2018年8月14日火曜日

【FGO百合SS】01話「貴女と友達になりたくて#1」【エレモー】

■あらすじ
モードレッドと友達になりたいエレシュキガルのお話。

■キーワード
FGO Fate/Grand Order コメディ ギャグ エレシュキガル モードレッド 百合

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■第1話

01話「貴女と友達になりたくて#1」


「……憂鬱なのだわ」

カルデアの食堂の隅で力無く溜め息を零すエレシュキガルの姿が有った。
エミヤに調理して貰った謎肉のミートボールをフォークで弄びながら、ここにはないどこかを見つめているかのように、遠い眼差しで「はぁぁぁ……」と辛そうな息を漏らし続けている。
周囲には彼女を気遣うようなサーヴァントの姿もスタッフの姿も無い。見て見ぬふりをしている訳ではなく、単純に気づいていないだけなのだが、それが更に彼女の憂鬱レヴェルを上昇させていた。
「おう、何しけた面してんだエレ……エレ……エレキシュガル!」
パーンッ、と軽やかに背中を叩かれて、エレシュキガルが弄んでいたミートボールが遥か彼方へ飛翔し、ポス、と見事に新宿のアヴェンジャーの口の中に納まった。
「ワフン」満足そうに鼻息を落とすと、搭乗者が首も無いのに会釈した。
「……エレキシュガルじゃなくて、エレシュキガルなのだわ!」最後の一個だったミートボールが無事、狼の胃袋に納まったのを見届けた後、エレシュキガルが背後からの襲撃者に吼えた。「って、貴女は……」
「あん? オレがどうかしたか?」
トレイに大量のハンバーグを載せて佇んでいたのは、モードレッドだ。不思議そうにエレシュキガルを見下ろし、挙句返答を待たずに向かいの席に座ると、トレイ一杯のハンバーグに齧り付く。
「……えぇと、モードレッド、さん、だったかしら?」何の了承も得ずに相席した上にハンバーグをモリモリ食べ始めたモードレッドに、エレシュキガルは半ば呆然と声を掛けた。「貴女も確か、マスターから聖杯を注がれたって……」
「あん?」モッキュモッキュと口一杯にハンバーグを詰め込んで顔を上げるモードレッド。「んあーひょうひょう。もぐもぐ。んがどうかしたか? もぐもぐ」ハンバーグが喋る度にぽろぽろ口から零れた。
「あぁもう! 汚い! 汚いのだわ!! せめて食べきってから喋って欲しいのだわ!」
思わず喚声を上げるエレシュキガルに、モードレッドは「あん? もぐもぐ。手前が食べてる最中に話しかけてくるからだろ。もぐもぐ」と相変わらずハンバーグをぽろぽろ零しながら応じた。
ぐぐぐ、とエレシュキガルは何か激情に駆られた様子だったが、突然すんっ、と澄ました表情を浮かべて、取り繕うように斜め上段からモードレッドを見下ろした。
「ま、まぁいいのだわ。――貴女、友人はいるかしら?」
「は?」
ハンバーグにフォークを突き刺したまま呆気に取られた様子でエレシュキガルに剣呑な視線を刺し込むモードレッド。
突然殺意を向けられ、エレシュキガルは慌てふためいた様子で手を拱き始めた。
「ごごご誤解しないで欲しいのだわ! 貴女ももしかしてマスターしか友人がいないサーヴァントなのかな~って思った訳ではないのだわ! ほんとよ!?」
「……よく分からねえけど、友人、ねぇ」フォークに突き刺したハンバーグを持ち上げて、一瞬思考したモードレッドは、「オレは、フランの事を友人だって思ってるぜ」と返し、改めてハンバーグに齧り付いた。
モードレッドは特段思う所も無く何気無く返事をして、改めてハンバーグを美味しそうに咀嚼していたのだが、不意にエレシュキガルの悲しそうな視線に気づいた。
「な、なんだよ。これやらねえぞ?」すすす、とトレイのハンバーグを自分に引き寄せるモードレッド。
「貴女なんかでも友人がいるのね……」
「おい手前今何つった?」突然モードレッドの額に青筋が駆け抜ける。
「あぁぁ……私も……私もマスター以外の友人が欲しいのだわ……」
さめざめと涙を流し、腕を枕にして俯いてしまうエレシュキガル。
突然訳も分からず落ち込んでべそを掻き始めた女神を眺めながら、モードレッドはハンバーグを咀嚼し続けた。
「お前、友達いねーのか」
「うぅ……」グッサリと痛い所を貫かれて呻くエレシュキガル。
「まぁ、お前、根が暗いもんな」
「うぅぅ……」ザクザク傷を抉られてどんどん顔色が悪くなっていく。
「まー、あれだろ? 根が暗ぇなら、根が暗い奴同士で仲良くなりゃいいだろ。ほら、反転したエミヤとかよ」関心も無さそうにハンバーグに齧りつきながら告げるモードレッド。「あとアサシンのエミヤとかもいいんじゃねえか? そんなもんかな」
「候補がエミヤしかいないのだわー!?」泣き顔を持ち上げるエレシュキガル。「うえぇ、お願いなのだわ~! 同じ聖杯を注がれた者同士、友人になって欲しいのだわ~!!」
フォークを握るモードレッドの手を両手で握り締めて哀願するエレシュキガルに、叛逆の騎士は「はぁ?」と怒りを覗かせる。
「オレぇ? 他に幾らでもいるだろ、サーヴァントなんざゴロゴロと。カルデアのスタッフでもいいだろ? 何でオレぇ?」怒りではなく、困惑の色が強いモードレッド。「こう言うのも何だけどよ、オレとお前、どう考えても水と油だぞ? 気が合わねえって絶対」
