2018年6月7日木曜日

【物拳】凶の末【僕のヒーローアカデミア二次小説】

■タイトル
凶の末

■あらすじ
物間の傍を離れたくない拳藤。
相思相愛系物拳です。色々捏造設定注意!

▼この作品は、Blog【逆断の牢】、【Pixiv】の二ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
僕のヒーローアカデミア 物間寧人 拳藤一佳 物拳 ヒロアカ


Pixiv■https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8938811

■凶の末

※色々捏造設定なので、なんでも許せる方向けのお話だよ!


「拳藤……悪いな……」

 見慣れた背景。見慣れた格好。見慣れた人物。
 それが、ただ真っ赤に染め上げられていた。
 ヴィランが遂に雄英高を直接襲撃、幾人も死傷者が出ていると、前線で抗うヒーローから直接知らされた。
 ヒーローの卵――生徒にも、被害が出ていると。
 炎上する廊下の片隅に。まるで知性の足りない若者が思慮無く捨て去った空き缶のように、無造作に転がっている、“それ”は。
 拳藤が、人生に於いて一度として見たくなかった、それは――――
「……なん、で……ッ」
 駆け寄る脚に力が入らない。
 すぐにも崩れそうになる、視界が歪んで何も見えなくなる、震えた喉が絶叫を上げそうになる――――
 その姿を、見たくなかった。
 けれど、ここで目を逸らせば、一生見えなくなる。
 拳藤は腕で乱暴に目元を拭うと、彼の元へ駆け寄った。
 全身に夥しい血痕。腹部には、……治癒が間に合わない程の、欠損。
 端的に言えば、生きているのが不思議な状態で、彼はそこに倒れていた。
「……見誤った、みたいだ……」
 彼が、か細い声で鳴く。
 それを懸命に聞き逃さないように、拳藤は耳を欹てた。
 彼は拳藤の挙措など見えていないのか、虚空を見つめたまま、薄い笑みを口唇に刻んで、言う。
「……拳藤……君は、……君だけでも、逃げろ……」
「……その時は、あんたも一緒だよ、物間」
 担ぎあげようと肩に手を伸ばすと、彼は小さく頭を振った。
「流石に、分かるでしょ……僕は、助からない、よ……」
 はは、と力弱く笑う物間に、拳藤は歯を食い縛って、拒もうとする彼の肩に手を回す。
「やめてくれよ……君に死なれたら、僕の……ヒーローとしての矜持は……」
「――そんなプライド捨てちまえ!」悲鳴を上げそうになる喉を震わせ、拳藤は叫んだ。「……あたしは助けるからな、絶対に……! あんたは、絶対に死んじゃダメだ、絶対に……ッ!」
 物間を担いで歩き出そうとした時、何の力も返ってこない事に、拳藤は気づいていた。
 あまりにも軽い体。そんななまっちょろい体でヒーロー張るなんて、何考えてるんだ。
 悪態を吐いてでも懸命に足を動かしたかった拳藤だったが、不意に物間の重みが失われ、思わず振り返った。
 物間が、穏やかな顔で、笑っていた。
「……馬鹿だな、君は」
 そう言って。
 物間の体が崩壊して――――

◇◆◇◆◇

「――――物間ッ!」
 手を伸ばして。
 伸ばした先には、自室――雄英高の、女子寮の天井。
 規則正しく秒針が働く音が聞こえる、無傷の部屋が、拳藤の視界一杯に広がった。
 全身は気持ちの悪い液体で覆われている。目元も指で触らなくても分かる程に濡れていた。
 荒々しい呼気を静めるように、ゆっくりと深呼吸して、――盛大に溜め息を吐き出した。
 時刻は深夜二時。雄英高は、ヴィランに襲撃などされていない、平穏無事の姿で、夜の帳を迎えていた。

◇◆◇◆◇

「……で、何で僕にべったりな訳?」
「ん?」
 今日一日。何かにつけて一緒に行動しようとしてくる拳藤に、物間は痺れを切らして質問を飛ばした。
 夕食を終えて物間の自室にまで押しかけてきた拳藤に、物間は訝しげな視線を投げる。
 朝からずっと不安そうな顔で自身を見つめる拳藤に、何かにつけて尋ねてはいたのだが、「何でもなーい」と即はぐらかす彼女に、流石の物間も業を煮やしていた。
 短針はやがて十を指そうとしている。いい加減女子寮に戻って貰わねば、寮長に何を言われるか分かったものではない。
 そう思って物間が睨み据えると、彼女はいつに無くしおらしい態度で、もじもじと言い難そうにした後、意を決して、口を開いた。
「今日……泊まっちゃ、ダメ、かな?」
「ダメでしょ」
「バレなきゃセーフだって!」
「どこにもセーフの要素が無いんですけど!?」
「うぅ……」
 悄然と俯く拳藤。いつに無く違和感の有る光景に、物間は困惑した様子で小首を傾げる。
「本当にどうしちゃったのさ? 君、そんなタイプじゃなかったろう?」
「……そうなんだけど、さ」視線を逸らす拳藤。
「理由を話してくれないか、理由を。僕をどうしたいんだい?」
 うぅ、と俯いたまま沈黙する拳藤に、物間は沈黙を返して、発言を促した。
 やがて三分ほど経った頃だろうか。拳藤がポツリと、吐露した。
「……夢、見たんだよ」
「夢? どんな」
「……物間が、……いなくなる夢」
「僕がいなくなる?」
「それであたしさ……ちょっと、――ううん、凄く、物間と一緒にいたくなってさ……」
 俯いて、耳まで赤く染める拳藤に、物間は暫く二の句を返せなかった。
 拳藤から視線を逃がして、物間は桜色に染まった頬をポリ、と一撫でする。
「……バレて、問題になったら、僕も一緒に謝るよ」
「じゃあ!?」
「……変な期待はするなよ? 僕は床で寝るからな」
「えっと、じゃあ、あたしも床で寝たらいいかな?」
「……偶に君、驚くほどポンコツになるよね」
 呆れ果てた様子の物間に、拳藤は嬉しそうに微笑むのだった。
 後に寮長にバレて大問題になるのだが、それはまた、別のお話……

【後書】
 こう、物間君の前では突然ポンコツになったりすると禿げ萌えるなって…(挨拶)
 ヒーローの卵とは言え、幾度と無くヴィランの襲撃を受けていると言う事実から、こうなる可能性も否めないよなぁ、と思って綴っておりました。
 ともあれ拳藤さんが物間君にべったりなシーンが見たかったんじゃ…
 と言う訳で前回は3ヶ月ほど連続して「物拳短編」を綴って参りましたが、今回はストック無しでの配信なので、気紛れ~に投稿していこうと思っております。
 そんなこったで次回配信がいつになるか分かりませぬが、ぜひぜひお楽しみに~♪

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