2018年8月14日火曜日

【ベルの狩猟日記】054.暑いんだから仕方ない【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G

■第54話
【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/

054.暑いんだから仕方ない


「…………暑いぃ……」
「にゃーにゃー」
「暑いな」
 温暖期真っ只中のラウト村は現在酷い熱気に包まれていた。舗装されていない地面からは湯気が上がり、陽炎があちこちに浮かび上がっている。ラウト村の随所に設置された大タル爆弾Gが自然爆発するのは時間の問題かと思えるが、その辺は「にゃーにゃー」言ってる〈アイルー仮面〉がちゃんと何かしらの処置を施していると信じて、誰も文句は言わない。
 村専属の猟人である三人はギルド直営の酒場で涼んでいた。室内の方が割かし涼しいし、更にここにはキンキンに冷えたドリンク類が有る。幾らクーラードリンクで体感温度を下げても、漂う熱気だけはどうにもならないので、少しでも涼気を求めて彷徨うのが、ここ最近の日課になっていたりする。
「あー……暑い! どうなってんのよこの暑さ! 寝苦しいったらありゃしない! これじゃ鋭気養えないわよーっ!! 何とかしてよ~っ!!」
 酒場のテーブルの一角でジタバタ暴れ回っている少女こそ、三人のリーダーと目される猟人、ベルフィーユこと、ベルである。流石にインナーだけを着ている変人猟人には及ばないが、今は頗る薄着をして何とか熱気を体内から排出しようとしている。見ようによってはお嫁に行けないような格好で酒場の床に寝転がっている。寝転がっている理由は極単純だ。床の方が冷えているから。
 十代半ば相応の可愛らしい面貌をしている少女なのだが、床に頬擦りしながら涼気を求めている姿は最早見るに忍びなかった。
「にゃ~、暑いにゃら、インナーだけににゃれば良いんじゃにゃいかにゃ?」
 と、尤もな返答を寄越してきたのは、〈アイルーフェイク〉だけを纏った、インナー姿の村専属猟人の少女――〈アイルー仮面〉ことザレアである。猟人らしく、体には無数の傷跡が刻まれているが、それをインナーだけで隠す事は出来ない。頭だけは完全に隠れているので、どんな顔をしているのかラウト村の住民は誰一人として知らなかった。
「……それは流石に恥ずかしいと思うんだけど……」
 火照った頬を床に押し付けながらベルが更に顔を紅潮させる。ラウト村は女性の住民の方が多い珍しい村なのだが、流石に年頃の少女がインナー姿で生活するには抵抗が有り過ぎる。
 抵抗になる存在である、村専属の猟人の一人である少年に視線を向けるベル。
 黒髪黒瞳の少年はベルの視線に気づき、不思議そうに見返す。
「俺は気にしないぞ?」
「あたしが気にするのよ!」
 がーっ、と喚くベルに、少年――フォアンは「気にしないのに」と剽げた表情で切り返す。
(……確かにフォアンなら気にしないと思うけど……寧ろそこは気にしなさいよっ)
 不貞腐れるように冷たい場所を探して床を這い回るベル。寧ろその行動を気にした方が良いと思うのだが、周囲の人間は誰も注意しなかった。
「ティアリィさ~ん、何か涼しくなる料理ってなぁいぃ……?」
 芋虫のような動きで床を這いずり回ると、やがてベルは酒場の受付まで移動し、受付嬢であるメイド服を纏った女性――ティアリィに声を掛ける。ティアリィはいつもの微笑を貼りつけたまま、「それでは……」とカウンターの下から何かを取り出す。
 ベルは少しばかり期待に目を輝かせたが、刹那にその輝きは失われた。ティアリィが取り出した物が、猟人なら誰でも知っている代物だったからだ。
「クーラードリンクです」
「……見りゃ判るわよ。そもそも料理じゃないでしょ!? あたしはッ、涼しくなるッ、料理をッ、頼んだのよーっ!!」
「そこまで言うなら仕方ありませんね……では、これならどうでしょう?」
 ごそごそとカウンターの下から取り出したのは――こんがり焼けている肉だった。
「……こんがり肉? これ食べても涼しくは……」
「クーラーミートです。こんがり肉にクーラードリンクの効果も付与した、特殊な肉なのです。食べると美味しい上に、体も冷えます」
「なんと!? そんな物がこの世に有るなんて……それじゃ、いっただっきまーす♪」
 床から飛び起きてこんがりと焼けた肉を貪り食い始めるベル。あっと言う間に食べきると、お腹を摩って「美味しかった~♪」と満悦な顔をして――何故か急に顔が赤くなってきた。
「あっ、あっ、熱いッ!? あづい~ッ!! 体の中から物凄い熱が~ッ!?」
 あまりの体感温度にのた打ち回るベル。ティアリィは「あら?」ともう一度カウンターの下を覗き込み、再び顔を上げると、会心の笑みで、
「申し訳有りません、ホットミートだったようです♪」
「謝る気無いよね!? それとも確信犯!? 何だってこのクソ暑い温暖期にホットドリンク飲んだみたいな体ポッカポカ状態にならなきゃならないのよーッ!!」
 口から火を噴き出しそうな赤さでツッコミを入れるベル。やがて熱に耐え切れず、その場に倒れ込んで動かなくなった。頭から湯気が立ち昇っている。
 そんなベルを見かねたティアリィが、極上の笑みを浮かべたまま言葉を投げかける。
「安心して下さい。効果は二時間経てば切れます♪」
「……二時間も灼熱地獄に耐えられるかしら……うぅ」
「だったらクーラードリンクを飲めばいいんじゃないか?」
「……そうね、そうするわ……」
 カウンターに置かれたままになっているクーラードリンクを呷るため、再び立ち上がるベル。
「……う~ん、暑いようで涼しいようで……何だか変な気分だわ……」
「これで砂漠のどこにいても大丈夫になったな」うんうんと頷くフォアン。
「砂漠の案内ににゃったのかにゃ? ベルさん凄いにゃ!」
「二時間だけね……」
 遠い目で応じるベルが再び床に寝転がった時、酒場に新たな客が訪れた。
「あら、皆さん、こんにちは~。これから狩猟に出掛けるんですか?」
「村長……」「ちわ~」「村長さん、こんにゃちは!」
 入って来たのはラウト村の村長である女性、コニカだった。今日は外気温に応じて、ベルと似たような薄着姿である。日傘を折り畳みながら酒場を見渡し、三人の猟人が集っているのを見て、これから三人で出掛けるのだと思ったようだ。
「ううん、皆、避暑に来ただけよ……家の中は暑くて暑くて……蒸し風呂みたいになってるし……」
「そうなんですか……済みません、そんな家に住まわせてしまって……」悄然と俯くコニカ。
「いやいや、村長が謝る事じゃないから。……でも、そうね。代わりに何か涼しくなるような事しない?」
「涼しくなるような事?」小首を傾げるコニカ。
「打ち水とかか?」人差し指を立ててフォアン。
「う~ん、それも良いかもだけど……」腕を組んでベル。
「納涼と来たら怪談だろ!?」
 ばぁーんっ、と酒場の扉を開け放って声を大にして叫んだのは、辺境であるラウト村にまで足を伸ばしてくれる奇特な行商人、ウェズだった。
「うわ、ウェズだ」白けた顔でベル。
「何その冷め切った反応!?」驚きの表情でウェズ。
「怪談か。つまり怖い話をして、皆で胆を冷やそうって事だな」なるほどな、とフォアン。
「そうそう、そういう事だよっ。流石フォアンっ、話が分かる!!」フォアンを指差して笑むウェズ。
「こ、怖い話ですか……」引き攣った笑みを浮かべるコニカ。
「あれ、村長って怖い話、苦手なの?」キョトンとするベル。
「はい……夜、お花摘みに行けなくなってしまいますし……」カタカタと体を震わせてコニカ。
「え? 夜に花を摘みに行くんですか? ――任せて下さい! 僕がご一緒しますから!」胸を張ってウェズ。
「え、あ、その……」ゴニョゴニョと顔を赤らめるコニカ。
 恥らっているコニカを見てドキッとするウェズの頭に、拳骨を振り下ろすベル。
「いだッ。……え、何? 僕、今、何かした?」頭を摩りながら涙目でウェズ。
「それ以上、変な事を吐かすと殴り殺すわよ」嘆息を零しながらベル。
「身に覚えが全く無いんだけど!?」驚愕に目を見開くウェズ。
「それはともかく、怪談ねぇ……あんた、ちゃんと怖い話を知ってるの? それも、猟人であるあたし達を震え上がらせるような怖い話を」半眼でウェズを見据えるベル。
「いきなりハードル上げるなぁ……任せてくれよ! 僕の怖い話は向かう所、敵無しなんだ!」またまた胸を張ってウェズ。
「怖い話に敵がいる事を今、初めて知ったわ」胡散臭そうにベル。
「よし、まずは雰囲気を出そう雰囲気を!」

