッツさんが、頭をグリグリと俺の腹に擦り始めて至福を味わった。
「リアル師匠ですよ、へへへ」そう言ってリアルニャッツさんの頭を撫でようとしたらパシィンッ、と腕を振り払われた。「いてっ」
「よし、これで冒険の準備は整ったって事だな?」シンさんが席から立ち上がり、俺に肩を回してきた。「じゃあお姉さんとアンアンな冒険を始めようぜぇ」
「どうして突然いかがわしい方向のゲームにしようとしてるんですか」シンさんから逃れるようにニャッツさんの背後にすすす、と移動する。「てか人数足りなくないですか? 砂月ちゃんとかラヴファイヤー君とか式子さんもいませんけど」
「あー、ほら、愛火君は魔王だからさ」
「あー」
 まさかの、知り合いがラスボスでしたか。
 俺、これから知り合いを斃しに冒険するのかぁ。

【後書】
 いつか綴りたいと思ってたのがこのシステム。「異世界ファンタジーなネトゲをやってると思ったら、己のキャラクターがいるモニターの向こうが本物のファンタジーな異世界だった」と言うネタです。
 このネタはいつかまた別の形で別の作品として残すつもり満々と言いますか、わたくしのデビュー作もこのシステムになっているので、事有る毎に綴りたくなるんですよね! わたくしの壮大な夢の一つでも有りますから!
 と言う訳で遂にログインしてしまった亞贄君。フドハクコ編は更にカオスに進行して参ります! 次回、第32話「職業呪われてる」……ネトゲと言ったら、やっぱり豊富なジョブ・クラスでしょう! その辺に焦点を当てたら「何でこんな惨い事に……」感溢れる話に仕上がりましたね!(笑) そんな次回もお楽しみにー!

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