2018年6月10日日曜日

【滅びの王】19頁■神門練磨の書4『《不迷の森》』【オリジナル小説】

■タイトル
滅びの王

■あらすじ
一九九九年夏。或る予言者が告げた世界の滅亡は訪れなかった。併しその予言は外れてはいなかった。この世ではない、夢の中に存在する異世界で確かに生まれていた! 恐怖の大王――《滅びの王》神門練磨の不思議な旅が今、始まる!
※注意※2007/08/12に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

■第20話

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/

19頁■神門練磨の書4『《不迷の森》』


 その夜。
 時刻はきっと八時を回った頃、野営をしていたオレは、またこの世界に来て初めてのモノを食す事になりそうだった。
「これって……どう見てもネズミ、だよな……?」
 焚き火を囲んで、オレは妙に香ばしい匂いを放つネズミの尻尾を持って、じっくりとその姿を見やる。
「ああ、ネズミだな」
 そう言いつつ鷹定がそのネズミを―――頭から丸呑みする。
「マジかよ!? ネズミ食うの!? 腹、壊さねえ!?」
「? いや、壊した事は無いが……それに、この辺の野ネズミに毒は無い。安心して食べられるぞ」
「いや、毒って言うか……安心してって言うか……」
 不肖、神門練磨十五歳。初めてネズミを食す時がやってきてしまった……!
 てか、剣と魔法の世界でネズミを食うって状況が、或る意味笑えるな。オレは全く笑えないけど。
 でもよくよく考えてみると、剣と魔法の世界って、案外そんなモノなのかも知れない。そう割り切れば、食えない事も……食えない、事も……
「……これ、マジで食うのか……?」
「食べないの? ――勿体無い。食わないなら無闇に捕まえて殺すの止めなさいよ」
 すっかり拗ねてしまった……や、元からこんな感じか……咲希が冷たい眼でオレを見やると、吐き捨てるように言葉を叩きつける。
 ……いや、オレが悪いんだけどさ、いい加減機嫌を直してくれないかな、これ……すげえ居心地悪いんすけど……
「たっ、食べるさ。捕まえて殺したのはオレなんだ、責任持って食べるさ!」
「じゃあさっさと食べなさいよ。冷めると美味しくなくなるわよ」
「う……」
 ネズミを食うだけでも心臓バクバクしてるのに、更に不味くなるなんて事になったら、オレ、トラウマになりそうだな……よし、食おう! 食べるんだ、オレ!!
「あ、……あぐっ」
 一口で小さなネズミを口の中に放り込んで―――恐る恐る歯と舌で感触を確かめる。
 ……ううむ、焼き魚の皮のような感じだ……そして、思いきって――噛む!!
 ……味は、少しだけ振った塩の味が妙に利いていて、不味くない……寧ろ美味しいと感じるレベルだった。触感は……ううむ何とも言えない歯触り。でも、嫌いじゃない……かも。
 飲み下すと、何て事は無かった、って感じでちょっと拍子抜けした。
 それから、幾つか丸焼きの野ネズミを手に取って食べて、空腹を感じなくなったら、今度は眠気に襲われた。今まで歩き通し(って、オレは雪花の背中で揺られてただけか)だったから、疲労を程良く感じていた。
 こんな風に疲れを感じるのは、昨日に引き続いて久し振りだ。二年前、急遽サッカーの試合に駆り出された時の夜も、確かこんな感じだったと憶えている。調子に乗って試合中駆け回っていたから、帰ったら筋肉痛で体が動かなくなる程で、その時も程良い疲労感と充実感が相俟って、疲れていたのに気分だけは良かった。あの時に似ている。
 街道から少し外れた草地の中で、オレは徐々に体を蝕みつつある睡魔の存在に気づいていた。瞼がウトウトと垂れてくる。
「……明日には土栗に着ける。そこから王都まで、この速度を保って行くとしたら、三日は掛かるだろう」
「だぁかぁらぁ、このバカを吐かせてでもいいから急ぐべきよ! そんなチンタラしてたら、すぐに時間になっちゃうわよ!!」
 咲希が怒鳴っているのが聞こえる。またオレの事で怒ってる……それが蕩けゆく頭の中で反響して、オレは起き上がる気力も無くなっていって、徐々に眠りの世界に落ちようとしていた……
 ……眠りたくない、という想いと、目覚めたくない、という想いは、一緒に思えた…………

【後書】
 今回で長きに亘った《不迷の森》編は終幕です。
 夢の世界で眠りに落ちたと言う事はつまり…?
 ところでネズミのくだりはアレです、半分妄想半分ネズミを食べた方の感想を元に綴ってあります。つまり…?※2回目
 そんなこったで次回は新章! おったのしみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    ネズミ……

    眠ってしまうということは、あれなんですよねぇ。
    そして、数々の謎を引きずったまま新章突入なのですね。
    ホントぼーんやりとこの世界のことが見えてきたような
    ないような、なんともムズムズする感じやるなお主!!

    継続中:今週最も気になるのが、練磨君どうやって戦うん?ですw
    継続中:儀式
    新 規:崇華ちゃんげんきぃ~vv

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      ネズミ…!w

      ですです! 眠ってしまうと言う事は、あれですな!
      この増え続ける謎も、ちょこちょこ解決していったりいかなったりするので、ぜひぜひ今後もお見逃しなく!
      いえー! やりますよわっちは!w

      気になる所がモリモリ増えていくぅ!ww
      今後もモリモリ増えていくと思うとわたくしも愉しみですぞ~!┗(^ω^)┛

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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