「……私もそう思うのだわ」「おい」「ででででも、マスターの寵愛を受けた者同士で仲良くするのは、良い事だと思わないかしら?」
胡散臭そうにエレシュキガルを見つめるモードレッド。
エレシュキガルは必死に愛想笑いを浮かべていたが、やがて心が折れたのだろう、再び泣き顔を覗かせて頭を下げた。
「うぅ……その、怒らないで聞いて欲しいのだわ……」
「いや流石に怒る気も起きねえだろこの状況で……」
「私、このカルデアで唯一話せる相手がマスターしかいないのだわ……」
「想像を絶するぼっちだなおい」
「そのマスターに相談したのよ……誰か話し相手になってくれるようなサーヴァントはいないかって……そしたら……」
「……え? それでオレな訳? 馬鹿なのか??」呆れ果てた様子で応じるモードレッド。「幾ら何でもオレよりも話し相手になってくれるサーヴァントなら、もっと相応しい奴がいるだろ。反転したエミヤとか、アサシンのエミヤとかよォ」
「マスターはこう言ってたのだわ……“モーさんは裏表無い子だから、話してみたらすぐ仲良くなれるから、コミュ障初心者向けサーヴァントだと思うよ! まずは食堂のモーさんの特等席で待ってみたらいいんじゃないかな!”……って」
「後でマスターを叩きのめすのが確定したのは違ぇねぇが、」ゴキゴキと指の骨を鳴らした後、エレシュキガルを一瞥するモードレッド。「……お前、オレと今話してみてどう思ったよ? 明らかに相性最悪だろ?」
「……うん。正直、私もそう思うのだけれど……」「だけれど?」「……私、貴女が羨ましいって、今痛切に感じてるのだわ……」「はぁ?」
キレそうな雰囲気のモードレッドから視線を逸らして、涙目になりながら人差し指を突き合わせるエレシュキガル。
「……貴女、思った事をすぐ口に出せる性格……じゃないかしら?」
「おう、それが?」
「……貴女から見て、私はどう映るかしら……?」
「根暗だな」
「うッ」胸を押さえて苦しそうな声を上げるエレシュキガル。
「声は小せえし、態度は軟弱だし、何より覇気がねえな、うん」
「ちょッ、ちょっと待って欲しいのだわ! それ以上言われたら私のハートがオーヴァーキルしちゃうのだわ!!」過呼吸に陥りながら制止の声を懸命に上げるエレシュキガル。「いや、その、えと、その通りなの……だわ……だから、私、貴女のように、気軽に……軽率に……自分の想いを口に出来る人が、……羨ましいのだわ」
沈んだ面持ちで呟くエレシュキガルに、モードレッドは真顔で応じた。
「いや、サーヴァントって大概そんなもんだろ」
「うッ。そ、それも、そうかも知れないのだけど……」もじもじと肩身が狭そうに身動ぎするエレシュキガル。「けど……私と友人になっては、くれないかしら……?」
上目遣いに尋ねるエレシュキガルに、モードレッドは表情も変えずに一言。
「――厭だね」
「あうぅ……」半べそを掻いてしまうエレシュキガル。
「つーかよ、友達っつーのは、なってください、お願いします、はい分かりました、ってなるもんじゃねーだろ」呆れ果てた様子で空になったトレイを持ち上げるモードレッド。「“今度一緒に遊びに行こうぜ”、って誘やいいんだよ。それで友達だろ?」
「……え? そ、それって……?」思わず顔を明るくしてモードレッドを見上げるエレシュキガル。
「その程度の作法も知らねえでよく冥界の女神なんか務まるなお前」「そ、そんな事言われたって、私にも事情が――」「で、いつ遊びに行くんだよ? 今か?」
憤慨して言い繕おうとしたエレシュキガルを見下ろしたまま佇むモードレッド。その顔には「早くしろ」と書いてあった。
「えっ、あっ、じゃ、じゃあ、えっと……」しどろもどろになった後、「あ、明日、お願いするのだわ……」小さく頭を下げるエレシュキガル。
「おう、明日な。待ち合わせは明日の朝、ここでいいな? んじゃなー」
ヒラヒラと片手を振って立ち去るモードレッドに、エレシュキガルは暫し呆然としたままその後姿を見送っていたが、やがて実感が湧いたのか、頬を紅潮させて「や、やったのだわ! つ、遂にぼっち卒業なのだわー!」と歓喜の雄叫びを上げるのだった。

【後書】
捏造設定にオンパレードなので、あくまでこの物語は「日逆孝介のカルデアのお話」と言う大前提が有ります、悪しからずご了承くだされ~!
と言う訳で、普段綴ってる「人理改竄系カルデア」とは別ベクトルのお話でした。ちょっと前に友達とFGOに関して語り合っていた時に、「百合とかいいんじゃね?」って話になって、ふわふわ妄想していたらエレモーがね、浮かびましてね…(ゲンドウポーズ)
このお二方は、うちのカルデアの聖杯注がれーズでして。浮世ちゃんの寵愛を一身に受けている子なので、その二人の話を考えてみたらこんな感じに。いや~百合っていいな…(菩薩顔)
更に今回は表紙を断さんに描いて頂きまして!! もうめちゃんこ可愛過ぎてこれもう続編モリモリ綴りたくなってきますよね…! ではでは次回、早ければ来週辺りにまたお逢い致しましょう!

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