2018年7月5日木曜日

【牙ガイ】別Re【バディファイト二次小説】

■あらすじ
最終回の終盤を牙ガイに捏造した短編です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【pixiv】の二ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
バディファイト 未門牙王 黒渦ガイト 牙ガイ 腐向け

Pixiv■https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9825982

■別Re


「……やっぱり、何か寂しいな」

空港まで見送りに行こうとした仲間達を置いていたのに。
牙王は辿り着いた空港の搭乗口で、ポロリと本音を零した。
別れが惜しかったと言うのは、勿論有る。悲しまないように、笑って別れられるように、ガチの全力ファイトの大会を催して……師匠には頭が上がらないほど感謝しているが、それでも、牙王の心の中に空いた穴は、じくじくと、時間を経る度に広がっていく。
バディファイトが有れば、いつでも繋がっている。
今でもそう確信を以て言える。……けれど、物理的に離れ離れになる寂しさは、まだ心が未熟だと自覚するぐらいには、牙王の胸をきゅうきゅうと締め上げるのだ。
もう逢えなくなる訳ではない。
もうファイトできなくなる訳でもない。
もう顔さえ見る事が出来なくなる訳では、ないのだ。
駆けつければ、いつでも逢える、ファイトが出来る、その顔を、見る事が出来る。
分かってはいる。分かってはいても――恋しさで、胸が痛むのだ。
「――――牙王!」
暗澹たる想いを吐露したからだろうか。
牙王の耳朶に、幻聴が刻み込まれた。
恋しい声。暫くは顔を合わせて聞けないだろうな、と思っていた声。
それでもその声が本物である事を確認したくて、牙王は弾かれるように振り返る。
佇む影は、息を切らし、膝に手を衝いて、汗だくになった額に髪を張りつかせ――――牙王を、見つめていた。
ガイト。黒渦ガイト。牙王の、特別な相手。
その姿が幻視によるものではないかと勘繰るも、膝から手を離して歩み寄って来るその姿は、見紛いようも無く。
その存在感は、本物以外に疑う余地が無く。
牙王は目元が滲みそうになりながらも、思わず口唇に苦笑を刻んでしまう。
「何だよ、追ってきたのか? ガイト」
「……あんな別れ方で、オレが納得すると思うか?」
「……まぁ、それもそうだよな」
へへ、と鼻の頭を擦る牙王に、ガイトは真剣な表情で呟いた。
「……オレは、貴様の特別である自負が有る」
真剣な瞳が、牙王の表情を舐めた。
……否、ガイトが真剣じゃなかった時なんて、無かった。
彼はずっと真剣に、真摯に、牙王を見つめ続けた。
それはバディファイトのライヴァルとしてもそうだし、一人の人間としてもそうだし、――特別な相手だと認識してと言う意味でも、そうだ。
ガイトは虚言を繰らない。己が真だと思う事を臆せず語る。それが他者から見て間違っている事だとしても、彼にとって真であるなら、それは呑み込まずに吐き出してしまう。
だから心地良かった。ガイトが紡ぐ歌には、不純物が含まれていないから。
ガイトは牙王が己の言葉に耳を傾ける準備が出来たと確認したのか、視線を離さないように凝然と覗き込み、続けた。
「オレは、運命に従う。ここでオレは、牙王と別れる運命だ。それは、抗えない。……抗っては、いけない。――そう、オレは認めた」
牙王は口を挟まない。震えそうになる喉を押さえ、ガイトの囀りに、全神経を注ぐ。
ガイトも激情を堪えるように一瞬歯を食い縛ると、――――そっと、牙王を抱き締めた。
「貴様が、オレを特別な扱いにしてくれたように、オレも特別に扱う。これは運命じゃない。――オレの、意志だ」
「ガイト……」
「だから……牙王」そっと顔を離し、牙王の額に己の額を当てるガイト。「ここで離れても、オレを、――特別なままでいさせてくれ」
寂寥の雫は、互いの目尻に溜まっていた。
これ以上言葉を重ねる事が、あまりに辛い事も。
これ以上想いを束ねる事が、あまりに惨い事も。
分かっているから、分かってしまったから、牙王はガイトの額に体を預けるように、笑った。
「……やっぱ、お前には敵わねえよ、ガイト」
「……当たり前だ。オレは、牙王の特別だからな」
互いに、砕けそうになる笑みを見つめ合うと、静かに体を離した。
「――ガイト」荷物を持って搭乗口の先に向かおうと背を向けた牙王は、肩越しに振り返ると、ガイトに向かって笑みを浮かべた。「オレの特別は、お前だけだから」
それだけ残して、牙王は家族の待つゲートに歩き出した。
その背を見送ったガイトは、鼻の頭を赤くして、零れそうになる水滴を堪えるように上向くと、震える声で「当然だ……ッ」と鼻声を漏らした。
それが二度目の別れで、本当の別れ。
離れない絆を確かめた、最後の接触。
また逢える事を確信した、アタックだった。

【後書】
バディファイト、終わっちゃいましたね。
あの最終回と言いますか、最終回に至るまでの数話を視聴したら、もうどうしてもこんな小話を綴りたくなってしまいましてな…
ガイト君のあの表情と展開は、もう「ずっこいw」の一言です。まさか公式が牙ガイとはな…※色眼鏡発言
ともあれ今後も牙ガイの作品は綴っていくと思います。たぶん。あと神バディファイトを絶賛視聴している影響で牙パル熱がヤバいです。アッパァァァァ! 現場からは以上です(´▽`*)

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