【後書】
「納涼と来たら怪談だろ!?」
 と言う訳で、第5章は怪談のお話になります。当時この物語を綴る段階で、登場させるモンスターはフルフルにすべきだと思っていたのですが(P2Gの怪談の相手的な意味で)、そう言えばもうフルフル登場させてたな…と言う事に気づく、早速頭を悩ませる事になるのですが、それはまた別の話…(笑)
 怪談のお話と綴りましたが、怖い・恐ろしい要素はほぼ絶無です。わたくしなりに怪談を綴ったらこんな感じかな~と言う、優しさを前面に出した感じの物語に仕上がっていると思いますので、「ホラーはむりぽ!」って方でも(・∀・)ニヤニヤ読み進められると思いますので、ぜひぜひお付き合い頂けたらと…!
 そんなこったで次回は百物語的な展開です。お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    「ホラーはむりぽ!!!」

    でも芋虫のようなベルちゃんを想像してたら
    もしかしてイケるのではなかろうか?などと思い始めている今日このごろ、
    皆様いかがお過ごしでしょうか?

    毎日暑くて主食がアイスと言っても過言ではないわたくしです。
    脱衣場にあるタニタさんの体重計がホラーな感じv
    怪談?目じゃないですねw

    なんかこぅ支離滅裂…暑さのせいね。
    まだまだ暑い日が続きそうです。先生も気をつけてくださいましー

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      同意を頂けたぞー!ヾ(*ΦωΦ)ノヒャッホー!

      そこでまさかのイケる判断下しちゃうのwww
      芋虫のようなベルちゃんは、こう、アレですよ、ホラーと言うより何か生物学的な悍ましさが…何の話をしてるんだこれ???

      主食がアイスww健康的とは言えない感じですね…!w(控えめな表現)
      でもでも、確かアイスって糖質があんまり無いから太らない的なお話を伺った事が有るような気も…?? チョコとかの甘味を食べるくらいならアイスの方がいいって話もどこかで…
      …この話が事実じゃなかった時は怪談になりそうな気がするので、まぁその、(*´σー`)エヘヘ※誤魔化してます

      物語の感想以外のお話も偶には織り交ぜてあると、読者様の生活を垣間見えて(ΦωΦ)フフフ…って感じになりますけどね!w 最近交流少ないですし!w
      酷暑そのものですので、とみちゃんもしっかり暑さ対策して、アイス以外の栄養の有る物を食べて!w 熱中症に気を付けてくだされ~!

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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